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十二度目の白紙
今日はとっておきのガムを噛んで、とっておきのスーツを着て、とっておきの心持ちで家を出た。
なぜ全てとっておきなのかって?それは普段使わないからさ。
そう、今日は僕の初めての最終面接。
やっとの思いでここまできた。もう、逃げるわけにはいかない。
最終面接があるのは、このこぢんまりとしたオフィスだ。中々に味があっていい。僕はここで働きたい。そう、絶対働きたい。
震える心を握りしめるように深呼吸する。絶対できる。絶対できるさ。
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インターホンを押すと、中から女性が現れた。人当たりの良い優しげな女性だった。
オフィスの二階へ行くと、そこには二人の男性がいる。二人ともしっかりとした大人という感じだった。
僕は恐る恐る礼をして、合図と共に席につく。喉がひくついてうまく呼吸ができない。
三人の大人は僕の前に並んで座り、机越しに面接を始めた。
「それでは、弊社で活かせるあなたの強みを教えてください。」
僕は早速言葉を失った。無論、答えを用意してこなかったわけではない。単に自信がなくなったのだ。この会社で僕は、希望の企画職ではなく、営業志望として面接に来ていた。
僕の用意した答えは、営業には向いていない。
「えっと…僕、私は…話すことがあまり得意ではないですが…」
この時点で相手側の顔色が変わった。猫がふいっと横を向いた時のような、もうすでに飽きた、というような空気感。第一声で完全にしくじった。
それでもなんとか取り繕うように話を続ける。
「僕は…えっと、その…それでも、克服する努力はしていて…」
相手側の顔をそろそろと盗み見る。目は色を失っていた。
完全に興味をなくしている。あまりにも自分が場違いだと感じて震えてきた。
誰か、頼むから僕に場違いじゃないと言ってくれ。
気が遠くなって、冷や汗がダラダラと流れ出して寒い。ここはプールか何かか?
その後は淡々とした空気のまま時が流れ_
「今日はこれで以上です。結果は後日お送りします。お気をつけてお帰りください。」
「…はい。」
僕は何事もなく返された。話が盛り上がることもなく、深掘りされることもほとんどなかった。
帰り道にやるせなくて逃避行に走る。
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知らない街の、知らない景色。
歩道橋から見下ろすこの景色も、きっと二度と見ることはないだろう。ここに通うことは決してないのだから。
僕は思わず身を乗り出した。しかしやめた。
できるわけがないだろうっ!?僕の弱さを舐めるなよ!?
そうしてまた何事もなく帰宅した。