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目次
マレウスとエースの交際が学園中にバレてから、赤いがおがおドラコーンくんをエースが持ち歩くまで
エースにとっての悲劇は、食堂でとうとつに起こった。
「なあ、マレウスは──」
マレウスを呼び捨て。失態に気づいたエースの口は、言葉の途中で閉じられた。
マレウスとデュースは驚いて、大きく開いた目でエースを見た。
あのドラコニアに失礼な口を聞かないように、と願っていた周囲の者たちもエースを凝視した。
エースたちを中心に静まる一画。幸運にも遠くにいて聞こえないでいた者たちの喧騒が、いつもより遠くに感じる。
「すんません」
先に口を開いたのはエースだった。
恐々と観察する周囲をよそに、マレウスは目を細めて「ふっ」と笑う。
「構わない。むしろもっと、そう呼んでほしい。二人だけのひみつもいいが、そろそろ認知されたかったからな」
「にんち?」
何も察せないデュースの疑問。やめろ聞くなと無言で訴える周囲。願いもむなしく、マレウスは機嫌よく答える。
「僕とエースは、恋人同士だ」
名前呼びされたエースは叫ぶ。
「ちょっとは誤魔化そうと思わないの!?」
とうとう周囲に認知されてしまったエースは、真っ赤な顔を手で覆った。
ホットニュースはたった数十分で学園中に広まった。
────────────────
「やっぱ男なら、一度はかわいい女の子のおっぱいに挟まれてみたいよな〜!」
「わかるわ。あの二つの膨らみに顔を埋めながら、後ろにも押しつけられたい」
「サンドイッチされてえの!? すげー変態じゃん!」
「でもそれ、わかるわ! 男のロマンだよなあ」
「ほう。それがお前のロマンか」
廊下のすみで盛り上がっていた低俗な話題に、冷たい声がかぶさった。
ピシリと固まる空気。エースはおそるおそる振り向く。予想通り、恋人のマレウスがいた。
王族の恋人に猥談をふっかけた不届き者と思われたくないクラスメイトたちは、そそくさとエースを置いて逃げていく。
冷や汗をダラダラ流しているエースに、マレウスは告げる。
「ローズハートに外泊届けを出せ。今夜、僕の部屋に泊まりに来い」
「はい」
そして夜。竜の巣穴に入っていったエースに待ち受けていたものは。
「よく来たな、僕たちの愛おしい恋人」
「かわいい僕たちが、お前のロマンを叶えてやろう」
「増えてるー!!」
魔法薬で二人に増えたマレウスだった。
肉体的にも精神的にも濃密な夜を過ごして、翌朝。二人のマレウスにたっぷり愛されたエースは、一人に戻ったマレウスの寝顔を見て決心する。恋人を挑発しかねないロマンは二度と言わないと。
────────────────
毎月やってくる、新月の夜。魔力を吸収してくれる月が完全に隠れて、マレウスは膨大な魔力を持て余していた。
いつもはさほど驚異ではないはずなのだが、不運にも今日は調子が悪かった。人形態のまま、意図せず尻尾が生え、耳の色も形も、竜に変わっている。
黒い爪も鋭いものに変わり始めた頃。扉からノック音がした。
立ち入り禁止のはずだ。不審者の気配に、一気に警戒心が増す。低い声を出す。
「誰だ」
扉を開いてきたら炎を吐くつもりで身構えていると、扉の向こうから声がした。
「アンタの恋人ですよ。開けていいですよね。つーか開けるわ」
開かれた扉の隙間から、エースの顔が見えた。
「入っていいでしょ? マレウス」
「……許す」
口の中に込めていた炎の気配は、もう消してある。
入室したエースは扉を閉める。ベッドに近づき、乗り上がろうとした瞬間。大きな手がエースを引きずり込んだ。
「エース……」
爪を当てないよう注意しながら、マレウスはエースを組み敷く。くちびるを深く重ねる。エースが発狂しない程度に、魔力をゆっくりと送り込む。
送れた魔力は微々たるものなのに、エースに触れているだけで、ずいぶんと楽になれた。
くちびるを解く。ため息を深くつきながら、エースの上で脱力する。伏せた顔は、エースの顔の真横に落ち着いた。
二人のマレウスだけでは飽き足らず、今度はマレウスとベッドに思いきりサンドイッチされたエース。「ぐえ」とうめいた後、抗議する。
「重いんだけど!?」
「もう少し、このまま……」
「……病人じゃなかったら剥がしてるとこだからな」
「ははは。恐れ知らずなやつだ」
「はあ……スマホくらい持ち歩いといてくださいよ。すぐにお助けメッセージ送ってくんなきゃさあ、こんな土壇場になんないと助けらんないじゃん」
「あれは苦手だ」
「ドラコーンは大事にしてるくせに……」
文句を言いながら、エースはマレウスの耳を指でいじる。いつもの尖った耳に戻っていた。
────────────────
抽選の戦いの果てに、ついに手に入れた、がけもライブチケット。
何かと理由をつけて、マレウスから借りたばかりの、マレウスのがおがおドラコーン。
以前から持っていた新品の、復刻がおがおドラコーン。カラーは赤だ。
これら三点を、エースは上着のポケットにまとめて入れる。歩くとガチャガチャと音がした。機械同士──うち一つは借り物だ──をぶつけるのはよくないと思い、借り物のほうを別のポケットに入れ直した。
目指すはイグニハイド寮。
「お願いしますイデア先輩! このチケットをあげますので、このがおがおドラコーンたちにチャット機能を付けてください!」
まずイデアはチケットを確認した。
本物だが、席の位置が最悪だった。三百六十度の観客席の中には、とうぜんアイドルたちがまったく見えない位置がある。しかもメインステージが柱で完全に隠れてしまう位置。一番安い席に応募したのは確実だ。
なじろうとしたが、やめた。二つのオモチャにチャット機能を付けるなど簡単すぎる。チケットの値段的に、報酬に見合う依頼と言えた。
イデアはエースに質問する。
「チャットってことは、ネットでつながりたいの?」
「はい。いつでもメッセージが送れるように」
「この二つのオモチャ限定?」
「その二つの間だけでお願いします。トランシーバーみたいな? あ、あと操作は複雑にならないように」
「そうなると、あまり文字数が送れないよ。ボタンもたった四つしかないし。この画面だと、せいぜい八文字がいいとこ」
「それでいいです。おはよう、とか、こんにちは、とか、そのくらいの文字が打てるだけでいいんで」
「へえ……」
いじらしい。
いくら一番安い席とはいえ、競争率の高いチケットだ。それを苦労して手に入れてまで、やってほしい依頼内容は、とてもいじらしいものだった。
リア充は嫌いだが、親しい者には当てはまらない。
「いいよ。すぐにできる。明日、オルトに届けるようにお願いしとく」
「よっしゃあ! お願いします!」
「スマホも使えない恋人を持つと苦労しますなあ」
「そ! そんなんじゃないですって! すぐに連絡が取れないのって不便なんですよ!」
捨てゼリフを吐いて、エースはイデアの部屋から出ていった。
残されたイデアはつぶやく。
「連絡、ねえ」
一言程度のあいさつだけで済まされる連絡など、あるわけがないのに。
インターン先が決まりました
強姦オンリー。睡姦もあり。純愛ではありません。
連続潮吹き、軽い結腸責め、人外ヘミペニス、虫姦はないけど虫表現があります。
三年生になったエースは、まだ将来の夢がなかった。
周りがインターン先の候補を決めていく頃。どうしようかと迷っているエースのもとに一通の招待状が届く。
次期当主として王城に勤める卒業生マレウスからの、茨の谷の王城への招待状だった──。
「いやいやいやいや、冗談きついですって! オレもアンタも男でしょ? セックスなんてできないって!」
「な……なにすんだよ! やめろよ! アンタ王族なんだろ!? こーゆーのってマズイんじゃないの!?」
「うあ、ああ! なん、で!? オ、オレ、男なのに……!」
「あああ……やだ……やだあ! 変なのが、くる……! やだやだ、離せよ!! 離せってばあ! 離せよ、離して……! あ……ああ……!」
「イくっ! い、くう! イ……グッ。い、いぐ。イッで、るうう……。ひいっ! もう触んないでえ! や、だあ。また、いくっ。やめろよおお!」
「あああああああ!! クソがクソがクソがああああ!! ざっけんなこのクソやろう! ぶっ飛ばしてやる。ぜったいに! あ、あとで、ぶっ飛ばしてやるからなあああ!! ああ! あああああ……! あ、ひ……っ。いぐううぅうううああああ……! ごろしでやるうううう……」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ゆるしてください。オレがわるかった。わるかったから。もうやめて。やめてください。しぬ。しぬ。しんじゃう。もうむり。やだ。やだよお。こわいよお。もうイきたくない。もう、もう、もう……」
「ひ……あ……あう……あ…………ま、た……イく……イ…………あ、あー、あ、あ、あひっ、あひ、ひ、ひい…………ふあ……もれちゃう……みないで…………あ……あーーーー……」
ぷしゃああああああ……。
おそらく通算十回は超えた潮吹き。漏れた潮がぴちゃぴちゃとエースの腹をたたく。
収まってもなお、マレウスの手のひらはくちゃくちゃとエースの亀頭をなで続ける。
連続潮吹きを強要されたエースは涙をこぼして、かくかくと全身をけいれんさせる。
「い……や……! でないいぃ……!」
深くつらぬかれた腰はマレウスから逃げられない。二度目の潮吹きはあえなく訪れた。
亀頭をなでるマレウスの手は止まらない。
あまりの刺激に、ぼやけていた意識が覚めてきた。
本格的にエースは体を跳ねようとする。けれど今日の体力はすっかり消耗してしまった。睡眠を挟まないと、もうロクに動けない。
「もうでないからあっ。やめて。つらい。寝かせて。おねがい」
無言だったマレウスがついに口を開く。
「いまは潮を吹かせたい気分なんだ。まだ寝かせない」
「うう……!」
こうなったマレウスは止まらない。この数ヶ月で、すっかり教え込まれた。
数ヶ月と言っても、時計もカレンダーもない部屋だ。エースの体感に過ぎない。
しかし顔を傾ければ、カーテンが開かれた窓の外の景色が映る。昼も、夜も、雨も、雪も、エースの目に映ったことがある。
いまは雪が降っている。
茨の谷の王城に招かれたときは、エースが三年生になったばかりの秋だったのに。
下手をすれば、もうウィンターホリデーに入っているかもしれない。これからインターン先を決めなくてはいけない、大事な時期なのに。決める以前に、出席日数が足りなくて、留年してしまう。
「うああああああああ」
三度目の潮吹き。量はかなり減っている。控えめに雫が垂れた程度だ。
マレウスはふっと笑う。
「もう出ないと言ったのに。ウソつき」
弱った亀頭を指の腹でくすぐられながら、腹の中の奥をトントンと突かれる。
「あああっ。あ、やあ、やだ」
潮を吹いた直後は、何をされても苦しい。
この苦しみはいつまで続くのか。
「もう帰して。ここから出してよ。くるしい」
「まだ帰さない。ここにいろ」
軽く奥を何度も突かれる。
言葉がまともに出てこない。それでもエースはけんめいに問いかける。
「あ、あ。お、オレ、オレっ、にんげん、だよなっ?」
「うん?」
「も、もお、ああ、あ、も、ずっと! ずっと、トイっ、トイレ、行ってないっ、けど! メシも、たっ、食べ、てっ、なあああっ! あ、あ…………な……ないっ、けど、にっ、にんげん、だよな!?」
「……」
「まほ、うっ、で! し、しなくて、もっ、いいっ、だけに、なっで、る! …………はあっ、はあっ……! しなくても、よくなってる、だけだよな……?」
食事も排泄も、ずっとしていない。
できることは睡眠だけ。
マレウスとつながったまま、眠ったこともある。ひどいときはそのまま数日間もつながりっぱなしだった。
あきらかに人間業ではない。けれど可能性にすがりつくエースに、マレウスは答える。
「人間のままだったとしても、妖精に気に入られた人間がどうなるかくらい、わかるはずだ」
もう元の生活には戻れない。
遠回しに、そう告げられた。
くちゅくちゅくちゅくちゅ、と亀頭責めを本格的に再開される。トントントン、と硬くなってきたペニスで奥も突かれていく。
「いひっ! ひああ、あっ、あっ! ああ、せ、せめ、て……家にっ、か、かえっ、帰してよ」
「いつか帰そう。いつか、な」
悲鳴をあげたエースの背が弓なりに反る。アーチを描く腹が、がくんがくん、と何度も上下する。ペニスからは何も出てこない。潮が尽きたようだ。
マレウスは奥を突くことをいったんやめる。亀頭を責めていた指を下ろして、竿を激しくしごく。
引きつった悲鳴に変わり、数秒後。エースは射精した。
反っていた背中がベッドに落ちる。虫の息になっているエースを、マレウスは挿入したままひっくり返す。
「あええっ」
角度が急に変わり、エースはあえいだ。この後に何が起こるかは、もう知っている。
挿入されたまま、腰を高く上げられる。足の長さが違いすぎるため、エースの膝頭は浮いてしまう。宙ぶらりんになった腰を、マレウスはしっかりと掴み、離さない。
「まだだ。まだ寝かせない」
前後に揺さぶられる。手に力は入らず、顔ごとシーツの海に沈む。
「あ……ぁあ……あーー…………」
まぶたにも力が入らない。今日をあきらめて、エースは涙まみれの目をつむる。せめて明日で終わりますように、と願いながら。
────────────────
夜闇の静寂の中。ねばついた水音が聞こえた。
執務室から帰ってきたばかりのマレウスは音源を見る。予想どおり、ベッドで眠っているエースからだった。
マレウスは光量をしぼった魔法のランプを付けたまま、ベッドに近づく。裸のエースの腹は濡れていた。自室から出る直前に洗浄魔法で体をきれいにしていたが、ほんの数時間で、白濁液でずいぶんと汚れている。
マレウスはエースの腹に触れる。ねばついたそれは精液だった。
夢の中でも順調に犯されているらしい。
最初の半日は現実で犯したが、マレウスのやり方を学習させた後に眠らせれば、続きは食事も排泄も必要ない夢の中で、エースが学習したばかりのマレウスが犯していく。
夢の中でも犯されれば、現実では触れていなくても、こうしてエースは射精する。マレウスがいない間も達し続けていたであろうそれの量は多く、ベッドのシーツにもこぼれている。
経過時間を考えると、おそらくエースの夢の中では冬になっている。
現実では、エースが王城に訪れてから一日しか経っていない、秋のままなのに。
マレウスは手に付いた精液を、自分の歯の噛み合わせに塗る。精液を噛んで、命を結ばなかった精子をつぶす。飲みこみ、食らった。
「トラッポラ。お前は、僕のお気に入りだ」
気に入った人間を妖精の国にさらう習性が、妖精族にはある。その習性に従ったマレウスは、エースの将来を平和的に茨の谷に縛りつけようと考えた。
まずは茨の谷に招く。ふだんから親しくしていたマレウスの招待を、エースは何も疑わずに受けた。巣の中にも招き入れ、体を妖精族の精に染めた。いまは夢の中でも精を浴びさせて、心ごと妖精族を忘れさせないようにしている最中だ。
しかし完全にさらうには、まだ足りない。
マレウスは服を脱ぐ。エースと同じく全裸になり、ベッドに乗り上がる。エースの股の間に体を割りこみ、ペニスをエースの中に挿入した。すでにほぐれていたそこは簡単に入れた。
「あ、あ、あ、あ」
夢でも現実でもマレウスに犯されて、エースは閉じた目から涙をポロポロとこぼしている。ピストンするたびに薄い精液を、とぷっ、とぷっ、と吐き出している。
──美味しそうだ。
そう考えていると、マレウスのペニスが生えている箇所のすぐ上が、ムズムズとした。
マレウスはそこに指を這わせる。スリットが入っている中心をなぞると、開いてきた。
エースを犯しながらスリットに刺激を加え続けているうちに、完全に開いたスリットからぶるんと、もう一本のペニスが飛び出た。
限られた者しか知らない、ドラゴンの妖精族特有の、前後に生えた二本のペニス。
常に隠している二本目のペニスの裏側にも、縦にスリットが入っている。つがいをかわいがるためにあるものだ。
すでにエースの腹の中に入っている一本目──後方のペニス──をピストンする勢いのまま、マレウスは二本目──前方のペニス──をエースのペニスに、くぬくぬと押しつける。
早く食らいたくて、マレウスの息が「はあ、はあ、はあ……!」と荒くなる。
エースの竿に沿うように押しつけていたスリットが、ゆっくりとほころんできた。
スリットが開きそうになった瞬間。
「ぁああ……ああああ!」
エースが悲鳴をあげながら、目を覚ました。思わずマレウスはピストンを中断して、ペニスのスリットをキュッと閉じた。
季節が移ろうほど長く過ごした夢の中から出られて、思いきり開かれたエースの目に真っ先に映ったものは、マレウスの顔でも、天蓋ベッドの天井でもなかった。
「あえ?」
自身のペニスに押しつけられている、マレウスの前方のペニスだった。
「いいタイミングだ」
エースは眼球の動きだけでマレウスに視線をうつす。マレウスはなまめかしく首を傾げ、頬を染めながら笑う。
「見ろ、トラッポラ。僕の秘密を」
ふたたびエースは前方のペニスを見た。
前方のペニスの先端を、自ら指先で持ち上げるマレウス。裏に秘められたスリットをエースに見せつける。
エースに凝視されているだけで興奮して、くちゃあ……とゆっくり開かれていくスリット。トラバサミのように開かれた中は、ヤスデの裏側のような細短いものたちが、ところせましと生えていた。一本一本がうぞうぞとうごめいているそれらは、虫嫌いが見たら間違いなく卒倒する光景だった。
「これで、お前をかわいがってやろう」
やわらかいトラバサミが、獲物に覆いかぶさろうと動きだす。
「ひ……!」
恐怖で萎えようとしていたエースのペニスが、マレウスの前方のペニスの中に、呑み込まれていった。
「ひいいいいいいいい!!」
三百六十度、あますことなく、細くて短い触手たちがエースのペニスを揉みくちゃにしていく。
後方のペニスもピストンを再開して、エースの腹の中をまた犯していく。深く挿すたびに、結腸口がマレウスの亀頭とディープキスをする。
マレウスがピストンするたびに、前方のスリットも上下に動かされる。スリットに締め付けられながら動かされた刺激が、エースのペニスの根元に襲いかかる。
後方のペニスが引けば、前方のペニスの先端付近の中にある触手たちが、エースの尿道口とディープキスをする。くちゅちゅちゅちゅ、と尿道内で抜き差しを浅く素早く繰り返す。
ピストンされるたびに、結腸口と尿道口を責められて、エースは発狂寸前まで追い詰められた。
「ぎゃあああああっ! やだやだやだあああああ! やだよおおおおお! はああっ! はっ、腹ん中ああっ! ちんこがっ! オレのちんこがあああ!! 食われちゃうううううう!! いやだーーーーっ!」
マレウスの前方のペニスの中で、エースは射精を繰り返す。
「い、イぐっ! いぃイい、イくぅ! イっでるがらああ……っ! もうやあぁあ……イきだくないぃ……や、や、やらぁ」
やがて精液も出尽くして、空打ちを繰り返す頃。
「イぅ……っ、イ……う…………」
またエースは気絶した。
長命種のマレウスは、短命種のエースよりずっと射精が遅い。エースが夢の世界へまた旅立ってもなおピストンを続ける。数分後。ようやくマレウスもエースの中に射精できた。
妖精族の精を奥に塗りつけ、ついでにエースのペニスもたっぷりと犯してから、マレウスはエースを解放した。二本とも、しばらくは萎えたままだろう。股間を魔法で洗浄してから、前方のペニスをスリットの中にしまった。
「あ……へ……あひっ。あひ……ひ……」
夢と現実の区別がついていないエースは、まだ快楽責めから抜けられていない。むしろマレウスの二本のペニスを学習してしまったせいで、さらなる快楽が夢の中で待っている。
次に目覚めるのは、夢の中で春を迎える頃だろうか。
