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後日譚:バレンタイン
穂乃花達のバレンタインのお話。
バレンタインを先取りしていますが、温かい目で見てあげてください。
「……おし、こんなものかな」
「うん、まぁまぁ良い感じじゃない?」
私は今、花音と一緒にチョコレートを作っていた。もちろん、祐に渡す用のものだ。
市販のチョコを溶かして、小さなカップに入れて、上からクリームをかけたり、トッピングをすれば……完成!
「ふふ、楽しみだなぁ」
「穂乃花は大塚君とラブラブだもんねぇ?」
花音がからかうような視線を向けて来る。思わず赤面してしまう。
「か……花音だって、工藤君とラ、ラブラブじゃんか!」
「ふふっ、穂乃花と大塚君程初心じゃないも~ん」
「う、うぅ……」
言い返したい。でも、正論だから言い返せない。
「……これ、受け取ってくれるかな?」
「受け取ってくれるでしょ?だって、大塚君だもんねぇ~?」
「……うぅぅ……」
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二月十四日、バレンタイン。
祐の下駄箱をそおっと開けると、中にはいくつか、チョコが入っていた。
「…………」
私が作ったチョコを見る。袋型にラッピングして、『祐へ』と書いたカードを添えた、祐へのバレンタインチョコ。
そおっと祐の下駄箱に入れて、そおっと閉じた。
──祐が、私のチョコに気づいてくれますように。
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二月十四日、バレンタイン。
俺の下駄箱を開けると、いくつものバレンタインチョコがぎゅうぎゅうという言葉が似合うように詰まっていた。
「やっぱか……」
中学に上がったくらいから、二月十四日になるたびに男友達にチョコを分けることになった。別に俺は、穂乃花からのチョコが一番嬉しいけど、今まで穂乃花からチョコをもらったことはほとんどないし、もらえても義理チョコと公言されたもので、二月十四日になるたびにショックを受けた。
男友達からはよく不思議がられる。バレンタインチョコをもらって嬉しくないのかと。
たしかに、嬉しくなくもない。けど、穂乃花……思い人からのチョコが一番嬉しい。
一応、それぞれのチョコを確認する。『大塚君へ♡』『大好き♡』など……俺、一応彼女はいるんだけどな。
いくつものチョコに埋もれるようにして、ひとつのチョコを見つけた。袋型のラッピング。小さなカードに書かれた、『祐へ』の文字。
──穂乃花からのチョコだ。
俺のことを『祐』なんて馴れ馴れしく呼ぶのは穂乃花だけだ。
胸が温かくなる。───嬉しい。
いくつものチョコをリュックに入れて……穂乃花からのものだけリュックの別のところに入れて、「工藤もこんな風なのか?」と考えながら昇降口に向かった。
ほのぼのカップルのバレンタインのお話です。
自分のイメージでは、穂乃花は真面目だけどどこか抜けていて、祐介は文武両道だけど(穂乃花に)一途過ぎることが玉に瑕。花音は天然ちゃんのふりをする大人系、麗斗はそんな花音の内面のことも知って、それでいて花音を受け止めてくれる存在だと思っています。