マレウス×エース作品の寄せ集め。
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目次
呼び捨て
エースにとっての悲劇は、食堂でとうとつに起こった。
「なあ、マレウスは──」
マレウスを呼び捨て。失態に気づいたエースの口は、言葉の途中で閉じられた。
マレウスとデュースは驚いて、大きく開いた目でエースを見た。
あのドラコニアに失礼な口を聞かないように、と願っていた周囲の者たちもエースを凝視した。
エースたちを中心に静まる一画。幸運にも遠くにいて聞こえないでいた者たちの喧騒が、いつもより遠くに感じる。
「すんません」
先に口を開いたのはエースだった。
恐々と観察する周囲をよそに、マレウスは目を細めて「ふっ」と笑う。
「構わない。むしろもっと、そう呼んでほしい。二人だけのひみつもいいが、そろそろ認知されたかったからな」
「にんち?」
何も察せないデュースの疑問。やめろ聞くなと無言で訴える周囲。願いもむなしく、マレウスは機嫌よく答える。
「僕とエースは、恋人同士だ」
名前呼びされたエースは叫ぶ。
「ちょっとは誤魔化そうと思わないの!?」
とうとう周囲に認知されてしまったエースは、真っ赤な顔を手で覆った。
ホットニュースはたった数十分で学園中に広まった。
雄っぱいサンド
「やっぱ男なら、一度はかわいい女の子のおっぱいに挟まれてみたいよな〜!」
「わかるわ。あの二つの膨らみに顔を埋めながら、後ろにも押しつけられたい」
「サンドイッチされてえの!? すげー変態じゃん!」
「でもそれ、わかるわ! 男のロマンだよなあ」
「ほう。それがお前のロマンか」
廊下のすみで盛り上がっていた低俗な話題に、冷たい声がかぶさった。
ピシリと固まる空気。エースはおそるおそる振り向く。予想通り、恋人のマレウスがいた。
王族の恋人に猥談をふっかけた不届き者と思われたくないクラスメイトたちは、そそくさとエースを置いて逃げていく。
冷や汗をダラダラ流しているエースに、マレウスは告げる。
「ローズハートに外泊届けを出せ。今夜、僕の部屋に泊まりに来い」
「はい」
そして夜。竜の巣穴に入っていったエースに待ち受けていたものは。
「よく来たな、僕たちの愛おしい恋人」
「かわいい僕たちが、お前のロマンを叶えてやろう」
「増えてるー!!」
魔法薬で二人に増えたマレウスだった。
肉体的にも精神的にも濃密な夜を過ごして、翌朝。二人のマレウスにたっぷり愛されたエースは、一人に戻ったマレウスの寝顔を見て決心する。恋人を挑発しかねないロマンは二度と言わないと。
新月の夜
毎月やってくる、新月の夜。魔力を吸収してくれる月が完全に隠れて、マレウスは膨大な魔力を持て余していた。
いつもはさほど驚異ではないはずなのだが、不運にも今日は調子が悪かった。人形態のまま、意図せず尻尾が生え、耳の色も形も、竜に変わっている。
黒い爪も鋭いものに変わり始めた頃。扉からノック音がした。
立ち入り禁止のはずだ。不審者の気配に、一気に警戒心が増す。低い声を出す。
「誰だ」
扉を開いてきたら炎を吐くつもりで身構えていると、扉の向こうから声がした。
「アンタの恋人ですよ。開けていいですよね。つーか開けるわ」
開かれた扉の隙間から、エースの顔が見えた。
「入っていいでしょ? マレウス」
「……許す」
口の中に込めていた炎の気配は、もう消してある。
入室したエースは扉を閉める。ベッドに近づき、乗り上がろうとした瞬間。大きな手がエースを引きずり込んだ。
「エース……」
爪を当てないよう注意しながら、マレウスはエースを組み敷く。くちびるを深く重ねる。エースが発狂しない程度に、魔力をエースにゆっくりと送り込む。
送れた魔力は微々たるものなのに、エースに触れているだけで、ずいぶんと楽になれた。
くちびるを解く。ため息を深くつきながら、エースの上で脱力する。伏せた顔は、エースの顔の真横に落ち着いた。
マレウスとベッドに思いきりサンドイッチされたエース。「ぐえ」とうめいた後、抗議する。
「重いんだけど!?」
「もう少し、このまま……」
「……病人じゃなかったら剥がしてるとこだからな」
「ははは。恐れ知らずなやつだ」
「はあ……スマホくらい持ち歩いといてくださいよ。すぐにお助けメッセージ送ってくんなきゃさあ、こんな土壇場になんないと助けらんないじゃん」
「あれは苦手だ」
「ドラコーンは大事にしてるくせに……」
文句を言いながら、エースはマレウスの耳を指でいじる。いつもの尖った耳に戻っていた。
赤いがおがおドラコーン
抽選の戦いの果てに、ついに手に入れた、がけもライブチケット。
何かと理由をつけて、マレウスから借りたばかりの、マレウスのがおがおドラコーン。
以前から持っていた新品の、復刻がおがおドラコーン。カラーは赤だ。
これら三点を、エースは上着のポケットにまとめて入れる。歩くとガチャガチャと音がした。機械同士──うち一つは借り物だ──をぶつけるのはよくないと思い、借り物のほうを別のポケットに入れ直した。
目指すはイグニハイド寮。
「お願いしますイデア先輩! このチケットをあげますので、このがおがおドラコーンたちにチャット機能を付けてください!」
まずイデアはチケットを確認した。
本物だが、席の位置が最悪だった。三百六十度の観客席の中には、とうぜんアイドルたちがまったく見えない位置がある。しかもメインステージが柱で完全に隠れてしまう位置。一番安い席に応募したのは確実だ。
なじろうとしたが、やめた。二つのオモチャにチャット機能を付けるなど簡単すぎる。チケットの値段的に、報酬に見合う依頼と言えた。
イデアはエースに質問する。
「チャットってことは、ネットでつながりたいの?」
「はい。いつでもメッセージが送れるように」
「この二つのオモチャ限定?」
