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第11話 これはただのコメディです
何気のない、普通の城での一日のはずだった。
ハイビスカスが外出してから1時間ほど経過。
睦月(弟)が出勤していることもあって、バカ2人のいない家の空気は静寂に包まれていた。
……あぁ、俺は…まあ、今日は休みらしい。日曜日…だからか?
そこまで仕事も溜まっていない故に、休むことにした。
その時、安定した静寂が突如として終わらされた。電話の音が反響して、城全体に鳴り響く。
「こーくん…でんわー」
「…お前がとれよ…」
「んー…いまいそがしー……」
「………」
そう、今俺らは………
……貴重な自由時間を満喫していたのだった。
電話をとる気には到底なれない。それは、清羅___同居人も同じだろう。
……しかし妙だ。いつまで経っても、電話の鳴り止む気配が無い。
「………まさかな」
重い腰を上げ、音源へと向かい、受話器を取った。非通知だった。
「…もしもし」
『私………メリーさん……』
背筋が一瞬凍る。しかし、一瞬で冷たい空気は元へ戻った。
「メリー………お前、どうした?今から補習でもするか?先生は空いているが」
『せんせーがメリーのこといじめるーー!!ひーどーいー!うわぁぁん!!』
「こんな休日に電話をかけてくるバカが悪いんだろ……。てか、どうやってここにかけてきた」
『はぁー?メリーはメリーさんだからー、電話ぐらい誰だってかけれるしー』
「敬語使え。………で、要件は?」
『………』
「…無いのか?切るぞ」
『ま、待ってっ、今考える……考えますのd』
無言で電話を切る。
「はぁ………」
たまにこういう厄介な生徒が電話をかけてくる。正直、うざい。
だが。
切ったはずの電話が、間髪入れず再びコールをし始めた。
「あいつ……」
ひったくるように受話器を取る。今度は、電話番号が書いてあった。
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「…ハイビスカスが万引きをした?」
『いえ、そういうのでは………。あー……うちの店ってセルフレジを導入してるんですけど、お宅のお嬢さんが商品を一つ…………どうやらバーコード読み取れなくてなかったみたいで、出入り口で引っかかっちゃったんですよねー…』
「あー……」
……あいつならやりかねないな。
「……しかし、なぜ俺に電話を」
『その件なんですけど………』
『お宅のお嬢さんが、店の奥に行くときに足をひねっちゃって』
「………は?」
『やっぱそうなりますよね……。で、歩けないらしく、迎えが欲しいって』
……迎えと言っても、別に車に乗せて帰るわけじゃないのだが………。
……待て。いや、決定的な問題がある。
「……わかりました。すぐに向かいます」
受話器を置いて、一呼吸置く。
そして、ありったけの声で。
「えー……集合ー」
…集合と言っても、来るのは家に今残っている清羅だけなのだが。
ゆっくりと同居人がこちらへ向かってくる。楽しみを邪魔されて悲しいと、顔に書いていた。
ため息をつきながら、俺は先ほど電話で話されたことを全て話した。
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「つまり………おむかえにいけばいいの?」
「あぁ、そうだ、迎える、それだけでいいのだが…」
「……行っても色々と問題ない人は手を上げろ」
「…………あっ…」
そう、俺は長年人間界で指名手配中。そして清羅は、年齢こそ迎えに行っても悪くないが、見た目が完全に小学生以下。小学生が大人を迎えに行ったら流石に酷い目で見られるだろう。
「……どーしよー……」
「…まぁ、今はどうにかして、帰ったらあのバカを思いっきり殴ろう」
「………」
「………」
さて、どうしたものか。
「………あっ」
「…どうした?」
「らいにきいたら…?おむかえ、よろしくおねがいしますって」
「電話番号も知らないってのに、どうやってあいつと連絡をとれ………」
そう思った刹那、ふと一つのことに思い当たる。
………俺は、あの店員と話す前、誰と電話をしていた?
ふと立ち上がり、俺は電話番号を打った。
学校に、電話がかけられる。鈴野(同僚)が電話に応じた。好都合だ。
鈴野は、二つ返事でメリーの電話番号を教えてくれた。
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「……なぁ…」
「…どうした」
「どうしたはこっちのセリフだよ!!なんでこの僕がこいつの迎えなんかに行かなきゃなんないんだよ!!マジで、っざけんなよ!!!」
目の前に座っている勇者(らしい)やつは、大層不服そうな顔をしていた。当然といえば当然だ。普段狩るべき相手__魔王の迎えなどを頼まれるとは、たまったものじゃない。
「……すまんが、俺らには無理な仕事でな」
「たかが迎えで?」
「………」
まあ、そうなるか。第一、俺が指名手配されていることも知ら…………
いや、知っているか。風の噂で聞くぐらい俺の名前は有名になっているからな……。非常に解せない。
「第一、セルフレジミスるとかお前は小学生かよ!??このバカが!!」
「それに関しては俺も激しく同感」
「…あんたもつくづくバカだけどね」
自称勇者の隣に座っている……ヒーラーの、朱莉とか言ったか?
そう、俺はこいつに電話をかけた。メリー経由で。
あいつは、世界中どこでも電話機さえあれば電話をかけることができる。だから、朱莉に電話をかけてもらい、俺の電話の回線と無理やり繋いでもらったのだった。
「…とにかく、お前はミスるな」
「むぅ……」
「むうじゃねーわ、僕に謝れ!!」
「いや、俺やメリーにもだろ」
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そうして、睦月が帰った頃には、ハイビスカスへの盛大なお説教会が開かれていた、ということだった。