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借りてきた猫のようだった
外泊届を出した瞬間から、覚悟はしていた。
夜。エースはガチガチに緊張した表情で、マレウスのベッドに腰かけた。
まるで借りてきた猫のようなエースの肩を、マレウスは抱く。
「トラッポラ、そんなに固くなるな。夜をともに過ごすだけだ」
「でも、でもさ、マレウス先輩の部屋に、しかもベッドに座るなんて、普通に緊張するでしょ」
「……ならば、床に座るか?」
マレウスなりの冗談だったが、エースはそう取らなかった。
正常な判断を失ったエースはマレウスから離れる。ベッドに腰かけたままのマレウスの足元の床に、素直に座った。
長い足に抱きつくように、ぺたりともたれかかる。
マレウスは驚く。マレウスの足におとなしく懐くエースの姿を凝視する。
「……いい」
「新しい扉開こうとすんな!」
不穏なつぶやきを聞いたエースは正気にもどり、あわててマレウスの足からも離れた。