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花火の形10
初流
家に帰り着く頃には、すっかり太陽が沈んでいた。
家の庭に敷き詰められた砂利を踏むと、ジャリジャリと心地いい音が鳴る。
日が暮れて虫の鳴き声が響き始めていて、「もうこんな時期か」なんてしみじみと思いながら玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
「あー! おかえりー!」
「おう、おかえり」
母さんの声に重なって聞こえたのは、久しぶりに聞く低い声――父さんだ。
「あれ、父さん帰ってたんだ。おかえり!」
すると父さんは、僕の隣に立つ志喜に視線をやり、ニヤニヤしながら言った。
「おや、晴斗。彼女なんてできたのか?」
一瞬、その場の時が止まった。
「いやいやいや! そんなわけないだろ! 母さんに聞いてくれよ、てか絶対知ってて言ってるだろ!」
「ふふっ、バレたか。もちろん知ってるとも。お久しぶりだね、志喜ちゃん」
志喜の方を見ると、先ほどまでの二人きりの時とは打って変わって、たどたどしい様子で何度もペコペコとおじぎをしていた。さっきまではしゃいでいたから、なんだかこういう緊張した志喜を見るのは久しぶりな気がする。
「さあさあ、夕飯もできてるぞ。母さんに感謝して、冷める前に食べようか」
「そうだね、冷めないうちに召し上がれ」
「「いただきます」」
久しぶりに家族全員が揃った食卓。そこに志喜も加わって、初めて四人でご飯を食べた。
みんなで賑やかに囲むこの暖かくて楽しい時間が、ずっと続けばいいのに――。
そんなことをぼんやりと考えながらご飯を平らげ、僕はいつも通り一番乗りでお風呂へと向かった。
「ふぅぅぅぅ……」
湯船に深々と肩まで浸かる。今日一日、暑い中を歩き回ったから足がパンパンだ。
窓の外から聞こえる虫の声に耳を澄ませながら、そっと目を瞑る。
(……本当に、いろんなことがあったな。明日の祭りが終わったら、この夏休みも終わりか。こんなに楽しい夏休み、いつぶりだろう)
深く考え出すと長くなりそうだったので、のぼせる前に風呂から上がることにした。
(明日は、志喜を最大限楽しませてあげないとだからね! キラーン!)
頭の中でアイドルのキメポーズを作る痛い自分を想像しながら脱衣所の扉を開けると――なんと、志喜が扉の前で待っていた。
脱衣所のドアが開く音に跳ね上がるようにして、志喜がこちらを振り返る。
「あ、あの……ちょっと、いい……?」
「ん? 全然大丈夫だけど、どうしたの?」
志喜は顔をほんのり赤く染め、視線を落としながらポツリと言った。
「あのね……メール、交換しない……?」
「お、いいね! 交換しよう。またいつでも連絡取れるようにさ」
ガラケーを引っ張り出し、赤外線通信でお互いのアドレスを交換する。
無事に交換を終えて自分の部屋へと戻った、まさにその瞬間――。
ポケットの中のガラケーが、ブブッと短い振動を立てた。