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マレエーSS集No.1〜25
【No.1】プロポーズ
「明日、僕は卒業する。その前に、去年したプロポーズの返事を聞きたい」
青白く輝く月夜を背景に、マレウスはエースに願う。
脇の下に腕を回され、抱っこされているエースは、あらためてマレウスの首元にしがみつく。
「はい。先輩と結婚します」
「トラッポラ……!」
感極まったマレウスは、エースをつぶさない程度に、より強く抱きしめる。
エースもマレウスから離れない。
離れたら……死んでしまう。
ここは空の上。脅された末に落とされてはたまらない!
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【No.2】雄っぱいに溺れる
かわいい子の胸に頭を挟まれてみたい。
健全な青少年なら、おそらく一度は思い描く願望だ。
それを世間知らずのかわいい恋人が、どこかで耳に挟んでしまったようだ。
「お前も、こうされたかったのだろう」
「どうだ、トラッポラ」
魔法薬で二人に増えたかわいい恋人──マレウスの柔らかい胸筋に頭を挟まれて、エースは答えられない。
正面のマレウスの背中をタップして、やっと離された。
「窒息させる気か!?」
エースの頭上で、マレウスは二人そろって笑う。
「僕たちだけを考えるのなら」
「おぼれ続けるがいい」
「むぐうっ」
また挟まれて、エースはうめいた。
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【No.3】出られない部屋ディープキスver
ディープキスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「さあ、この僕に口づけろ」
どうやらマレウスが犯人のようだ。
いまはキスをする気分ではない。逃げるために、エースはふてくされた演技をマレウスに見せる。
「腰が抜けちゃうキスなんかしたら、このあと空デートできないじゃん」
「僕が抱っこするから問題ない」
逃げられなかった。
こうなれば腰くだけにさせてやろうと、エースは持っている技術を駆使してマレウスにディープキスをしかける。
応えたマレウスに、逆に腰をくだかれた。部屋から出られても、次は空に連れていかれた。
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【No.4】出られない部屋セックスver
セックスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「どうせアンタが犯人だろ!」
「そうだ」
バレているならと、マレウスは開き直った。
呆れながらも、エースは渾身の上目遣いをマレウスに見せつける。
「するならマレウス先輩の部屋がいいな」
真っ白な部屋が、見慣れたマレウスの部屋に変わった。
エースはガッツポーズを決める。
「よっしゃ出られた!」
「……待て、どこへ行く?」
「え? 帰るんだけど? まさかセックスのこと言ってる? あっはははは! 今日するなんて言ってねーし!」
意気揚々と廊下に出ようとするエースを、当然マレウスは魔法で引き止め、ベッドに放り投げた。
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【No.5】ドラゴンの種は強い
マレウスが卒業してから三年。エース・トラッポラと名乗る男が王城の門前まで来たらしい。
マレウスはすぐに自室に通すように、門番に命じた。
三年ぶりに見たエースの腹は、マレウスの期待通り、膨らんでいた。
「最初は太ったのかと思ったよ。実際はもっと最悪だったけどな。気持ち悪いのが続いたあたりで、なんかおかしいって思って、病院で診てもらったら……腹ん中で、卵が作られてきてるって」
「順調そうでよかった」
「やっぱりアンタだったのか!」
ドラゴン族の精子は強い。三年間、エースの腹の中で生き続け、つい先日に妊娠が発覚したようだ。
「卒業をきっかけに別れるなどと言い出すから、確かなつながりを結ばせたかった」
三年前に蒔いた種が無事に結べて、マレウスはホッとした。
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【No.6】届かないので
目当ての本まであと数センチ。背伸びをしても届かない。脚立を使えばいいのだが、エースは使わない。もっと便利な方法があるからだ。
「マレウス先輩」
「呼んだか、トラッポラ」
どこからともなくマレウスが現れた。
マレウスではなく高い本棚を見ながら、エースは願う。
「あの本、取ってほしいの」
マレウスは長身を活かして、本をすっと取った。
「どうぞ」
「ありがと」
本をもらおうとマレウスに差し出すエースの手。逆に取られて、手の甲にキスを落とされる。イジワルな本棚よりも自分を見ろと言わんばかりに。
脚立を用意するよりもずっと早くて、オマケも手に入る。これ以上に便利でかわいい恋人はいない。
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【No.7】雨と薔薇の香り