春が来るまでの冬中。積もった雪が音を吸い、しんとした城内で二本のペニスに愛される日々。そのような日々を休みなく送らせるために、マレウスはエースの脳に学習魔法をかける。内容は、二本のペニスの実情だ。
二本目である前方のペニスも、ふつうのペニスのように、エースの腹の中を犯せる。片方が萎えても、もう片方が元気に中を犯せるのだ。加えてスリットは後方のペニスにも備わっている。マレウスがその気になれば、前方のペニスを挿入したバック体位でも、後方のペニスのスリットを開いて、エースのペニスをかわいがれる。
魔法をかけ終わり、学習を完了させた途端。
「う……あ、あ……ああ! ああ! ああ!」
眠ったまま、エースは鳴き始めた。夢の中のマレウスにひどく犯されているのは明白だ。萎えたペニスを震わせて、何も出てこない苦しみにもだえている。
マレウスはエースのペニスに手を伸ばす。尿道口に指の腹をそえて、くぱくぱと開閉を繰り返している感触を楽しむ。指をくるくると動かして、いたずらに刺激を与える。
「あー! ああーっ!」
「さすがにもう出ないな」
現実でもこうして犯されて。たとえ夢の中で仮初の睡眠を挟もうとも、おそらくエースは人間性を保てない。
そのほうがきっと良い。エース自身はもちろん、母体が故郷を想って泣き叫ぶなど、あってはならない。
尿道口から指を離したマレウスは、今度はエースの腹をなでる。
母体が男の体でも、卵の苗床を体内に新しく作るほどに、ドラゴンの精子は強い。産卵できるのは卒業後だろう。妖精族の命を、人間が堕ろす術はない。王城で過ごした濃密な日々をどんなに忘れようとしても、腹に宿った命はエースから離れない。
「これでインターン先は茨の谷一択になったな」
「あぁ……あうう……」
エースは将来の夢がないと聞いた。ならば卒業後の将来をこちらで決めてもいいはずだ。
研修内容は教育係に任せるが、抱卵の授業は外せないだろう。
卵を抱くエースの姿がいまから楽しみだ。
ドロドロに汚れたエースを洗浄しないまま、マレウスはエースのそばに横たわり、まだぺったんこな腹を飽きずになで続けた。
赤い腕輪と首輪
学園を管理しているはずの妖精が、騒動を起こした。学園内に想い人がいる者にのみ、その想い人がバレる、プライバシー皆無で迷惑な騒動。
誰かを想う者には赤い腕輪を、誰かに想われる者には赤い首輪を、妖精のイタズラでそれぞれ付けられている。そして想う者と想われる者でペアになった腕輪と首輪の間には、これまた赤い鎖でつながれている。
デュースに付いている腕輪も、エースに付いている首輪も、一部のクラスメイトたちと同じく教室の外に続いている鎖も、見えるのに触れられない。赤いそれらを手で外そうとしても、スカスカと空を切る。伸び縮みが自由自在な鎖は、対象者が逃げても、切れずに追いかける。
外すことをあきらめたエースは肩をすくめる。
「こりゃダメだな。先生たちが解決してくれるのを待とうぜ」
「そのほうがいいな」
うなずいたデュースの腕輪の鎖の先にいる人物を、エースもクラスメイトたちも知っている。どうせ相手は全生徒公認のカップルの片割れだ。
それでも確かめに行ったデバガメは一定数いる。デュースの鎖をたどったクラスメイトが、隣の教室から帰ってきて早々、「ジャックとつながってたぞ!」とわざわざ報告してきた。
デュースは問いかける。
「どうつながってたんだ? 僕たちは両想いなんだが」
「ジャックも腕輪だったから、腕と腕でつながってるってことだな」
そう答えたクラスメイトに、エースが補足する。
「どっちも想ってる側だから、どっちも腕輪になるわな、そりゃ」
デュースは「なるほど」と納得した。
クラスメイトはエースの首輪を見て、ニヤニヤと笑う。
「エースに片想い中のやつって誰なんだろうな? 本当に心当たりないのかよ」
エースはうんざりとしながら答える。
「ないっつってんだろ」
「知りたくならねえ?」
「パンドラの箱なんか開けたくないね」
エースは異性愛者だ。男子校に属する者である男に想われているなど、知りたくもない。
知らなければ、存在しないのと同じだ。
なのにデュースは現実をつきつける。
「でも確かめに行かれてるぞ」
「うげえ〜〜」
すでに数人のクラスメイトがエースの首輪の先をたどり、エースを想う者を突き止めようとしているのだ。
探られていい気はしない。もちろんエースは抵抗した。だが多勢に無勢。あえなく教室の外に飛び出されたのである。
隣の教室から帰ってきたクラスメイトよりも遅いから、遠くの教室まで行っているようだ。
「アイツら帰ってきたらとっちめてやる!」
しかし十分経っても、まだ帰ってこなかった。ちなみにデュースの想い人を確かめたクラスメイトはすでにエースたちから離れて、新たな標的をからかっていた。
エースは教室の扉を見ながらぼやく。
「アイツらどこまで行ってるんだ? いくら校舎が広いからって、こんなに時間かからないだろ」
「飽きて他のやつに行ってるんじゃないか」
代わりにデュースが答えた。
「だといいけど」
エースがため息をついた瞬間、扉が勢いよく開いた。
クラスメイトたちが帰ってきたかと思いきや、入ってきたのはディアソムニア寮生の三年生たちだった。エースの鎖を見て、たどり着いた先であるエースを凝視している。
一人が恐る恐るつぶやく。
「お……お前が……?」
「はい?」
馴染みのない先輩たちに尻込みしながらも、エースはあいづちを打った。
それをきっかけに、三年生たちは一斉に叫ぶ。
「なんでこんな人間が!?」
「何かの間違いだろ!」
「たとえイタズラでも、不敬だ! 件の妖精には罰を与えないと!」
次々に叫ぶ三年生たちの後ろには、エースの鎖をたどっていったクラスメイトたちが申し訳なさそうにエースたちを見ていた。おそらくこの三年生たちに捕まって、帰りが遅くなってしまったのだろう。
三年生たちからエースをぶじょくしている雰囲気を感じ取ったデュースは眉をひそめる。
「何か僕たちに用ですか、先輩方」
一人の三年生が答える前に、セベクがエースたちの前に飛び出た。エースに指を突きつける。
「なぜ若様の腕輪が、お前の首輪につながっているんだ!?」
パンドラの箱は開かれた。
後日。一組のカップルが爆誕した。
一方で、騒動の犯人である妖精が、困り顔のクロウリーとリリアの前で証言する。
「マレウス様ったら、なかなか告白なさらないんですもの。進展できるきっかけを作ってさしあげただけよ」
地下牢で逆さ吊り(pixiv未掲載)
頭に血が上るとかの、肉体的な損傷はありません。
茨の谷の王城に軟禁されたエースは脱走を図ったが、見張りに見つかってしまい、連れ戻された。
脱走未遂の罰として、エースは地下牢に閉じ込められる。
全裸で、Yの字型に、逆さ吊りにされて──。
まだ刑務所がなかった時代の名残が、現代の王城の地下にある。もう使われていないはずのそこは、いまは一人の人間のために存在している。
唯一、使用中の地下牢の中に、マレウスは入った。
あらゆる種族が入れるようにと設計された牢の天井は五メートルほど。両足を限界まで広げたYの字に、天井に逆さ吊りにされているエースがいた。服は剥ぎ取られており、裸体を惜しみなくさらしている。
両足首を拘束している枷の間に鉄棒が通してあるせいで、足は閉じられない。その足枷の鎖を、マレウスは魔法でゆるめる。ジャラジャラと音を立てて、天井からゆっくりと下ろされていくエースの裸体は、マレウスの魔法のおかげで、吊るしたての時と変わらず健康体のままだ。頭に血は上っていないし、全体重をかけている両足も鬱血していない。
けれど丸一日、一人きりで逆さ吊りにされていた事実は、確実に精神を磨耗させていた。証拠に、マレウスの目線の高さにまで下げられたエースの顔は、涙とよだれと汗と恐怖でびしょ濡れになっている。
床に向かってぶら下がっていた両手で、エースは逆さまに見えているマレウスの肩に必死にしがみつく。冷めたマレウスの目を見ながら謝罪する。
「先輩、ごめんなさい! もう逃げないから! もう下ろして! もう吊るさないで!」
「反省しているのなら、相応の誠意を見せろ」
互いのくちびるの高さをそろえる。意図を汲んだエースはすぐにマレウスに口づけた。汚く濡れた自身の顔をぬぐう発想がないようだ。王族の顔に体液を付着させる愚行を犯しているが、あえてマレウスは許した。逆さまに与えられる口づけは新鮮で楽しくて、それ以上に愛おしい。
口の中で舌を絡めて、ゆがんだ愛を確かめ合う。二人きりの行為を先に止めたのはマレウスだった。
くちびるを離して、一言。
「次」
エースはあっけにとられる。おそるおそる問いかける。
「次……? なんの?」
「次の誠意を見せろ」
マレウスは魔法でスツールを出す。王族が腰かけるにはずいぶんと質素なスツールを、エースのほぼ真下に設置。そこにマレウスは足を開いて座った。
天井の鎖が更に下がっていく。
「むぐ」
エースの顔がマレウスの股間に埋もれたところで、鎖が止まった。
まだ興奮していないのか、服越しの股間は静まったまま。しかしペニスのやわらかい感触はエースの口元に伝わっている。鼻の穴も埋もれて、息苦しい。
マレウスはエースの後頭部に左手をそえて、エースの顔面をグリグリと股間に押しつける。
「むぐううううっ」
息ができないエースはたまらずマレウスの背中を両手でたたく。
「最低限の呼吸はちゃんとさせてやる。気をやるな」
宣言通り、鼻の穴だけは、少しだけ股間からずらされた。けれど鼻呼吸しかできない。マレウスの匂いから逃げられない。
「むう! む! むー!」
「そうだ。そのまま僕を感じていろ」
眼前にあるエースの、Yの字に開かれたままの剥き出しの股間を見ながら、マレウスは命令した。
身長差が激しい分、胴体はマレウスのほうが若干長い。自身のペニスをエースの顔に押しつけても、自身はエースのペニスのすぐ目の前にあるわけではない。二つの袋が目線のやや下にあるくらいだ。
マレウスはエースの後頭部をつかんでいない右手を上げて、二つの袋を手中に収める。コロコロと転がして刺激を与えて、精液を作らせる。あまった親指で会陰をグリグリと押し込み、ときおりカリカリと引っかく。
エースの内股がピクピクと震えている。
「んん! んぐ! んうぅううう!」
マレウスの開いた内股が湿ってきた。エースの涙だ。
「もう感じているのか? まだ誠意を見せきっていないのに?」
マレウスは舌を伸ばす。勃起を始めていたエースのペニスに絡みつき、二股の舌先で亀頭を舐める。尿道口を中心にチロチロとくすぐれば、エースの悲鳴と体の震えが増す。
「むうううーーっ!!」
──イきそうか。だがイけないな。竿をしごいてやらねば、お前はいつまで経ってもイけず、苦しむだけ。
「ふーっ! ふーっ! ふーっ!」
──ふふふ。鼻息がくすぐったい。……ああ。汁が出てきた。苦いが、悪くない。もう少し出してもいいぞ。
「むう、う! んあああああっ!」
──こら、勝手に顔をずらすな。
マレウスはエースの後頭部を掴みなおし、顔面をふたたび股間に押しつける。もう離れてしまわないように、しっかりと。
袋と会陰から指を離して、次は竿をくすぐる。しごかずに、指先でタップするように。裏筋とカリ首を重点的にくすぐれば、尿道口からにじみ出ている苦い汁の量が増えた。
エースの涙混じりのくぐもった悲鳴がマレウスのペニスに伝わって、心地よい。だがまだ勃起するほどではない。妖精族は人間ほど性欲が発達しておらず、機能するのが遅い。
だからマレウスはエースに命じたのだ。
──妖精族の僕が達するまで、人間のお前に付き合ってもらう。
──ほんのひとときだ。半日もかからないだろう。人間のお前にとっては、長いかもしれないが。
──耐えろ。耐えられなくても、続けてやろう。
──僕の部屋から勝手に出ていかないという誠意を見せろ。
「……よし。もういい」
「はーー……はーー……」
エースの顔がマレウスの股間から離された。
こうしてマレウスが勃起して、股間をくつろげるまでに、実際はどれほどの時が経ったのか。達せないまま苦しむエースには数えられなかった。
自身から出ていた先走り液と、マレウスの舌先からしたたり落ちていた唾液と、新しい汗や鼻水などで、またエースの顔面が濡れている。あまった体液が髪を伝いおりて、スツールの座面を濡らす。マレウスにしがみつく体力もなくなり、垂れ下がった両手の指先からもポタポタと床に落ちていく。
服から解放されたペニスがエースの頬をたたく。
「くわえろ」
マレウスに命令されたとおりに、エースは口を大きく開く。吊るされて自分からは動けないエースのために、マレウスが自ら口内に入れていく。
のどの奥を、ぐーーーー……と押し込まれたエースの体が震える。窒息する前に、ペニスがのどから離れた。
「ごふっ。ごほっ。ごほっ」
口内に居座ったままのペニスの先端に、エースのむせた息がまともにかかった。
生暖かい息を感じて、マレウスはくつくつと笑う。
「気持ちいいな、エース」
「ご、ぼ」
また奥に押し込まれたエース。窒息寸前に離されて、押し込まれてを繰り返される。
六回目を始める直前で、エースはペニスを吐き出して、泣き声をあげた。
「ううぅ〜〜っ! もうやだあ。お願いだからっ。ベッドで! ベッドでやるからあ! もう吊るすのやめてよおおっ」
「床ではなく、ベッドと来たか」
「床! 床でやるからあ……! うえええええ……」
エースは子どものように泣きじゃくる。マレウスは少しひるむ。
「……わかった。これが終わったらベッドに連れていってやる」
「う、ううっ、うえええ……」
「もう二度と僕に逆らわないと誓えるな?」
「誓う。誓うから。もう家に帰れなくてもいいから」
「……言ったな?」
思わぬ副産物を得られた。
妖精の国で暮らす報告のために、一度は家に帰すつもりだったのに、それをエース自らつぶしたのだ。
これまでの失態を帳消しにしてもいいと思えるほどの宣誓だった。
「あと一回で終わらせてやろう。そのときに──」
わざと言葉を区切り、エースの爆発寸前のペニスに触れる。不意打ちを食らったエースは「いひっ」とよがった。
さすさすと竿を軽くなぞりながら、マレウスは続きを言う。
「ここを、果てさせる」
マレウスは自身のペニスをエースの口の中に突っ込む。同時に背を曲げて、エースのペニスの半分を口の中に含んだ。
「ごぶううっ」
真下で聞こえてきたエースのうめき声をよそに、マレウスは口に入れていない根元を、指の輪っかでぎゅうと強めにしぼる。ぎゅちぎゅち、と半分の竿にそって激しくしごく。口の中にあるもう半分は、丸い先端ごと、舌で絡めてやわらかくしごく。
急に強くなった刺激に、エースは目を白黒させる。
「おごっ。おごおっ! あが……ごぼっ」
のどの締まりがよくなり、マレウスのペニスもますます膨れる。後頭部を強くわしづかまれて、奥をガンガン突かれて、エースはまた泣きだす。もう止めてはくれない。
エースの体が大きく跳ねて、天井の鎖がガチャンと揺れた。
マレウスが射精する前に、エースがマレウスの口内で射精した。
どぷどぷとあふれてくる精液を、マレウスは飲んでいく。のどに引っかかる感覚も、ストレスを与えられてまた苦くなった味も、あますことなく。その間、マレウスはずっと、エースののどの奥をペニスでふさいでいた。
達している最中に呼吸を制限されて、深い快楽に堕とされたエースは白目を剥いている。ガクンガクンと全身をけいれんさせた後、ふつりと脱力した。
「はああぁ……」
大きくため息をつきながら、マレウスはペニスをエースの口から抜く。ペニスはまだ勃起したまま。達する前に気絶されたのだ。
「僕がまだなんだが……ベッドで起こせばいいか」
スツールから立ち上がる。スツールを消してから、乱れた衣服をかんたんに直す。エースの両足から枷を取る。自由になったエースの体を横抱きにしたマレウスは、自室に転移した。
数時間後。マレウスにとっては程よい時間に、マレウスも無事、エースの口の中で射精した。
ベッドの中でのシックスナインはたいそう気持ちよくて、仕置きなど関係なく、数日後にまたやりたいとマレウスは思った。
「は……ふ……っ。もう……むり……」
追加で数回、マレウスの口内で射精させられたエースの心を置いて。
夕暮れの風鈴
放課後の夕暮れが迫るオンボロ寮内。家主が留守にしている回廊で、マレウスとエースは並んで風鈴を見上げていた。
「なかなか涼しげな音色だ」
「夏って感じしますよね。オレ、こういうの結構好きっす」
エースは嬉しそうに、窓辺に吊るされた風鈴の音に耳をすませていた。
マレウスは提案する。
「気に入ったのなら、お前にくれてやっても良い」
「え? いやでもこれ、監督生のでしょ。勝手に持ってったら怒られんじゃん」
「問題ない。持ち主は僕だ」
「そうなんすか!?」
初耳だ。まさかマレウスの私物が、他寮の回廊に設置されているとは思わなかった。
続いて、エースは監督生とグリムが心配になった。自身たちのテリトリーを、他寮生に好き勝手されてはいないかと。もっとも、エースもゲストルームに入り浸っているので、人のことは言えないのだが。
あたふたとしているエースを見て、マレウスは小さく笑う。
「欲しいのなら、遠慮はいらんぞ」
「ええ!? いや、でも、悪いっすよ! そんな簡単にもらうわけには……!」
一国の王子の私物をもらうなど、さすがに恐れ多い。
一歩引いたエースを、マレウスは不思議そうに見る。
「何を遠慮しているんだ。お前はいつも欲しいものは欲しいと言うだろう」
「そりゃあ、まあ……? でも、今回は違うっていうか」
欲しがる相手は決まっている。対等な者か、もしくは心を許した者。そして欲しがる物は、彼らが持っている菓子程度だ。
風鈴は菓子のような消え物ではない、立派な納涼グッズ。欲しがるには大物すぎる。
そしてマレウスは、エースと対等ではない。……心を許してもいない。
風が強まり、風鈴が一段と大きく鳴りひびく。
わずかな沈黙を破ったのはマレウスだ。
「では、代わりにお前の時間をもらおうか」
「時間……? オレの時間を使って、何するんすか?」
「僕とのデートに使う」
「デート!?」
付き合っていないのに、デートとは。ツッコミかけたが、耐えた。もしかしたら妖精族にとっては、ただの同伴を、デートと洒落た言い方をするかもしれない。
エースは愛想笑いをマレウスに見せる。
「あははは……。先輩もまあまあ言いますね」
「ん? 何がだ」
「ああいや。なんでもないです」
余計なことを言って怒らせたくないので、エースはごまかした。
マレウスは改めて言う。
「まあ良い。では風鈴と引き換えだ」
マレウスの瞳が、窓枠越しの夕焼けを反射して輝く。
妖しくも美しい、ライムグリーンの瞳。エースの心が奪われた。
風はいつのまにか止んでいた。
開きっぱなしの窓に生ぬるい空気が入ってくる。エースはうっすらと汗をかく。鳴っていた風鈴は黙って、空気を受け入れている。
エースの手の中に収まった瞬間、ぢりんと音がにぶく鳴った。それを最後に、今度こそ風鈴は完全に沈黙した。
「外泊届けは、僕がローズハートに出しておいてやる」
「……」
「だから何も気にせず、明日の夜を僕に捧げよ。約束だ」
「……はい」
ドラゴンの瞳に魅入られたエースにふたたび吊るされるまで、風鈴は息を吹き返さないだろう。
竜の巣穴に一人向かうエースが、無事に戻って来られたらの話だが。
マレエーSS集No.1〜25
【No.1】プロポーズ
「明日、僕は卒業する。その前に、去年したプロポーズの返事を聞きたい」
青白く輝く月夜を背景に、マレウスはエースに願う。
脇の下に腕を回され、抱っこされているエースは、あらためてマレウスの首元にしがみつく。
「はい。先輩と結婚します」
「トラッポラ……!」
感極まったマレウスは、エースをつぶさない程度に、より強く抱きしめる。
エースもマレウスから離れない。
離れたら……死んでしまう。
ここは空の上。脅された末に落とされてはたまらない!