「その二つの間だけでお願いします。トランシーバーみたいな? あ、あと操作は複雑にならないように」
「そうなると、あまり文字数が送れないよ。ボタンもたった四つしかないし。この画面だと、せいぜい八文字がいいとこ」
「それでいいです。おはよう、とか、こんにちは、とか、そのくらいの文字が打てるだけでいいんで」
「へえ……」
いじらしい。
いくら一番安い席とはいえ、競争率の高いチケットだ。それを苦労して手に入れてまで、やってほしい依頼内容は、とてもいじらしいものだった。
リア充は嫌いだが、親しい者には当てはまらない。
「いいよ。すぐにできる。明日、オルトに届けるようにお願いしとく」
「よっしゃあ! お願いします!」
「スマホも使えない恋人を持つと苦労しますなあ」
「そ! そんなんじゃないですって! すぐに連絡が取れないのって不便なんですよ!」
捨てゼリフを吐いて、エースはイデアの部屋から出ていった。
残されたイデアはつぶやく。
「連絡、ねえ」
一言程度のあいさつだけで済まされる連絡など、あるわけがないのに。
インターン先が決まりました・1
三年生になったエースは、まだ将来の夢がなかった。
周りがインターン先の候補を決めていく頃。どうしようかと迷っているエースのもとに一通の招待状が届く。
次期当主として王城に勤める卒業生マレウスからの、茨の谷の王城への招待状だった。
強姦オンリー。睡姦もあり。純愛ではありません。
連続潮吹き、軽い結腸責め、人外ヘミペニス、虫姦はないけど虫表現があります。
「いやいやいやいや、冗談きついですって! オレもアンタも男でしょ? セックスなんてできないって!」
「な……なにすんだよ! やめろよ! アンタ王族なんだろ!? こーゆーのってマズイんじゃないの!?」
「うあ、ああ! なん、で!? オ、オレ、男なのに……!」
「あああ……やだ……やだあ! 変なのが、くる……! やだやだ、離せよ!! 離せってばあ! 離せよ、離して……! あ……ああ……!」
「イくっ! い、くう! イ……グッ。い、いぐ。イッで、るうう……。ひいっ! もう触んないでえ! や、だあ。また、いくっ。やめろよおお!」
「あああああああ!! クソがクソがクソがああああ!! ざっけんなこのクソやろう! ぶっ飛ばしてやる。ぜったいに! あ、あとで、ぶっ飛ばしてやるからなあああ!! ああ! あああああ……! あ、ひ……っ。いぐううぅうううああああ……! ごろしでやるうううう……」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ゆるしてください。オレがわるかった。わるかったから。もうやめて。やめてください。しぬ。しぬ。しんじゃう。もうむり。やだ。やだよお。こわいよお。もうイきたくない。もう、もう、もう……」
「ひ……あ……あう……あ…………ま、た……イく……イ…………あ、あー、あ、あ、あひっ、あひ、ひ、ひい…………ふあ……もれちゃう……みないで…………あ……あーーーー……」
ぷしゃああああああ……。
おそらく通算十回は超えた潮吹き。漏れた潮がぴちゃぴちゃとエースの腹をたたく。
収まってもなお、マレウスの手のひらはくちゃくちゃとエースの亀頭をなで続ける。
連続潮吹きを強要されたエースは涙をこぼして、かくかくと全身をけいれんさせる。
「い……や……! でないいぃ……!」
深くつらぬかれた腰はマレウスから逃げられない。二度目の潮吹きはあえなく訪れた。
亀頭をなでるマレウスの手は止まらない。
あまりの刺激に、ぼやけていた意識が覚めてきた。
本格的にエースは体を跳ねようとする。けれど今日の体力はすっかり消耗してしまった。睡眠を挟まないと、もうロクに動けない。
「もうでないからあっ。やめて。つらい。寝かせて。おねがい」
無言だったマレウスがついに口を開く。
「いまは潮を吹かせたい気分なんだ。まだ寝かせない」
「うう……!」
こうなったマレウスは止まらない。この数ヶ月で、すっかり教え込まれた。
数ヶ月と言っても、時計もカレンダーもない部屋だ。エースの体感に過ぎない。
しかし顔を傾ければ、カーテンが開かれた窓の外の景色が映る。昼も、夜も、雨も、雪も、エースの目に映ったことがある。
いまは雪が降っている。
茨の谷の王城に招かれたときは、エースが三年生になったばかりの秋だったのに。
下手をすれば、もうウィンターホリデーに入っているかもしれない。これからインターン先を決めなくてはいけない、大事な時期なのに。決める以前に、出席日数が足りなくて、留年してしまう。
「うああああああああ」
三度目の潮吹き。量はかなり減っている。控えめに雫が垂れた程度だ。
マレウスはふっと笑う。
「もう出ないと言ったのに。ウソつき」
弱った亀頭を指の腹でくすぐられながら、腹の中の奥をトントンと突かれる。
「あああっ。あ、やあ、やだ」
潮を吹いた直後は、何をされても苦しい。
この苦しみはいつまで続くのか。
「もう帰して。ここから出してよ。くるしい」
「まだ帰さない。ここにいろ」
軽く奥を何度も突かれる。
言葉がまともに出てこない。それでもエースはけんめいに問いかける。
「あ、あ。お、オレ、オレっ、にんげん、だよなっ?」
「うん?」
「も、もお、ああ、あ、も、ずっと! ずっと、トイっ、トイレ、行ってないっ、けど! メシも、たっ、食べ、てっ、なあああっ! あ、あ…………な……ないっ、けど、にっ、にんげん、だよな!?」
「……」
「まほ、うっ、で! し、しなくて、もっ、いいっ、だけに、なっで、る! …………はあっ、はあっ……! しなくても、よくなってる、だけだよな……?」
食事も排泄も、ずっとしていない。
できることは睡眠だけ。
マレウスとつながったまま、眠ったこともある。ひどいときはそのまま数日間もつながりっぱなしだった。
