いじめや恐怖から『今を生きる意味』を見つけられない少女、志乃(しの)。
そんな彼女が見つけた、『今を生きる意味』とは…
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目次
第1話
「…ねぇ、私も一緒にやってもいいかな…?」
「ねーみんな!あっちいこー!」
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「石原さん。私の話、聞いていますか?」
「…は…はい…」
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私は、石原志乃。中学生の時にいじめに遭って、今は通信制の高校に通ってる。
なぜ、私が今ここにいるのか分からない。何にも夢中になれることもないのに、なんで生きているんだろう。おかしいよね。
「石原さん」
…先生か。先生に対しても恐怖を抱いてる。いじめられてた時の担任も最悪だったから。
「…な、なんですか…?」
「今回のテストの成績、とてもよかったですよ。この調子で頑張ってくださいね」
「…あ、あ、ありがとうございま、ます…」
この先生はとっても優しくて、いい先生だ。なのに…どもったり、恐怖心を抱く自分が嫌いだ。
今日は早く帰ろう。何もかも忘れたい。
『ドン!!!』
あぁ…やっちゃった…前向いてなかった私が悪いけど、私、どうなっちゃうんだろ…
「…す、すみません…」
「全然大丈夫ですよ」
私がぶつかった男の人は私が落としてしまったカバンの中身を拾っていた。
「…すみません…私のせいで…私も拾います!」
私はその人のものを一生懸命拾った。この人が持っていたのは水彩絵の具だった。
「…水彩絵の具…?」
懐かしさに釣られて声を出してしまった。そういえば、小学生の時に図工でやったっけな…
「…僕は画家をしてるんです。よかったらアトリエに来ますか?」
えーっとなんか急展開…まぁやることないし行くか。
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「ここです」
「…すごい…!」
私は思わず感嘆の声をもらした。アトリエはたっくさんの画材に囲まれて、作品がいっぱいあった。
「そういえば、申し遅れました。僕の名前は|東山奏太《ひがしやまそうた》と言います」
「東山さん…本当にすごいです!水彩絵の具だけでこんなに景色を表現できるなんて…あと…なんで私をここに案内してくださったのですか…」
「…あなたが『何か夢中になれるもの』を探している目をしてたからですよ。あなたも僕みたいに水彩画、描いてみたらどうですか?」
水彩画…やってみようかな。
「…やってみようと思います」
周囲にとっては小さな一歩だけど、私にとっては大きな一歩なのかな。
第2話
早速、私は東山さんに弟子入りした。これからは『師匠』って呼ばなくっちゃね!
「何描こうかな…」
「じゃあさ、手始めに花なんてどうです?それなら頭空っぽの僕が始めた時でも綺麗に描けたから」
花か…昔、母さんと一緒に生け花教室に通ってたっけ。
あと師匠今自分のこと頭空っぽって言った?なんかこれだけで複雑な境遇に身を置いてたことは分かる気がする。同じ匂いがするから。
「それにします!」
「OK!そこにガーベラあるでしょう?あれ見て鉛筆で薄く書いてみて?」
「分かりました」
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「ふぅ…できました…」
「すっごい上手!僕が初めて描いた時より上手だね…そういえば名前は?」
あっ!名前言うの忘れてた!
「石原志乃です」
「可愛い名前…石原さんは昔絵描いてたりとかしてたんですか?」
そりゃあ学校の図工とかでは描いてたけど…特に描いてなかったかも。
「描いてないですよ?…次は何をすればいいんですか?」
「次は下塗り。何色で塗りたい?」
「ピンクとか…」
「じゃあ極限まで水で薄くしてください」
極限まで!?確かに…『水』彩っていうもんね。
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「乾いたら影をつけようか。明日にしよう?」
「そうします」
宿題もあるしね…今日は幸い少ないけど。最後にどうしても聞きたいことがある。
「…師匠はなんで水彩画始めたんですか?」
「''先輩''に教えてもらったんだ」
先輩?きっと師匠と関わりの深い人なんだろうな…
第3話
Q.今なんの曲を聞いているでしょう?
今日は楽しかったなぁ〜いつもと違う経験ができた。夢中になれるといいんだけど。
「中村かや美術作品展示会…」
目に飛び込んできたのは看板だった。中をのぞいてみよう。
「…水彩画だ!」
中村かやって人も師匠と同じで画家なのかな…ようし見てみよう。
「すごい…」
私は生唾を思わず飲んでしまった。この人が描いたどの絵からも『まるで景色がそこにあるかのよう』に感じられる。
「私の作品を褒めてくれてありがとう。私が中村かやよ」
「えっ…?」
なんで本人いるん?最近急展開なこと多くない?私にもいろんな意味で運が回ってきたのかな?