────────────────
【No.2】雄っぱいに溺れる
かわいい子の胸に頭を挟まれてみたい。
健全な青少年なら、おそらく一度は思い描く願望だ。
それを世間知らずのかわいい恋人が、どこかで耳に挟んでしまったようだ。
「お前も、こうされたかったのだろう」
「どうだ、トラッポラ」
魔法薬で二人に増えたかわいい恋人──マレウスの柔らかい胸筋に頭を挟まれて、エースは答えられない。
正面のマレウスの背中をタップして、やっと離された。
「窒息させる気か!?」
エースの頭上で、マレウスは二人そろって笑う。
「僕たちだけを考えるのなら」
「おぼれ続けるがいい」
「むぐうっ」
また挟まれて、エースはうめいた。
────────────────
【No.3】出られない部屋ディープキスver
ディープキスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「さあ、この僕に口づけろ」
どうやらマレウスが犯人のようだ。
いまはキスをする気分ではない。逃げるために、エースはふてくされた演技をマレウスに見せる。
「腰が抜けちゃうキスなんかしたら、このあと空デートできないじゃん」
「僕が抱っこするから問題ない」
逃げられなかった。
こうなれば腰くだけにさせてやろうと、エースは持っている技術を駆使してマレウスにディープキスをしかける。
応えたマレウスに、逆に腰をくだかれた。部屋から出られても、次は空に連れていかれた。
────────────────
【No.4】出られない部屋セックスver
セックスしないと出られない部屋に、エースはマレウスと共に閉じ込められた。
「どうせアンタが犯人だろ!」
「そうだ」
バレているならと、マレウスは開き直った。
呆れながらも、エースは渾身の上目遣いをマレウスに見せつける。
「するならマレウス先輩の部屋がいいな」
真っ白な部屋が、見慣れたマレウスの部屋に変わった。
エースはガッツポーズを決める。
「よっしゃ出られた!」
「……待て、どこへ行く?」
「え? 帰るんだけど? まさかセックスのこと言ってる? あっはははは! 今日するなんて言ってねーし!」
意気揚々と廊下に出ようとするエースを、当然マレウスは魔法で引き止め、ベッドに放り投げた。
────────────────
【No.5】ドラゴンの種は強い
マレウスが卒業してから三年。エース・トラッポラと名乗る男が王城の門前まで来たらしい。
マレウスはすぐに自室に通すように、門番に命じた。
三年ぶりに見たエースの腹は、マレウスの期待通り、膨らんでいた。
「最初は太ったのかと思ったよ。実際はもっと最悪だったけどな。気持ち悪いのが続いたあたりで、なんかおかしいって思って、病院で診てもらったら……腹ん中で、卵が作られてきてるって」
「順調そうでよかった」
「やっぱりアンタだったのか!」
ドラゴン族の精子は強い。三年間、エースの腹の中で生き続け、つい先日に妊娠が発覚したようだ。
「卒業をきっかけに別れるなどと言い出すから、確かなつながりを結ばせたかった」
三年前に蒔いた種が無事に結べて、マレウスはホッとした。
────────────────
【No.6】届かないので
目当ての本まであと数センチ。背伸びをしても届かない。脚立を使えばいいのだが、エースは使わない。もっと便利な方法があるからだ。
「マレウス先輩」
「呼んだか、トラッポラ」
どこからともなくマレウスが現れた。
マレウスではなく高い本棚を見ながら、エースは願う。
「あの本、取ってほしいの」
マレウスは長身を活かして、本をすっと取った。
「どうぞ」
「ありがと」
本をもらおうとマレウスに差し出すエースの手。逆に取られて、手の甲にキスを落とされる。イジワルな本棚よりも自分を見ろと言わんばかりに。
脚立を用意するよりもずっと早くて、オマケも手に入る。これ以上に便利でかわいい恋人はいない。
────────────────
【No.7】雨と薔薇の香り
雨が降り終わった香りと、薔薇の香りが混ざっている。むせるような香りに包まれた薔薇園の中、目の前にあるのは雨粒が花弁の中に溜まった薔薇の群れ。
一輪から水滴がぱたりと落ちた。それはまるで、涙を流す彼のようだった。
「なんで思い出すかなあ」
エースは空を見上げる。くもり空はまだ続くようだ。
────────────────
【No.8】好き×6
「好き好き好き好き好きっ好き♪愛してる♪」
「誰をだ」
「いや、誰って。監督生の世界でやってたアニメの歌らしいっすよ。イッキューさんっていう──」
「誰だ、その男は!!」
「アニメだっつってんだろ!」
────────────────
【No.9】表情筋よ、仕事しろ
突然エースは自身の頬をムニムニとこね始めた。
エースの奇行に少し驚いたマレウスは問いかける。
「どうした、いきなり」
「や。気にしないでください」
頬から手を離したエースはそっけなく言った。
恋人に格好よく見られたいのだ。会えて嬉しくてヘニャヘニャにくずれた顔など、見せたくない。だからエースはキリッとした顔を装った。
────────────────
【No.10】ひざ枕の悩み
「マレウス先輩のツノってさあ、ひざ枕すんのに向いてねーよな。腕おろしたら、先輩の頭のほうの腕にゴリゴリ当たるし、地味に痛いからさあ、ずっと腕あげてなくちゃいけないわけ。疲れるから、ずっとツノに手ぇ乗せなくちゃいけなくってさ、でもそれだと今度は手持ち無沙汰でさあ、先輩のツノとかオデコとか触るしかないんだよね。リラックスされてもこっちはつまんないっつーの! まあ別にイヤなわけじゃないけど。……ちょっとデュースくーん? 聞いてますかー?」
「……なんでドラコニア先輩にひざ枕したんだ?」
「あっやべ」
────────────────
【No.11】不純同性交友
不純異性交友は禁止。
ならば同性が相手なら禁止されないはず。
「だからオレとマレウス先輩がイチャついたって校則違反にならないわけ」
「なるほど!」
デュースはまんまとエースに丸め込まれた。
────────────────
【No.12】積極的な恋人
エースを前にして、マレウスは困った。
エースと恋人になったはいいが、どう接したらいいのかわからないからだ。
──とにかくまずは手をつなぐことからか?
そう考えたマレウスが手つなぎを実行しようとした瞬間。
「せーんぱい」
いきなりエースにハグをされた。
「ト、トラッポラ!?」
「なに遠慮してんの? オレに押されちゃっていいわけ?」
「……よくはない」
このまま押されては次期当主の名折れである。マレウスもエースの背中に手を回した。
────────────────
【No.13】キスマーク
「もー! またこんなとこに付けて!」
怒っているエースの首に、一つの赤い跡。
跡を付けた犯人のマレウスは悪びれなく言う。
「僕のものだと周りに知らしめてもいいだろう」
「オレがいたたまれなくなるんだよ! ただでさえ見えないとこにもいっぱい付けられてんのに!」
「足りない」
「足りろ!」
目立つ場所にもキスマークを付けたいマレウス。これ以上付けられたくないエース。
二人の争いはまだまだ続く。
────────────────
【No.14】猫になったエース
生徒が何らかの魔法により、何らかの姿に変わる。よくあることだ。
だから魔法薬の授業で、エースが猫になってしまったと聞いても、よくあることだと片付けられる。
時間が経てば自然と元の姿に戻る。その間に楽しまねばと、マレウスはエースをさらった。
「よくも僕のトランプ兵をさらいましたね!!」
猫のエースをひざの上に乗せてかわいがるマレウスに怒鳴るリドルの姿も、よくあることなのだ。
────────────────
【No.15】スマホを見ている理由
同じベッドの中。向かい合って寝転んでいるのに、エースはスマホに夢中だった。
「トラッポラ。こっちを見ろ」
マレウスに呼びかけられても、エースはスマホの画面から目を離さない。
無視されたマレウスは、すねた顔をする。
「トラッポラ……」
機嫌悪そうに声を低くしても、エースは画面を見ながらニヤけるだけだ。
──いつ種明かししてやろっかな。
マレウスはまだ知らない。
実はいじけているマレウスを、エースは隠し撮りしていたことを。
────────────────
【No.16】初めての手つなぎ
手をつなぐ。それだけなのに、どうしてここまで緊張するのだろう。
手汗がにじむ。べたついた手が重なっているのに、ちっとも不快ではなかった。
「好き……です」
「僕もだ……」
ソファに並んで座っている初々しいカップルを、監督生は生ぬるい目で見ていた。
「ここパブリックスペースなんだけど」
────────────────
【No.17】夢の中ならやりたい放題
マレウスは王族だ。一般人のエースと表立ってイチャつけない。
なので二人は夢の中でイチャイチャしまくった。
ハグやキスはもちろん、セックスも……。
「なーんか二人とも、色気づいてない?」
監督生のするどい指摘により、二人はしばらく自重した……わけではなかった。
「証拠なんてないしな!」
「痛くもかゆくもない」
今夜も二人はイチャイチャするのであった。
────────────────
【No.18】人の話は聞きましょう
(ねみぃなー……)
「……トラッポラ。聞いているのか?」
「え? 聞いてる聞いてる」
「なら僕が何の話をしたのか言ってみろ」
「……オレがかわいいって話でしょ?」
「うん。ちゃんと聞いていたようだな」
(合ってた……)
────────────────
【No.19】からかった罰
マレウスの雰囲気が変わった。有無を言わさぬ威圧感。
「僕をからかうのは楽しいか?」
「あー……」
少しからかっただけなのだが、マレウスにとっては流していいことではなかったらしい。
まずいことになった。
真顔だったマレウスはうっすらと笑う。
「そちらがその気なら、こちらも本気で相手をしてやる。覚悟は良いか?」
エースは一瞬、腰が抜けそうになった。しかし、ここで引くわけにはいかない。男としてのプライドが許さない。
「ったり前じゃないですか! いつでも受けて立ちますって!」
「良い返事だ」
マレウスはエースを抱き上げる。転移魔法の先は、マレウスの自室。エースをそっとベッドに下ろす。
「ここでお前に、僕をからかった罪をつぐなってもらう」
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩! 何をするつもりですか!」
「何を? そんなことは、これから嫌というほど分かる。せいぜい、今のうちに後悔しておくといい」
エースは悟った。これは、ただの罰では済まされない。とんでもない事態に発展すると。
しかし逃げることはできなかった。マレウスの瞳が、それを許さなかったから。
「さて、まずは……そうだな。お前のその軽薄な口を、少し黙らせてやろうか」
マレウスの指先が、エースのくちびるをなぞる。
「ちょ、ま、待って」
弱々しい抵抗の声は、あっけなくふさがれた。
エースは心の中で誓う。マレウスをからかうのは、よほどの覚悟がない限り、やめておこうと。
────────────────
【No.20】静かな図書室での両片想い劇
図書室でエースは分厚い魔導書を前に、眉間にしわを寄せていた。
その背後に、音もなくマレウスが近づく。
「ずいぶんと難しい顔をしているな」
エースは驚いて振り向く。
「うわっ!? マレウス先輩」
「何か困っているのか?」
「いや、別に困ってるとかじゃなくて。ちょっとこの魔法解析が難しくて……」
マレウスは興味深そうに本を覗き込む。
「……その魔導書は古く、記述も独特だからな。まず一年生には無理だろう」
「ええー? ならいいや」
課題の一つとして、挑戦してみただけだ。無理にやり切る必要はない。一年生が解析できないのなら、レベルを落としても問題ないはずだ。
そう結論づけて、魔導書を閉じる。席を立つ。本棚に戻すために歩きだそうとする前に、マレウスがエースを呼び止める。
「待て。いい機会だ。僕が見てやろう」
「え、いいんすか? でも、先輩も忙しいでしょ?」
言いつつも、エースは座り直した。ちゃっかり甘えようとしている。
頼られたマレウスは嬉しそうに笑う。
「気にするな。お前の手助けくらい、造作もない」
マレウスはエースの隣に腰を下ろす。魔導書を開き直す長身が、エースに影を落とした。
距離が近い。エースは少し緊張してしまう。
「あ、ありがとうございます。えっと、ここが全然わからなくて……」
「ここか。この紋様は──」
説明が続く中、エースの心臓は高鳴りっぱなしだった。
まさか片想い相手から、ここまで接近されるとは思ってもみなかったからだ。
ガチガチに固まっているエースの様子を見て、マレウスはあきらめたように問いかける。
「僕が怖くなったのか?」
「いや。それはありえないね」
即答。本当に恐れているわけではないのだとマレウスは改めた。代わりに疑問が生じる。
「ならなぜ緊張しているんだ?」
「いやあ。ちょーっとね? 怖くないんだけど、かしこまっちゃうかなーって」
「僕は構わないのだが……」
マレウスはさみしそうに答えた。
エースはうつむき、ひざの上で拳を握りしめる。届ける予定のない想いを、胸の奥に仕舞い込むように。
せめてもの誠意として、魔導書の説明は真剣に聞いていった。
────────────────
【No.21】炎魔法
魔法練習場の一つのスペースが、巨大な炎で埋められた。
別のスペースで魔法の自習をしていた他の生徒が悲鳴をあげる。魔法の発生源がマレウスだと知った瞬間、パラパラと散っていく生徒たち。怖がらせるつもりはなかったのに。マレウスは少し落ち込む。
だが沈んだ気分は、一人の生徒の歓声で消えていく。
「すげー! おっかねー!」
ケラケラと笑うエースの声。炎魔法の手本として見せただけで、ここまで喜んでくれるとは思わなかった。
マレウスは得意げに笑った。他の生徒たちには迷惑な話である。
────────────────
【No.22】本当は同じ朝をむかえたい
オンボロ寮のゲストルームの一室でむかえた朝。一つのセミダブルベッドの中で、エースが先に目覚めた。
エースのとなりには、まだ眠っているマレウスの姿があった。
エースはマレウスの寝顔を見つめる。国宝級の美しさだが、どこか幼さを感じる。
「きれいとかわいいが両立してる……」
思わずそうつぶやき、急に恥ずかしくなったエースは、そっとベッドから抜け出す。かんたんに身支度を整えて、ゲストルームから出ていった。マレウスを残して。
エースはまだ、マレウスとともに朝をむかえる勇気を持てずにいる。
扉が閉まる音を聞いてから、マレウスは目を開く。彼もまた、エースを引き留める勇気を持てていない。
────────────────
【No.23】カップアイス
マレウスがエースのために用意していた、カップアイスが一つ。冷凍魔法が強すぎて、カチコチに凍っている。
アイスの表面すらスプーンですくえない。エースは顔をしかめる。
「せんぱーい。硬いっすよコレ」
「すくえないのか?」
「無理無理」
「貸してみろ」
手渡されたスプーンとアイス。早速マレウスはスプーンをアイスに突き立てる。馬鹿力によって、表面がメリメリと剥がれていくアイス。数回くり返せば、カーブを何層も描いたアイスの盛り付けが完成した。
「これで食べられるだろう」
そう言って、マレウスはアイスとスプーンをエースに返した。
エースは程よく薄くなったアイスの層にスプーンを差す。アイスはあっさりとスプーンのさじに乗った。
一口食べて、冷たくて甘い幸せを堪能する。
「うんまーい!」
エースの純粋な笑顔に、マレウスの胸が暖かくなった。
────────────────
【No.24】独占欲
「トラッポラ。僕は、お前が誰かと親しくしているのを見るだけで、腹立たしくなる」
「え……」
「独占したい。ずっと、僕だけのものにしたい」
マレウスの瞳は、まるで獲物を狙うドラゴンのように、ギラギラと光っている。
エースは息をのむ。
「そ、それって……」
「怖いか? 気持ち悪いか? ……それでも僕は、お前を手放せない」
マレウスはエースの手をつかんだ。その手は信じられないほど冷たい。
────────────────
【No.25】これが好きってこと
他愛のない、ただのケンカだ。エースが怒鳴って、マレウスがむすりとしながら聞いている。
怒りを言語にしない態度に、エースはますますいらだちが募る。マレウスの態度にも文句を言う。
「さっきから黙んないでくれる? たまには先輩の本音、聞かせろよ!」
閉ざしていたマレウスの口が、ついに開く。
「お前は、僕の本音を知りたいのか?」
「当たり前だろ!」
マレウスはけわしい顔をしながら、エースの目をじっと見つめた。本音が聞けるかもしれないと、エースはじっと黙る。
何もせず、一分も経てば、さすがにエースの怒りが少し萎えていく。
にらみ返していたエースの眼差しがやわらいでいく頃。マレウスは再び口を開く。
「お前はいつも予測不能で、奔放で、目が離せない。だからお前の行動に助言をあたえてしまう」
「助言って!」
口を挟む、の間違いだ。クラスメイトに肩を組まれただけで、やれ無防備だの、やれ危機管理がなっていないだの、文句を言われる筋合いはない。ケンカの原因はそれである。
エースは嫌味を思いつき、そのまま言う。
「それってさあ、オレのこと好きってことになるけど?」
「好き……」
エースの目の前にあるのは、天啓を受けたような表情だった。それはぶつぶつとつぶやきだす。
「好き。これが……好き……」
「そう! そんで結局、オレのこと、好きなんだ? ふん。嫌いだと言うならいまのうちだけど?」
嫌味が通じたと喜ぶエースが追い打ちをかける。自身への追い打ちだと気づかないまま。
「そうだ。好きだ」
「……あれ?」
やぶをつついたらドラゴンが出た。そう気づいても、もう遅かった。
マレエーSS集No.26〜50
【No.26】雪と暖炉
エースは薪を大きくくべた。暖炉の火が勢いを増し、パチパチと音を立てる。先程よりも少しだけ、室内が暖かくなった気がした。
「雪はまだ止みそうにないな」
──先輩が降らせてるくせに。
エースを帰したくない魂胆が見え見えである。けれど、あえてエースは乗った。
「まぁね。でも先輩の部屋ってあったかいし、大丈夫でしょ」
知らないフリをしたエースも共犯だ。
共犯者同士、くすくすと笑い合う。
「近くに寄っても良いか?」
「なんで?」
「暖を取りたい」
「しょうがないなあ」
エースは遠慮なくマレウスに身を寄せる。マレウスはエースの肩をそっと抱く。
二人の体温が、静かに合わさっていく。
「紅茶も淹れたげよっか?」
「あとでな」
暖炉の火が、二人の姿をやさしく照らしていた。
────────────────
【No.27】お気に入りの肖像画
マレウスの部屋に遊びに来たエースの目に、真っ先に飛び込んできた肖像画。
「なにあれ」
「自分の顔がわからないとは……」
本気で心配そうにしているマレウスには悪いが、本気で脳が理解を拒んだのだ。
いつ描いたのか、誰に描かせたのか、いつから飾っていたのか、そもそもこの画を描くための見本はどうやって手に入れたのか、聞きたいことは山ほどある。あり過ぎて、どこから聞けばいいのかわからない。
だからエースは、目撃してすぐに思いついた疑問を大声でぶつける。
「なんでオレの顔が飾ってあるんだああああ!?」
しかもマレウスにしか見せないような、甘い笑顔の。
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【No.28】きらきら星
空の上は、プラネタリウムよりもダイナミックで、宝石のように輝いていた。
「すげえ……」
マレウスの腕の中にいるエースは、幼子のように単純な感想しか言えないようだ。
星空に夢中になっているエースの瞳を、マレウスは覗き込む。
星々に負けず劣らず、キラキラと輝いていた。
「お前と見る星空は、すべてが輝いて見える」
「大げさだな」
エースは照れ隠しのように笑う。その笑顔を直視したマレウスの心にも、一つのあわい輝きを灯した。
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【No.29】借りてきた猫のようだった
外泊届を出した瞬間から、覚悟はしていた。
夜。エースはガチガチに緊張した表情で、マレウスのベッドに腰かけた。
まるで借りてきた猫のようなエースの肩を、マレウスは抱く。
「トラッポラ、そんなに固くなるな。夜をともに過ごすだけだ」
「でも、でもさ、マレウス先輩の部屋に、しかもベッドに座るなんて、普通に緊張するでしょ」
「……ならば、床に座るか?」
マレウスなりの冗談だったが、エースはそう取らなかった。
正常な判断を失ったエースはマレウスから離れる。ベッドに腰かけたままのマレウスの足元の床に、素直に座った。
長い足に抱きつくように、ぺたりともたれかかる。
マレウスは驚く。マレウスの足におとなしく懐くエースの姿を凝視する。
「……いい」
「新しい扉開こうとすんな!」
不穏なつぶやきを聞いたエースは正気にもどり、あわててマレウスの足からも離れた。
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【No.30】添い寝
広いベッドの中で、二人はシーツに沈んだ。
エースは甘えるように、自身をマレウスに寄せる。マレウスもゆっくりとエースの背中に腕を回す。
「マレウス先輩、あったかい。いつもは冷たいのに」
「風呂上がりだからだ。お前も温かい」
エースは「ふふ」と小さく笑った。続けて言う。
「マレウス先輩といっしょにいると、なんか安心する」
「僕もトラッポラといると、心が安らぐ」
しばしの静寂。二人は目をつむり、互いの温もりを感じながら、少しずつ深くなっていく夜を共有する。
マレウスの胸元で、エースはつぶやく。
「オレ、眠くなってきたかも」
「このまま夢の中に行こう」
「うん」
おやすみ、とあいさつを交わして、二人は意識を沈めていく。おだやかな寝息を先に立てたのはどちらなのか、誰も知らない。
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【No.31】鼻が効く二匹の獣
レオナはグリムをめんどうそうに見る。
「エースにつがいができただあ?」
「間違いないんだゾ。爬虫類っぽい匂いがプンプンするんだゾ。でも人間のつがいは人間なはずのに、爬虫類だなんておかしいんだゾ?」
レオナは「はっ」と鼻で笑った。
「心当たりがあるぜ。それをリリアに言ってみな。おもしろいもんが見れるぜ」
「見るよりツナ缶が食べたいんだゾ」
「口止めにもらえるかもなあ?」
「もらえるのか!? リリアのとこに行ってくるんだゾー!」
一時間後。ツナ缶を大量に持って、オンボロ寮に帰っていくグリムの姿があったそうな。
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【No.32】僕の心の闇
マレウスはエースを抱きしめる。
「少しだけ、このままでいさせてくれ」
いつになく弱い言葉だった。
突然のことにエースはとまどう。背中に回された腕の震えを感じて、何も言えない。
マレウスは言葉をつむいでいく。
「いまのお前は、まるで光のようだ。僕の心の闇を、少しだけ照らしてくれる」
「闇、ね……」
聞いているこちらが小っ恥ずかしくなる言葉だった。しかしマレウスが言うと、やけに似合う。
こわばっていたマレウスの腕が、徐々にゆるんでいく。エースの温かさに安らぎを得ているようだが、それにエースは気づかない。
「礼を言おう、トラッポラ」
「そこは『ありがとう』って言ってくださいよ」
「ありがとう」
素直な言葉に、今度こそエースは照れた。
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【No.33】花嫁は買収済みです
「アズール先輩! 助けてください!」
「ご結婚おめでとうございます」
「一瞬で見捨てられた!?」
即答した理由はある。アズールはすでにマレウスに買収されているからだ。
アズールは嬉々として契約書を取り出す。
「結婚は契約そのもの。まずはこちらに目を通してください」
「マジかよ……」
エースはがっくりとうなだれた。
これがもし同意のないものであれば、さすがのアズールも、買収を断っていた。ビジネスは金持ちのためにあるものではない。金の無い者を一方的に足蹴にしてはならない。
エースからの婚姻の同意もあったからこそ、アズールは心置きなく契約書を用意できたのだ。
「そもそもあなたも、付き合うときにマレウスさんに言われていたでしょう。結婚前提だと」
エースはもごもごと言い訳をする。
「あんなの、告白を盛り上げるための演出だと思うじゃん」
「僕まで立ち合わせておいて、よくも演出だとほざけましたね。僕もひまではないんですよ?」
「弱みをにぎるために居たと思うじゃん!」
「何はともあれ、ドラコニア家の花嫁になる道からは逃れられませんよ」
「オレが嫁かよ!?」
改めてアズールは契約書をエースに突きつける。
「さあ、サインを!」
婚姻をより強力なものにするための、契約書を。
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【No.34】謎解きゲーム
主人公が石壁を手で撫でたり、叩いたりして、仕掛けを探している。すると石壁の模様が画面にアップで映った。色が濃いだけだと思われた模様は、よく見たらへこんでいた。
コントローラーを操っていたエースは一人納得する。
「ははん。なるほど。ここにアイテムをはめれば、どっかの扉が開くってわけね」
エースの隣でゲーム画面を眺めていたマレウスが問いかける。
「なぜアイテムとやらを穴にはめるだけで扉が開くとわかる?」
「そういうセオリーなの」
「なんて都合のいい世界だ」
たかがゲームにいちいち突っ込むマレウスを、エースは嫌がらない。
あれでもゲームを楽しんでいるのだと、エースにはお見通しなのだ。
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【No.35】エースの予想は三度外れる
あらすじでは、もっとマイルドなものだと思っていた。だがその予想は外れていた。
そのレンタルDVDは、ふたを開けてみればグロテスクなものだった。
モンスターに襲われて逃げまどう人族たち。なすすべなく食われていく。作りものだと理解しても、忌避感はどうしても出てくる。
「うーわ。けっこうグロい。見るのやめますか?」
そう提案しながら、エースは同じソファで隣に座っているマレウスを見る。
マレウスも同じく引いているとエースは思っていた。だがまたもやその予想は外れた。
目を輝かせながらグロテスクなシーンに魅入っているマレウスがいたのだ。
──もしかしてマレウス先輩って、こういう趣味もってんの?