あきらかに人間業ではない。けれど可能性にすがりつくエースに、マレウスは答える。
「人間のままだったとしても、妖精に気に入られた人間がどうなるかくらい、わかるはずだ」
もう元の生活には戻れない。
遠回しに、そう告げられた。
くちゅくちゅくちゅくちゅ、と亀頭責めを本格的に再開される。トントントン、と硬くなってきたペニスで奥も突かれていく。
「いひっ! ひああ、あっ、あっ! ああ、せ、せめ、て……家にっ、か、かえっ、帰してよ」
「いつか帰そう。いつか、な」
悲鳴をあげたエースの背が弓なりに反る。アーチを描く腹が、がくんがくん、と何度も上下する。ペニスからは何も出てこない。潮が尽きたようだ。
マレウスは奥を突くことをいったんやめる。亀頭を責めていた指を下ろして、竿を激しくしごく。
引きつった悲鳴に変わり、数秒後。エースは射精した。
反っていた背中がベッドに落ちる。虫の息になっているエースを、マレウスは挿入したままひっくり返す。
「あええっ」
角度が急に変わり、エースはあえいだ。この後に何が起こるかは、もう知っている。
挿入されたまま、腰を高く上げられる。足の長さが違いすぎるため、エースの膝頭は浮いてしまう。宙ぶらりんになった腰を、マレウスはしっかりと掴み、離さない。
「まだだ。まだ寝かせない」
前後に揺さぶられる。手に力は入らず、顔ごとシーツの海に沈む。
「あ……ぁあ……あーー…………」
まぶたにも力が入らない。今日をあきらめて、エースは涙まみれの目をつむる。せめて明日で終わりますように、と願いながら。
インターン先が決まりました・2
夜闇の静寂の中。ねばついた水音が聞こえた。
執務室から帰ってきたばかりのマレウスは音源を見る。予想どおり、ベッドで眠っているエースからだった。
マレウスは光量をしぼった魔法のランプを付けたまま、ベッドに近づく。裸のエースの腹は濡れていた。自室から出る直前に洗浄魔法で体をきれいにしていたが、ほんの数時間で、白濁液でずいぶんと汚れている。
マレウスはエースの腹に触れる。ねばついたそれは精液だった。
夢の中でも順調に犯されているらしい。
最初の半日は現実で犯したが、マレウスのやり方を学習させた後に眠らせれば、続きは食事も排泄も必要ない夢の中で、エースが学習したばかりのマレウスが犯していく。
夢の中でも犯されれば、現実では触れていなくても、こうしてエースは射精する。マレウスがいない間も達し続けていたであろうそれの量は多く、ベッドのシーツにもこぼれている。
経過時間を考えると、おそらくエースの夢の中では冬になっている。
現実では、エースが王城に訪れてから一日しか経っていない、秋のままなのに。
マレウスは手に付いた精液を、自分の歯の噛み合わせに塗る。精液を噛んで、命を結ばなかった精子をつぶす。飲みこみ、食らった。
「トラッポラ。お前は、僕のお気に入りだ」
気に入った人間を妖精の国にさらう習性が、妖精族にはある。その習性に従ったマレウスは、エースの将来を平和的に茨の谷に縛りつけようと考えた。
まずは茨の谷に招く。ふだんから親しくしていたマレウスの招待を、エースは何も疑わずに受けた。巣の中にも招き入れ、体を妖精族の精に染めた。いまは夢の中でも精を浴びさせて、心ごと妖精族を忘れさせないようにしている最中だ。
しかし完全にさらうには、まだ足りない。
マレウスは服を脱ぐ。エースと同じく全裸になり、ベッドに乗り上がる。エースの股の間に体を割りこみ、ペニスをエースの中に挿入した。すでにほぐれていたそこは簡単に入れた。
「あ、あ、あ、あ」
夢でも現実でもマレウスに犯されて、エースは閉じた目から涙をポロポロとこぼしている。ピストンするたびに薄い精液を、とぷっ、とぷっ、と吐き出している。
──美味しそうだ。
そう考えていると、マレウスのペニスが生えている箇所のすぐ上が、ムズムズとした。
マレウスはそこに指を這わせる。スリットが入っている中心をなぞると、開いてきた。
エースを犯しながらスリットに刺激を加え続けているうちに、完全に開いたスリットからぶるんと、もう一本のペニスが飛び出た。
限られた者しか知らない、ドラゴンの妖精族特有の、前後に生えた二本のペニス。
常に隠している二本目のペニスの裏側にも、縦にスリットが入っている。つがいをかわいがるためにあるものだ。
すでにエースの腹の中に入っている一本目──後方のペニス──をピストンする勢いのまま、マレウスは二本目──前方のペニス──をエースのペニスに、くぬくぬと押しつける。
早く食らいたくて、マレウスの息が「はあ、はあ、はあ……!」と荒くなる。
エースの竿に沿うように押しつけていたスリットが、ゆっくりとほころんできた。
スリットが開きそうになった瞬間。
「ぁああ……ああああ!」
エースが悲鳴をあげながら、目を覚ました。思わずマレウスはピストンを中断して、ペニスのスリットをキュッと閉じた。
季節が移ろうほど長く過ごした夢の中から出られて、思いきり開かれたエースの目に真っ先に映ったものは、マレウスの顔でも、天蓋ベッドの天井でもなかった。
「あえ?」
自身のペニスに押しつけられている、マレウスの前方のペニスだった。
「いいタイミングだ」
エースは眼球の動きだけでマレウスに視線をうつす。マレウスはなまめかしく首を傾げ、頬を染めながら笑う。
「見ろ、トラッポラ。僕の秘密を」
ふたたびエースは前方のペニスを見た。
前方のペニスの先端を、自ら指先で持ち上げるマレウス。裏に秘められたスリットをエースに見せつける。
エースに凝視されているだけで興奮して、くちゃあ……とゆっくり開かれていくスリット。トラバサミのように開かれた中は、ヤスデの裏側のような細短いものたちが、ところせましと生えていた。一本一本がうぞうぞとうごめいているそれらは、虫嫌いが見たら間違いなく卒倒する光景だった。