「中村かやさんご本人なんですか!?本当にすごいです…どの絵からも景色が私の目の前にあるように感じられて…」
「ありがとう。私、昔から水彩画が好きだったんだ。あなたも水彩画好きなの?」
「今日、少し描いてみたんです。そしたらすっごく楽しくて!」
「水彩画に興味を持ってくれたのなら嬉しいわ。よかったら、私ね、今度美術館のイベントで水彩画教室やるんだ。来てくれないかしら?」
「本当にいいんですか!?母さん説得したら絶対に行きます!」
中村さんにチラシをもらった。今度お母さんに絶対に許可とる!
「来てくれる嬉しいわ。またね」
そう言って中村さんは帰って行った。すごいなぁ…水彩画も上手い上に美人でスタイルもいいなんて…
私も中村さんみたいにうまくなりたい!
A.正解はAAAの『恋音と雨空』でした!正解した人はかなりの天才。
第4話
ネタがな〜い!!!
「師匠!今日もやりましょう!」
「よし!じゃあやろうか」
まだ初めて2日目だけど水彩画ってすっごい楽しい!中村さんの影響もあるかもだけど。
「さぁ、今日は影を入れよう!」
影?絵に影を入れるなんて初めてかも…今まで絵描いてた時は鉛筆で描いて、色塗ってはい終了だもの。
「この色から一段階暗い色を作って?」
「わ、わかりました!」
暗い色…この上から重ね塗りするのかな?
---
「これでいいんですか?」
「うん。これでいいよ。じゃあ重ね塗りして。そのあとは花びらの筋、アクセントとか入れてね?また後で詳しく言うけど」
「はい!」
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「できた!」
自分の中では上手く描けたと思う。水彩画描いたことないから分からんけど。
「わー!すごい!キレイ…僕が初めて描いた時よりすっごい上手だよ!まぁ僕はもともと才能なんてないから…」
師匠暗いなぁ…師匠の方がすごいのになんでそうやって自分を卑下するんだろ…あっ、人のこと言えないわ。
「これ持ち帰る?」
「いや…持ち帰れないからここに置いといてもいいですか?」
「うん、いいよ。じゃあ、また明日」
明日はいろいろあるから行けないんだけど…
「ごめんなさい!明日は用事があって…」
「そっか。じゃあね」
「師匠!今日もありがとう!」
小説だとと志乃の絵のよさが伝わらないから悲しい…
第5話
更新遅れてすみません。
私、石原志乃はついに!母さんに許可を得ることができました!事前予約制で予約が多かったら抽選だったんだけど抽選なしで行けたよ!
なんの許可かというと、中村かやさんの水彩画教室!今向かってる途中なの。楽しみぃ〜♪
「…失礼します…」
見知らぬ人がいるのって怖いなぁ…意外と大人多い…嫌だな…
「あっ。貴女は…こないだの…!」
「…あっ!中村さん!石原志乃と言います!」
「来てくれてありがとう!志乃ちゃんって言うんだね。可愛い名前」
えっ?名前褒められたの初めてなんだけど…
「ではみなさん、水彩画教室にようこそ。私が講師の中村かやです。早速始めましょう!」
「「「はい!!!」」」
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決めた!私はりんごにする!
「みなさん。テーマは決まりましたか?では、下書きをしましょう」
と、ここまではいいかもしれないが…全く何にも分からないよぉ…中村さんか師匠!教えてぇ〜!!
でもこんなすぐに誰かに助けを求めてらダメだ!頑張るぞ!
---
(3時間後…)
「できた…」
「わー!お姉ちゃんすごーい!」
隣の女の子が喋りかけてきた。あんまりお喋りかけてこないで欲しいんだけど…
「…あ、ありがとう…」
「志乃ちゃん…すごい!きっとプロになれるよ!」
「ありがとうございます中村さん…」
私がプロか…本当かね。
第6話
今日はいつもより長く感じられる。
「志乃、どうした?体調悪いん?」
「いや?体調は悪くないけど…」
彼女は友達の三川咲希。いろいろ私のこと気にかけてくれるけど、気にかけてくれすぎてちょっとうざい。
今日は苦手な授業ばかりだからかな。
「今、ちょっと1人にして」
「はいはい。ちゃんとなんかあったら呼んでね?」
はぁ…早くアトリエに行きたいなぁ…
「きゃはははははは!!!!!」
「志乃!だから何があったのさ」
「石原さん。大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です」
やっぱ私が急に笑いだすと変な人に見られるようだ。
早く…今日も学校終わってくれないかなぁ…
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「石原さん!いらっしゃい!今日もやろうか!」
私は、なぜか分からないけど妙に胸が熱くなった。なんでだろ。
私が、この胸の熱さの正体を知るのはもう少し先になりそうな予感だ。
第7話
あれから私は師匠がそばにいるとすごいドキドキするようになってしまった。なんで?
