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空の上の約束「秋晴れの水曜日」
2学期が始まって1週間。樹葉にとっての最高の楽しみである水曜日がやってきた。りみに会える日である。でもその日は大雨だった。横断歩道を渡っていると赤い帽子に白いワンピースの少女、りみが座っているのが見えた。りみは傘をさしていなく、ずぶ濡れだった。樹葉はすぐに駆け寄って、抱きしめた。
「こんなところで、、、風邪ひくよ。」
りみはずぶ濡れなのにもかかわらず、樹葉に会えたことを喜んでいた。
「ありがとう。でも、もし私の正体がわかっても、もうこんな抱きしめるなんてことしないでね。」
一体りみは何を考えているのだ。そして、そんなこと忘れたかのように、
「2学期最初の模試どうだった?偏差値、58だったんでしょ?」
樹葉はうなずいた。
「樹葉が嬉しそうで何より。来てくれてありがと。」
樹葉は迷わず傘を差しだした。このまま濡れたままでは寒そうである。
「いいの?ありがとう。また来週かえすね、ばいばい。」
樹葉はりみと別れた。
正体がわかっても抱きしめないで、?どういうことだろうか。傘も持ってないだなんて、かわいそう。
家に帰る。お母さんが、写真の整理をしていた。2人の女の子が写った写真が目に入った。1歳に満たないくらいの。
「これ、私と誰?」
樹葉はきいた。親友の桜乃だろうか。でもこんな早くから仲が良かったのだろうか。お母さんは少し暗い表情で、
「また今度言ってあげる。まだこれは0歳のときよ。かわいいわね、」
え、誰なんだろう。私は一人っ子だし、幼馴染は男子ばっかりだし、いとこも同い年の子はいない。それに、ほかの写真にも2人の女の子が写っている。でも、私が3歳くらいの写真になると、私1人か、知っている友達との写真だ。
今、樹葉の脳内には、写真の女の子とりみのことしかなかった。
次の日も、その次の日も。水曜日以外はりみがいない。寂しかった。正体もわからぬ、不思議な女の子、りみ。会ってからずっとりみはかけがえのない存在となっていた。その理由ですら樹葉はわからないのだった。
水曜日。秋晴れに紅葉。きれいな街並みの中、樹葉は登校、いやりみに会いに歩いていた。
「きれいな秋晴れね。初めて近くで見た。」
初めて?12年も生きているのに。樹葉は不思議に思ったが、聞かないで置いた。
「詳しいことは聞かないでね。そろそろ正体分かった、かな。」
樹葉は首を横に振った。
「ならいいわ。後ほどわかる。わかったら私を叱り飛ばしてね。」
さすがにこの言葉に樹葉は大きく反応して、
「なんでよ。りみはなにもしてないよ。」
りみは今にも泣きだしそうだった。何か心に引っかかる。でも正体はわからない。もう目には涙が浮かんでいる。りみは、
「ほら、遅刻するよ。いってらっしゃい。」
と無理やり笑顔を作って樹葉を見送った。樹葉も笑顔を作って、
「いってきます。」
と言った。
秋晴れの空。二人はぎこちない笑顔で、一旦別れた。りみの正体に近づけたような感じがした、樹葉だった。
3話、見てくれてありがとー!学校で書きましたぁ~
4話、「雪だるまとクローバー」も忘れずに見てねー!
よ ろ し く