「これで、お前をかわいがってやろう」
やわらかいトラバサミが、獲物に覆いかぶさろうと動きだす。
「ひ……!」
恐怖で萎えようとしていたエースのペニスが、マレウスの前方のペニスの中に、呑み込まれていった。
「ひいいいいいいいい!!」
三百六十度、あますことなく、細くて短い触手たちがエースのペニスを揉みくちゃにしていく。
後方のペニスもピストンを再開して、エースの腹の中をまた犯していく。深く挿すたびに、結腸口がマレウスの亀頭とディープキスをする。
マレウスがピストンするたびに、前方のスリットも上下に動かされる。スリットに締め付けられながら動かされた刺激が、エースのペニスの根元に襲いかかる。
後方のペニスが引けば、前方のペニスの先端付近の中にある触手たちが、エースの尿道口とディープキスをする。くちゅちゅちゅちゅ、と尿道内で抜き差しを浅く素早く繰り返す。
ピストンされるたびに、結腸口と尿道口を責められて、エースは発狂寸前まで追い詰められた。
「ぎゃあああああっ! やだやだやだあああああ! やだよおおおおお! はああっ! はっ、腹ん中ああっ! ちんこがっ! オレのちんこがあああ!! 食われちゃうううううう!! いやだーーーーっ!」
マレウスの前方のペニスの中で、エースは射精を繰り返す。
「い、イぐっ! いぃイい、イくぅ! イっでるがらああ……っ! もうやあぁあ……イきだくないぃ……や、や、やらぁ」
やがて精液も出尽くして、空打ちを繰り返す頃。
「イぅ……っ、イ……う…………」
またエースは気絶した。
長命種のマレウスは、短命種のエースよりずっと射精が遅い。エースが夢の世界へまた旅立ってもなおピストンを続ける。数分後。ようやくマレウスもエースの中に射精できた。
妖精族の精を奥に塗りつけ、ついでにエースのペニスもたっぷりと犯してから、マレウスはエースを解放した。二本とも、しばらくは萎えたままだろう。股間を魔法で洗浄してから、前方のペニスをスリットの中にしまった。
「あ……へ……あひっ。あひ……ひ……」
夢と現実の区別がついていないエースは、まだ快楽責めから抜けられていない。むしろマレウスの二本のペニスを学習してしまったせいで、さらなる快楽が夢の中で待っている。
次に目覚めるのは、夢の中で春を迎える頃だろうか。
春が来るまでの冬中。積もった雪が音を吸い、しんとした城内で二本のペニスに愛される日々。そのような日々を休みなく送らせるために、マレウスはエースの脳に学習魔法をかける。内容は、二本のペニスの実情だ。
二本目である前方のペニスも、ふつうのペニスのように、エースの腹の中を犯せる。片方が萎えても、もう片方が元気に中を犯せるのだ。加えてスリットは後方のペニスにも備わっている。マレウスがその気になれば、前方のペニスを挿入したバック体位でも、後方のペニスのスリットを開いて、エースのペニスをかわいがれる。
魔法をかけ終わり、学習を完了させた途端。
「う……あ、あ……ああ! ああ! ああ!」
眠ったまま、エースは鳴き始めた。夢の中のマレウスにひどく犯されているのは明白だ。萎えたペニスを震わせて、何も出てこない苦しみにもだえている。
マレウスはエースのペニスに手を伸ばす。尿道口に指の腹をそえて、くぱくぱと開閉を繰り返している感触を楽しむ。指をくるくると動かして、いたずらに刺激を与える。
「あー! ああーっ!」
「さすがにもう出ないな」
現実でもこうして犯されて。たとえ夢の中で仮初の睡眠を挟もうとも、おそらくエースは人間性を保てない。
そのほうがきっと良い。エース自身はもちろん、《《母体》》が故郷を想って泣き叫ぶなど、あってはならない。
尿道口から指を離したマレウスは、今度はエースの腹をなでる。
母体が男の体でも、卵の苗床を体内に新しく作るほどに、ドラゴンの精子は強い。産卵できるのは卒業後だろう。妖精族の命を、人間が堕ろす術はない。王城で過ごした濃密な日々をどんなに忘れようとしても、腹に宿った命はエースから離れない。
「これでインターン先は茨の谷一択になったな」
「あぁ……あうう……」
エースは将来の夢がないと聞いた。ならば卒業後の将来をこちらで決めてもいいはずだ。
研修内容は教育係に任せるが、抱卵の授業は外せないだろう。
卵を抱くエースの姿がいまから楽しみだ。
ドロドロに汚れたエースを洗浄しないまま、マレウスはエースのそばに横たわり、まだぺったんこな腹を飽きずになで続けた。
赤い腕輪と首輪
学園を管理しているはずの妖精が、騒動を起こした。学園内に想い人がいる者にのみ、その想い人がバレる、プライバシー皆無で迷惑な騒動。
誰かを想う者には赤い腕輪を、誰かに想われる者には赤い首輪を、妖精のイタズラでそれぞれ付けられている。そして想う者と想われる者でペアになった腕輪と首輪の間には、これまた赤い鎖でつながれている。
デュースに付いている腕輪も、エースに付いている首輪も、一部のクラスメイトたちと同じく教室の外に続いている鎖も、見えるのに触れられない。赤いそれらを手で外そうとしても、スカスカと空を切る。伸び縮みが自由自在な鎖は、対象者が逃げても、切れずに追いかける。
外すことをあきらめたエースは肩をすくめる。
「こりゃダメだな。先生たちが解決してくれるのを待とうぜ」
「そのほうがいいな」
うなずいたデュースの腕輪の鎖の先にいる人物を、エースもクラスメイトたちも知っている。どうせ相手は全生徒公認のカップルの片割れだ。
それでも確かめに行ったデバガメは一定数いる。デュースの鎖をたどったクラスメイトが、隣の教室から帰ってきて早々、「ジャックとつながってたぞ!」とわざわざ報告してきた。
デュースは問いかける。
「どうつながってたんだ? 僕たちは両想いなんだが」
「ジャックも腕輪だったから、腕と腕でつながってるってことだな」
そう答えたクラスメイトに、エースが補足する。
