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退屈少女
ハイリスクレッド
闘強少女道璃夢 11
Boredom
☆
退屈だぁ…
退屈だぁ…
退屈過ぎると虚しくなる。
虚し過ぎると寂しくなる。
あぁ何て寂しい人生なんだろう…
☆
春の青い空を見上げながら一人思っている少女。
少女、彼女の名は、優梨(ゆうり)
名占いによれば、スポーツは天才的であると出る。
明後日から高校3年になる女子高生である。
☆
4月の初めの土曜日、神戸の大学へ進学した兄の下宿先のアパートへ荷入れの手伝いに来ていた。
と言うよりは両親に半強制的に手伝わされたのだ。
思ったよりも早く荷入れが終り上機嫌の父の言い出しで、家族四人分のコンビニ弁当買い込んで車を走らせ桜咲き誇る山並みで花見をしていた。
☆
丹波の山並みを薄いピンクの雲のように映えさせる千六百年の歴史ある寺の境内の満開の桜の木々。
コンビニ弁当を食べ終えた優梨はひとりふらふらと境内を歩きながら春の青い空を見上げ一人思っていた。
退屈だ…退屈だ…
ん…ふっと気づく。
風はない、風はないのに花びらが舞う。
突きの気魄を吐く、ハッ。
打ちの気魄を吐く、ハッ。
蹴りの気魄を吐く、ハッ。
気魄の功に花びらが舞う。
受ける、躱す、往なす、捌く、流す。
体捌き、足捌きの一挙手一投足の気魄の功に花びらが舞う。
気魄の功が花びらに合わせているのか、花びらが気魄の功に合わせているのか。どちらともいえない。
何?優梨の瞳が、視線が止まる。
動から静へ気を納め立たづむ一人の少女を桜の花びらが取り巻いて真っ白な武術着を薄いピンクに映している。
優梨はそこに立っている自分より小柄な少女を見つめていた。
優梨の視線に気づいた小柄な少女が静かに頭を垂れて一礼してきた。
優梨は、その一礼を無視するかのように小柄な少女に向かって足を進めた。
優梨は自分の身長と同じくらいの間をとり止まり、小柄な少女を見下ろした。
優梨の身長は、172センチ、小柄な少女はそれよりは15センチ程低い。
優梨が不躾に言葉を吐き出す。
「何?今のは何?空手?」
小柄な少女はそんな不躾さを気に止めることもなく小さく微笑んで答える。
「いえ、武術です」
「武術?空手とは違うの?」
「空手とは空手道、道は教育的体育です。柔道に剣道などもまた同じです」
「じゃ武術って何?」
「武術の術は活殺の技です」
「活殺って殺すってこと?」
「時と場合ですけど」
「ってとこは、強いのね?」
「さぁ、強いかどうかはわかりません」
小柄な少女は小首を傾げた。
その小首を傾げた仕草に優梨はムカついた。
ムカついた勢いで言葉を吐き出した。
「私、強いのよ、ヤってみる?」
「無意味な争いは好みません」
小柄な少女が顔を左右に振る。
「意味は有るわ、強いか弱いかがわかる」
優梨が無理やりに食い下がる。
小柄な少女の困惑の顔が愛らしいく優梨はさらにムカつく。
両脚を開き、腰を落とし、左手を正中線前に出し、右拳を右脇に添えて身構える。
兄の荷入れの手伝いでストレッチジーンズを履いてきて良かった、と優梨は思った。
身構える優梨に対して小柄な少女は「じゃ少しだけ」と呟き右足を一足前へ摺り出し、両腕は体側に垂らし自然体になる。
無防備。優梨の目にはそう見えた。
一気に右拳を突きだし、右足を踏み込み、すかさず左拳を突きだす。
小柄な少女の身体がスィ、スィと優梨の拳をかわす。
かわされた体勢から続けて左右の拳を突きだす。
ヒラリ、ヒラリと往なされる。
クッソ、罵りと共に右脚で脇腹めがけて回し蹴りを振る。
小柄な少女の右手が、さっと伸び優梨の右脚回し蹴りに触れる。
優梨の体が流される。右脚が流され体が開き死に体になる。
しまった!
