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5月ー太陽の下で①
はいっ!5月になりました〜!
今年はそうでもなかったけど去年は5月から暑かった気がします、、、
**5月ー爆発する足と、鬼の育成計画**
ゴールデンウィークが明けて、5月中旬。新しいセーラー服もすっかり体に馴染み、クラスのみんなとも少しずつ緊張せずに話せるようになってきた。だけど、私立女子中学校の授業スピードは相変わらず容赦がない。「――というわけで、この『いとをかし』という言葉は、古文を読んでいく上でとっても重要なキーワードになります」黒板をトントンと叩く国語の先生の声が、子守唄のように頭に響く。初めて習う「古文」の世界は、私にとってはただの呪文だ。文字は日本語なのに、意味がさっぱり分からない。気がつけば、私の魂は机の上に完全に抜けかけていた。「じゃあ、次の文章の現代語訳を……長谷川さん、読んでみて」「げっ」またこのパターンだ。最悪のタイミングで名前を呼ばれ、私の心臓が跳ね上がる。教科書を睨みつけるけれど、文字が滑って頭に入ってこない。「えーっと……『いとをかし』だから……」4月の自己紹介カードに『本を読むのは苦手』と書いた私の脳細胞が、必死にひねり出した答えは一つだった。「……めっちゃ、お菓子が食べたい、ですか?」一瞬の静寂の後、教室がドッと大きな笑いに包まれた。先生もあきれたように額を押さえている。やばい、やらかした。顔がカッと熱くなる。その時、前の席の葵がクスッと笑いながら、すっと自分のノートを後ろに見えるように掲げてくれた。そこには丁寧な文字で、こう書かれていた。『いとをかし=とても趣(おもむき)がある、素晴らしい、可愛い、という意味だよ!』さらに、私が茶道部の見学で感動したときの作法室のイラストまで、ちょこんと添えられている。(……やっぱり神様、仏様、葵様!)救世主のナイスアシストのおかげで、私はハキハキとした度胸を取り戻した。「あ、間違えました! 『とっても趣があって素晴らしい』です!」「ふふ、お菓子じゃありません。でも、長谷川さんらしい面白い訳ね。座っていいわよ」先生の苦笑いとともに、なんとかピンチを切り抜けた。チャイムが鳴って休み時間になった瞬間、私は葵の背中にがばっと抱きついた。「ありがと葵〜! 古文マジで呪文なんだけど! 何が『いとをかし』だよ、お菓子でいいじゃん!」「ふふ、でも舞ちゃんが『お菓子』って訳したの、ある意味正解かも。茶道部で食べる和菓子、すごく美味しいもんね」「あ、そっか! じゃあ私の訳もあながち間違いじゃないじゃん!」「もう、都合のいいときだけそうやって言いくるめるんだから」葵はいつものふわりとした優しい笑顔を咲かせる。4月のガチガチだった頃に比べたら、うちらはもう、お互いに冗談を言い合える最高の相棒になっていた。◇楽しい雰囲気から一転、終礼のホームルームで教室の空気は一気にピリついた。「来週はいよいよ体育祭です。みんな、種目の練習は順調かな?」高橋先生ののんきな声が響く中、クラスのみんなの視線が、自然と私に集まる。そう、選抜リレーのアンカーだった結衣ちゃんのまさかの捻挫。そして、過去の栄光(小学校のタイム)だけで急遽アンカーを引き受けることになった私、長谷川舞。あの日のハプニングと、「もし舞ちゃんが負けたら……」という不安を、みんな思い出したのだ。教室にどんよりとした空気が広がりかける。(嫌だ。めちゃくちゃプレッシャーだけど、みんなにそんな顔されたら、余計に緊張するじゃん!)私がチョークを握る手をギュッと引き締めた、その時。放課後のチャイラが鳴ると同時に、最前列の葵がガタッと勢いよく立ち上がった。手にはストップウォッチと、あの綺麗なノートが握られている。「さあ舞ちゃん、泣いても笑っても本番まであと2週間! 今日の放課後から、私の全知全能をかけた『最強のアンカー育成計画』を始めるよ!」いつものおっとりした葵からは想像もつかない、キリッとした格好良い声。だけど、作法室でお稽古を終えたばかりの私の足は、すでに限界を迎えていた。「痛たたたたたたっ!!! 無理、葵、待って! 私の足、今日も茶道部の正座で絶賛爆発中なんだけど! 生まれたての小鹿なんだけど!」「大丈夫、それも計算に入れて対策を考えてきたから(微笑)」葵がすっと差し出してきたノートには、国語の授業のときとは大違いの、ガチすぎる文字とグラフがびっしりと書かれていた。『①正座から立ち上がる時の、人間工学に基づいた痺れ緩和ストレッチ』『②バトンパスの減速をゼロにするための、歩数計算スプリントメニュー』「……葵、顔はふわりと笑ってるのに、やることがスパルタすぎる! 鬼ブレインじゃん!」「ふふ、舞ちゃんに恥ずかしい転び方をさせないためだよ。ほら、まずはストレッチから!」夕日に照らされた放課後のグラウンド。他の生徒たちが下校する中、うちら2人だけの秘密の特訓が始まった。「位置について、よーい……ドン!」葵のハキハキとした掛け声に合わせて、私は全力で赤土のトラックを駆け抜ける。中学受験のブランクのせいで、心臓が破裂しそうに痛い。足がもつれそうになる。「舞ちゃん、今のフォーム、すごく『いとをかし』だよ! 昨日より0.2秒縮まった!」走るたびに、葵が全力で私を褒めて、冷たいタオルとスポーツドリンクを渡して駆け寄ってくれる。その真っ直ぐな瞳を見るたびに、胸の奥が熱くなった。(めちゃくちゃしんどい。足もパンパン。だけど……葵が私のために、図書室の仕事の合間を縫ってここまでやってくれてるんだ。本番、絶対にカッコ悪い姿は見せられない!)「はぁ、はぁ……もう1本! 葵、もう1本いくよ!」「うん! 頑張れ、舞ちゃん!」学級目標『普段はのんびり、やる時はやる! 凸凹だけど最強のクラス』。黒板に残されたその言葉の通り、うちらの体育祭は、鬼ブレインの完璧なサポートと、特攻隊長の全力疾走で、熱く激しく幕を開けるのだった。(続く)
読んでくださりありがとうございます!
文字数少なめにしてみました!場面切り替えの描写下手ですみません🙇
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