「どっちも想ってる側だから、どっちも腕輪になるわな、そりゃ」
デュースは「なるほど」と納得した。
クラスメイトはエースの首輪を見て、ニヤニヤと笑う。
「エースに片想い中のやつって誰なんだろうな? 本当に心当たりないのかよ」
エースはうんざりとしながら答える。
「ないっつってんだろ」
「知りたくならねえ?」
「パンドラの箱なんか開けたくないね」
エースは異性愛者だ。男子校に属する者である男に想われているなど、知りたくもない。
知らなければ、存在しないのと同じだ。
なのにデュースは現実をつきつける。
「でも確かめに行かれてるぞ」
「うげえ〜〜」
すでに数人のクラスメイトがエースの首輪の先をたどり、エースを想う者を突き止めようとしているのだ。
探られていい気はしない。もちろんエースは抵抗した。だが多勢に無勢。あえなく教室の外に飛び出されたのである。
隣の教室から帰ってきたクラスメイトよりも遅いから、遠くの教室まで行っているようだ。
「アイツら帰ってきたらとっちめてやる!」
しかし十分経っても、まだ帰ってこなかった。ちなみにデュースの想い人を確かめたクラスメイトはすでにエースたちから離れて、新たな標的をからかっていた。
エースは教室の扉を見ながらぼやく。
「アイツらどこまで行ってるんだ? いくら校舎が広いからって、こんなに時間かからないだろ」
「飽きて他のやつに行ってるんじゃないか」
代わりにデュースが答えた。
「だといいけど」
エースがため息をついた瞬間、扉が勢いよく開いた。
クラスメイトたちが帰ってきたかと思いきや、入ってきたのはディアソムニア寮生の三年生たちだった。エースの鎖を見て、たどり着いた先であるエースを凝視している。
一人が恐る恐るつぶやく。
「お……お前が……?」
「はい?」
馴染みのない先輩たちに尻込みしながらも、エースはあいづちを打った。
それをきっかけに、三年生たちは一斉に叫ぶ。
「なんでこんな人間が!?」
「何かの間違いだろ!」
「たとえイタズラでも、不敬だ! 件の妖精には罰を与えないと!」
次々に叫ぶ三年生たちの後ろには、エースの鎖をたどっていったクラスメイトたちが申し訳なさそうにエースたちを見ていた。おそらくこの三年生たちに捕まって、帰りが遅くなってしまったのだろう。
三年生たちからエースをぶじょくしている雰囲気を感じ取ったデュースは眉をひそめる。
「何か僕たちに用ですか、先輩方」
一人の三年生が答える前に、セベクがエースたちの前に飛び出た。エースに指を突きつける。
「なぜ若様の腕輪が、お前の首輪につながっているんだ!?」
パンドラの箱は開かれた。
---
後日。一組のカップルが爆誕した。
一方で、騒動の犯人である妖精が、困り顔のクロウリーとリリアの前で証言する。
「マレウス様ったら、なかなか告白なさらないんですもの。進展できるきっかけを作ってさしあげただけよ」
プロポーズ
「明日、僕は卒業する。その前に、去年したプロポーズの返事を聞きたい」
青白く輝く月夜を背景に、マレウスはエースに願う。
脇の下に腕を回され、抱っこされているエースは、あらためてマレウスの首元にしがみつく。
「はい。先輩と結婚します」
「トラッポラ……!」
感極まったマレウスは、エースをつぶさない程度に、より強く抱きしめる。
エースもマレウスから離れない。
離れたら……死んでしまう。
ここは空の上。脅された末に落とされてはたまらない!
雄っぱいサンド
かわいい子の胸に頭を挟まれてみたい。
健全な青少年なら、おそらく一度は思い描く願望だ。
それを世間知らずのかわいい恋人が、どこかで耳に挟んでしまったようだ。
「お前も、こうされたかったのだろう」
「どうだ、トラッポラ」
魔法薬で二人に増えたかわいい恋人──マレウスの柔らかい胸筋に頭を挟まれて、エースは答えられない。
正面のマレウスの背中をタップして、やっと離された。
「窒息させる気か!?」
エースの頭上で、マレウスは二人そろって笑う。
「僕たちだけを考えるのなら」
「おぼれ続けるがいい」
「むぐうっ」
また挟まれて、エースはうめいた。
出られない部屋ディープキスver
ディープキスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「さあ、この僕に口づけろ」
どうやらマレウスが犯人のようだ。
いまはキスをする気分ではない。逃げるために、エースはふてくされた演技をマレウスに見せる。
「腰が抜けちゃうキスなんかしたら、このあと空デートできないじゃん」
「僕が抱っこするから問題ない」
逃げられなかった。
こうなれば腰くだけにさせてやろうと、エースは持っている技術を駆使してマレウスにディープキスをしかける。
応えたマレウスに、逆に腰をくだかれた。部屋から出られても、次は空に連れていかれた。
出られない部屋セックスver
セックスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「どうせアンタが犯人だろ!」
「そうだ」
バレているならと、マレウスは開き直った。
呆れながらも、エースは渾身の上目遣いをマレウスに見せつける。
「するならマレウス先輩の部屋がいいな」
真っ白な部屋が、見慣れたマレウスの部屋に変わった。
エースはガッツポーズを決める。
「よっしゃ出られた!」
「……待て、どこへ行く?」
「え? 帰るんだけど? まさかセックスのこと言ってる? あっはははは! 今日するなんて言ってねーし!」
意気揚々と廊下に出ようとするエースを、当然マレウスは魔法で引き止め、ベッドに放り投げた。
ドラゴンの種は強い
マレウスが卒業してから三年。エース・トラッポラと名乗る男が王城の門前まで来たらしい。
マレウスはすぐに自室に通すように、門番に命じた。