刹那、左脚、軸足が刈られ体が宙に浮く。
無防備に背中から地面に打ち付けられた。
打ち付けられた痛みに全身が強張り歯を食い縛り両目を強く瞑る。
恐る恐る目を開ける、春の青い空が、周りを彩る桜が目に写る。
そこへ、ヒョイと小柄な少女の顔が割り込む。
右手の指の、人差し指と中指を立てている。
勝利のVサイン?ピースサイン?能天気なと思った瞬間、人差し指と中指の先端が優梨の瞳に落ちてきた。
殺…抉られる!?
紙一重で指先が止まり強張った全身の力が抜け、安堵の溜め息を吐く。
「ごめんなさい、今日はこれで、失礼しますね」
小柄な少女の声が聞こえてきた。
☆
大人は無責任だ。
無責任な言葉を安易に吐く。
体が太っていれば、相撲取りに、体がゴツければプロレスラーになれと。
足が早ければ、陸上で、体が柔らかければ体操選手。
優梨は、子供の頃から背が高かった、大人の無責任で安易な言葉は誰も決まって、バレーボール選手かバスケットボール選手。
優梨は、サッカーがやりたかった。
優梨の住んでいた静岡県はサッカーの盛んな県だったし兄もサッカーをやっていたからだ。
小学生の時期は男女混合でサッカーができる。
優梨は大人の無責任で安易な言葉に逆らう様にサッカーチームに入った。
しかし、そこでも大人の無責任で安易な言葉が待っていた。
『背が高いから、ゴールキーパーだ』
え?なんで背が高いとゴールキーパー?
優梨は、ストライカーになりたかったのだ。
ピッチを駆け巡り、ドリブルでボールを運び、シュートを打ちゴールネットを揺らす。
そんな思いは叶わず結局、ゴールキーパーとして初めての試合に出場した。
自分の守るゴールから遠くに見える相手チームのゴールの前でもたつくチームメイトにムカついた。
ムカついている所へ相手の選手が自分に向かってへっぽこなシュートをしてくる。
へっぽこシュートを軽く受け止めると優梨は、猛然と駆け出した。
ドリブルで相手のデフェンスを次から次へと抜き去り。
チームメイトさえも置き去りにして相手チームのゴールに向かってシュートした。
ボールはゴールネットを揺らした。優梨はガッツポーズで振り返った。
相手チームは唖然。
チームメイトは茫然。
観戦していた父兄はどよめき。
チームの監督、コーチの顔は憮然と怒り。
それを機に優梨はサッカーを辞めてしまった。
大人の無責任で安易な言葉に従ってバレーボールチームに入った。
背が高いだけでなくジャンプ力も秀でていた優梨はブロッカーとして専念させられた。
ブロックしてもブロックしてもアタック、スパイクが決められないチームメイトにムカついた。
私は、アタッカーになりたい。
気持ちがもたげると止めれない。
ブロックしないで直にアタックする。
ブロックしないで直にスパイクする。
そんな優梨にチームメイトは茫然。
チームの監督、コーチは憮然と怒り。
それを機に優梨はバレーボールを辞めてしまった。
結局、大人の言葉に従っても良いことはなかったのだ。
☆
優梨は生まれながらにして持っている身体能力の高さ、運動神経の良さに加え、見ていれば理解してしまう理解力の高さから、やってみれば直ぐ出来てしまう事が、自分をムカつかせ、周りを置き去りにし、大人に認められない状況を作っていたのだ。
中学生になり、そんな事情を知らない上級生や部活の教師が優梨に声を掛けてくる。
優梨は、小学生の頃の嫌な思いをしたくない為に部活に参加する気はなかったのだ。
執拗に部活に勧誘してくる教師に根負けし結局バスケットボール部へ入部した。
さすがに中学生のバスケットボール部には優梨よりも背の高い選手は多くいて身長だけで目立つことはなかった。
それでも身体能力、運動神経は群を抜いていた。
1ヶ月もすれば優梨のドリブルに着いてこられる選手は上級生にさえいなかった。
そんな優梨にチームメイトからパスが回って来なくなる。
優梨がボールを持ちドリブルをすると一人舞台になる。
やっぱ、小学生も中学生も変わりはしない。
優梨はムカついた。それを機にバスケットボール部を退部した。
☆
日々は流れ、退屈な中学生が終り高校生になる。
高校生になると部活の勧誘も激しくなる。
学校の方針とかで部活が半義務化されている。
退屈だ…誰か私を負かせてくれ。
私は寂しいのだ、誰か私を負かせてくれ。
高校入学から10日も過ぎた頃、ある部活へ勧誘された。
空手道部だった。
空手?見たこともない。
個人競技?
