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バゥムクゥヘン・エンドロゥル 第三話
「光野さんってね……実は、闇宮さんのこと『哀れな子』って言ってたんだよ」
夕暮れ時の通学路。柊蛇惡は、いかにも胸を痛めているといった様子で、偽りのため息を吐き出した。サイドポニーテールの蛇の髪飾りが、夕日に照らされて妖しく光る。
「……は?」
闇宮光は、足を止めて蛇惡を睨みつけた。黒髪ショートの隙間から覗く目は、驚きと怒りで激しく揺れている。頭のハサミ型のリボンが、まるで威嚇するように鋭く尖った。
「嘘……だろ。あいつが、そんなこと」
「嘘なんかじゃないよ。ほら、これを見て?」
蛇惡はスマートフォンを光の目の前に差し出した。画面に表示されているのは、羽香が他のクラスメイトと交わしているSNSのチャットログ――蛇惡がハッキングで盗み出し、さらに都合よく偽造した「偽の会話」だ。
そこには、『光ちゃんっていつも一人でかわいそうだから、私が構ってあげてるんだよね』という、羽香の冷酷な言葉が並んでいた。
「光野さん、みんなの前では優しくて『上の空』なフリをしてるけど、本当は他人を下に見て安心したいだけなんだよ。私は、闇宮さんが利用されてるのが耐えられなくて……」
蛇惡は俯き、おとなしくて優しいクラスメイトの化けの皮を完璧に被り直した。その口元が、光から見えない角度で、歪んだ喜びに吊り上がっていることなど知る由もない。
人の不幸は蜜の味。光の表情が絶望に染まっていくのを見るだけで、蛇惡の胸はゾクゾクするような快感で満たされていた。
「あいつ……っ!」
光は拳を強く握りしめた。
元々やさぐれていた光の心に、蛇惡の毒が深く、確実に侵食していく。誰にも心を開かなかった自分が、唯一、羽香の向けてくる眩しい笑顔にだけは救われかけていたのだ。それがすべて「哀れみ」だったと知り、光の心は完全に崩壊した。
翌日の昼休み。
教室の空気は、いつもと完全に違っていた。
「ひーかるちゃん! 今日もバームクーヘン持って――」
地面から五ミリメートル浮きながら、いつものようにツインテールを揺らしてやってきた光野羽香。だが、その言葉は最後まで続かなかった。
「……二度と、私に近づくな。偽善者が」
光は立ち上がり、今までで一番冷酷な、獣のような目で羽香を睨みつけた。
いつも光にどれだけ冷たくされても笑顔を崩さず、一度も睨み返したことのなかった羽香が、その時初めて、顔から完全に表情を消した。
(第三話・終)
いぇぇぇい!第三話まで行ったでーーー!
続きの四話、お楽しみにぃぃぃ‼