雨が降り終わった香りと、薔薇の香りが混ざっている。むせるような香りに包まれた薔薇園の中、目の前にあるのは雨粒が花弁の中に溜まった薔薇の群れ。
一輪から水滴がぱたりと落ちた。それはまるで、涙を流す彼のようだった。
「なんで思い出すかなあ」
エースは空を見上げる。くもり空はまだ続くようだ。
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【No.8】好き×6
「好き好き好き好き好きっ好き♪愛してる♪」
「誰をだ」
「いや、誰って。監督生の世界でやってたアニメの歌らしいっすよ。イッキューさんっていう──」
「誰だ、その男は!!」
「アニメだっつってんだろ!」
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【No.9】表情筋よ、仕事しろ
突然エースは自身の頬をムニムニとこね始めた。
エースの奇行に少し驚いたマレウスは問いかける。
「どうした、いきなり」
「や。気にしないでください」
頬から手を離したエースはそっけなく言った。
恋人に格好よく見られたいのだ。会えて嬉しくてヘニャヘニャにくずれた顔など、見せたくない。だからエースはキリッとした顔を装った。
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【No.10】ひざ枕の悩み
「マレウス先輩のツノってさあ、ひざ枕すんのに向いてねーよな。腕おろしたら、先輩の頭のほうの腕にゴリゴリ当たるし、地味に痛いからさあ、ずっと腕あげてなくちゃいけないわけ。疲れるから、ずっとツノに手ぇ乗せなくちゃいけなくってさ、でもそれだと今度は手持ち無沙汰でさあ、先輩のツノとかオデコとか触るしかないんだよね。リラックスされてもこっちはつまんないっつーの! まあ別にイヤなわけじゃないけど。……ちょっとデュースくーん? 聞いてますかー?」
「……なんでドラコニア先輩にひざ枕したんだ?」
「あっやべ」
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【No.11】不純同性交友
不純異性交友は禁止。
ならば同性が相手なら禁止されないはず。
「だからオレとマレウス先輩がイチャついたって校則違反にならないわけ」
「なるほど!」
デュースはまんまとエースに丸め込まれた。
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【No.12】積極的な恋人
エースを前にして、マレウスは困った。
エースと恋人になったはいいが、どう接したらいいのかわからないからだ。
──とにかくまずは手をつなぐことからか?
そう考えたマレウスが手つなぎを実行しようとした瞬間。
「せーんぱい」
いきなりエースにハグをされた。
「ト、トラッポラ!?」
「なに遠慮してんの? オレに押されちゃっていいわけ?」
「……よくはない」
このまま押されては次期当主の名折れである。マレウスもエースの背中に手を回した。
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【No.13】キスマーク
「もー! またこんなとこに付けて!」
怒っているエースの首に、一つの赤い跡。
跡を付けた犯人のマレウスは悪びれなく言う。
「僕のものだと周りに知らしめてもいいだろう」
「オレがいたたまれなくなるんだよ! ただでさえ見えないとこにもいっぱい付けられてんのに!」
「足りない」
「足りろ!」
目立つ場所にもキスマークを付けたいマレウス。これ以上付けられたくないエース。
二人の争いはまだまだ続く。
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【No.14】猫になったエース
生徒が何らかの魔法により、何らかの姿に変わる。よくあることだ。
だから魔法薬の授業で、エースが猫になってしまったと聞いても、よくあることだと片付けられる。
時間が経てば自然と元の姿に戻る。その間に楽しまねばと、マレウスはエースをさらった。
「よくも僕のトランプ兵をさらいましたね!!」
猫のエースをひざの上に乗せてかわいがるマレウスに怒鳴るリドルの姿も、よくあることなのだ。
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【No.15】スマホを見ている理由
同じベッドの中。向かい合って寝転んでいるのに、エースはスマホに夢中だった。
「トラッポラ。こっちを見ろ」
マレウスに呼びかけられても、エースはスマホの画面から目を離さない。
無視されたマレウスは、すねた顔をする。
「トラッポラ……」
機嫌悪そうに声を低くしても、エースは画面を見ながらニヤけるだけだ。
──いつ種明かししてやろっかな。
マレウスはまだ知らない。
実はいじけているマレウスを、エースは隠し撮りしていたことを。
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【No.16】初めての手つなぎ