もしその趣味を、こちらに向けられる日が来てしまったら……。
勝手に予想して、恐怖で震えるエースに気づかないまま、マレウスはモンスターに見とれ続けている。
ガーゴイルを忠実に再現した、美しいモンスターだけに。
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【No.36】ツノを触りたかっただけ
エースは手をあげて、マレウスのツノに触れる。率直な感想をマレウスに伝える。
「冷たいような、温かいような、不思議な感じ」
マレウスはエースの瞳を、上目遣いで覗き込む。
「特に変わり映えのない瞳の色だが、不思議と惹き込まれる」
「オレのことはどうでもいいじゃないですか!」
エースはあわててマレウスから離れた。
いまさら照れているエースの様子を、マレウスは疑問に思う。
ツノを触るためだけに、マレウスに屈むように頼んだあげく、屈んだマレウスの頭部に腕を回したくせに、なにをいまさら照れているのか。
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【No.37】愛らしいピエロだった
魔法で温度管理されているバスタブの中は、熱すぎず、ぬるすぎず、ちょうど良い。
居心地も良くて、エースは深く息をはいた。
背もたれに使われているマレウスは、片腕でエースをゆるく抱きしめる。もう片方の腕を水面からあげて、指先に泡を一つ生み出す。その泡を、エースの鼻頭にちょんと付けた。
「うわ。なに?」
振り返ったエースの顔を見て、マレウスはくつくつと笑う。
「なんて愛らしいピエロだ」
すぐにエースは自分の指で、鼻頭の泡を割った。
「ピエロはお客様といっしょにお風呂なんて入りませーん」
「そうだったな。僕の恋人」
マレウスは悪びれずに訂正した。
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【No.38】うすい湯気の中
「こうして二人きりで風呂に浸かってんのって……なんか、いいね」
「どう『いい』と感じたか教えろ」
「ホッとするっていうか、落ち着くっていうか」
「そうだな。静かで、おだやかで、まるで僕たちしかいない世界のようだ」
「うん……」
二人のあいだに沈黙が流れる。気まずさはまったく無い、二人だけの時間。うすい湯気に包まれた、暖かくてせまくて、やさしい世界。
その世界の平和は、エースがのぼせるまで保たれた。
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【No.39】寿命による悩み
「オレと別れてください」
マレウスは動揺しない。うつむいているエースのあごをすくい取る。涙の跡が残っている恋人の顔を見つめながら、冷静な声色で問いかける。
「ずいぶんと一方的だな。理由を聞かせろ」
エースは言いにくそうに、けれど意を決して口を開く。
「だってマレウス先輩ってめちゃくちゃ長生きするんでしょ? オレはたったの百年しか生きられないのに。オレが死んだら、いつかオレのこと、忘れちゃうんだ。そんなの耐えらんねえよ」
予想通りの理由だった。
マレウスは吐き捨てるように言う。
「くだらない」
「『くだらない』だと!? オレは本気でイヤなんだよ!!」
「話を聞け」
なだめるために、エースの頬をなでるマレウス。エースはまた泣きそうになっている。
マレウスは続けて言う。
「トラッポラを忘れるなどありえない。お前が僕にくれた想いは、永遠に僕の中で輝き続ける」
マレウスはエースを腕の中に入れた。頭を撫でて、つむじにキスを贈る。
「僕の想いを疑うな。そんな悩み、最初から意味がない」
「先輩……!」
「そもそもお前の寿命は、すでに僕と同じになっている」
「先輩……!?」
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【No.40】ああ、困った
レオナはひどく顔をしかめる。
目の前にいるのは、エースに抱きつかれているマレウスの姿。
「なんだそれ」
問いかけられたマレウスは答える。
「どうやら惚れ薬をかぶってしまったようだ。まったく。この問題児には困ったものだ」
笑顔のエースを片腕で抱き寄せながら、同じくマレウスもニコニコと笑っている。
彼らに向かって、レオナは「言葉と表情がまったく合ってねえ」と吐き捨てた。
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【No.41】記憶喪失
一年生と三年生の合同授業中に、魔法薬をかぶったマレウスが記憶喪失になった。調合に失敗した監督生をかばったせいだった。
すべてを忘れたわけではない。約一年前から現在までの期間を丸ごと忘れただけである。今期の一年生を丸ごと忘れてしまったとも言えるのだが。
「それでもツノ太郎とは、また友達でいられたよ」
そう言った監督生を、エースは心底うらやましく思った。
数日後。すっかり日常に戻ったマレウスの前に、エースは単身で立ちふさがる。
マレウスにとってはいきなり現れた一年生。マレウスは立ち止まり、確認する。
「お前は……ヒトの子の友人だったな」
「それだけじゃないです。オレは……」
ただの事故として片付けられても、マレウスの記憶喪失は続いたまま。
エースとの仲も忘れたまま。
「オレは、マレウス先輩の恋人だ」
だからエースはウソをついてしまった。
監督生とは友達だったと信じたのなら、恋人がいたことも信じてくれるのではないだろうか。
ウソがバレるまでの間だけでも、甘い顔を向けてはくれないだろうか。
そして、この片想いを葬ってほしい。
────────────────
【No.42】AI彼氏
「今日は何を話すつもりだ? この僕が聞いてやろう」
「なんか違う……」
ただの独り言にも律儀に反応をする『マレウス』の言葉を、エースはワンタップで強制終了させた。
マレウスのファンが作った『マレウスAI』らしいが、本物はもう少し優しい。本物に近づけようとしても、しょせん偽物なのだ。
「こんな紛い物と話すなど、とうてい許されることではないぞ」
いつもより低い声が、エースの背後から聞こえた。
──そうそう。こんな感じだわ。
本物はもう少し優しくて、もっとヤキモチ焼きだ。
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【No.43】これを飲んではいけない
いくら気をつけていても、ずっと逃げ続けることは不可能だった。
エースはもがいた。マレウスの拘束は強く、逃れられない。
それでもエースはあきらめない。このままでは、本当にマレウスのものになってしまう。
「やめろよ! やめろって! 正気にもどれってば!」
「僕はいつも正気だ」
抵抗もむなしく、くちびるが重なる。
マレウスの口内に仕込まれていた一つの小さなカプセルが、エースの口内に送られた。
カプセルごとくちゃくちゃと、長い舌で口内を交ぜられる。
やがてカプセルは溶けて、唾液とは違う、トロリとした液体が、エースの口内で混ざっていく。
極度の緊張にさらされたエースの鼻息が荒くなる。
「ふうっ。ふうっ。ふうっ」
この液体を飲むわけにはいかない。
これが何なのか、エースは知っている。
──マレウスが本気で惚れ薬を作っておった。
──エースよ、気をつけたほうがよい。
リリアの忠告が正しければ、この惚れ薬を飲んではいけないのだ。
マレウスの腕の中で、エースは抵抗を続けた。くちびるが離れなくても、絶対に飲んでやるものかと。
口内からの粘膜摂取で、じわじわと効能が効き始めるまで、抵抗は続いた。
────────────────
【No.44】真夜中の廊下で
くちゃ。くちゃ。ぴちゃぴちゃ。
真夜中の廊下にひびく、ねばついた水音。
一人の生徒が怖いもの見たさで、音源に近づいていく。
それは、うっすらと見えた。
暗闇の中。あわい夜行灯の向こう側に、誰かがいた。
まともに見えたのは足元だけ。一人分に見えていたが──。
一人の足元のすぐ上に、別の足が、ぶらんと吊るされていた。
二人、いる。
吊るされている足はぴくりとも動かない。
不意に、夜行灯がじりりと鳴り、ほんの少しだけ光を強めた。
人影のりんかくも見えた。
二人が重なって、一人にしか見えない人影が。
人影の目元が、キラリと光った。
遠いそれはなぜかよく見えた。
薄い緑色の、竜の瞳だった。
人ならざるモノににらまれた生徒は、ひきつった悲鳴をあけながら逃げていった。
その後ろ姿など、竜の瞳の気をひくものではない。もう目の前の獲物にしか興味はない。
邪魔者を退治した瞳の持ち主は、ふたたび獲物のくちびるを堪能する。
くちゃ。くちゃ。ぴちゃぴちゃ。
獲物と成り果てたトランプ兵は、あきらめたように、だらんと脱力したまま。
竜の腕の中で、吊るされている。
────────────────
【No.45】かくれんぼ
クローゼットの中に隠れるなど、子供のようなかくれんぼだ。
それでもエースはそこに隠れるしかなかった。城の中は隠れられる場所が少ない。
見つかるのは時間の問題だった。
「見つけたぞ、トラッポラ」
クローゼットの床に座り込んだまま、エースは顔を上げられなかった。狂気に染まったドラゴンの瞳など、見たくない。
マレウスがしゃがむ気配がする。耳にキスをされて、いよいよ恐怖が頂点に達した。
エースの体がガタガタと大きく震える。
「許して……」
「ああ。許してやろう。逃げようとした仕置きが済んでからな」
そのささやきを最後に、エースは気絶した。
当時、あえてエースを見逃していた従者の証言によれば、仕置きは一週間、続けられたらしい。
逃げる意思をへし折るには、十分な期間だっただろう。
────────────────
【No.46】グラマラスな美女はお好き?
エースは異性愛者だ。だからマレウスの告白を断った。
翌日。マレウスはエースの前に現れた。
グラマラスな美女になって。
「女になってきたぞ」
「行動力ありすぎません?」
二メートル超えの美女の迫力もすごすぎて、やっぱりエースは断った。
しょんぼりとしているマレウスに向かって、エースはさとすように言う。
「ていうか、これでオレがOK出すほうがマズいですよ」
「なぜだ」
「王子様が性別を変えた、なんて、国が黙っちゃいないでしょ」
「既成事実を作ったあとに、男に戻るから問題ない」
「……世継ぎ問題とか」
「お前が産むから問題ない」
エースは心の底から「問題しかねえよ!!」と突っ込んだ。
────────────────
【No.47】白い王子様
王子マレウスは、花束を贈ることを知っていても、花遊びは知らなかった。
それを聞いた庶民のエースが、マレウスを草原に連れていく。緑いっぱいの中から白詰草を摘んで、編んでいく。
「はい、どーぞ」
できたばかりの白い草かんむりを、エースはマレウスの頭に乗せた。
今までかぶってきた、どのかんむりよりも、マレウスの心をほわっとさせた。
────────────────
【No.48】吊り橋効果
「トラッポラ、危ない」
マレウスはすぐさまエースを抱き寄せた。直後、廃墟の天井がくずれ落ちる。ガレキが落ちた先は、先ほどまでエースがいた場所だった。
廃墟探検に付き合っていた監督生が「うわあ」とつぶやいた。エースは何も言えず、助かった事実を噛みしめていた。
エースはマレウスを見上げる。
「ありがとうございました……」
「構わない。今日の僕はお前たちの保護者なのだから」
マレウスはエースから離れて、天井の破損具合を確かめていく。どこを通ればエースと監督生を無事に歩けさせるのか、考えているようだ。魔法で天井を固めないあたり、廃墟そのものを楽しんでほしい想いが、うかがい知れる。
マレウスの横顔を見つめているエースに、監督生は声をかける。
「大丈夫? どっか打った?」
「……監督生」
「なに?」
エースの目はキラキラと輝いていた。
「マレウス先輩って、あんなにカッコよかったっけ?」
「これが吊り橋効果か……」
────────────────
【No.49】はむはむ
寝起きなのも相まって、何をされているのか、マレウスは一瞬わからなかった。
エースに抱きつかれている。
エースの息が耳にかかっている。
エースに耳を食まれている。
「んむぅ……」
はむはむ、はむはむ。
エースは寝ぼけているようだ。
──このねぼすけを、どうしてくれようか。
マレウスは寝起き特有のぼんやり頭のまま、物騒なことを考えだした。
────────────────
【No.50】お前が悪い
ドガァン!!
オンボロ寮のすぐ近くで、緑色の雷が落ちた。
エースの肩がピャッと跳ねた。すぐにブルブルと震えだす。哀れな姿だったが、監督生はまったく同情しない。
二人の目の前で、マレウスが転移してきた。
「よくもこの僕から逃げてくれたな、トラッポラ……!」
腹の底から出てきたであろう、マレウスの怒り声。
エースは監督生に目で助けを求めた。
監督生はエースに冷えた目を向けた。
「お前が悪い」
「待ってええ!!」
絶望に満ちた声を残して、エースはマレウスにさらわれていった。
監督生は一人つぶやく。
「どう考えてもエースが悪いって」
一夜を過ごした夜を無かったことにしたいからと、エースはマレウスにウソをついた。
翌朝の幸せな二度寝を拒み、トイレに行きたいから離してほしいとウソをついた。
ベッドから出るのをマレウスに許可されたのをいいことに、そのままオンボロ寮に逃げ込んだのだ。
「ツノ太郎もよくやるよ」
逃げ癖のあるエースを捕まえ続けるのは、けっこう大変なのに。
国を捨てた騎士と舞手
マレウスとリリアが存在していない、別世界のファンタジーパロディ。
魔物たちに襲われてばかりの国があった。国民を守る騎士たちや、彼らを支える人々は疲弊していく一方。
このままでは魔物たちに支配されてしまう。支配を恐れた国は魔物たちを退けるために、ひとりの舞手を迎えた。
蒼い衣装をまとう舞手は、魔物を退ける結界を国の周りに張れる力を持っていた。
舞手は満月の夜になると、祭壇で踊っていた。国民たちの目にさらされている緊張からか、少しぎこちなさがあった。だが人の目には見えない結界は、無事に隙間なく張れていた。
魔物たちは近づかなくなった。なのに国民たちは舞手に懐疑的だった。
舞手が舞った軌跡には守護の光も舞っているはずなのに、その舞手には光が舞わなかったからだ。加えて国の周囲にあるはずの結界もまったく見えず、ただの空間が国の外にあるだけだ。
一般人が踊っているだけにしか見えない舞手を、人々はいつしか偽物あつかいしだした。
やがて舞手は国から追放された。
門前まで追いやられた舞手のあとを、ひとりの騎士が追った。
「あんなに誠実に舞ったお前が偽物なものか!」
そう大声で断言した銀の騎士は国を捨てて、蒼い舞手とともに旅立っていった。
舞手を追放した国は、新たな舞手を迎えた。
紅い衣装をまとう舞手の踊りは、見た目は派手だった。国民たちに見られているのにまったく緊張していない。堂々と舞った軌跡には光が強く輝いて、守護されている安心感をおおいに人々に与えた。
結界も人の目に見えるものだった。満点の星々のように、まぶしくない程度にキラキラと輝く結界は美しい。
うすく輝く結界の外で、魔物たちがうろついている。変わらず国に侵入してこない。見える平和を人々は謳歌した。
見た目が九割という話は本当で……やがて人々は平和に慣れていった。安心による心のうるおいは、次第に当たり前のものになっていき、欲は強くなっていく。
少しずつ内戦が起こり始めた。魔物たちに脅かされていないのに、命を落とす国民まで出てきてしまった。
この状態で魔物たちにまで襲われてはたまらない。そう考えた城の者たちは、舞手を監禁した。
満月の夜を終えたばかりの晩は、舞手への注意が散漫になる。そこを狙ったひとりの騎士が、舞手を閉じ込めている部屋に侵入した。
「もう、この国はダメだろう」
そう静かに告げた緑の騎士は紅い舞手をさらい、国から逃げていった。
国が舞手を失った瞬間を見届けた者は、もうこの国のどこにもいない。
追放された蒼い舞手も、新しく迎えられた紅い舞手も、ひとしく本物だった。ひとしい効果で、魔物たちを国から遠ざけていた。違いは舞の演出だけだった。
蒼い舞手の演出が地味だったからこそ、人々は危機感を持ち続けられた。自衛の心を失わなかった。
紅い舞手の演出が派手だったからこそ、人々は安心を得られた。勝手に争い合うまでは、うるおった心のままに平和でいられた。
ふたりの舞手を失った──否、おそらく舞手が残り続けても──国は自滅の道を歩み続けた。
やがて魔物たちが国に侵入し始めた。
舞手はもういない。残っていた騎士たちが国を守り続けた。人々は内戦をしている場合ではないと目を覚まし、騎士たちのバックアップについた。
結果、数を失った魔物たちは逃げていった。
魔物たちを自力で退けられた人々は、自分たちだけでも国を守れるのだと気づく。舞手に頼ってばかりだと、堕落して自滅しかねないと学ぶ。
舞手頼りの国政をやめた人々は自衛の心を胸に抱き、今まで働いてくれたふたりの舞手に祈りを捧げた。
旅立ったふたりの舞手とふたりの騎士は、どうなったのだろうか。それは彼らだけの秘密である。
結婚前の性行為はダメ!
