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バゥムクゥヘン・エンドロゥル 第五話
あの決定的な決裂から、数日が経った。
光は、完全に心を閉ざしていた。黒髪ショートの隙間から覗く目はかつてないほどやさぐれ、目の下のクマはさらに黒ずんでいる。頭のハサミ型のリボンも、重く垂れ下がったままだ。
羽香が来なくなった机の横は、ぽっかりと穴が空いたように寂しい。だが、光はその寂しさを「憎しみ」という偽りの感情で塗りつぶそうとしていた。
(……これでいいんだ。最初から私は一人だった。あいつの偽物の優しさに、騙されかけてただけだ)
一方、クラスの人気者だった羽香の様子も、明らかに異様だった。
いつも通りツインテールを揺らし、地面から五ミリメートル浮いたままクラスメイトと談笑している。しかし、その笑顔はどこかプラスチックのように無機質で、完全に「上の空」だった。
羽香はあれ以来、一度も光の方を見ようとしない。まるで、そこに光という人間が最初から存在していないかのように。
二人の決定的なディスコミュニケーションを、教室の一番後ろの隅から、柊蛇惡はうっとりと眺めていた。
(あはは、いいよいいよぉ。光ちゃんは孤独の殻に閉じこもって、羽香ちゃんは心を無くした操り人形みたい。私の作ったシナリオ、完璧すぎじゃない?)
サイドポニーテールの蛇の髪飾りを指先で愛おしそうに弾きながら、蛇惡は卓上のノートPCを高速でタイピングしていた。
人の不幸は蜜の味。だが、蛇惡の乾いた欲望は、この程度ではもう満たされなくなっていた。もっと壊したい。もっと深く、この甘い破滅の層を重ねていきたい。
(ねえ、光ちゃん。まだ足りないでしょ? もっとあの子を憎みたいよねぇ……?)
放課後。蛇惡は再び、一人で帰ろうとする光の前に音もなく現れた。
「闇宮さん……あのね、またちょっと、言いにくいことなんだけど……」
蛇惡は「優しいクラスメイト」の化けの皮を被り、悲しそうに眉をひそめてスマートフォンを差し出した。
そこには、羽香が別の友人宛てに『光ちゃん、最近ストーカーみたいで本当に気味が悪いんだよね。早く転校してくれないかな』と送信している「偽造された」画面が映し出されていた。
「光野さん、裏では他の子たちに闇宮さんの悪口を言いふらして、クラスから孤立させようとしてるみたいで……」
「……っ、あいつ……!!」
光の口から、獣のような、あるいは錆びたハサミが軋むような悲鳴が漏れた。
裏切られた怒りと、大切なものを完全に失った絶望。蛇惡の流し込んだ猛毒が、光の精神を粉々に噛み砕いていく。
その様子を至近距離で見つめる蛇惡の瞳の奥で、邪悪な蛇が、獲物を仕留めた歓喜に狂ったようにとぐろを巻いていた。
(第五話 END)
いえぃ。五話突入ぅ。見っててくれると嬉しぃ。