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空の上の約束「夏の始まり」
もうすぐ夏休み。そんなときに樹葉の前に現れた、赤い帽子に白いワンピースの少女。その少女から四葉のクローバーを受け取った樹葉は…?
あーもう夏だなぁ。
そんなことを考えながら、樹葉は登校していた。ぼーっとしていたら、10mくらい先に赤い帽子に白いワンピースの少女がいた。通り過ぎる人に四葉のクローバーを渡そうとしているが、誰も受け取ろうとはしなかった。どこかかわいそうだ。歩いていくうちに、だんだんその少女との距離が縮まっていく。
「クローバー、四葉のクローバー…、どうですか。」
樹葉は受け取った。するとその少女は朗らかに笑って、呟くように聞いた。
「6年生?」
樹葉は、そうだよ、と言った。少女は、
「私も。」
と言って、キリッとした目で樹葉を見つめて、
「毎日ここにきて。もう少し早くこれば学校にも間に合う。」
と言って、去っていった。
これが、樹葉の夏の始まりだった。
そして毎日、樹葉は少女に会いに行くのだった。そして、お互い話していた。
少女は毎日、赤い帽子に白いワンピースだった。樹葉は、疑問に思った。同じ小6だというのに、学校は行かないのだろうか。この格好で行くのか。
でも、樹葉は聞いてはいけないようなことの気がした。
するとその日、少女から言った。
「ねぇ、樹葉。私が学校どうしてるか気になるんでしょ。」
と。樹葉は戸惑いつつも頷いた。
沈黙が続いた。
「…私、学校行けないの。」
え、なんで。樹葉は思ったが、また聞くのはやめおいた。
「理由は…言えない。言ったらきっと気まずくなっちゃう。」
少女は言った。
翌日。樹葉は、少女の名前を聞いていなかったな、と我に返った。やはり少女は樹葉が思っていることがわかるのか、
「そうそう、名前言ってなかったね。私は、娌実。りみだよ。」
と言ってくれた。一体りみは何者なんだろう。
「正体は知らない方がいいわ。じゃあね、いってらっしゃい。」
樹葉は学校へ行った。授業中も、休み時間も、給食の時間でさえも、りみのことを考えていた。夏休みも…りみに会えるかな。
いつのまにか樹葉は、りみに会って話すことが日課となり、1日の楽しみとなっていた。
その日の4時ごろ、いつもりみがいる場所に行くと、四葉のクローバーのキーホルダーが置いてあった。りみの姿は無い。樹葉は触れないでおいた。りみのものだろう、とは思った。
ある日、樹葉はいつもは会わない土曜日にりみがいる場所へ行ってみた。りみの姿はない。あるのはキーホルダーだけだった。樹葉は夏休みに会えない気がしてきた。もう今の樹葉はりみに会うのが楽しみだったから、怖かった。
次の月曜日、樹葉はいつもより30分も早く家を出て、駆け足でりみのところへと向かった。
「おはよう。きょうは早いね。」
りみはそう言った。こんな時間からいるんだ、と樹葉は思った。
「今きたところ。」
やはり思っていることがわかるらしい。樹葉は、ある異変に気がついた。キーホルダーがないではないか。それについては、りみは口出ししなかった。
「夏休みも…あえる?」
樹葉は思い切って聞いてみた。
「うん。会えるよ。この時間ね。」
普通な返事だった。するといきなり表情が曇った。
「でも、2学期…秋からは水曜日しか会えない。理由は聞かないで」
そう言った。
学校からの帰り道。樹葉の脳内にはずっとりみがいる。りみのことばかり考えてしまう。なんで水曜日なんだろう?夏休みは会えるのに…?嫌だなぁ、週に一回だけなんて、と思っていた。
いつもの場所には、やっぱりキーホルダーがある。きっとりみと関係があるのだろう。
ーー次回、「夏休みの風」へ続く