最近のエースのマイブームは、マレウスに夜這いをすることだった。
エースは未成年だ。本当の性行為をしてはならない。そうマレウスに止められているのにも関わらず、エースは夜這いを続けていた。
すでにベッドの中に忍び込んで、マレウスを引きずりこんでも、マレウスは決してエースに手を出さない。それがエースは不満だった。
「別にいいじゃん。オレがいいって言ってんだから」
エースに馬乗りにされて、股間を押し付けられても、マレウスの拒否は続く。
「ダメだ」
「……さすがにもうオレのこと、まだ赤ちゃんだと思ってないよな?」
「もう思っていない」
言葉通り、マレウスはもうエースを年齢二桁の赤子だとは思っていない。監督生をはじめとする人間たちを見て、人間の年齢を学んでいる。
それでもマレウスはエースに手を出さない、正当な理由があった。
「まだ結婚していないだろう。手を出すのは、契りを結んでからだ」
結婚前に体を重ねるなど、プリンス思考が身に染みているマレウスには到底できなかったのだ。
だからエースは折衷案を出す。もう何度も出している案を。
「キスくらいしてくれたって……」
「何度も言ってるだろう。キスは奇跡を起こす、神聖で尊いもの。契りを結ぶ瞬間にこそ、初めて行われるものだ」
「出たよ、いつもの王子様っぽい発言!」
「僕は王子だ」
「そーいうことじゃねえ!」
ベッドで寝ているマレウスの上にまたがりながら、エースは背を丸め、マレウスの胸元でうめいた。
マレウスは手を上げて、エースの背をそろりと撫でる。
「理解しろ。あとほんの数年くらい、耐えないか」
「やだ! 耐えらんない! いますぐにでも先輩を抱きてえよお!」
「そう言われてもな……」
性的なキスも接触も今はしないまま、なおかつエースを納得させられる手段を、そろそろ見つけるべきか。
マレウスはそう思案を始めたのだろう。頭上から降ってきた声色で察したエースは、余計なことを考えさせまいと、マレウスの胸元にうずめていた顔をあげた。
じっとマレウスを見ながら、開いた胸元を、ちゅっ、と軽く吸う。
「な!?」
不意打ちをくらったマレウスは急いでエースを引きはがす。エースはニヤニヤと笑っている。
「こんなのキスじゃねーよ。口にやんなきゃセーフっしょ」
「しかし、これは」
「なあに? ほんとは我慢してた? オレに触ること、我慢し過ぎて、こーんなことで過剰反応しちゃった?」
マレウスは静かに怒る。
「トラッポラ」
「はいはい。今のはオレが悪かったよ」
つけあがり始めたエースは、再びマレウスの胸元にすり寄る。
「せめてさ、口と口以外のキスくらいはさせてよ」
「……アレを、許せと」
「こちとら先輩の都合に付き合ってやるんだよ? 先輩だって、オレの都合を聞いてくれたっていいじゃん。フェアにいこうぜ」
「ふむ……」
「ね、いいでしょ? マレウス先輩の胸にチューさせて?」
「む、胸か」
「男の胸なんて、性的なもんじゃないでしょ? そこに触って、チューすんの、先輩的にはアウトだったりすんの? 男なのに?」
妙な羞恥心に駆られていたマレウスは、エースの煽りをまともに受けてしまった。
「問題ない。いいだろう。胸に触ることを許可する」
エースは勝ち誇ったままに笑う。
「その約束、しっかり守れよ」
またマレウスの胸に口付けた。
盛り上がった二つの胸筋の谷間を吸う。くちびるをそのまま上に持っていき、首筋に口付けようとした瞬間、マレウスからストップがかかる。
「許可したのは胸だけだ」
「"胸から上が"ダメ?」
「……"下も"だ。胸から下もダメだ」
「腹は?」
「……」
「腹くらい、いいじゃん。性的じゃねーよ」
「いや! ダメだ!」
今回は流されなかった。あわよくば股間までいけないかと思っていたのだが、さすがにそこまでうまくはいかなかった。
けれど言い換えれば、胸だけで危機感を持ってくれた事になる。胸が弱いと白状してくれたも同然だ。
あまりにも素直な婚約者の姿に、エースは笑いを堪えるのに必死だ。
「ふ……く、くく。いい、よ。今日は、胸だけで、あ、ははっ、勘弁、し、してあげる」
「そこで笑うな。くすぐったい」
「ごめんって。ふふ、ふ」
あまりいじめると、本当に止められてしまう。そう危惧したエースは、今夜は中心に触れないと決めた。
二つの胸筋それぞれの中心にある──乳首を犯すのは、日を重ねてからでいいだろうと。
「そう思っていた時期がオレにもありました」
エースはソファに座りながら、今にも死にそうな顔でうなだれていた。
ここはオンボロ寮のゲストルーム。監督生は真顔で「そう」と相槌を打った。ちなみに真顔でいる理由は、相談された内容が、婚約者同士のどうでもいい乳繰り合いにしか聞こえなかったからだ。
エースの向かいのソファに座っていた監督生は、真顔のまま言う。
「僕はさっきから何の相談されてんの? もう聞きたくないんだけど」
エースは恨めしそうに監督生を見る。
「聞け。お前のせいだ。お前のせいなんだからなコレ」
「僕のせいって?」
「マレウス先輩に変なこと吹き込んだの、お前だろ。そのせいで、オレは……オレは……!」
言葉の途中なのに、エースはガバリとシャツをめくり、監督生に胸を見せつけた。
友人のとつぜんの奇行を目の当たりにして、監督生は「何やってんの!?」と叫んだ。負けじとエースも「コレを見ろよ!!」と叫び返した。
監督生は見たくもない男の胸をしっかりと見る羽目になった。
エースの胸には異物があった。異物と言いきるには、肌に馴染んでいるように見えたが。
「……絆創膏?」
エースの乳首には、二つとも絆創膏が貼られていた。中央のガーゼ部分。真っ平らなはずのそれは、二つとも控えめに、しかし存在を主張するように、ポツンと盛り上がっていた。
「マレウス先輩を胸から堕として、屈服させて、抱いてやろうと思ってたのに」
「最低だな」
「まさか、まさか……やり返されるなんて!! 思わねえだろ!」
ここで監督生は、エースがこうなってしまった理由を察した。
エースには黙っていたが、実は監督生はすでにマレウスに相談されていた。
──最近はトラッポラに会うたびに胸がうずいてしまって、悩んでいる。
そう言われた監督生は、ただの惚気だと思っていた。だが話を聞いていくうちに、肉体的な意味で『うずく』のだと知った。友人同士の性事情など知りたくなかった。
よそでやってくれ。監督生は本気でそう思った。けれど面倒を見たい思いもあった。なぜなら監督生はマレウスとエースをくっつけた、いわば恋のキューピッドである。なぜそうなったのかは、また別の話だ。友人どころか、学園や茨の谷をも巻き込んだ恋のすったもんだの詳細を語ったが最後。砂糖の吐き過ぎで死んでしまう。
結局突き放せなくて、マレウスの悩みの解決策を提案してしまったのだ。
「『いっそ襲い返せばいいよ』とは言ったけど。あれ、本気にしちゃったかあ」
「ほら!! やっぱりお前のせいじゃん! どーしてくれんだよ! もう絆創膏でガードしねえと、まともに服も着られねえ」
「でもさあ、先に襲ったほうが悪いでしょ」
エースは開き直る。
「いーや。10代の性欲なめてるマレウス先輩が悪いね。だいたい口と口のキスすらダメって何? 恋人どころか婚約してんのに? 枯れてんのか、あの人」
「それ絶対ツノ太郎に言っちゃダメだよ」
「わーってるよ」
エースを想うがゆえの行動だったという事くらい、エースも理解している。それでも気に食わないものは気に食わない。やり返されたのなら、なおさら。
たくしあげたシャツを下ろしたエースは肩を落とす。
「なんとかしてよ、監督生」
「無理だよ」
「だからそこをなんとか」
「だから無理だってば」
「じゃあせめてオレを組み敷くのやめるように頼んでくれよ!」
「はあ……上になりたいの?」
エースは深くうなずく。
「あんな綺麗な人は下になったほうが……そのー……絵になるじゃん。いやほんとに絵にさせるわけじゃなくて。目の保養っつーか。男の本能が満たされるっていうか」
「そう。でもそれ──」
続きを言おうかどうか、監督生は少し悩む。
エースの視線を受けて、結局言う。
「ツノ太郎も同じ感じなこと言ってたよ」
「……何を?」
「トラッポラはかわいいから──」
エースは驚きのあまり、ソファからビョンっと跳ねて、床に転がった。自分のすぐ背後で、マレウスの声が聞こえてきたからだ。
ワタワタと情けなく監督生のそばまで避難してきたエースを見て、マレウスはほほ笑む。改めて続きを言う。
「トラッポラはかわいいから、ベッドの中では僕に組み敷かれるべきだ。そうヒトの子に言ったんだ」
「そ、そん、な」
「『そんなこと聞いてない』と言いたそうな顔をしているな? ふふふ。自分が抱く側だと信じている婚約者が愚かで愛らしくて……その姿を結婚するまで堪能したかったものでな。僕が抱くほうだと明かさないまま、泳がせたんだ」
マレウスはエースにさっと近づいた。エースは監督生にすがりついた。監督生は迷わずエースをマレウスに差し出した。エースは「ちょっと監督生!?」と抗議した。監督生はエースを無視して、マレウスをねぎらう。
「災難だったね」
「ああ。結婚するまでは手を出さないと決めていたのに。気が早い婚約者を持つと、心労が多くなる」
監督生との会話を終えたマレウスは、エースの顔に、自身の顔を近づける。すり、と鼻をこすり合わせる。
「僕の胸元にキスしたとき、お前はこう言ったな。これだけで過剰反応するなど、本当は自分に触れたくてたまらなかったのではないか、と」
「い、言った、かな? 覚えてないなー……」
「僕は覚えている。ああ、いつまでも覚えているとも。図星だったからだ。本当は僕もトラッポラに触れたかった。それでも、どうしても、結婚前の性行為だけはしたくなかった。だと言うのに……」
わざとらしく言葉を切ったマレウスはエースから顔を離す。代わりにその身を横に抱き上げた。「ぎゃあ」と悲鳴をあげたエースをチラリと見てから、ソファに座ったままの監督生を見下ろす。
「僕たちはここで退席しよう」
「うん。そうして」
そして縮こまっているエースに、とびきりの笑顔を見せた。
「触るのなら、触られる覚悟も持つべきだ」
まったくもって、その通り。監督生はエースをかばわず、ひらひらと手を振る。転送魔法で消えた二人を見送った。
「面倒を見ることにならなくてよかった」
そろそろグリムが補習から帰ってくる頃だ。
監督生もゲストルームから退席した。
あの後、エースが抱かれる事はなかった。結婚前の性行為はしない、というマレウスの心も本物だったのだ。
その代わりに、エースはマレウスに乳首をたっぷり触られた。どう触られたかを……エースは誰にも言わなかった
絆創膏越しに触られただけでもしっかり反応してしまうほどに弱くなった乳首の詳細を、誰が語れるものか。
人間が妖精族と子作りする方法(pixiv未掲載)
流血をともなう肉体的な損傷はありません。
「知ってしまえば、もう後戻りはできないぞ。それでもいいのか?」
ひとりがけのソファに座りながら見上げているマレウスに向かって、エースは正面に立ったままうなずく。
「うん。オレ、マレウス先輩との子ども産みたい」
マレウスは「そうか」と言った。真顔の裏では何を考えているのか、エースには読めなかった。
もしあまり良く思われていないのであれば、ここから先は苦労するかもしれない。苦労は嫌いだ。叶うのなら楽がしたい。だが、その楽が約束されていなくても、エースは身を引きたくなかった。
マレウスを人生最後の恋人にすると決めている。だからどうしても、マレウスとの子どもが欲しい。自分が寿命で死んだあとも、マレウスと結ばれた証を残したい。
その一心で、こうして城内の王子の私室で、エースはマレウスと向かい合って、子どもを作る方法を聞いている。
エースの要望を正面から聞いたマレウスは、真顔のまま口を開く。
「本当に、いいんだな」
ずいぶんと念を押す。さすがに尻込みしそうになるが、子どもを残すためならと、勇気を出して「はい」と言いきった。
マレウスは問いかけた声と同じトーンで続きを言う。
「では服を脱げ」
「え、今から?」
「そうだ」
「……ここで、立ったまま?」
「そうだ」
「なんか……ムードとか……」
マレウスの眉間にシワが寄る。
「嫌なら脱がせてやろうか」
「自分でやります!」
エースは上着を思いきり脱いだ。勢いのまま、服を一枚ずつ脱いで、床に落としていく。
ついに最後の一枚──股間を守る下着に手をかけたところで、その手が止まった。急に恥ずかしくなったからだ。
まだ学生だった頃。部活が終わったあとのシャワー室で、周りにチームメイトがいようとも構わず裸になれたというのに、恋人の前になると、妙な羞恥心に襲われた。
顔を赤くしながら硬直していると、マレウスがソファから立ち上がった。
「もういい」
エースのすぐ前まで移動する。ピンと伸びていたマレウスの背中が、エースに覆いかぶさるように丸くなる。
エースの視界がマレウスの首元でいっぱいになる。香水が鼻腔を甘く刺激した。
下着にかけたままのエースの両手に、マレウスの手が重なる。指の骨をなぞってからエースの両手を離して、代わりに下着のふちに自身の指を引っかけた。
「あ……」
エースの股間を守っていた最後の一枚が、するりと下ろされた。足首まで落ちていったそれはもうただの布だ。
マレウスの指が、エースの尻の割れ目に潜りこむ。かたく閉じられた窄まりに指先をすりすりと這わせる。
表面を触られているだけなのに、エースはすでに甘い刺激に酔っていた。
「はあぁ……」
たまらずマレウスの背中に両腕を回して、すがりつく。
──このままベッドに連れてかれんのかな。
エースの期待はむなしく空回り。マレウスはエースから身を離して、こう告げるのだ。
「ソファに座れ」
次期王の絶対的な命令。エースは逆らえない。
「……うん」
うずく体を抱えながら、マレウスが先ほどまで座っていたソファに、今度はエースが座った。
マレウスはエースのすぐ前にひざまずき、裸体を開かせる。
「深く座れ。腰はもっと前に。足を閉じるな。全てを僕に見せろ」
王でもここまではふんぞり返らない姿勢になるまで、深く座らされるエース。肩はソファの背面にめり込み、開かされた両足はソファの座面からほとんどはみ出ている。
心細さのままに足を閉じたいのに、ひざまずいているマレウスが間に入りこんでいるせいで、閉じられない。全開になった股間をマレウスの目の前にさらしてしまう。
見目麗しい王族に、汚らしい股間を見つめられている。うぶな少女でもないのに、背徳感と羞恥心に襲われて、顔だけでなく体も赤くなってきた。
ペニスに熱が灯っていく。
「そんなに見なくてもいいじゃん……」
「……初めて見たものだから」
マレウスの言うとおり、エースがマレウスに裸体を見せたのは、今回が初めてだ。
だからどうしたらいいのか、エースにはわからない。つい生意気な口を叩いてしまう。
「初めてなんだから、ベッドに連れてってよ。オレが自分で行ってやろっか? そーだよ。それがいいって。だからさ、お、起こさせて」
「ならない」
マレウスは一言で切り捨てた。長い舌を出して、芯を持ち始めていたペニスをぺろりと舐める。
「ひゃっ!?」
逃げようとしたエースの腰は、マレウスの両手に捕まった。
「逃げるな」
マレウスはいったん舌をしまった。
エースの太ももを手のひらでなぞり、ひざ裏に手をかけて、すくい上げる。ひざから足首までを、ひとりがけソファのひじ掛けに左右それぞれ魔法で縛りつけた。
エースはソファに深く座る──深すぎて、胴体はほとんど座面に寝かされている──形で、ちんぐり返しの格好で拘束された。
まだ自由なままでいられている両手は、マレウスの両手に繋がれる。指を絡ませられて、背面クッションに沈んでいる頭の真上に押し付けられた。
マレウスの顔がエースの顔に近づく。
「僕と子作りしたいのなら、逆らうな」
「だっ、だって、こんなの、びっくりする。せめて何すんのか、言ってくれたって!」
「まだ言えない」
「なんで!」
「人間が妖精族の子どもを宿す方法を、まだお前に知られてはならないからだ。ここで全てを話したら、本当にお前は、後戻りできなくなる」
エースはマレウスを凝視する。
──まさか、まだこの想いを疑われていたなんて!
「ふざっけんなよ!! オレは本気であんたが好きなのに! この期に及んで、まだ疑うわけ!?」
頭を前に倒して、マレウスの額に自身の額を合わせたエースはまだ怒鳴る。
「だんまりを決めこむってんなら、やってやろうじゃねえか! 全部受け入れてやらあ!!」
つまり、今から何をされてもいいのだと、エースは宣言したのだ。……してしまったのだ。
マレウスは「言ったな?」と確認した。
開いた口から伸ばされたマレウスの舌先が、エースの鼻の頭をちろちろと舐める。興奮して大きく開いた鼻の、二つの穴の中に、二股の舌先をそれぞれ挿入した。
「あぐぅええっ!?」
まったく予想できない暴挙。抗議よりも混乱が先に来たエースは、ただ大きく声をあげた。
たまらず頭を振るも、すぐさまマレウスの両手に頭部をはさまれて、固定される。エースも解放された両手で、マレウスの両手を叩いたり引っかいたりした。なのにマレウスの両手はエースの頭部から離れない。舌をひっ掴みたくても、マレウスの口はもうエースの鼻を丸ごと含んでいる。エースの手が届かないマレウスの口の中で、舌は奥に進む。広がる鼻腔の空間をめちゃくちゃに掻き回していく。
「うえええっ。へ、ぐじゅっ。やっ、やべろ……っ、えっぎし! へええっぐぅ……ぐひいいっ! ぐ、しいっ! ひ、ひっぎ! いぎしっ! あ、あ!! 待っでええ!! ぐしゃみいいっ! どまんっ、なああっぎしいっ!!」
止まらない。
「いづまでっ!! 続ぐのっ!! いぎっ!! 息がぁああ……っ、でぎなっげほっ! えほおっ! ぐしゅうっ!」
止めてくれない。
「ひゃっ、ひゃべっ! ふ、ふ、ふぐっ! う……ぐびゅうううっ! ひいいーっ! げほっ。えほおっ! ぶしゅうっ!! ひゃっ、べっ! ひゃべっええぇ。やらぁあああっ!! えふううっ!」
しばらく続いた後。とどめと言わんばかりに、最奥の突き当たりをぐじゅりとひと突き。
「がはっ……!!」
エースが白目を剥き始めたところで、マレウスの口がエースの鼻から離れた。
解放された鼻の穴からは、鼻水がタラタラと真下に向かってこぼれている。だらしなく開いた口の中に入り、よだれとともに吐き出され、先に垂れていた涙とも混ざり、エースの胸元を汚していく。
上向いていたエースの眼球が元に戻ろうとする時。マレウスの視線はエースのペニスに移っていた。
数えきれない回数のくしゃみを強制された体は性的な興奮を失っており、勃起しかけていたペニスはすっかり萎えていた。
マレウスはペニスの先端を摘み、尿道口をくぱっと開く。萎えてやわらかくなった小さな口は、今なら狙いの物を飲みこめそうだ。
「よし」
舌を伸ばして、ペニスを舐める。唾液を亀頭に集中させれば、開けた尿道口の中に、唾液がコポコポと入っていった。
細くした舌先で尿道口を浅く掘り、唾液をもっと奥に入れていく最中。やっとエースの意識が現世に戻ってきた。
「なに……してんの……?」
エースの問いをマレウスは無視して、尿道内を唾液で満たしていく作業を続ける。エースもそれ以上、口をはさまず、マレウスをぼんやりと見つめていた。
他人の唾液を尿道内に詰められている。異常事態なのに、不思議とエースは嫌な気持ちにならなかった。むしろ心地よさすら感じた。
精液とは違う、トロリとした液体。せまくて敏感な穴の中を通って、埋まりながら奥に進んで、進んで、進んで、侵入されて……。
「んっ」
気持ちいいところをかすめられた。
自慰で精液が通るときに、心の中で泣いてしまうくらい気持ちよくなれるところ。とても奥にある、泣きどころ。そこを、マレウスの唾液が圧迫し始めた。
唾液の中に混ざるあぶくが、ぷちりと弾けて、気持ちいい。
「あ……ん……」
ちゅぽちゅぽと尿道口を抜き差ししていた舌先を収めてから、マレウスが一言。
「よさそう、だな」
エースはかくりとうなずく。
「いい。すげえいい。いすぎて、変になる」
「これからもっとよくなる。……おそらく、死にたくなるほど」
最後に物騒な言葉を付けられたことに、エースは気づかない。おだやかな快楽におぼれていた。
身を乗り出したマレウスは、自身のくちびるをエースのくちびるに重ねる。舌を絡めて、エースの唾液を奪っていった。
キスは長く続かず、二人の口は離れた。
マレウスは奪った唾液を口内で味わう。自身の唾液とたっぷり混ぜた後。べ、と舌を出した。
二股の舌先から、トロォ……と糸を引いて、唾液が落ちる。真下にあったエースの亀頭に不時着して、不恰好な玉になる。追加の唾液がポタポタと追いかけるだけで、エースの腰がひくついた。
宙ぶらりんになっていた舌先を亀頭に乗せる。くるり、くるりと舐めて、亀頭に乗った唾液玉をかき集めた。唾液玉ごと、ふたたび尿道口を埋めて、抜き差しを軽く繰り返して、尿道内に唾液を追加で詰めていく。
──オレのちんこ、すげえエロく舐めてる……。
尿道内から伝わる圧迫感も相まって、エースはマレウスの痴態から目を離せない。
ペニスがだんだん勃起していく。媚肉の質量が増して、せまい穴が更にせまくなっていく。
舌と尿道口の隙間から、ぷちゅり、と少量の唾液が漏れた。
尿道口から舌を抜いたマレウスは、また漏らそうとする小さな口を、親指の腹で塞いだ。
舌をしまい、エースの目を見て、真顔で叱る。
「こら。吐くんじゃない。もっと飲みこめ」
「だって、よすぎる……」
口ごたえするな、と言う代わりに、尿道口を塞いでいる親指をくちくちと揺らすマレウス。たまらずエースは腰を振るわせ、鳴く。
「ひおっ。あっ、あっ、あっ」
「……まあ、じゅうぶん入ってはいるか。これなら……」
尿道口から親指を離したマレウスは、魔道具を手中に召喚した。
それは棒だった。長さは今のエースのペニスの竿部分と同じくらい。太さは今のエースの尿道口の直径と同じくらい。
まるで今、その場で、長さと太さを調節したような……否、間違いなく調節したのだと明かされた。続くマレウスの言葉によって。
「これは大きさが決まっていないから、今のトラッポラに入るようにしておいたぞ」
「……え?」
細長い棒──スティックの先端が、尿道口に添えられる。
「ちょ、やめ──」
エースが察しても、もう遅い。
全てを受け入れるとマレウスに宣言した時点で、もう全てが遅いのだが……。
まずは一センチ、挿入された。
「うっ」
そのままスティックが抜けない範囲内で、ゆるゆるとピストンされる。
さすがに黙って見ていられなかったエースは、スティックを持っているマレウスの右手を両手で掴んだ。
マレウスはエースを咎める。
「抵抗するんじゃない。怪我をするだろう」
エースの両手がマレウスの魔法で離される。ソファのひじ掛けに縛られている両足と、追加でまとめて縛られた。
剥き出しの股間をマレウスに捧げる形で、両手両足をひじ掛けに固定されたエースは、完全にソファと仲良しになってしまった。
スティックの丸い先端は、変わらず尿道口を何度も浅く掘削している。
ちゅこ、ちゅこ、ちゅこ。
「ひ、ひっ! ひ……っ!」
「……うん。濡らしたおかげで、引っかからないな」
マレウスは床を踏んだままの左足を起点にして、ちんぐり返し状態のエースに乗り上がった。
まずは右ひざでエースの左太ももの付け根を踏んで固定。次に左手で右太ももの付け根を掴んで固定。最後に右手でスティックを摘みなおして、角度を調整。
本格的な挿入の準備が整った。
「死にたくなるほど、つらいらしいが……僕の子どもを産むためだ。耐えてみせろ」
エースは怖気付く。
「まっ、まだっ、産まなくていいかなー、って……」
マレウスは無視して、スティックをペニスの中に沈めていった。
「ぁあああああああ…………!」
部屋に響くエースの悲鳴。マレウスの下でもがいている。けれど一番逃れたい股間はマレウスに押さえつけられていて、ひくひくと震えることしかできない。
「あう、あう、あ、あぅううう」
持ち手になっていた部分を残して、スティックは埋められた。それで終わらない。マレウスはペニスから飛び出している底部に人差し指の腹を乗せて、ぐーーーー、と中に押し込んでいった。
「そんなっ! とこまでぇ!?」
スティックがエースの視界からほとんど消えた。はくはくと苦しそうにあえいでいる尿道口の内側で、スティックの底部がわずかに覗いている。それもマレウスの親指でふたをされて、まったく見えなくなった。
亀頭から竿の根元まで、激しい圧迫感が内部からやってくる。元凶を吐き出したいのに、ふたをされているせいで吐き出せない。
「うううう……っ。抜いてぇえ……」
「抜くも何も……まだ残っているぞ」
「へえっ?」
全部入っているのに、まだ残っている?