やれるかも?優梨の気持ちが傾いた。
優梨は空手道部に入部した。
すべてが初めてで目新しく気持ちがウズウズと盛り上がってきた。
それも一通りの基本動作を修得するまでの期間だった。
空手競技には、形と組手がある。
基本動作から形の練習になる。
形それを初めて見た時は複雑だなと思った。
それでも見本演武を見て、手順を習う、見て習い聞いた記憶をたどり体を動かす、三度も繰り返せば体に刻まれ人並みに演武出来た。
組手にしても初めは、ぶつかり合い、突き、蹴りの衝撃音にたじろいだが動きは実に単純単調で直に理解出来た。
相手と向き合えば相手の意思が読み取れることも理解した。
3ヶ月もすれば優梨は素人の域を出ていた。
半年もすれば優梨に組手で敵うものは居なくなり、形の指導さえ上級生では口出し出来なくなっていた。
退屈だ…
優梨の口からもれる言葉。
誰か私を負かせてくれ。
負かせてくれれば退屈じゃなくなるのに…
さすがに高校の部活は辞める事が許されず、月に1度か2度、自分の体の鈍りを取るために練習に参加するだけの部員として3年生になっていた。
☆
3年生になってからの一学期、優梨はモヤモヤとして過ごしている。
あの日の小柄な少女の姿が浮かんでは消えまた浮かぶ。
私は、負けた?
いや、負けてはいない?
見れば理解出来た?
いや、出来なかった?
瞳を凝らし視線を釘付けにして見たはずだ…
向き合えば相手の意思が読み取れる?
いや、向き合っても手を合わせても読み取れなかった…
私は負けたのか?
いや、まだだ!
まだ、努力していない、努力がしたい、努力がしたかった。
ちょっとずつ、糸を紡ぐように地道に努力がしたい。
努力して自分の能力が研かれ、研ぎ澄まされていく。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、確実に一つずつ、一つずつ理解しそれを身に付けいく。
そしてその努力の成果をぶつける。そしてその努力の成果を潰される。
また始めから努力する。そうすれば退屈な虚し過ぎる寂しい日々から脱け出せる。
あの日の小柄な少女にまた会わなければ脱け出せない。
☆
夏休みになると、優梨は僅かな着替えとジャージを鞄に詰め込み神戸へ、丹波の山並みの寺の境内へ向かった。
兄のアパートに押し掛け、1人丹波の山並みの寺の境内へ向かった。
1日目、小柄な少女には会えなかった。
2日目も真夏の日射しを避けるように寺の境内の石段に腰を降ろし、ただ待っていた。
僅かに意識が揺らぎ目を閉じた。
軽く頭を振り目を開ける。
目の前に人影が立っている。はっと顔を上げる。
小柄な少女が微笑みながら優梨を見つめていた。
「こんにちは、お久しぶりですね」
小柄な少女の言葉に我に返り立ち上がる。
優梨は小柄な少女に整体し頭を下げた。
身体を折り曲げ90度以上折り曲げ頭を下げた。
頭を上げ言葉を出す。
自分でも信じられないぐらい素直に声が出ていた。
「私は、優梨と言います、先日、体験した武術を教えてください」
「はい…私は、梨七(りな)です」
小柄な少女はその言うと、ちょっと困り顔になり言葉を探していた。
優梨は、じっと焦らず、ムカつかず梨七の顔を見つめ続けた。
「私の一存でこの場ではお答え出来ません、良ければ我が家に来て、お話しを聞いて頂けますか?」
我が家?って?
