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0004 天才なので、思い知らされるんです
ちょっと長くなりました
あたしは若松皐月。
天才な幼馴染兼親友の駒井咲良を持つ、|普《・》|通《・》の小学六年生。
だけど……
Fランク。
これが私の魔力測定の結果だった。
いわゆる、魔力ゼロ。
もちろん、Fランクが圧倒的少数というわけではない。日本人の四分の一はFランクだ。
だけど、ショックだった。
親の仇を、ずっと取りたいと思ってきたから。
なのに、それが自分の手ではなすことが出来ないのだと分かってしまったから。
自分には、咲良のような才能はないんだと思い知らされたから。
数日が経っても、あの魔力測定の日をまだ何度も思い返してしまう。
◇
その日は、あたしがこの一年……いや、それ以上の間、待ち望んでいた魔力測定の日だった。
あたしの出席番号は一番後ろ。
だから、他の人が測定しているのを見ながら、Cランク以上であることをずっと願っていた。
「では次、駒井咲良さん」
「は~い」
咲良が前に出ていく。
そして、水晶に手をかざした。
そしたらその瞬間、水色の光が水晶から出てきて、咲良の姿が一瞬見えなくなった。
「素晴らしい! Sランクです!」
術者協会の人にも咲良が褒められている間、私は咲良が見せてくれた光景を思い返していた。
あたしもあんなふうな光を放ちたい……
「すげえなぁ、咲良は」
「な、俺、Eランクだったよ」
「いや、俺Fランクだったから」
「けど術者は目指せないだろ?」
「そりゃそうだな。ファンタジーな術、使ってみたかったけどなぁ」
「それに術学いけたらあの咲良とまた同じ学校に通えるんだぞ?」
「まあ、咲良は美人だからな。高嶺の花過ぎるけど」
「「あぁぁ、才能欲しいなぁ……」」
ふと、近くの男子の会話が聞こえてきた。
だけど、あたしも気持ちは同じだ。
「では、若松皐月さん」
「はい」
「頑張ってね」
席を通り過ぎた際に、咲良からも応援された。
だから、あたしだって出来るんだ!
水晶に手をかざした。
だけど、水晶は光らなかった。
「はい、Fランクですね」
無慈悲な宣告が響いた。
「なんで……」
呆然とした。
「皐月、席につけ」
先生に促されるままに席へと歩き始める。
「メイ……」
またもや途中で咲良に話しかけられた。
だけど、答える余裕はなかった。
Sランクというあたしがなりたいものになった咲良に、八つ当たりしてしまいそうだった。
「ごめん、今はあんたと話したくない」
「そうだよね。ごめんね、私が天才で」
そうだ、咲良は天才なんだ。
天才だから、あたしとは違うんだ。
あたしはFランクだけど、咲良はSランク。
あたしは術学に通えないけど、咲良は術学に通わなければならない。
あたしは仇を討てないけれど、咲良は仇を討つ必要さえない。
あたしには才能がないけど……咲良は才能がある。
咲良だから、別におかしいことじゃないんだ。
咲良とは違うから……Fランクだって普通のことなんだ……
◇
あたしには親がいないから、こんな考え方を止めてくれる人もいない。
食事は一応少しはとってる。
食事して、考えことをして、寝て、また食事して……の繰り返し。
――ピンポーン
誰かが来た。
「皐月、どうせいるだろ? 上がっていいか?」
立花先生の声がした。
あたしは玄関に向けてのそのそと歩いていく。
――ガチャリ
「どうぞ」
「ん、お邪魔するぞ。あとこれ、差し入れだ」
「何の用?」
「ん? 一週間以上も休んでいる生徒の家を先生が訪ねるのは変なことか?」
「……」
道理にはかなっているかもしれない。
「で? じゃあ何をやるつもり?」
「天才の話」
「は?」
「お前の知っての通り、咲良は天才だ」
「あれ? そこは自称天才だって言わないの?」
「まあ……あれは一種の脅しだな。事実の部分もあるが。……けどそれを置いておいても、天才を自称しているんだから自称天才でもいいだろ?」
「それはそうかもしんないけど……」
やっぱり違和感があるなぁ。
脅しってどういうことだろう?
「まあそこは話を戻して。咲良は一応天才だろ? だけど、よくよく考えてみたら天才っていいことなのか? という話になる」
「天才なんていいことばかりじゃないの?」
「本当にそう思うか?」
「そもそも天才には二つある。ある特定の分野において優れた成績を残す天才と、どの分野においても満遍なくいい成績を残す天才だ。咲良は後者だな」
「そうだね」
「そういう天才が、一度でもいい成績を残せなかったらどうなると思う?」
「どうなるって……別に他にも十分いい成績を残す分野があるから何も変わらないんじゃないの?」
「お前は誤解しているな。ふつうは絶望してしまうんだよ。そして、その分野が上手くできないことにいら立つ。例えばお前がなってしまったように魔力がFランクだった、とかだな」
「無能の烙印ってこと? 酷くない?」
「いや、無能の烙印というわけではない。天才にとっては無能だというだけだ。だからお前は何も気にする必要はないんだ。しかしどの分野においても本当に天才になれるなんてことはない。だからそういう天才たちは、なんとか折り合いを付けているんだ」
「へえ、咲良はどうやって?」
「お前もよく知ってるだろ? 天才に与えられた壁だといって、|努《・》|力《・》で解決しようとしている」
「……確かに」
「お前は咲良のことを全然知らなかったんだ」
はぁ!?
全然じゃないから!?
あたしは先生に怒鳴ろうとしたけれど、先生が話し始めたのを見て、いったんやめた。
「だけど、同じように咲良もお前のことを全然知らない。そもそも天才は普通の人の気持ちを理解するのが苦手だっていうのもあるがな。
咲良はここ最近、ずっと何かを考えているし、つまらなそうだ。お前が学校にこないからだろう。
Sランクだからメイを慰める資格がないと思ってるだろうな、あれは」
そっかぁ。そうだったら嬉しいけど。
そこで、ふと思考が止まる。
じゃあ、なぜ先生は咲良のことをそんなによくわかっているのだろう?
「あと――」
◇
そして、先生は帰っていった。
親友のことが、少しだけ分かった気がした。
いつの間にか、咲良からメールが来ていた。
『メイの分まで私が頑張るね』
さっきの話のおかげで、咲良がこれをどうして送ってきたかが分かる。
だけどね……
先生の言っていた通り、|あ《・》|ん《・》|た《・》はあたしのことを知らなさすぎる。
そうだね、来週の……火曜日から二日間は学校に行こうか。
そして、方法を探そう。
一人暮らしの狭い部屋の中で、あたしは強く決意した。
「……あ、先生に言われたこともやらないと」
アドバイス、ファンレター、タイトル案待ってます!
多分次の投稿までに時間がかかりそう…
これからも咲良をよろしくお願いします!