その疑問は、すぐに解消された。
「あああーっ!?」
尿道内で、スティックが更に伸び始めたのだ。
「伸びてる。入ってる。入ってるっ。なんだよこれっ! わああ、あー!」
底部を支点にして、スティックはどんどん奥に侵入していく。やわらかいスティックは道のカーブに沿って、ゆっくり曲がっていく。唾液にまみれた中は侵入を容易にさせる。
ぬぷ、ぬぷ、ぬぷぷ……。
「あ、あっ、ああ……」
ぐりっ。
「ふうううっ!!」
スティックの先端が、エースの泣きどころを圧迫した。マレウスに上から押さえられていなければ、確実に腰が跳ねた瞬間だった。
拘束下でガクガクし始めた腰に構わず、スティックは泣きどころを刺激しながら先に進もうとする。
二つに分かれた道があった。
膀胱に続く道と、精巣に続く道。
スティックは膀胱のほうへ進んでいった。
「うううううう」
ついに先端が膀胱口に到達した。
きゅうと締まっている、ちいさな口。スティックは伸縮を小刻みに繰り返して、怯えている口をトントンとノックする。
「あが、あがが、あ、が」
「ほら、開くんだ」
「や、だぁ。ぬいて。もう入んない。ぬいてぇ」
「……なら、こじ開けるまでだ」
マレウスは尿道口を塞いでいる親指にグッと力を入れる。何があっても、スティックが抜けないように。
「ぎっ!!」
一瞬、エースは何が起こったのかわからなかった。
ひどい圧迫感。
尿道を駆け上る液体。
ぶしゃぶしゃという水音。
体が濡れていく感触。
暗転する視界。
……いつのまにか飛んでいた意識が戻ってきた。
真っ先に感じたのは、あたりにただよう刺激臭だった。発生源はエース自身から。ソファのひじ掛けより下にある股間と胴体がずぶ濡れになっていて、顔にまでかかっていた。それが小便くさかった。
──オレ、漏らしちゃった?
次に視界に入ってきた、自身の勃起したペニス。スティックの底部と尿道口のわずかな隙間から、ぷしゅ、と尿を漏らした瞬間を目撃してしまう。そのせいで、エースの疑惑は確信に変わった。
「最初から強くしすぎたな……次はもっと弱めてから……」
独り言をつぶやいているマレウスは、エースの正面に立って、惨状を見下ろしていた。ずっと尿道口を塞いでいた親指は離れていて、今はマレウスの舌がねぶっている。親指に付着したエースの名残を味わっている。
エースは弱々しく口を開く。
「なに……」
「戻ってきたか」
「オレに……なにを……」
エースの覚醒に気づいたマレウスは、最後に親指をひと舐め。
「何をしたか、だが……まずはその棒の説明をしてやろう」
「遅くね?」
「先にしようと後にしようと、同じことだ」
エースを見下ろしたまま、マレウスはやっと説明を始める。
「そもそもこの魔道具が無くても、人間は妖精族と子作りできる。だが僕ほどの力を持った妖精族が相手だと、子どもを身ごもったときに、人間程度の魔力では子どもに魔力を生命ごと吸い尽くされて、母体の人間が死んでしまう。だから、トラッポラの肉体を変える必要がある」
「……いやちょっと待て!? 変えたの!?」
「いや、まだだ。これから変える」
マレウスは身をかがめて、エースのペニスの竿を指先で軽く引っかく。
「ふうっ」
刺激を受けたペニスが震えて、また少量の尿を吐き出した。
勃起して浮き出ている筋をなぞられつつ、カリカリとくすぐられていくエースのペニス。
「くふっ。ふううっ。やめろ。また、漏れるっ」
「昔話をしようか」
ちょぽちょぽと失禁を続けているペニスを飽きずにくすぐりながら、マレウスは話していく。
「僕が産まれるずっと前のことらしい。人間に恋した妖精族がいた。その妖精族も魔力が多くてな、人間を孕ませたくても、魔力を糧にして育つ子どもに殺されてしまうから、孕ませられなかった」
「あっ、あっ、あっ、指、やめてっ。漏れる漏れる漏れる……!」
「……聞いているか?」
「聞いてるっ! 聞いてるから、くすぐるなよっ! 気ぃ散る!」
「失禁が止まらないのを自覚させるためにやっているのだが、どうだ? 止まらないだろう?」
マレウスの言うとおり、エースは先ほどから尿を漏らしっぱなしだ。まるで膀胱が機能していないような……。
エースはハッとする。
「これっ。この棒の、せいで」
マレウスは昔話を続ける。
「恋しい人間を孕ませたい妖精族は、こう思いついた。人間を妖精族にさせれば、少ない魔力が倍増されて、子どもを孕んでも問題なくなるはずだと」
マレウスはペニスをくすぐるのをやめた。代わりにペニスを手のひらで包み、上下にしごき始める。
「ほおおおお……!!」
エースが腰を振って鳴いても、ほとばしる尿を手に浴びても、マレウスは手を止めない。昔話を続ける。
「人間が妖精族になる方法は、妖精族の体液を体内に取り込むことだが……皮膚や口内摂取くらいでは非効率すぎて、妖精族になるまでに寿命が来てしまう。なので件の妖精族は、一番効率の良い吸収法を取った」
「おおっ。おおんっ! しごかないでぇええぇえ」
「それは人間の精巣内で、妖精族の精液を取り込むことだった。これなら短期間で人間は妖精族になれる。……聞いているか?」
「き!! 聞いてほしいんなら! 手ぇとめろー!」
「聞いているなら、それでいい。こうして妖精族は自分の精液を人間の精巣内に詰めて、生きているうちに妖精族にさせて、無事に孕ませられた。めでたし、めでたし」
果たしてそれは人間の同意があったものなのか。エースは気になったが、それどころではない。
少量とはいえ、本当に、失禁が止まらないのだ。
「オレの膀胱! どうなってんだよおおお!」
「昔話も終わったところで、本題なのだが」
しごいていた手が急に止まる。
「ああっ!? あっ、うああっ。はっ、はー、はー、はーー……」
とつぜん終わった刺激をエースは持て余す。
「はうう……」
手は止められたのに、失禁は止まらないままだ。
チロチロと竿を伝い落ちる尿。まだペニスを握ったままのマレウスの手を濡らし続ける。
「オレの膀胱、どうなって……?」
「尿道に挿入した棒の先端を、膀胱の中に入れた。もちろん入れただけでは、ここまで失禁しない」
「なに、した」
「膨らませた」
「……は?」
「棒の先端を、風船のように膨らませた」
マレウスはエースの下腹をクッと押した。それと同時に、エースのペニスから尿が新しく、ピュッと湧き出た。
そして下腹には、歓迎したくないのに馴染みのある感覚。外出先でなかなかトイレが見つからないときにやってくるもの。
尿を我慢しているときに感じる、膀胱からの圧迫感だ。
「トラッポラの膀胱の中は、膨らんだ棒の先端でいっぱいになっている。尿を溜める空間など、まったく無いほどにな」
──ああ。だから尿が作られた端から、外に出されているのか。
エースのどこか冷静な部分が、そう納得した。
冷静ではない部分が、エースを更なる疑問の渦に落とす。
「なんのために、こんなことすんの」
「棒がひとりでに抜けないためだ。ほら、こうしても──」
マレウスが魔法をかけた瞬間、棒が振動を始めた。
弱った尿道内からの強い刺激に、エースは耐えられない。
「ぎゃああああああああ!!」
「膨らませた先端が膀胱に引っかかって、抜けなくなっているのがわかるだろう?」
「ぁあああぁあぁあっ!! ぐっ! うぅうううう〜〜〜〜!」
「……返事くらいしないか」
振動は止められた。それでも余韻でエースは「うああっ! ああーっ!」と鳴き続けた。あまりにも鳴くものだから、マレウスは「大げさだ」と言い、エースのペニスを指でパチンと弾く。
「あっぶ! ……ぶふうううっ」
大きくブレた亀頭から尿の飛沫が広がり、エースの顔に思いきりかかった。
振動に犯されたばかりのペニスを、マレウスはくにくにといじる。
「これでもかなり振動を弱めたほうだぞ」
「ひいっ、ひいっ、ひいっ」
「あの時は強くしすぎたから……」
つぶやきながら、マレウスは思い出す。膀胱口をスティックの先端で突いていた時だ。
あまりにも膀胱口をけんめいに閉じるものだから、魔法でスティックを振動させて、こじ開けたのだ。その時の振動を最強にしたものだから、エースは一瞬で声を失った。当然だ。その振動は劣情を煽るもので、親指で触れているだけのマレウスですら、腰が重くなったほどだ。それを液体しか通してこなくて甘やかされた尿道内に、モロに受けたのだ。失神寸前まで追いこまれて当然である。
けれどその時の顔もたいそう愛らしいものだったから、振動を止めなかった。
ノックされ過ぎてゆるんだ膀胱口にスティックの先端を侵入させた。膨らませて、失禁させた。
ここまでくればスティックは抜けないと判断して、エースの上から退いた。
エースは自由になった腰を思いきり振った。ソファの座面から尻が何度も浮いて、尿を大量に噴き散らして、股間と胴体をビチャビチャに濡らした。顔にもかかった瞬間、おぼれてしまわないかと心配になった。
振動を止めればすぐに失神して、おとなしくなった。
あの時はさすがにひどいことをしてしまったと、マレウスは反省したのだった。
マレウスの心中など知らないエースは泣きながら願う。
「もっ! 触んないでえっ!」
エースの恐怖など知らないマレウスは手の中でペニスをもてあそび続ける。
「だから最初は弱くして、少しずつ強くしてやろう」
いったん止めていた振動を再開させる。
スティックに貫かれているペニスとともに、腰もガクガクと震えていく。
「あひいいいいい……!」
ぶるぶる。
「はあっ、はあっ、はひいっ」
ぶるぶるぶるぶる!
「おおぉうううう。ふうっ。うんんっああああっ!」
ぶるるるるるるるるるるる!!
「やあああぁあぁああぁああぁあ〜〜〜〜!!」
ゆっくりと、しかし着実に強まっていく振動。尿もぷしゅぷしゅと控えめに噴いている。
天井に向かってだんだん上がっていく股間。しまいには両手両足が縛られているひじ掛けより上にまで、股間が突き上がった。ペニスをゆるく握っているマレウスの手も連れていって。
エースは振動責めにあっているペニスを頂点にして、ソファのひじ掛けに乗り上がっている。エースの正面に立っているマレウスに、完全にペニスを捧げる格好になっていた。
「……いい」
とても良い格好だとマレウスは感激した。そしてその格好で固定しようとも考えた。
天井から茨──トゲは丸めてある──が数本おりてきた。複数の茨は左右に分かれて、エースの太ももの付け根をそれぞれ縛る。丸いトゲがエースの肌に食いこみ、離れない。そのまま茨を上にピンと張れば……エースの股間は限界まで突き上がった状態で固定された。
どこにも逃げられなくなったエースのペニスを、えんりょなくマレウスはしごいていく。
「ほおおおおおおおうううう!!」
不意打ちをくらったエースはすぐに股間を下ろそうとする。だが当然、茨に吊るされているせいで下ろせない。なすすべなくマレウスの手淫も食らう。
「があっ! あぁあ、あっぎいいいい! おおお! おろぜええええぇえ! さわんなあぁああああああ!」
ガクンガクンと、激しくけいれんしだすエースの体。
そろそろだろう。そう判断したマレウスはもう片方の手もエースの股間に伸ばして、二つの睾丸を転がし、会陰をくすぐる。もちろん同時にペニスをしごくのも忘れない。
けいれんが頂点に達した瞬間。エースの体が硬直した。
「……あ」
達したにしては、やけに小さな声だった。そして精液も、尿と比べれば派手には出てこなかった。
マレウスがペニスを責めていた手と振動を止めれば、精巣内で煮込まれた精液が、とぽ……とぽ……と、スティックの底部と尿道口の隙間から吐き出されていく。数回に分かれて吐かれたそれらはエースの腹に着地して、脇腹と背中をくすぐるように伝い落ちていった。
少ない射精を終えたエースは、またブルブルと全身をけいれんさせていく。
「で……ない……。あ……うそ…………出ないよお……」
「どうしたんだ?」
「出ない。でない。あっ。あっ。でないのおおお……」
エースは思うように射精できなかった。
理由は、スティックの存在である。
粘度が低い尿なら難なく通れる隙間が、粘度が高い精液だとつっかえて通れなくなる。
つまりスティックと尿道の隙間がせますぎて、精液を思うように通してくれないのだ。
切なさのあまり、エースは不自由な腰を揺らして泣く。
「ううう……うえええええん…………。出したいよおおお……。射精させてえええええ…………」
一方でマレウスはエースの状況に、ひとり納得していた。
マレウスはエースに声をかける。
「聞け、トラッポラ。射精できない理由がわかった」
「射精したいよお……出したいよおお……」
射精しか考えられなくなったエースの耳には、マレウスの声が届かない。
このままでは埒があかないと判断したマレウスは、強硬手段に出る。
「聞け、トラッポラ!」
エースのペニスに魔法の電流を流した。
「ぎゃあああがががっがががっぎぎぎぎぎ!!」
エースはすぐに現実に引きずり戻された。
急所を中心に感電しているエースの体はのけ反りすぎて、顔面は逆さまになり、ソファの背面クッションに顔をめり込ませている。
「がごぶっ!! むぐっ! むうううう……っ!」
じょぱっ、と音を立てるほどに失禁の勢いが増した。遅れて精液も、とぽり……と吐き出される。どうやら呼吸を制限させると、より一層感じるらしい。
しかし今は呼吸制限させることが目的ではないので、マレウスはソファの背もたれを壊して本体から外し、エースの顔面をクッションから救出した。
「ぶばあぁああっ!! ひっぎいいああばばばばっ!!」
電流を止めた。
股間を吊るされながら息を荒くしている、自身の尿で全身ずぶ濡れのエース。背面クッションという支えを無くして、すっかり逆さまになってしまった、赤くて汚い顔。そんなエースを真顔で見下ろしているマレウスは改めて、一字一句、違わずに言う。
「聞け、トラッポラ。射精できない理由がわかった」
「うあ……は……はい……」
エースのうつろな目がマレウスを映していることを確認してから、マレウスは続ける。
「粘度が高すぎる精液では、棒と尿道の隙間を通るなどほぼ無理だ。だがそれは想定通りなんだ」
「え……?」
「昔話を思い出せ」
そう言われても、とっさには思い出せない。エースが返答に詰まっていれば、すぐにマレウスは答えを明かす。
「人間が妖精族の子どもを身に宿すためには、妖精族にならなくてはいけない。そして妖精族になるためには……人間の精巣の中に、妖精族の精液を詰める必要がある。そう言っただろう?」
「……あ」
察したエースの顔が青くなった。
まさか射精しにくくなっているのは、ただの事故ではなくて、計算されたものだったとしたら……。
「お前に一つ、新しい知識を増やしてやる。……妖精族の精液は、人間よりも、はるかに粘度が高い」
マレウスはエースのペニスをゆるく撫でる。
「そしてこの中に、人間の精液ですら通りにくい隙間があるな? 妖精族の精液なんて、一滴も通さないだろうな? この魔道具の棒のおかげで、僕の精液を閉じ込めるのに最適な環境になっているな?」
「あ、あ」
「そしてこの棒を使うには、転送魔法が得意であることが条件だ。そうでなければ、自分の精液を他人の精巣の中に詰められないからな」
終始ほぼ真顔だったマレウスは、ここで初めて笑みを浮かべた。
やっと獲物にありつける、ケダモノの笑みだった。
「詰めるためには、お前の精液が邪魔だ。全て射精させてやろう。どんなに射精しにくかろうと、全て、だ。疲れても、電流を流して射精運動をうながせば良い。棒と尿道の隙間に精液が絡みついても問題ない。亀頭をいっぱい触って、尿や潮で洗い流してやろう。……ああ、そうだ。『オレの精液を魔法で外に転送してくれ』なんて野暮なことは言うんじゃないぞ? 僕はお前が快楽におぼれていくところを見るのが好きなんだ。僕の楽しみを奪わないでくれ」
「あああ……!」
エースは絶望の声をあげた。
壊れたソファがマレウスの魔法で直っていく。元通りになった背面クッションは、ふたたびエースの逆さまの顔面を埋めた。
「んむーーーーっ!」
呼吸を制限されたエースは、マレウスに数回しごかれただけで、控えめな射精をした。
数滴の精液がエースの腹にポタポタ落ちる。
「ただでさえ少なかったのに、更に少なくなっているな……。中でつっかえているのか? ……一度、洗うか」
マレウスは自身の手のひらにドラゴンのウロコを生やした。エースを必要以上に傷つけないように、柔らかくて、こまかくて、ざらつくウロコを。
マレウスの手のひらが、エースの亀頭に覆いかぶさる。エースのために一から作ったウロコの表面を、ひくついている亀頭にひたりと当てる。
「そういえば、潮はまだ吹かせていなかったな。あまり亀頭には構ってやれなかったから、今からいっぱい、かわいがってやろう。尿道の中も洗えて、お得だな」
「んん!? んん! んー!」
聞こえたエースはひどく嫌がった。
それでも亀頭責めは始まる。黒いウロコの表面が真っ赤な亀頭をこすり、みがき、泣かせていく。
「んん〜〜〜〜! んぶっ! んむううううううっ! んっ! んっ! ん……っ!」
十数秒後。尿とは違う、熱い液体が、せまい尿道内を無理やり駆けていった。
ぶしゃあああああああ……。
いったいどこに隠し持っていたのか。ペニスを覆い動かしているマレウスの手のひらに向かって、潮が大量にこぼれていった。
股間を頂点に吊るされているせいで、エースは潮のシャワーを全身に浴びてしまう。尿にまみれていた全身が潮で上書きされていく。
無色透明のシャワーの中には、白濁色の塊が混じっていた。尿道内でつっかえていた精液は無事に洗い流されたようだ。
それでもマレウスの手は止まらない。
これからもエースの精液を搾っていくのだ。その妨げになるものは、徹底的に排除しておきたい。
「これも全てはお前を妖精族にさせて、僕との子どもを産ませてやるため。手は抜いてやらんぞ……」
「んむ……っ」
人間として寿命を迎えたがっていたエースは、改めて告げられた言葉に、クッションの中でまた涙をこぼした。
潮吹き中にも関わらず、スティックも振動を始めた。最初から、最強レベルで。
「んごおおおおおおおおおおっ!」
先ほどまで振動責めをさんざん食らっていたせいで、振動に耐性がついてしまったエースは、もう失神で逃げられない。
振動が強すぎて、りんかくがブレているペニス。無機物に犯されていく尿道内。スティックに絡みついていた精液が振るい落とされて、潮に連れられていく。亀頭を揉みくちゃにし続けているマレウスの手のひらに押されながら、飛沫を振りまいた。
潮吹きを連続で味わっているエースは、酸素が足りない頭をフルに使って、やっと理解する。
──本気だ。
──マレウス先輩は本気で、オレの全部を搾り尽くす気でいるんだ!