手をつなぐ。それだけなのに、どうしてここまで緊張するのだろう。
手汗がにじむ。べたついた手が重なっているのに、ちっとも不快ではなかった。
「好き……です」
「僕もだ……」
ソファに並んで座っている初々しいカップルを、監督生は生ぬるい目で見ていた。
「ここパブリックスペースなんだけど」
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【No.17】夢の中ならやりたい放題
マレウスは王族だ。一般人のエースと表立ってイチャつけない。
なので二人は夢の中でイチャイチャしまくった。
ハグやキスはもちろん、セックスも……。
「なーんか二人とも、色気づいてない?」
監督生のするどい指摘により、二人はしばらく自重した……わけではなかった。
「証拠なんてないしな!」
「痛くもかゆくもない」
今夜も二人はイチャイチャするのであった。
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【No.18】人の話は聞きましょう
(ねみぃなー……)
「……トラッポラ。聞いているのか?」
「え? 聞いてる聞いてる」
「なら僕が何の話をしたのか言ってみろ」
「……オレがかわいいって話でしょ?」
「うん。ちゃんと聞いていたようだな」
(合ってた……)
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【No.19】からかった罰
マレウスの雰囲気が変わった。有無を言わさぬ威圧感。
「僕をからかうのは楽しいか?」
「あー……」
少しからかっただけなのだが、マレウスにとっては流していいことではなかったらしい。
まずいことになった。
真顔だったマレウスはうっすらと笑う。
「そちらがその気なら、こちらも本気で相手をしてやる。覚悟は良いか?」
エースは一瞬、腰が抜けそうになった。しかし、ここで引くわけにはいかない。男としてのプライドが許さない。
「ったり前じゃないですか! いつでも受けて立ちますって!」
「良い返事だ」
マレウスはエースを抱き上げる。転移魔法の先は、マレウスの自室。エースをそっとベッドに下ろす。
「ここでお前に、僕をからかった罪をつぐなってもらう」
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩! 何をするつもりですか!」
「何を? そんなことは、これから嫌というほど分かる。せいぜい、今のうちに後悔しておくといい」
エースは悟った。これは、ただの罰では済まされない。とんでもない事態に発展すると。
しかし逃げることはできなかった。マレウスの瞳が、それを許さなかったから。
「さて、まずは……そうだな。お前のその軽薄な口を、少し黙らせてやろうか」
マレウスの指先が、エースのくちびるをなぞる。
「ちょ、ま、待って」
弱々しい抵抗の声は、あっけなくふさがれた。
エースは心の中で誓う。マレウスをからかうのは、よほどの覚悟がない限り、やめておこうと。
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【No.20】静かな図書室での両片想い劇
図書室でエースは分厚い魔導書を前に、眉間にしわを寄せていた。
その背後に、音もなくマレウスが近づく。
「ずいぶんと難しい顔をしているな」
エースは驚いて振り向く。
「うわっ!? マレウス先輩」
「何か困っているのか?」
「いや、別に困ってるとかじゃなくて。ちょっとこの魔法解析が難しくて……」
マレウスは興味深そうに本を覗き込む。
「……その魔導書は古く、記述も独特だからな。まず一年生には無理だろう」
「ええー? ならいいや」
課題の一つとして、挑戦してみただけだ。無理にやり切る必要はない。一年生が解析できないのなら、レベルを落としても問題ないはずだ。
そう結論づけて、魔導書を閉じる。席を立つ。本棚に戻すために歩きだそうとする前に、マレウスがエースを呼び止める。
「待て。いい機会だ。僕が見てやろう」
「え、いいんすか? でも、先輩も忙しいでしょ?」
言いつつも、エースは座り直した。ちゃっかり甘えようとしている。
頼られたマレウスは嬉しそうに笑う。
「気にするな。お前の手助けくらい、造作もない」
マレウスはエースの隣に腰を下ろす。魔導書を開き直す長身が、エースに影を落とした。
距離が近い。エースは少し緊張してしまう。
「あ、ありがとうございます。えっと、ここが全然わからなくて……」
「ここか。この紋様は──」
説明が続く中、エースの心臓は高鳴りっぱなしだった。
まさか片想い相手から、ここまで接近されるとは思ってもみなかったからだ。
ガチガチに固まっているエースの様子を見て、マレウスはあきらめたように問いかける。
「僕が怖くなったのか?」
「いや。それはありえないね」
即答。本当に恐れているわけではないのだとマレウスは改めた。代わりに疑問が生じる。
「ならなぜ緊張しているんだ?」
「いやあ。ちょーっとね? 怖くないんだけど、かしこまっちゃうかなーって」
「僕は構わないのだが……」
マレウスはさみしそうに答えた。