話しって何なんだよ?
それでも優梨はムカつかず「はい」と答え梨七に従った。
寺があった山並みを下り、梨七の実家に着く。
古式雄大な日本家屋が鎮座していた。
黄金色の畳の間に梨七の父親と梨七、優梨の3人で向き合う。
先ずは、梨七の体得している武術を理解し納得してからだと言われた。
☆
その武術とは、16世紀、
1532年天文元年に創始されたと云い伝えられる総合武術たけのうち流柔術の陰となり直系血族伝承として伝えられた武術。
龍水流柔術拳法(りゅうすいりゅうじゅつけんぽう)
484年の陰の歴史を持つ武術。
龍水流柔術拳法とはヤマト国古流柔術に大陸より琉球王国へ伝わった拳法を融合し編み出された武術である。
龍水流開祖は、梨七の御先祖様である。
梨七、年齢は18歳(高校3年生)物心ついた時より龍水流柔術拳法の直系血族として鍛錬を課せられて育った。
鍛錬の場は板張りの道場のみでなくぬかるむ田の中、河原、岩場、山の森林でも真の実戦、生命を掛けて行なわれる。
☆
時代も移り変わり現の時世です。
もし志を持ち龍水流の門を叩き、深透していただけるのであれば迎え入れたいと思います。
梨七の父親であり、現在の龍水流責任者の言葉であった。
優梨は姿勢を正し深く頭を下げた。
「よろしくお願いいたします」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
龍水流の責任者から許しが言い渡された。
同時に優梨は梨七の実家で共に暮らす事になった。
兄のアパートから僅かな着替えを詰め込んだ鞄を梨七の父親の運転する車で神戸まで行き戻ってきた。
その日の夜から鍛練、稽古は始められた。
龍水流という武術の身のこなしは魔法の様で間近に見ても優梨には理解出来なかった。
それは、まさに身体極みの動きだった。
それでも、焦らず、ムカつかずもちょっとずつ、ちょっとずつ確実に一つずつ、一つずつ理解しそれを身に付けていく努力をした。
瞬く間に夏休みは終り高校生としての学校生活が始まった。
☆
ちなみに、丹波の山間部で生まれ中学3年生まで育った梨七は高校進学を機に神戸の山の手の青い屋根、白い壁、緑の芝生の親戚の御屋敷で暮らし神戸の女子高へ通っている。
☆
夏休みが終わると3年生は部活引退になる。
9月の中旬に引退式らしきものが行われる。
その場で部活のキャプテンの交代式も行われる。
優梨も、その儀式を3年生部員の1人として参加していた。
あぁ、やっと空手道部から解放された。そんな優梨の思いを遮るように顧問から発表があった。
今までキャプテンだった、夏希がスポーツ推薦で大学へ行く事が決まったと。
へぇ、あの程度の夏希がスポーツ推薦とは、優梨は苦笑した。
☆
空手の組手の試合は、決められた時間内に決められたポイントを先取りするゲーム…
スポーツである。
ポイントを時間内に先取りしてしまえばそこで勝敗が決まる。
ポイントが先取り出来なければ時間終了時のポイント数が多い方が勝利となる。
☆
夏希は優梨と唯一規定の時間終了まで試合を出来た相手だったのだ。
ただ勝つのは常に優梨だった。
その苦笑した顔を夏希に睨まれていた気がした。
☆
優梨は自己鍛練、自主稽古に時を費やした。
自宅の自室で廊下で庭で、近所の公園で河川敷で。
朝は散歩に出る。
ゆっくりと足を運ぶ、早足で運ぶ、軽く駆けてまたゆっくりと足を運ぶを繰り返す。