「ふんんんんっ! んっぐぅううううう!」
エースが本気で暴れても、吊るされた体がいやらしく揺れるだけ。亀頭責めも、尿道責めも、止まってくれない。おそらく疲れた頃にされるであろう電流責めも。
ただただエースは呼吸制限を受けながら、マレウスに尿道内を洗われていく。これからの射精地獄を与えられるために。
尿。潮。精液。汗。おそらくクッションの中では涙と鼻水とよだれも。他にもいろいろな体液が付着しているかもしれないが、エースを彩るそれらの正体など、今のマレウスにはどうでもよかった。
「はあ……!」
気持ちいい。
気持ちいい。
エースのペニス越しに伝わる振動が気持ちいい!
エースほどではないが、マレウスも気持ちよくなっていた。
根元から先端まで、エースのペニスをがしがしとしごくたびに、マレウスは幸福感に満ちていく。もっと幸福になりたくて、しごく手が止められない。マレウスのペニスも熱が灯っていく。
エースは変わらずソファのひじ掛けの上で、股間を吊るされた状態でのけ反っている。逆さまの顔面は背面クッションに埋もれたまま。スティックにつらぬかれた股間はマレウスに好き放題されている。
「ふ……うんん……ん…………んぐっ、んっ、んぅ…………」
変わったことと言えば、鳴き声がすっかり弱々しくなってしまったことだろう。快楽にまみれた大声も堪能したかったマレウスにとっては、あまり歓迎したくない変化だった。
そしてもう一つ、変わったことがある。
「射精……しなくなったな……」
エースの亀頭から、精液が一滴も出なくなったのだ。
念のために、しごきながら亀頭も責めてみる。エースが大好きなウロコで、しょりしょりと。
「むううんんんん……っ」
くぐもった悲鳴とともに出てきたものは少量の潮のみ。白濁の塊はひとかけらも無い。
長時間──マレウスにとっては瞬き未満の間だったが──の射精責めの結果、ついにエースの精巣内は二箇所とも空っぽになった。
これでマレウスの精液を詰められる。
エースのペニスをしごいていた時に感じていた幸福感を、マレウスはいったん抑える。エースのペニスから手を離すも、名残惜しくて、置き土産に裏筋を指先でくすぐる。尿道口がくぱくぱしていたが、やはり何も吐き出さなかった。
「うーー……むうーー……」
うめいているエースの体が、マレウスの魔法でソファごと宙に浮き始めた。
縛られていた腕と足、太ももの付け根が解放される。背面クッションも顔面から離れて、ようやくエースは満足に呼吸ができる。
「はあっ。はっ。はっ。はふ。は、は、ふあ……はあーー。ああ。ああ」
同じ姿勢を長時間とっていたせいで筋肉が固まってしまったエースは、宙に浮いても腰を突き出したままでいる。エースの頭に血が上らないように、事前に魔法をかけておいたマレウスだったが、筋肉の硬直までは気を回せなかった。
そしてスティックは振動しっぱなしだ。これはわざとである。
「もうぶるぶる止めてえ」
空っぽのソファを床に戻したマレウスは、エースの要望を拒否する。
「いや、まだ必要だ」
「ちんこずっとしびれて、つらいの。こわれちゃうよお……」
「まだだ。まだ、まだ……」
エースは固まっていた首を懸命に前に倒して、自身のペニスを見る。振動に犯されて、りんかくがブレている様子をまともに見てしまった。
エースは大粒の涙をこぼす。
「こんなの……ほんとにこわれる……とめてください……」
「もう少し待て」
「すこしって、どれくらい」
「そう急くな。壊さないから……」
宙に浮きながら泣いているエースをなだめながら、マレウスは指先をすいと動かす。するとエースの体はゆっくりベッドに移動していった。
固まった姿勢のまま、エースはベッドの上に乗せられる。ぎしぎしと全身をきしませながら、筋肉をほぐそうとしている。
「あ……く……きつ……」
「そこで待っていろ」
マレウスも服を脱ぎ始めた。まずは上を全て脱いで、下に手をかける。きゅうくつになっている前をくつろげた瞬間、ペニスがぶるんと勢いよく出た。
エースの痴態を見過ぎて、興奮に包まれたマレウスのペニス。予想はしていたが、ここまでそそり立っていたとは思わなくて、マレウスは少し驚いた。しかしエースを放っておきたくないので、すぐに落ち着く。
服を全て床に脱ぎ捨てた。エースが待っているベッドに裸足で歩み寄り、乗り上がる。
筋肉がほぐれてきたエースは、反り上がっていた腰を落として、あお向けになっている。振動しているペニスに手を伸ばして、過ぎた快楽をやわらげようとしている。けれど触れるのもつらいようで、指先をペニスに着けては離すを繰り返すのみ。
「ふあああ……はあ、はあ……う、う……」
無駄な努力だと理解していても、エースは抵抗を止められずにいた。
まだほぐれきっていない股間は開きっぱなしだったが、数分もせずに閉じられるだろう。その前にマレウスが足の間を陣取った。
挿入はしないまま、マレウスはエースの両手を取り、引っ張り起こす。
尿を含む体液にまみれた恋人を汚いとは思わない。体液が裸体に付着しても構わず正面に抱きこんで、対面座位の状態でペニスを重ねた。
「んああっ。あっ。あついっ。あついっ」
マレウスの熱いペニスを感じたエースは、それを素直にマレウスに伝えた。
マレウスも素直に感じたことを明かす。
「トラッポラのも熱くて気持ちいい。振動も伝わって……はあ、出してしまいそうだ……っ」
あふれる想いのままに、重なったペニスをマレウスがまとめてしごく。エースの悲鳴ごと喰らうようにキスをする。あえぐ舌を二股の舌でたっぷり絡めて、欲望を蓄積させていく。
悲鳴を喰われたエースは静かだ。静かな空間だと、水音も振動音もよく聞こえた。
ペニスをぐちゃぐちゃとしごいているうちに、マレウスの欲望が弾けそうになってきた。ちなみにベッドインしてからそこに至るまで、エースはすでに五回以上、達している。精巣内は空なので、すべて空撃ちだ。
最後にエースの声が聞きたくなったマレウスは、ずっとくっ付けていたくちびるを離す。するとエースはすかさず、こう叫ぶ。
「もう許してえええええ!」
マレウスは不思議に思ったままを言う。
「許す、とは? どういう意味だ?」
「くっ! 苦しいっ! 苦しいの! もう……もうもうもう! もう全部からっぽなのに! ずっとちんこブルブルしてっ! 苦しい! つらい……っ! 死んじゃう……」
ここでようやくマレウスは合点がいった。
死にたくなるほどつらくて気持ちいいとは、こういうことか、と。
エースは本気で振動を止めることを願っている。しかしまだ止めるわけにはいかなかった。
この振動をエースのペニス越しに味わっているからこそ、マレウスも射精できるのだから。
「僕も達するまでの辛抱だっ」
二本のペニスをしごく手を早める。
エースはマレウスにすがりつきながら、わあわあと泣いた。
追加でエースが何度も達した後。ついにマレウスにも限界が来た。
マレウスが一つ、うめいてすぐ。精液が駆け上った。
精液はマレウスの尿道口から放たれなかった。あらかじめ尿道口のすぐ内側に転送魔法をかけていたからだ。
転送先はエースの精巣内。二つの空間めがけて、マレウスの精液が均等に注がれていく。
「あ……ああああああああ!?」
ドロドロの精液は、あっという間にエースの精巣内を埋めていく。次期妖精王の強すぎる精液が、人間の精巣の主導権を握る。
「あつい。あああっ。あついいぃ。おっ、重いいいいい。かゆいぃいい」
「……かゆい?」
精液を出してスッキリしたマレウスは、自身の萎えたペニスをエースから離して、エースの言葉を復唱した。
マレウスはエースの睾丸を揉む。丸く張った二つの睾丸はずしりと重い。
「この中がかゆいのか?」
「そっ、そうですぅ。そこ、かゆいです。重くて、かゆくて、かゆくて」
「もっと詳しく言え」
睾丸はしつこく揉まれる。
「うおっ。おっ。そ、それ。その中、が……っ、重い、重くて、先輩の精液がっ、ドロドロ、重くて、それ、がっ……かゆくて。あっ、あっ! ちんこのブルブルが、金玉ん中にも伝わって……!」
「あっ。すまない。いま止める」
スティックの振動を止めることをすっかり忘れていたマレウスは、あせりながらも止めた。本当はずっと震わせていたかったが、自分が達したら止めると宣言したため、止めなくてはいけない。
長時間の振動責めからやっと解放されたエースは一息つく。けれどすぐに睾丸を揉まれている最中だと思い出して、精巣内の異常に身をむしばまれる。
「かゆい。かゆいっ」
「振動を止めてやったぞ。それで?」
「あ……かゆくて、それで、重くて」
「それはもう聞いた。どうしてかゆくなったのか聞いている」
マレウスは睾丸をくすぐるようにタップする。
「はあああっ。あああっ。やめてくれ……っ。かゆい以外、わかんないっ」
「……かゆくなった原因はお前にもわからない、と」
「そうっ。そうですっ」
エースはカクカクと何度もうなずいた。
マレウスは冷静になった頭で考えて、仮説を出す。
「拒否反応か……? もしそうなら、僕の求愛を拒んだことになるが」
マレウスは不穏な空気をまとい始める。エースはそれに気づかない。むしろ理不尽に扱われている現状に怒りを向けた。
「あったり前だろうが!! こんなことされたら百年の恋も冷めるわ!!」
叫んでから、失言に気づいた。けれどもう遅い。出た言葉を無かったことにはできない。
あわててエースは言いつくろう。
「ちがう! ウソだから! オレ、先輩が好きだよ! 拒否なんてしない!」
「トラッポラ」
「ウソだって! 今でも先輩に恋してるから!」
「ではなぜ、ここがかゆいんだ?」
マレウスはエースの睾丸をくっと握る。逃がさないと態度で示している。
あまりの迫力に、エースは言い淀む。
「えっと、それは……。あのさ、あんなのされたら、誰だって拒否しちゃうって」
「そうか。やはり拒否していたか。だから、かゆくなったのだと、認めるのだな」
「…………あ」
更なる失言。どうあがいても言い逃れできない。
表情が抜け落ちたマレウスは、エースをじっと見て、冷たく言い放つ。エースの睾丸のりんかくを指でなぞりながら。
「拒否するのなら、ここに電流を流そう」
睾丸が電流責めをくらう未来が迫っていることに、エースは身を震わせる。よせばいいのに問いかけてしまう。
「なんで……金玉に電流を……?」
「強い刺激を与えれば、お前の精液もこの中に新しく作られるだろう? ただでさえ僕の精液で満たされているのに、追加で作られるなんて、苦しいに決まっている。嫌でも僕の精液の存在を感じるはずだ」
「……」
「僕を全身で感じれば、拒否しようなんて、いずれ考えられなくなる」
「…………そっすね……?」
めちゃくちゃな理論だ。なのに現実逃避したエースの脳は混乱して、口の端を引きつらせながら同意してしまった。
けれど体は正直で、危険なマレウスから身を離そうとする。寸前で、二つの睾丸をまとめて握られた。マレウスの手ではなく魔法で固定された体は、まったく引けない。
そして詠唱の無い魔法は、注意喚起も無い。
「ぐがっ!! ひぎっぎぎぎぎぎぃいあああああああ!!」
電流責めが始まった。感じていたかゆみなどふっ飛んだ。
さんざんペニスを喰らってきたそれは、睾丸も容赦なくなぶっていく。
エースはショックのあまり、また失禁した。少量だろうと尿は竿を伝い落ちて、睾丸を濡らす。水分を多く得た睾丸が更に感電していく。
「ぶぶぶべべべべええ! じぬううううぶぶぶぶぶ!!」
大声であえぐエースに、マレウスは変わらず冷たい目を向けている。
「うるさい」
「んぶううう!」
温度を感じさせない声とは裏腹に、口封じのキスは熱っぽくて荒々しい。体と同じく魔法で固定されたエースの顔は、マレウスの深いキスからも逃れられない。底知らずな執着におぼれていく。
「ふんんんっ! んんん!! ん! んう〜〜!」
くぐもった悲鳴。ドラゴンの舌にからめ取られていく舌。失禁中の水音。感電している睾丸。精巣内で急速に作られていくエースの精液は、マレウスの精液と混ざっていく。
人間の小さな精子は一匹残らず、妖精族の大きな精子たちに囲まれて、求愛されて、犯されて、食われていった。子の好みも父親と同じらしい。
好みの精子と一つになれた妖精族の精子はより大きくなる。たくましくなった身を精巣壁にこすりつけて、エースの体内に吸収されようとしている。
ついにドラゴンの子種は、精巣壁の向こう側へと潜りこんでいった。
そして人間の奥深くを、魂ごと。
「むっぐううううぅ! んぎゅううううううう!」
エースが妖精族化への一歩を踏み出した瞬間だった。
ほんの少しの一歩だろうと、確実な一歩だった。
その一歩をきっかけに、妖精族の精子が次々とエースの奥深くに侵入していく。マレウスの電流をまといながら、深く、深くへと。
「んんんんんんんっ! んぶうぅうううう! んむううう! んん〜〜〜〜!」
マレウスに口づけられながら、魔法で固定された全身をビクビクと震わせているエース。無数の精子に犯されて、犯されて、犯されて……。
口呼吸させようとマレウスがキスをやめた瞬間。エースは心の底から叫ぶ。
「子どもっ! いらないっ! 産みたぐないっ!! だがらっ! もうっ! やめでっ!!」
「……」
マレウスは何度目かのスティックの振動を始める。
「あっ!! あっあああっ! あぁああががあぅううああああぁああああ!!」
ペニスが大きく震えて、尿が飛び散る。マレウスの裸体にも飛沫が着いた。
「これはあくまでもお前を妖精族にさせるためであって、まだ子作りの段階ではない。なのにもうマリッジブルーか?」
マレウスは電流を帯びた手で睾丸を揉みながら、もう片方の手の指で、エースの亀頭を上から強く弾いた。
「ぷぎぃいいいぃ!」
びしゃっ、と尿の飛沫が広がる。
「……答えられない、か」
電流責めと、振動責めと、指の鞭打ちを同時にペニスに食らわされたエースは、すっかり正気を失っていた。
そんな恋人の痴態を見たマレウスは、ペニスを弾いたばかりの手をエースの尻に伸ばした。
割れ目の間にある窄まりを指先でカリカリとくすぐる。ひくつくそれを感じたマレウスは、少しだけ機嫌がよくなる。
「ああ……早くここをつらぬきたい」
つらぬけるのは、最短でも十年後くらい。エースが完全に妖精族になるまで十年以上はかかるだろうとマレウスは踏んでいる。
それまで絶対に妊娠させてはならない。我慢してみせると、マレウスはひとり誓う。
「トラッポラも我慢するように……な」
窄まりから離した指を前に戻して、失禁し続けている亀頭をクリクリと触る。
「ぐぐぐぅうっがががっ!! ざざざっざぎっぽおおおっ! いまっ、わああ!! やべでえええっ!!」
「ずいぶんと敏感になっているな。声もさっきよりもっと大きくなって……睾丸に電流を流しているからか? ならもっと流して、もっと敏感にさせてやろう」
強くなる電流。しつこく続く亀頭責め。
「ぶううううう〜〜〜〜!!」
「ははっ! 今のはブタの鳴き真似か? かわいいぞ、トラッポラ」
機嫌がよくなったマレウスは対面座位をやめて、エースを押し倒す。あお向けになったエースの涙の跡をたどるように頬を舐めた。
エースは死にたくなるほどの快楽に苦しみながら潮を吹き、失禁もして、なのに精液は一滴も出せず、ぶうぶうと鳴いている。
「これが僕の伴侶の姿か? なんて情けないんだ」
だが今から十年以上は失禁し続けることを考えれば、まだ序の口と言えよう。
これからもマレウスは挿入なしのセックスのたびに、エースの精巣内に自身の精液を詰める。それを体外に漏らさせないために、スティックは挿入しっぱなしになるのだから、失禁は必至だ。
さすがに漏らした尿は、服を濡らす前に専用のトイレに転送させるが、失禁が止まらない事実はエースの心をズタボロにさせるだろう。そしてセックスをしている間は尿を転送させないとマレウスは決めている。
つまりエースはこれから最短でも十年間、失禁し続ける。そしてマレウスとセックスしている間は尿まみれになるという未来も決定されているのだ。
「どんなに汚らしくなっても、僕はトラッポラを愛そう。逃げられると思うな」
マレウスの言うとおり、エースは茨の谷から逃げられない。
人間が妖精族になる方法は国家機密である。それを知ってしまったエースは、茨の谷の王配として、跡継ぎを産まなくてはいけなくなった。
「どんな子どもが産まれるんだろう? ふふ。まだまだ先の話だが、楽しみだ……」
「だすけでぐれええええええ!!」
エースの後ろの窄まりが、物欲しそうにひくついた。
二倍、愛されたかっただけなのに
魔法薬は便利だ。簡単な欲望なら、ノーリスクで叶えられる。
だから『二倍愛されたい』という欲望くらい、金銭面以外はノーリスクで叶えてくれても良いではないか。これではハイリスク過ぎる。
──なけなしの金をはたいて買った薬なのに、こんなのあんまりだ!!
エースが脳内で文句を言っていると、エースの後ろにいるマレウスが一言。
「考え事か?」
「んあっ!」
ひときわ奥深くを突かれたエースは、高い声をあげてしまった。
思わぬ声があふれてしまう口をふさぎたいのに、手は自由に動かせない。駅弁されて、不安定な体を支えることに精一杯だった。
エースをつらぬいている『後方のマレウス』に、後ろ手でしがみついているわけではない。
「僕たちをないがしろにするな」
そう言ったのは『前方のマレウス』。
自身のペニスごと、エースのペニスをまとめてしごいている前方のマレウスに、エースはしがみついていた。
マレウスは二人になっていたのだ。
一度だけでいいから、二倍愛されてみたい。そう企んだエースが用意した魔法薬を飲んだせいで。
エースは前方のマレウスにペニスをしごかれながら、キスをされる。後方のマレウスに揺さぶられながら、頭皮を髪ごと舐められる。
「ふっ、んっ、んっ、うう、うううん……!」
びくびくとエースが達したら、不安定な律動は止まった。
駅弁が終わっても、エースは後方のマレウスに抱えられたまま。
性行為はまだ続くのだ。
エースは二人のマレウスとともに、ベッドの中に閉じ込められた。
三人がベッドインして、二時間後。
ぬぽ……と名残惜しそうに、アナルからペニスが抜かれた。
「はあ、はあ、はあ」
エースが息を整える間もなく、ずぷぷ、と別のペニスが挿入される。
「あーー……」
いったい何度目の挿入だろうか。
一人が達したら、すぐにもう一人に交代されて、もう一人が達したら、復活した一人に交代されて、代わりばんこに埋められて、ピストンされて、注がれて……。
「あう、あう、あうんっ、あう、あうぅ」
腸内に挿れるから汚いだろうとフェラは免除されているが、かえって二人のマレウスの欲を満たす時間を延ばしていた。
さらに二時間後。
二人のマレウスに絶えず埋められたアナルのふちは、ペニスが抜かれてもぽっかりと丸く開いたまま。ピンク色の穴の中から白濁色の精液があふれているところまで丸見えだ。
二人のマレウスはエースのアナルに、指を同時に突っ込んだ。
仲よく指をゆっくりピストンして、精液を中に押し戻していく。
「あふうっ。ああっ。やだあ。もう疲れたっ」
エースは四股をけんめいに動かして、ベッドの中から逃げようとした。当然、あっけなく阻まれる。
「逃すわけないだろう」
「僕たちを増やした責任を取れ」
獲物がもがく姿を見て、また欲情した二人。二本のペニスがまた元気になった。
二人の指が引き抜かれる。ひくつくアナルは変わらず美味しそうで──。
「さっきはお前がやったから、次は僕だ」
「……ああ。順番だからな」
二本まとめて挿入できないので、先ほどと同じ、交代制。
またもやペニスが埋まっていく。もう解放されたいアナルは懸命にペニスを吐き出そうとする。だがそのうごめきが、かえってペニスを奥へと誘う。
「はううう……」
最奥をちゅぽちゅぽと柔く突かれて、エースは力なく鳴いた。
薬が切れる条件は、服薬者が満足すること。もちろん、分身体も含めてである。
まだエースを堪能していたいマレウスは、まだ一人に戻れない。長命種のマレウスが満足する時など、しかも二人分とくれば……短命種のエースにとってはまだ先の話だろう。
そう。まだなのだ。まだ。まだまだ。ベッドインして四時間たとうが、まだもっと、先の話──。
「ほら、トラッポラも出せ」
つらぬいていない方のマレウスに、ペニスを思いきりしごかれるエース。弱々しく泣きながら残り少ない精液をふるい出しても、満足していないマレウスの手はペニスをしごきっぱなし。
もちろんしごかれている最中だろうと、エースをつらぬいている方のマレウスはエースの中を犯し続けている。
エースは絶頂から降りられない。
「ひい……ひい……やめてぇ……」
「……『やめて』? 何を言っている。僕たちは満足していないというのに」
「僕たちが一人に戻るまで、ずっと付き合ってもらうぞ」
「だって僕をだまして、こんな粗悪な薬を飲ませたトラッポラが悪いのだから」
「ウソつきが嫌いな妖精をだましたのだから、これは当然の報いだ」
外側の弱点をしごかれながら内側の弱点を突かれて、おまけに乳首も摘まれたり舐められたりして、快楽責めは激しくなる一方。ときおり深いキスもされて、エースはもう虫の息なのに。
「あああああ……ああぁああああああ…………」
愛も肉欲も二倍──もしくはそれ以上──受け取っている最中。エースはマレウスに魔法薬を飲ませるという、軽率な行動を起こしたことを後悔した。
マレエーSS集No.51〜75
【No.51】どっちがいい?