エースはうつむき、ひざの上で拳を握りしめる。届ける予定のない想いを、胸の奥に仕舞い込むように。
せめてもの誠意として、魔導書の説明は真剣に聞いていった。
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【No.21】炎魔法
魔法練習場の一つのスペースが、巨大な炎で埋められた。
別のスペースで魔法の自習をしていた他の生徒が悲鳴をあげる。魔法の発生源がマレウスだと知った瞬間、パラパラと散っていく生徒たち。怖がらせるつもりはなかったのに。マレウスは少し落ち込む。
だが沈んだ気分は、一人の生徒の歓声で消えていく。
「すげー! おっかねー!」
ケラケラと笑うエースの声。炎魔法の手本として見せただけで、ここまで喜んでくれるとは思わなかった。
マレウスは得意げに笑った。他の生徒たちには迷惑な話である。
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【No.22】本当は同じ朝をむかえたい
オンボロ寮のゲストルームの一室でむかえた朝。一つのセミダブルベッドの中で、エースが先に目覚めた。
エースのとなりには、まだ眠っているマレウスの姿があった。
エースはマレウスの寝顔を見つめる。国宝級の美しさだが、どこか幼さを感じる。
「きれいとかわいいが両立してる……」
思わずそうつぶやき、急に恥ずかしくなったエースは、そっとベッドから抜け出す。かんたんに身支度を整えて、ゲストルームから出ていった。マレウスを残して。
エースはまだ、マレウスとともに朝をむかえる勇気を持てずにいる。
扉が閉まる音を聞いてから、マレウスは目を開く。彼もまた、エースを引き留める勇気を持てていない。
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【No.23】カップアイス
マレウスがエースのために用意していた、カップアイスが一つ。冷凍魔法が強すぎて、カチコチに凍っている。
アイスの表面すらスプーンですくえない。エースは顔をしかめる。
「せんぱーい。硬いっすよコレ」
「すくえないのか?」
「無理無理」
「貸してみろ」
手渡されたスプーンとアイス。早速マレウスはスプーンをアイスに突き立てる。馬鹿力によって、表面がメリメリと剥がれていくアイス。数回くり返せば、カーブを何層も描いたアイスの盛り付けが完成した。
「これで食べられるだろう」
そう言って、マレウスはアイスとスプーンをエースに返した。
エースは程よく薄くなったアイスの層にスプーンを差す。アイスはあっさりとスプーンのさじに乗った。
一口食べて、冷たくて甘い幸せを堪能する。
「うんまーい!」
エースの純粋な笑顔に、マレウスの胸が暖かくなった。
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【No.24】独占欲
「トラッポラ。僕は、お前が誰かと親しくしているのを見るだけで、腹立たしくなる」
「え……」
「独占したい。ずっと、僕だけのものにしたい」
マレウスの瞳は、まるで獲物を狙うドラゴンのように、ギラギラと光っている。
エースは息をのむ。
「そ、それって……」
「怖いか? 気持ち悪いか? ……それでも僕は、お前を手放せない」
マレウスはエースの手をつかんだ。その手は信じられないほど冷たい。
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【No.25】これが好きってこと
他愛のない、ただのケンカだ。エースが怒鳴って、マレウスがむすりとしながら聞いている。
怒りを言語にしない態度に、エースはますますいらだちが募る。マレウスの態度にも文句を言う。
「さっきから黙んないでくれる? たまには先輩の本音、聞かせろよ!」
閉ざしていたマレウスの口が、ついに開く。
「お前は、僕の本音を知りたいのか?」
「当たり前だろ!」
マレウスはけわしい顔をしながら、エースの目をじっと見つめた。本音が聞けるかもしれないと、エースはじっと黙る。
何もせず、一分も経てば、さすがにエースの怒りが少し萎えていく。
にらみ返していたエースの眼差しがやわらいでいく頃。マレウスは再び口を開く。
「お前はいつも予測不能で、奔放で、目が離せない。だからお前の行動に助言をあたえてしまう」
「助言って!」
口を挟む、の間違いだ。クラスメイトに肩を組まれただけで、やれ無防備だの、やれ危機管理がなっていないだの、文句を言われる筋合いはない。ケンカの原因はそれである。
エースは嫌味を思いつき、そのまま言う。
「それってさあ、オレのこと好きってことになるけど?」
「好き……」
エースの目の前にあるのは、天啓を受けたような表情だった。それはぶつぶつとつぶやきだす。
「好き。これが……好き……」
「そう! そんで結局、オレのこと、好きなんだ? ふん。嫌いだと言うならいまのうちだけど?」
嫌味が通じたと喜ぶエースが追い打ちをかける。自身への追い打ちだと気づかないまま。
「そうだ。好きだ」
「……あれ?」
やぶをつついたらドラゴンが出た。そう気づいても、もう遅かった。