三年ぶりに見たエースの腹は、マレウスの期待通り、膨らんでいた。
「最初は太ったのかと思ったよ。実際はもっと最悪だったけどな。気持ち悪いのが続いたあたりで、なんかおかしいって思って、病院で診てもらったら……腹ん中で、卵が作られてきてるって」
「順調そうでよかった」
「やっぱりアンタだったのか!」
ドラゴン族の精子は強い。三年間、エースの腹の中で生き続け、つい先日に妊娠が発覚したようだ。
「卒業をきっかけに別れるなどと言い出すから、確かなつながりを結ばせたかった」
三年前に蒔いた種が無事に結べて、マレウスはホッとした。
届かないので
目当ての本まであと数センチ。背伸びをしても届かない。脚立を使えばいいのだが、エースは使わない。もっと便利な方法があるからだ。
「マレウス先輩」
「呼んだか、トラッポラ」
どこからともなくマレウスが現れた。
マレウスではなく高い本棚を見ながら、エースは願う。
「あの本、取ってほしいの」
マレウスは長身を活かして、本をすっと取った。
「どうぞ」
「ありがと」
本をもらおうとマレウスに差し出すエースの手。逆に取られて、手の甲にキスを落とされる。イジワルな本棚よりも自分を見ろと言わんばかりに。
脚立を用意するよりもずっと早くて、オマケも手に入る。これ以上に便利でかわいい恋人はいない。
雨と薔薇の香り
雨が降り終わった香りと、薔薇の香りが混ざっている。むせるような香りに包まれた薔薇園の中、目の前にあるのは雨粒が花弁の中に溜まった薔薇の群れ。
一輪から水滴がぱたりと落ちた。それはまるで、涙を流す彼のようだった。
「なんで思い出すかなあ」
エースは空を見上げる。くもり空はまだ続くようだ。
好き×6
「好き好き好き好き好きっ好き♪愛してる♪」
「誰をだ」
「いや、誰って。監督生の世界でやってたアニメの歌らしいっすよ。イッキューさんっていう──」
「誰だ、その男は!!」
「アニメだっつってんだろ!」
表情筋よ、仕事しろ
突然エースは自身の頬をムニムニとこね始めた。
エースの奇行に少し驚いたマレウスは問いかける。
「どうした、いきなり」
「や。気にしないでください」
頬から手を離したエースはそっけなく言った。
恋人に格好よく見られたいのだ。会えて嬉しくてヘニャヘニャにくずれた顔など、見せたくない。だからエースはキリッとした顔を装った。
ひざ枕の悩み
「マレウス先輩のツノってさあ、ひざ枕すんのに向いてねーよな。腕おろしたら、先輩の頭のほうの腕にゴリゴリ当たるし、地味に痛いからさあ、ずっと腕あげてなくちゃいけないわけ。疲れるから、ずっとツノに手ぇ乗せなくちゃいけなくってさ、でもそれだと今度は手持ち無沙汰でさあ、先輩のツノとかオデコとか触るしかないんだよね。リラックスされてもこっちはつまんないっつーの! まあ別にイヤなわけじゃないけど。……ちょっとデュースくーん? 聞いてますかー?」
「……なんでドラコニア先輩にひざ枕したんだ?」
「あっやべ」
不純同性交友
不純異性交友は禁止。
ならば同性が相手なら禁止されないはず。
「だからオレとマレウス先輩がイチャついたって校則違反にならないわけ」
「なるほど!」
デュースはまんまとエースに丸め込まれた。
積極的な恋人
エースを前にして、マレウスは困った。
エースと恋人になったはいいが、どう接したらいいのかわからないからだ。
──とにかくまずは手をつなぐことからか?
そう考えたマレウスが手つなぎを実行しようとした瞬間。
「せーんぱい」
いきなりエースにハグをされた。
「ト、トラッポラ!?」
「なに遠慮してんの? オレに押されちゃっていいわけ?」
「……よくはない」
このまま押されては次期当主の名折れである。マレウスもエースの背中に手を回した。
キスマーク
「もー! またこんなとこに付けて!」
怒っているエースの首に、一つの赤い痕。
痕を付けた犯人のマレウスは悪びれなく言う。
「僕のものだと周りに知らしめてもいいだろう」
「オレがいたたまれなくなるんだよ! ただでさえ見えないとこにもいっぱい付けられてんのに!」
「足りない」
「足りろ!」
目立つ場所にもキスマークを付けたいマレウス。これ以上付けられたくないエース。
二人の争いはまだまだ続く。
猫になったエース
生徒が何らかの魔法により、何らかの姿に変わる。よくあることだ。
だから魔法薬の授業で、エースが猫になってしまったと聞いても、よくあることだと片付けられる。
時間が経てば自然と元の姿に戻る。その間に楽しまねばと、マレウスはエースをさらった。
「よくも僕のトランプ兵をさらいましたね!!」
猫のエースをひざの上に乗せてかわいがるマレウスに怒鳴るリドルの姿も、よくあることなのだ。
スマホを見ている理由
同じベッドの中。向かい合って寝転んでいるのに、エースはスマホに夢中だった。
「トラッポラ。こっちを見ろ」
マレウスに呼びかけられても、エースはスマホの画面から目を離さない。
無視されたマレウスは、すねた顔をする。
「トラッポラ……」
機嫌悪そうに声を低くしても、エースは画面を見ながらニヤけるだけだ。
──いつ種明かししてやろっかな。
マレウスはまだ知らない。
実はいじけているマレウスを、エースは隠し撮りしていたことを。
初めての手つなぎ
手をつなぐ。それだけなのに、どうしてここまで緊張するのだろう。
手汗がにじむ。べたついた手が重なっているのに、ちっとも不快ではなかった。
「好き……です」
「僕もだ……」
ソファに並んで座っている初々しいカップルを、監督生は生ぬるい目で見ていた。
「ここパブリックスペースなんだけど」
夢の中ならやりたい放題
マレウスは王族だ。一般人のエースと表立ってイチャつけない。
なので二人は夢の中でイチャイチャしまくった。
ハグやキスはもちろん、セックスも……。
「なーんか二人とも、色気づいてない?」