暗い洞窟の中。黒いドラゴンが、口をモゴモゴとしている。
やがて地面に向かって口を開く。出した舌の上には、全裸のエースがいた。
苔のじゅうたんの上に、そっと乗せられるエース。唾液でびしょ濡れの裸体をひくつかせている。
「また僕の口の中でしゃぶられるか」
ドラゴン形態のマレウスは、解放したばかりのエースの全身をべろりと舐める。
やわらかい刺激だけで果てるエース。
「んあ、あ」
「それともこうして外で舐められるか」
マレウスは果てた証ごと、ぺちゃぺちゃとエースを舐め続ける。
「どっちがいい?」
舐めない選択肢はない。
ドラゴンの愛情表現は、舌を使うものだから。
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【No.52】ウソつき彼氏
「最近、トラッポラが性行為を痛がるようになってきている。気持ちよくさせようと努力しているのだが、それでもまだ痛いらしい。あまりにも痛がるから、中断せざるを得ないのだが……どうすれば痛くさせずに済むのか。リリアよ、知恵をかしてくれ」
「安心せえ! それ、気持ちよすぎてつらいから、途中でやめさせるために、ウソをついとるだけじゃ! 本当はこれっぽっちも痛くなっとらん!」
「なんだと!? それは本当か!?」
「セベクに愚痴っとったのを聞いたから本当じゃ! わしに聞かれるかもしれんのに、エースは詰めが甘いのう」
「この僕に、ウソをついていたとは……!」
「これこれ、怒るでない。もうウソをつけさせんようにすればよいだけじゃ」
「……そうだな。もう途中でやめなければいいだけだ。いままでわざと痛がっていた罰として、泣いても叫んでも、やめてやらん」
「くふふふふ。そうじゃ、遠慮はいらんぞ、マレウスよ。引いてきてばかりだったいまこそ、押して押して押しまくるのじゃ!」
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【No.53】エースはマレウスの弱点を知っている
二人そろってベッドの中で横たわれば、身長差は関係ない。復活したエースはマレウスの頭を抱えこんだ。
汗で張り付く額をかき上げる。あらわになったツノの付け根に舌をゆっくりと這わせる。腕の中にいるマレウスがひくりと反応した。
「トラッポラ、そこは」
「気持ちいいでしょ?」
「うん……」
舐めている間にも左手でツノの先端をしごき、右手で太い尻尾の付け根をなぞる。
「あ……」
マレウスの声が心地よい。
エースはこの後も、思う存分マレウスをよがらせるつもりだ。
先ほどまで好き放題されたのだ。今度はこちらの番だ。
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【No.54】事後
「おはよー、監督生……」
朝の廊下でエースと出くわした監督生は驚いた。
気だるそうに、ポヤポヤとしているエースの姿。これは……。
「まだ調子が戻っていないのに、無防備に出歩くな」
いつの間にかマレウスがエースに寄り添っている。
エースはむくれながら「こうなったのアンタのせいじゃん」と答えた。
──間違いない。これは……事後というやつだ!
「いや違うわ!」
監督生の心の中を読んだエースは抗議した。続けて説明する。
「これは『累計一時間キスしないと出られない部屋』に閉じ込められて……たまたま一緒にいたマレウス先輩と、しないといけなくなったやつで……」
おかしい。
「ツノ太郎にかかれば、そんな部屋ぶち壊せそうだけど?」
二人そろって、不自然に顔をそらす。
「やっぱり違わないじゃん! 事後じゃん! どうせその部屋、ツノ太郎の部屋でしょ!」
思わず監督生は突っ込んだ。
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【No.55】妖精族は浮気を許さない
大好きなマレウスとの、初めての性行為。
絶対に失敗したくなかっただけなのに。
「これはどういうことだ……?」
静かな口調だが、マレウスは間違いなく怒り心頭に発している。
組み敷かれながら恐怖に震えているエースに、変わらずマレウスは詰問を続ける。
「こんなにもほぐれているなんて……直前まで相手がいたとしか思えない。僕を、裏切ったのか、トラッポラ」
「待って。これは──」
自分でやっただけ。その一言さえ続ければ、また状況は変われたのに。
「もういい。聞きたくない」
エースののどが魔法で張りつく。声が出なくなった。
マレウスとスムーズに事を進めたくて、自分で事前に慣らしただけで、ここまで最悪な状況を作れるのかと、感心さえ覚えた。ただの現実逃避である。
一方的な捕食が、もうすぐ始まる。
窓の外の雷雨は激しさを増すばかり。
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【No.56】泉で水浴び
精霊に守られている泉は、直射日光を浴びても水温は冷たいまま。とても暑い日が続く中での水浴びは気持ちよかった。
けれど長く浸かっていると、熱かった体も冷えてくる。水着すら着ていなかったため、余計に。
くしゃみをすれば、遠くからマレウスの声がする。
「そろそろあがれ」
「はーい」
返事をしたエースは全裸のまま泉から出た。ペタペタと足音を鳴らしながら、木陰の中にいるマレウスに近づく。
木陰の中は生ぬるい。いまのエースにはちょうどよい気温。
マレウスはエースを抱きしめた。
裸体についた水滴が、マレウスの服に染みていく。
「あったけー」
また暑くなるまでの、ほんのひととき。抱擁の温もりをエースは噛みしめた。
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【No.57】ゴーストの抱卵
一つの卵が安置されている室内。マレウスを含む一部の者しか入れないそこには、常にゴーストが一体、卵のそばにいる。
少年の姿をしたゴーストは卵を愛おしげに撫でて、ときどきキスを贈っている。卵が未練のもとなのは明らかだ。
だからマレウスは願ってしまう。
どうかいつまでも孵らず、いつまでも帰らないでいてくれと。
卵を産んですぐに命を落とした少年の左手の薬指には、黒色のリングがはまっていた。
そしてマレウスの左手の薬指にも、同じものが。
────────────────
【No.58】性欲は薄いけど
──ずいぶんと、なまめかしく舐めてくれる。
マレウスはそう思った。それでもマレウスのペニスは反応しない。不能だから、ではなく、長命種の妖精族は性欲が薄いからだ。
しかし萎えたままのペニスをぺろぺろと舐めて、興奮させようとしているエースの姿は、たいへん愛らしく見える。
けんめいに奉仕している恋人の姿を見ているだけで、マレウスの心は甘く溶けて、満たされていった。
────────────────
【No.59】赤子と大人
年齢を知ったとき、マレウスは「まだ赤子じゃないか」と言ってしまった。
彼は呆れていたが、事実なのだ。事実を受け入れない様は、まさしく赤子だった。
だからマレウスは待った。彼が"大人"になるまで。
せめて百は超えていないと──。
「ああ……! 告白し損ねた!!」
墓の前で、マレウスは赤子のように泣いた。
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【No.60】朝までつながっていたい
太くて、長い。圧迫感が強くて、エースは願う。
「いっかい、抜いて」
エースをつらぬいたばかりのマレウスは不満げに返事をする。
「抜きたくない」
「抜いて……つらい……」
「……いやだ」
マレウスはゆるく律動を始める。
「あ、ああ……あー……」
「ん……気持ちいい」
「こ、っちは、くるしい」
「……ここは、良さそうに、しているが」
マレウスは勃起したままのエースのペニスをしごき始める。
「ひっ、あ、あう」
「こうして触ってやるから……朝まで、つながらせてくれ」
ずいぶんと無茶な願いだ。エースは文句を言う。
「ざけん、なよぉ……。やだ、やああー」
ペニスの先端がねばついていく。そこもくちくちと触られて、エースは泣いた。
ちいさな水音と、か細いすすり泣きは、朝まで途絶えなかった。
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【No.61】これ、借りるわ
エースはいつもマレウスの私物を借りていく。私物と言っても、借りるものは一点のみ。もとはエースがプレゼントしたピンキーリングだ。
王族がはめるには安物すぎるため、マレウスは身につけられない。たとえ恋人から贈られたものでも、威厳をたもつために、あえて身につけないことがある。
だからマレウスはリングを大事に持ち歩いている。それを贈った本人であるエースが、なぜか借りたがっては、返しに来るのだ。
「返してほしいのか?」
マレウスに問いかけられたエースは、借りたばかりのリングを手の中で遊ばせながら答える。
「返すときにも会えるじゃん」
恋人として会う時間だけでは足りないらしい。欲が深い恋人に愛おしさを感じたマレウスは、エースの額にキスを贈った。
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【No.62】1月1日。彼らは世界にいなかった
「あけおめ、監督生」
「エース、あけましておめでとう。茨の谷で新年を迎えたらしいけど、どうだった?」
「それなんだけど、監督生さあ、この前言ってたじゃん。異世界では新年になった瞬間にジャンプして、地上にはいなかった的な遊びがあるってさ」
「ああ、うん。言った」
「『わざわざジャンプしなくても、空を飛べばいい』」
「あのね、僕の世界じゃ魔法なんて無い──」
「って、マレウス先輩が言ったんだよ」
「え? なんて?」
「監督生の世界ではジャンプする遊びがあるんだぜって、マレウス先輩に言ったんだよ、オレが」
「ふうん。なるほど。それ言ったら『空を飛べばいい』って返されたわけか」
「んで、日付が変わる前に、ほうき無しで一緒に飛ばされた」
「初日の出は拝めた?」
「しがみつくので精一杯で、日の出なんてほとんど見てねえよ!!」
「いやここ、朝まで飛んでるわけないだろっていうツッコミ待ちだったんだけど」
「……あっ」
「ていうか朝になるまで空にいたら、さすがに慣れるはずじゃん。なのに、なんでまだ『しがみつくのに精一杯』になるかなあ?」
「……」
「デートの口実にされた太陽の気持ちも考えろよ!」
────────────────
【No.63】逃げる誓い、逃がさない誓い
妖精の世界では、誘拐婚が当たり前に存在している。でも人族の世界では犯罪なので、さすがにマレウスはそんなことしない。とエースは思っていた。自分が誘拐されるまでは。
黒いドレススーツを着せられたエースは、壇上でマレウスに宣戦布告する。
「ぜってえ逃げてやる」
誓いの言葉を受け取ったマレウスは薄く笑う。
「逃げたいと思えなくなるほど、愛してやろう」
こうして二人は、誓いのキスも交わした。
────────────────
【No.64】月光の下で
月光が注がれている城のバルコニーの大窓が開いた。窓の向こうも灯りは無く、月夜よりも暗い。その暗闇から出てきた者は、厚い毛布に包まれた塊を両腕で大切に抱えているマレウスだった。
魔法で窓を閉めたマレウスは、バルコニーの中央へ進む。塊を床にそっと下ろした。
まるでプレゼントのラッピングを解くように、毛布を優しく剥いでいく。塊の中から現れたものは、全裸のエースだった。寝巻きを着ているマレウスとは正反対の姿である。
エースの髪はくちゃくちゃに乱れ、湿っている。顔には涙の跡がいくつも残っており、全身はキスマークでいっぱいだ。先ほどまで巣の中でたっぷり愛されていたことを証明している。
マレウスは厚い毛布をすべて剥がさずに、敷布にして、硬くて冷たい床からエースを守る。そして夜風で冷えないようにと、自分たちの周りにだけ、温かい空気の膜を張った。
空気が物理的に変わっただけでも甘く感じるのか、眠っているエースの口から「はあ……」と息が漏れた。
無意識に痴態を振りまくエースを、月光はやわらかく照らしている。付着した体液がまだ残っている肌が扇状的だ。
ここに連れてきて正解だった。
月は恋人をより美しくさせる。
マレウスはそばにあったガーデンチェアに浅く座りながら、なまめかしい光景を眺める。愛らしい者の、新しい一面を、少しでも知るために。
────────────────
【No.65】一寸ハート
トレイの顔が引きつった。
このまま回れ右できればどれほど良かったか。だが知ってしまった以上、副寮長として対応しなくてはならない。
「生きてはいるんだよな?」
マレウスは心外そうに返事をする。
「当然だ。ちゃんと空気といっしょに、専用の袋の中に入れているから、窒息の心配はない。食料や水は用意できないが、無補給状態でも一週間は問題ないように魔法をかけてある」
「そ、そうか」
「もういいな? では……」
去ろうとするマレウスを、トレイは慌てて「待て待て!」と呼び止めた。
「うちのトランプ兵を返してくれ。女王様がお怒りなんだ」
マレウスはバツが悪そうに、自身の腹をさすった。
ボコボコと内側から叩かれている感触が、さする手のひらからも伝わる。
「何が不満なんだ……」
「胃袋に入れなければ大丈夫、という話じゃないんだよ」
トレイに軽く叱られたマレウスは肩を落とした。
腹の中のトランプ兵は、まだまだ元気いっぱいに暴れている。
────────────────
【No.66】痛いなんてウソだよ
ここはマレウスの部屋のベッドの中。二人はセックスの最中だった。
「痛い! 痛い!」
──なんて、ウソだけど。
叫びながら心中でそうつぶやいたエースは、マレウスに組み敷かれたままウソ泣きした。
律動を止めたマレウスは不思議そうに言う。
「そんなに痛いのか……?」
「うん……痛いの……」
しくしくと泣き続けるエースの仕草は、やはりウソにまみれていた。
マレウスは疑問を解決できないままでいる。
「昨夜も痛がっていたから、今夜はとびきり優しくしたのに、まだ痛むなんて……おかしいな……」
「おかしくないって。きっとオレらって、体の相性はあんま良くないんだよ」
「む……」
まだ納得いっていないマレウスの様子に、エースは少しあせる。
昨夜も、今夜も、痛いなんてウソだ。
気持ち良すぎておかしくなるのが怖くて、セックスを止めてほしいから、ついたウソなのだ。
ウソがバレる前に畳みかけようと、エースがまた口を開こうとした瞬間。
「では快楽だけを感じられる祝福をかけよう」
魔法をかけられたエースは、口が回らなくなるほどの快楽を得てしまった。
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【No.67】きれいな彼女ができてラッキー?
「僕が好きなのだろう?」
その通りだ。エースは彼女が好きだった。
だがその彼女が、実は魔法で化けていた大男で、しかも異種族の王子とくれば、完全に話は別である。
付き合って数ヶ月だろうと、男は無理。しかもその数ヶ月間、だましてきたのだから更に無理。そう思ったエースはその王子──マレウスを振ろうとしたのに。
「はい。好きです」
口はまったく別の言葉をつむいでいた。
驚いているエースの姿を、マレウスは嬉しそうに見る。
「念の為に、ウソをつけなくなる魔法もかけておいてよかった」
数ヶ月かけて湧いた愛情は、エースに根深く残っていたらしい。
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【No.68】もしも寮長室に専用のシャワールームがあったら
「あのなあ。誰も言わねえから俺が言ってやる。エース。お前、臭いぞ」
「はっ? なんだよジャック。ケンカ売ってんの? さっきシャワーしてきたばっかだっての!」
「シャワーもそうだが! マレウス先輩の匂いもすげえんだよ!」
「……はい」
これ以上、ジャックは何も言わなかったが、おそらく大半の獣人は気づいてしまっただろう。
シャワー後の匂いとともにマレウスの匂いもするということは……そういうことなのだ。
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【No.69】人間による上手な妖精族化薬の断り方
①はっきり「飲まない」と意思表示
「NO」
②「飲まない理由」を話す
「オレには大切な未来があるんで」チッチッ
③それでもしつこいなら逃げよう
「Good bye.」
④追いつかれたらあきらめよう
「ちゃんとチェリー味にしておいたぞ」グイグイ
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【No.70】輝き
冷めているようで、実は熱い。曲がっているようで、実は真っ直ぐ。他の誰にもない、彼だけの輝き。そんなエースに、マレウスは惹かれた。
「だからお前の輝きをより美しくさせたいと思うのは必然だ」
「だからって、これは気ぃ早すぎ!!」
自身の左手の薬指にはめられた指輪のほうが、エースには輝いて見えた。
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【No.71】いちごミルク
ストローを刺さずに、小さな紙パックの注ぎ口に行儀悪く口をつけている。エースが飲んでいるそれは、ファンシーなピンク色のいちごミルクだった。
エースの隣に座っていたマレウスはつい問いかける。
「チェリーティーではないのか」
半分まで一気飲みしたエースは、注ぎ口から口を離して答える。
「いくら好きだからって、いつもチェリーは飽きるよ」
エースはニヤニヤと笑いながら、開いたままのパックの口をマレウスの口に近づけた。
「先輩も、たまには違うやつ飲んでみたら?」
マレウスはエースの手ごとパックをつかみ、口をつける。甘だるい味と香りが食道を通っていった。
二回、のどを動かしてから、口を離す。
「……たまには良いかもしれないな」
「浮気?」
「まさか。このいちごはいずれ飽きるが──」
エースからパックを取り上げたマレウスは、エースを腕の中に招き入れる。
「このチェリーは、いくら味わっても飽きない」
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【No.72】ティア・ローズ
しとしとと雨が降っている。魔法で濡れないようにしながら、マレウスは薔薇を鑑賞していた。
「……美しい」
思わず言葉をこぼすほどに、雨に打たれているその薔薇は美麗だった。
まるで情事の最中、快楽の涙に濡れていく赤い瞳のようで……。
見る見るうちに晴れていく空。雨に打たれなくなった薔薇。
「あっ!」
感動して雨を止ませないよう、気をつけていたのに!
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【No.73】慣れは人を変える
どうやらここが世界一高い建物の最上階らしい。
話題性トップクラスの観光名所と聞いたから、チケット争奪戦に勝利して、マブたちと一緒に来たというのに。
「あんまテンション上がんねー」
「え!? こんなにすごい景色なのにか!?」
山とは違う高所を堪能していたデュースは、冷めた様子のエースに驚いた。
はしゃぐ観光客であふれている場所の隅で、エースは言葉をこぼす。
「マレウス先輩が連れてってくれる空のほうが、もっと高いもん」
「あーあ。ツノ太郎のせいだ」
「罪なヤツなんだゾ」
監督生は"世界一の高所"からの景色を撮った。もちろんグリムとデュースをフレームの中に入れて。
ちなみにエースは撮らないでおいた。無意識にのろけた言動が、ちょっとだけ腹立たしかったもので。
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【No.74】エースお父さま、大好き!
広いベッドの中で、エースの全身に電流が走った。
エースを愛撫していたマレウスは反射で手を引っこめた。けれど遅かったようで、手は黒焦げになっている。
ベッドを中心に、部屋に広がっていく、肉が焦げた匂い。
マレウスが火傷を負うほどの強力な電流だった。なのに電流の発生源であるエースは無傷だ。
「あのー……大丈夫?」
「このくらい、平気だが……!」
電流の真の発生源である、エースの腹。その膨らんだ腹をマレウスはギロリとにらむ。
「僕も父親なんだぞ!!」
「いや、卵にキレても」
エースが卵を身ごもってから、初めてベッドの中でいい雰囲気になれたのに。
卵に負担をかけないようにと、挿入なしのエッチをしようとしただけなのに。
「オレのこと大好きなところも、マレウスに似ちゃったなー」
産まれる前からエースが大好きな卵が発した電流は、見事にマレウスを撃退したのだった。
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【No.75】竜姦
いつもの人形態とは違い、竜形態のペニスは硬くてゴツゴツしている。なのに直径はエースに合わせて細くしているものだから、エースを痛みで苦しませずに、泣きドコロを的確にえぐっていく。
「ふあっ。はあっ。はうっ。あうっ。あうっ。ふぅう……あ、ああ!」
「イきそうか?」
「あっ! あぁああっ! だ、だめだめっ。うっ、うしろだけで、イ、く、なんて……!」
戻ってこられなくなりそうだ。
今のマレウスは翼も尻尾も生えていて、肌の大部分は竜のウロコに覆われていて、瞳孔もいつもより鋭い気がして……まだ人の形を保っているのに、まるで本当の竜に犯されているようで、身も心も丸ごと食われそうで。
「こわいっ。こわいよお」
「何も怖くなんかない……。さあ、イけ!」
泣きドコロを深く突かれて、エースは果てた。
触られないまま吐精して、くたりとしおれたエースのペニス。次は竜の手に包まれて、上下にしごかれていく。
「あへぇえええ……」
底に残っていた精液を無理やり搾り出されていく。カクカクと震える体は竜の尻尾に巻きつかれ、さらに翼で覆われ、二股の長い舌に口内を荒らされ、竜のペニスで奥深く犯されていく。
すっかりマレウスに隠されたエースは、まさしく『戻ってこられない人間』だった。