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空の上の約束「夏休みの風」
ふぅ、今日から夏休み。もちろんりみに会いに行くもんね。樹葉の脳内にはいつだってりみがいた。
夏休み初日。宿題を持って、りみのところへ。
「おはよう。今日から夏休みなんだね。それは?宿題持ってきたの?」
樹葉もおはよう、とかえし、頷いた。
なんで二学期からは水曜日しか会えないの?
思い切って樹葉は聞いてみた。でもりみは答えない。表情が曇る。
「………。ずっとここにいるわけにはいかない。私も小学生だよ?」
どこか冷たい。やっぱり聞かなければよかった、と樹葉は思った。
生ぬるい風が吹く。強い風。明日は台風が来るとの予報だった。空が曇る。りみの表情のように。天気までもを操れるのか。
「そんなわけないじゃない。私は小学生だって言ってるじゃん。」
冷たさは去った。だが、まだ怒っているようだ。
「また、明日。台風が来るから樹葉も来るよね。大丈夫、ここら辺は台風の影響ほぼないから。」
いったいりみは何者なんだろう。樹葉は、手を振ってその場をさった。
家に帰り、宿題をしようと冊子を開くと、あれれれれ!?もう全て終わっているのじゃないか!樹葉は驚いた。やっぱりりみはただ者ではない。普通の同い年じゃない。
その日の午後。樹葉の通う塾では、模試の返却が行われていた。樹葉の結果は、国算理社英(高校受験用塾)合計、500点満点中412点だった。偏差値も48と、あまり納得のできない結果だった。親友の桜乃は、樹葉と同じ時に初めて、その時は二人とも偏差値は52で、良きライバルだったのに、今はもう桜乃は塾のトップ3だ。
樹葉は、今までで一番落ち込んだ。家に帰った瞬間、親に、
「結果見せなさい。」
と言われて、樹葉は恐る恐る結果の紙を差し出した。いつもは440点以上はあるのに。
「あーらまぁ…、偏差値が50を下回るなんて…あんた大丈夫なの?中学生になったら…心配だわ。次こんなことがあったら承知しないからね!」
樹葉は部屋に入った。私だって…本気出して模試に挑んでるのに…。そう思うが、もう終わったことだ。
ビービービービー♪
桜乃から電話だ。
「もしもし?きはちゃん?模試の結果やばかったんだよね…トップ4に落ちちゃった…」
「えーーー!いいじゃんランキング一桁なんて…私偏差値48だよ?」
樹葉は落ち込んでるのを隠して、桜乃のテンションに合わせた。桜乃も落ち込んでいるようだが…いつもはものすごい明るくて元気な女子だ。
「きはちゃんは伸び代あっていいね。私はこれ以上は伸びないかも。」
「えーそんなことないよぉ、桜乃はいつも頑張ってるんだし…私は最近宿題しかしてないもん…」
「あーやばやばお母さんに怒られる。一旦切るねー、バイバーイ。」
「バイバイー」
切れた。宿題しかしてないのにも、理由がある。そう、りみだ。りみが頭から離れることなんてない。夢にも出てくるし。
翌日…塾の模試で落ち込んだ樹葉は、りみに会いに行った。
「おはよう。台風は来なかったね。どうしたの?あ、塾の模試?!」
樹葉は頷いた。
「夏休み頑張れば大丈夫だって!」
りみは明るい考えの持ち主だ。樹葉にとってはかけがえのない存在であった。
それからも毎日樹葉はりみに会いに行った。夏休みの終わりが近づく。そう、りみに会いにくくなるのだ。そして、いよいよ夏休み最終日。夏休み最終日は、水曜日だった。
「おはよう。今日で毎日会えるのは最後だね…でも私は樹葉のそばにずーっといるからね。安心して、2学期も頑張って、楽しんできて!」
そう言ったりみの目には、涙が浮かんでいた。樹葉は感動しつつも、ずっとそばにいる?何者なんだろう。という疑問も頭から離れなかった。
「私の正体はね、いつかは話す。いつかわかるよ。でも今はまだ言えない。ごめんね。」
そこから数分はいつもと変わらない会話をして、最後に樹葉はお礼を言った。今までありがとう、これからもよろしく、と伝えた。りみはにっこり今まで1で番の笑顔を見せて、
「こちらこそありがとう。」
と言った。樹葉は、ゆっくりと家に帰った。
夏休みが終わった。始業式の朝、学校へ向かう。りみはいない。キーホルダーもない。どういうころだろう。
次回、「秋晴れの水曜日」へ続く