意識した呼吸でリズムを取らす常に自然に会話をする様に息をする。
両耳にイヤホンをする、マスクで口元を隠し、聞こえてくる言葉を会話をする様に口を動かす。
これは梨七が優梨に教えてくれた自然に会話する様に呼吸出来るようになるための方法だった。
「梨七さんは何を聞いているんですか?」
「梨七さん、だなんて…同じ歳の女子高生じゃない、梨七で良いわ」
「あぁ、なら梨七は…何聞いているの?」
「私は、英会話、聞いてリピートして口に出すの」
え?英会話か…
優梨の興味の外であった。
「一石二鳥よ、英会話と自然な呼吸使いの」
梨七がニコリと微笑む。
結局、優梨も英会話を聞きながら英会話を口に出しながら朝の散歩をしている。
☆
夏が去り、秋が来て秋が去り、冬が来て年が終り、年が明け新年が始まる。
1月の下旬、空手道部の送る会が行われる。
と言っても和気あいあいと余興に費やすわけではなく、卒業する3年生と後輩たちが組手試合をするのである。
1人の3年生に対し5人の後輩たちが1分間の1ポイント先取り試合を行い、3年生が思いを託す、後輩たちがその思いを受け継ぐみたいな志向である。
優梨もこの送る会に参加していた。
順番に3年生と5人の後輩たちの試合が進んで行く。
優梨の順番がくる。
優梨の相手は茶帯の2年生が2人、1年生が2人、黒帯の2年生が1人だった。
茶帯の1年生の1人目が前に立つ。
はじめ!の声ともに大声を出しながら左拳を突きだし規則正しくステップを踏んでいる。
優梨は右足を一足だけ前に出し、両腕を体側に自然体で向き合う。
声は出さない、と言うよりは無理に大声を出すことは自分の動きに起こりを生み、居着きを生むのである。
気合い。とは大声では無く丹田より身体の練りにより発せられる気魄の功である。
それは龍水流柔術拳法の基本のひとつである。
無防備にしか見えない優梨の構えに茶帯の1年生が戸惑い大声を出し続けている。
端からも優梨の姿は無防備にしか見えていないので茶帯の1年生に向けて激が飛ぶ。
その激に反応して茶帯の1年生が左右の突きを連打し飛び込んでいく。
優梨の右足が反応し前蹴りが伸び水月に突き刺さった。
2人目の茶帯の1年生も同じように大声と共に飛び込んいき、優梨の左上段回し蹴りが顔面にヒットした。
茶帯の2年生2人も同じように大声と共に飛び込み、一撃で勝負がつく。
残った黒帯の2年生が優梨の前に立ち睨み付けてくる。
優梨は小首を傾げ不敵に微笑み返す。
ちょっと試してみようか?
入り身を…
優梨の頭に梨七の父であり龍水流の責任者の言葉が過る。
『己の誇示の為に技を無闇に使ってはいけない』
それでもと、優梨は心の中で謝りの言葉を出す。
『ごめんなさい、一瞬だけです』
右足を一足だけ前に出し、僅かに顔面に隙を作り待つ。
案の定、黒帯の2年生はバカデカイ声と共に左前拳の飛び込み突きで顔面に向かってきた。
優梨は僅かに左斜め前に体を捻り右肩から相手の懐に入り身し、飛び込み突きを交わし、右足を大きく一歩踏み込む、相手の脇腹と自分の脇腹が触れ合う、空かさず上半身を跳ね上げた体を起こした。
入り身投げ!
瞬間、相手の体が横に飛び宙で一回転し足元、床に叩きつけられた。
床に叩きつけられ仰向けに倒れた顔面に…
人差し指と中指を立て目を抉る…とイメージし正拳を落とし紙一重で止めた。
☆
優梨は、少しずつ、一つずつ、糸を紡ぐ様に確実に努力する。
退屈と、虚しさと、寂しさから脱け出すために。
終り。