監督生のするどい指摘により、二人はしばらく自重した……わけではなかった。
「証拠なんてないしな!」
「痛くもかゆくもない」
今夜も二人はイチャイチャするのであった。
人の話は聞きましょう
(ねみぃなー……)
「……トラッポラ。聞いているのか?」
「え? 聞いてる聞いてる」
「なら僕が何の話をしたのか言ってみろ」
「……オレがかわいいって話でしょ?」
「うん。ちゃんと聞いていたようだな」
(合ってた……)
からかった罰
マレウスの雰囲気が変わった。有無を言わさぬ威圧感。
「僕をからかうのは楽しいか?」
「あー……」
少しからかっただけなのだが、マレウスにとっては流していいことではなかったらしい。
まずいことになった。
真顔だったマレウスはうっすらと笑う。
「そちらがその気なら、こちらも本気で相手をしてやる。覚悟は良いか?」
エースは一瞬、腰が抜けそうになった。しかし、ここで引くわけにはいかない。男としてのプライドが許さない。
「ったり前じゃないですか! いつでも受けて立ちますって!」
「良い返事だ」
マレウスはエースを抱き上げる。転移魔法の先は、マレウスの自室。エースをそっとベッドに下ろす。
「ここでお前に、僕をからかった罪をつぐなってもらう」
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩! 何をするつもりですか!」
「何を? そんなことは、これから嫌というほど分かる。せいぜい、今のうちに後悔しておくといい」
エースは悟った。これは、ただの罰では済まされない。とんでもない事態に発展すると。
しかし逃げることはできなかった。マレウスの瞳が、それを許さなかったから。
「さて、まずは……そうだな。お前のその軽薄な口を、少し黙らせてやろうか」
マレウスの指先が、エースのくちびるをなぞる。
「ちょ、ま、待って」
弱々しい抵抗の声は、あっけなくふさがれた。
エースは心の中で誓う。マレウスをからかうのは、よほどの覚悟がない限り、やめておこうと。
静かな図書室での両片想い劇
図書室でエースは分厚い魔導書を前に、眉間にしわを寄せていた。
その背後に、音もなくマレウスが近づく。
「ずいぶんと難しい顔をしているな」
エースは驚いて振り向く。
「うわっ!? マレウス先輩」
「何か困っているのか?」
「いや、別に困ってるとかじゃなくて。ちょっとこの魔法解析が難しくて……」
マレウスは興味深そうに本を覗き込む。
「……その魔導書は古く、記述も独特だからな。まず一年生には無理だろう」
「ええー? ならいいや」
課題の一つとして、挑戦してみただけだ。無理にやり切る必要はない。一年生が解析できないのなら、レベルを落としても問題ないはずだ。
そう結論づけて、魔導書を閉じる。席を立つ。本棚に戻すために歩きだそうとする前に、マレウスがエースを呼び止める。
「待て。いい機会だ。僕が見てやろう」
「え、いいんすか? でも、先輩も忙しいでしょ?」
言いつつも、エースは座り直した。ちゃっかり甘えようとしている。
頼られたマレウスは嬉しそうに笑う。
「気にするな。お前の手助けくらい、造作もない」
マレウスはエースの隣に腰を下ろす。魔導書を開き直す長身が、エースに影を落とした。
距離が近い。エースは少し緊張してしまう。
「あ、ありがとうございます。えっと、ここが全然わからなくて……」
「ここか。この紋様は──」
説明が続く中、エースの心臓は高鳴りっぱなしだった。
まさか片想い相手から、ここまで接近されるとは思ってもみなかったからだ。
ガチガチに固まっているエースの様子を見て、マレウスはあきらめたように問いかける。
「僕が怖くなったのか?」
「いや。それはありえないね」
即答。本当に恐れているわけではないのだとマレウスは改めた。代わりに疑問が生じる。
「ならなぜ緊張しているんだ?」
「いやあ。ちょーっとね? 怖くないんだけど、かしこまっちゃうかなーって」
「僕は構わないのだが……」
マレウスはさみしそうに答えた。
エースはうつむき、ひざの上で拳を握りしめる。届ける予定のない想いを、胸の奥に仕舞い込むように。
せめてもの誠意として、魔導書の説明は真剣に聞いていった。
炎魔法
魔法練習場の一つのスペースが、巨大な炎で埋められた。
別のスペースで魔法の自習をしていた他の生徒が悲鳴をあげる。魔法の発生源がマレウスだと知った瞬間、パラパラと散っていく生徒たち。怖がらせるつもりはなかったのに。マレウスは少し落ち込む。
だが沈んだ気分は、一人の生徒の歓声で消えていく。
「すげー! おっかねー!」
ケラケラと笑うエースの声。炎魔法の手本として見せただけで、ここまで喜んでくれるとは思わなかった。
マレウスは得意げに笑った。他の生徒たちには迷惑な話である。
本当は同じ朝をむかえたい
オンボロ寮のゲストルームの一室でむかえた朝。一つのセミダブルベッドの中で、エースが先に目覚めた。
エースのとなりには、まだ眠っているマレウスの姿があった。
エースはマレウスの寝顔を見つめる。国宝級の美しさだが、どこか幼さを感じる。
「きれいとかわいいが両立してる……」
思わずそうつぶやき、急に恥ずかしくなったエースは、そっとベッドから抜け出す。かんたんに身支度を整えて、ゲストルームから出ていった。マレウスを残して。
エースはまだ、マレウスとともに朝をむかえる勇気を持てずにいる。
扉が閉まる音を聞いてから、マレウスは目を開く。彼もまた、エースを引き留める勇気を持てていない。
カップアイス
マレウスがエースのために用意していた、カップアイスが一つ。冷凍魔法が強すぎて、カチコチに凍っている。
アイスの表面すらスプーンですくえない。エースは顔をしかめる。
「せんぱーい。硬いっすよコレ」
「すくえないのか?」
「無理無理」
「貸してみろ」