こんなこと、今までになかったのに…
「どうしたの?」
「あっ、いやなんでもないです…」
師匠に心配かけさせてる私がほんっとに大嫌い。あっ、そもそもしてないか。
声かけただけなんでしょう。
---
「できた…!」
「できたのはいいけど…」
えっ?なに?まさか私の性格がクソすぎて呆れられた?
「もしかして私に呆れましたか!?もしもそうならこんな価値のない女などさっさとお捨てください!」
「違う!」
師匠はいつものニコニコした表情とは違って、鬼のような形相で怒鳴った。あぁ…私はどこまでクズなんだろ…
「…す、すみません…」
私が悪いのに、そう分かってるのに。やっぱり師匠に怒鳴られたショックで涙が出てくる。
分かってても、悲しいことなんてあるんだ。
「…ご、ごめん!そんなつもりじゃなくって…僕がバカなせいでっ…!」
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「落ち着いた?」
「…は、はい…」
「僕が言いたかったこと言うね。…最近、石原さんのことが心配でさ。顔も真っ赤で熱がありそうだし、呼吸も荒いし、胸押さえてるし…大丈夫?」
…師匠ってこんなに私のこと思ってくださってたの…!?
「…大丈夫ですっ…そこまでのことではないですから…」
「本当に?」
「はい」
「それならよかったけど…じゃ、また明日」
「はい!さよなら」
ダメだ。師匠のあの顔が目に焼き付いて離れない。
私には一体何が起きてるの…?
第8話
師匠こと奏太視点です!
なんで…いっつも…!僕は誰かを怒らせたり、泣かせたり、困らせたりする。
やっぱりあの女の言っていたことは正しかったんだ。
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「おい!片付けしてって言ったでしょうが!」
「ごめんなさい!すぐやります…!」
「こっち来い!」
「いたい!!!!」
「うるさい!やらなかったお前が悪いんだろうが!…こんな出来損ないなやつなんて生まなきゃよかった…!!!」
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はぁ…あの女のことを思い出しちゃった…ここ最近は思い出してなかったのにッ…!
「先輩…あなたは僕が謝ったらまたあの時みたいに笑って許してくれる…?」
もう嫌だ…!何もかも思い出したくない…!
…そうだ…僕が悪いんだ。あのビル15階から落下でもしようか。
「…いや…」
僕がいなくなったらあの子はどうなるんだろう。僕が教えたら砂に水が染み込むように覚えてしまうあの子のこと。
僕はそんなあの子のことを途中で投げ出していいの?
そう考えたら僕は、まだあの世に行けないな。
第9話
前回から更新がヤバいことになってますね…
あれから、あまり水彩画を描いていない。
よく通ってたけど、師匠の体調が良くないことが多くて。
だから、一旦通うのをやめた。
でも、師匠は私の家も連絡先もなんにも知らないもんなぁ…
久しぶりに行ってみようかな。
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私は恐る恐る、ドアを開けてみた。
「…やぁ、石原さん。久しぶり」
師匠は、最後にあった時より、もっとか細くなっていた気がした。
「師匠…大丈夫ですか?」
「…あ、うん…今日はね、調子がいいんだ…」
ほんとかね。まぁでも師匠の体は一番師匠が分かってるよなぁ…
「じゃあ、早速…」
『バタリ』
「師匠!?大丈夫ですか!?」
師匠が倒れた!?どうしよ…まず救急車呼ばなくっちゃ…
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師匠は目を覚ました。
「師匠、大丈夫ですか?」
「ああ…」
医者によると栄養失調とうつ病の可能性があるって。うつだったら確かに食欲も無くなるのは分かるけど…
「君には迷惑をかけたね…もう大丈夫だから、帰っていいよ…」
ほんとか?さっきほんとかねって思った瞬間にぶっ倒れたし。
「…分かりました。じゃあ連絡先交換してください」
「えっ?」
「それなら、師匠に何があっても連絡とることができますから」
「…そうだね…」
私は連絡先を交換すると、病院をあとにした。