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バゥムクゥヘン・エンドロゥル 第八話
床に倒れたままの柊蛇惡は、引きつった笑みを浮かべて誤魔化そうとした。
しかし、光の手首を掴んだままの光野羽香は、眉ひとつ動かさない。
「白々しいよ、柊さん。光ちゃんが持っていたハサミの角度、あなたの手の動き……あなたがわざと自分を傷つけて、光ちゃんを『犯人』に仕立て上げたのは明白だよ」
羽香の言葉は、恐ろしいほど冷静で、|理路整然《りろせいぜん》としていた。
地面から五ミリメートル浮いた彼女の周囲だけ、空気が凍りついたかのように冷たい。ツインテールの羽の髪飾りは、完全に漆黒に染まりきっていた。
「な、何言ってるのよ! 私の顔を見てよ、血が出てるのよ!?」
「`静かにして`」
羽香の一喝に、蛇惡は息を呑んだ。
いつも「上の空」で何を考えているか分からなかったはずの羽香から放たれる、圧倒的な威圧感。それは、蛇惡が今まで玩具にしてきた「人間の感情」とは一線を画す、絶対的な拒絶だった。
「……光野、お前……」
手首を掴まれたままの光が、呆然と羽香を見つめる。
羽香は光の手からハサミを静かに抜き取ると、それを床にパサリと落とした。
「光ちゃん、あなたは騙されていたんだよ。この人が裏で、私たちが憎み合うように仕向けていた。……だけど」
羽香は光の目をまっすぐに見つめた。そこには、かつての温かい「友達」の羽香はもういない。
「……ハサミを人に向けるなんて、やっぱり光ちゃんも壊れちゃったんだね。悲しいな」
「あ……」
救われたと思った瞬間、光の心は再び突き落とされる。
羽香は蛇惡の罪を暴いたが、それは光を許したわけではなかった。
完全に心を閉ざし、冷徹な「裁判官」となった羽香は、哀れみの目で二人を見下ろしている。
「……もう、誰も信じられない」
光は羽香の手を振り払い、教室のベランダへと走り出した。
第八話 END
八話来たよ~。見っててくれるとうれちーなー。