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花火の形12
初流
朝、目を覚ます。昨日の夜、いろいろと考え事をしていて寝付くのに時間がかかったせいか、すっかり朝遅くなってしまった。
「やっべ……もう9時になるじゃん!」
ガバッと布団から跳ね起きる。ここ二日間ですっかり習慣になった私服への着替えを爆速で済ませ、バタバタと階段を駆け下りた。
――すると、リビングの前に、今まで見たこともないほど華やかに彩られた志喜が立っていた。
薄い花柄の上品な浴衣に身を包んだ志喜は、僕の視線に気づくとパッと顔を背け、恥ずかしそうにポツリと呟く。
「あ、あんまり見ないでよ……っ。お祭りの楽しみなんだから、今から見られたらもったいないでしょ……」
朝から少女漫画のヒロインみたいなセリフを聞かされ、一気に目が覚めた。
テーブルを挟んで向かいの席に座る。……いや、流石に可愛すぎだろ。心臓に悪い。
用意されていた朝ご飯をつつきながら、ふと思い出して母さんに尋ねる。
「あ、そういえば母さん、父さんは?」
「もう現場に行っちゃったわよ。あの人、朝の4時には家を出てたから」
いつも「いってらっしゃい」も言えないくらい早くに出ていくから、昨日の夜に話したのが大体最後になる。まあ、いつものことだから寂しくはないんだけど。
ご飯を食べ終えると、志喜が僕に視線を向けた。
「ねえ、今日ってお祭り何時に家出る……?」
「んー、11時ごろかな。早く行きすぎても屋台も何も始まってないし」
「そっか、わかった。ありがと」
志喜の返事を見届けてからリビングを後にし、僕は父さんの書斎に向かった。自分の部屋で読む本を何冊か借りていこうと思ったのだ。
書斎の机に近づくと、ふと一枚の書き置きが目に留まった。
『君の残り香
君の足音
いつかの
まだ新しい
夏の日』
父さんは時々、こういう良く分からないポエムみたいなものを残す。すべてに何かしらの意味はあるらしいんだけど、僕にはサッパリ分からない。まあ、今度帰ってきた時にでも解説してもらうか。
適当に本を選んで部屋に戻り、少し時間を潰す。
時計の針を見ると、あっという間に11時になろうとしていた。
「やっべ、準備して行かないと!」
急いで準備を整え、玄関へと向かう。
玄関で待っていた志喜は、僕の姿を見るなり目を丸くして驚いた。
「え……っ、晴斗くん、浴衣……!?」
ふっ、見事サプライズ成功だ。
志喜が浴衣を着ることは分かっていた。だからこそ、せっかくの夏祭りを二人で思いっきり楽しむために、僕も押入れから引っ張り出しておいたのだ。
志喜の華やかな花柄の浴衣とは違って、僕のは模様すらないシンプルな紺色の浴衣だけど――二人で並んで玄関の鏡に映ると、なんだかすごくしっくり来て見えた。
「さあ、行こうか!」
「……うんっ」
志喜は顔を真っ赤にして俯きながら、僕の隣で一歩を踏み出した。
とうとう最終日!あとちょっとで終わるので最後までお付き合いください!
ちなみに私はカズと裕奈をくっつけたいです!