手渡されたスプーンとアイス。早速マレウスはスプーンをアイスに突き立てる。馬鹿力によって、表面がメリメリと剥がれていくアイス。数回くり返せば、カーブを何層も描いたアイスの盛り付けが完成した。
「これで食べられるだろう」
そう言って、マレウスはアイスとスプーンをエースに返した。
エースは程よく薄くなったアイスの層にスプーンを差す。アイスはあっさりとスプーンのさじに乗った。
一口食べて、冷たくて甘い幸せを堪能する。
「うんまーい!」
エースの純粋な笑顔に、マレウスの胸が暖かくなった。
夕暮れの風鈴
放課後の夕暮れが迫るオンボロ寮内。家主が留守にしている回廊で、マレウスとエースは並んで風鈴を見上げていた。
「なかなか涼しげな音色だ」
「夏って感じしますよね。オレ、こういうの結構好きっす」
エースは嬉しそうに、窓辺に吊るされた風鈴の音に耳をすませていた。
マレウスは提案する。
「気に入ったのなら、お前にくれてやっても良い」
「え? いやでもこれ、監督生のでしょ。勝手に持ってったら怒られんじゃん」
「問題ない。持ち主は僕だ」
「そうなんすか!?」
初耳だ。まさかマレウスの私物が、他寮の回廊に設置されているとは思わなかった。
続いて、エースは監督生とグリムが心配になった。自身たちのテリトリーを、他寮生に好き勝手されてはいないかと。もっとも、エースもゲストルームに入り浸っているので、人のことは言えないのだが。
あたふたとしているエースを見て、マレウスは小さく笑う。
「欲しいのなら、遠慮はいらんぞ」
「ええ!? いや、でも、悪いっすよ! そんな簡単にもらうわけには……!」
一国の王子の私物をもらうなど、さすがに恐れ多い。
一歩引いたエースを、マレウスは不思議そうに見る。
「何を遠慮しているんだ。お前はいつも欲しいものは欲しいと言うだろう」
「そりゃあ、まあ……? でも、今回は違うっていうか」
欲しがる相手は決まっている。対等な者か、もしくは心を許した者。そして欲しがる物は、彼らが持っている菓子程度だ。
風鈴は菓子のような消え物ではない、立派な納涼グッズ。欲しがるには大物すぎる。
そしてマレウスは、エースと対等ではない。……心を許してもいない。
風が強まり、風鈴が一段と大きく鳴りひびく。
わずかな沈黙を破ったのはマレウスだ。
「では、代わりにお前の時間をもらおうか」
「時間……? オレの時間を使って、何するんすか?」
「僕とのデートに使う」
「デート!?」
付き合っていないのに、デートとは。ツッコミかけたが、耐えた。もしかしたら妖精族にとっては、ただの同伴を、デートと洒落た言い方をするかもしれない。
エースは愛想笑いをマレウスに見せる。
「あははは……。先輩もまあまあ言いますね」
「ん? 何がだ」
「ああいや。なんでもないです」
余計なことを言って怒らせたくないので、エースはごまかした。
マレウスは改めて言う。
「まあ良い。では風鈴と引き換えだ」
マレウスの瞳が、窓枠越しの夕焼けを反射して輝く。
妖しくも美しい、ライムグリーンの瞳。エースの心が奪われた。
風はいつのまにか止んでいた。
開きっぱなしの窓に生ぬるい空気が入ってくる。エースはうっすらと汗をかく。鳴っていた風鈴は黙って、空気を受け入れている。
エースの手の中に収まった瞬間、ぢりんと音がにぶく鳴った。それを最後に、今度こそ風鈴は完全に沈黙した。
「外泊届けは、僕がローズハートに出しておいてやる」
「……」
「だから何も気にせず、明日の夜を僕に捧げよ。約束だ」
「……はい」
ドラゴンの瞳に魅入られたエースにふたたび吊るされるまで、風鈴は息を吹き返さないだろう。
竜の巣穴に一人向かうエースが、無事に戻って来られたらの話だが。
独占欲
「トラッポラ。僕は、お前が誰かと親しくしているのを見るだけで、腹立たしくなる」
「え……」
「独占したい。ずっと、僕だけのものにしたい」
マレウスの瞳は、まるで獲物を狙うドラゴンのように、ギラギラと光っている。
エースは息をのむ。
「そ、それって……」
「怖いか? 気持ち悪いか? ……それでも僕は、お前を手放せない」
マレウスはエースの手をつかんだ。その手は信じられないほど冷たい。
これが好きってこと
他愛のない、ただのケンカだ。エースが怒鳴って、マレウスがむすりとしながら聞いている。
怒りを言語にしない態度に、エースはますますいらだちが募る。マレウスの態度にも文句を言う。
「さっきから黙んないでくれる? たまには先輩の本音、聞かせろよ!」
閉ざしていたマレウスの口が、ついに開く。
「お前は、僕の本音を知りたいのか?」
「当たり前だろ!」
マレウスはけわしい顔をしながら、エースの目をじっと見つめた。本音が聞けるかもしれないと、エースはじっと黙る。
何もせず、一分も経てば、さすがにエースの怒りが少し萎えていく。
にらみ返していたエースの眼差しがやわらいでいく頃。マレウスは再び口を開く。
「お前はいつも予測不能で、奔放で、目が離せない。だからお前の行動に助言をあたえてしまう」
「助言って!」
口を挟む、の間違いだ。クラスメイトに肩を組まれただけで、やれ無防備だの、やれ危機管理がなっていないだの、文句を言われる筋合いはない。ケンカの原因はそれである。
エースは嫌味を思いつき、そのまま言う。
「それってさあ、オレのこと好きってことになるけど?」
「好き……」
エースの目の前にあるのは、天啓を受けたような表情だった。それはぶつぶつとつぶやきだす。
「好き。これが……好き……」
「そう! そんで結局、オレのこと、好きなんだ? ふん。嫌いだと言うならいまのうちだけど?」
嫌味が通じたと喜ぶエースが追い打ちをかける。自身への追い打ちだと気づかないまま。
「そうだ。好きだ」
「……あれ?」
やぶをつついたらドラゴンが出た。そう気づいても、もう遅かった。