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最高のグループ_9話
戦場は混沌の極みに達していた。
次々と押し寄せるRed Fangの眷属に対し、六人の連携は完璧な円を描きながら敵を削り取っていく。
しかし、増援の波は止まることを知らず、
その数は幾重にも積み重なり、彼らの魔力を確実に消耗させていった。
那央「……くっ、想定以上の数だ! 莉音、回復の優先順位を最前線に集中させろ! 夜雨、全域へのデバフを継続しろ!」
夜雨「……わかっているよ。でも、これ以上魔力を回し続けるのは……僕の限界も近い……っ」
夜雨は歯を食いしばり、自身の膨大な魔力1846を無理やり空間へと流し込む。
彼の周囲では地面がひび割れ、重力が歪み、敵たちの動きが極限まで鈍くなる。
しかし、その代償として彼自身の顔色は青白く変色していた。
莉音「大丈夫だよ、夜雨くん! 私に任せて……っ! ……うぅ、でも本当にすごい数……!」
莉音は必死の形相で癒やしの光を放つが、傷口が塞がるよりも早く新たな傷が増えていく絶望的な状況に、
彼女の笑顔もわずかに揺らぎ始めた。
悠斗「あぁっ! 左右から来る……! どけよ、このクソ野郎共!!」
悠斗は剣を振り回し、自身の身を挺して敵をなぎ倒す。
しかし、あまりの数の多さに背後から襲い掛かる影に気づくのが遅れた。
菜乃「……っ! 悠斗、危ない!」
菜乃が叫ぶと同時に、彼女は自身の魔力894を一点に凝縮させた防壁を展開した。
衝撃波が走り、背後から襲いかかった眷属の爪を弾き飛ばす。
しかし、その反動で菜乃の体は宙へと舞った。
柚子「……っ! 菜乃、受け身を!」
柚子の鋭い指示に従い、菜乃は空中で体を捻り、着地と同時に瞬時に立ち上がった。
しかし、その瞬間――森の奥から異質な魔力の波動が押し寄せた。
それはRed Fangの禍々しい気配とも、
六人の仲間たちの温かな魔力とも異なる、鋭くも慈愛に満ちた「何か」の奔流であった。
那央「……何だ? この魔力は……!?」
突如として上空から巨大な影が降り立ち、凄まじい衝撃波と共に周囲の眷属たちを吹き飛ばした。
土煙が舞う中、現れたのは一頭の巨大な黒狼であった。
その瞳には知性が宿り、体からは神聖なまでの魔力が溢れ出している。
悠斗「……なんだよ、この獣は!? 俺たちの仲間じゃないのか!?」
黒狼は咆哮を上げると、瞬く間に周囲の敵を次々と切り刻んでいった。
その動きは洗練されており、まるで意思を持って戦場を支配しているかのようであった。
柚子「……ただの獣じゃないわ。高度な魔力操作が行われている。誰かが操っているか、あるいは……」
黒狼が一度地を踏みしめると、その背後から淡く光る紋章が現れた。
それはかつて彼らが共に過ごした仲間の一人――ルアの魔法の象徴であった。
莉音「えっ……嘘でしょ? ルアの使い魔……?」
莉音の声が震える。
彼女たちの脳裏に、あの日奪われた仲間の記憶が鮮烈に蘇る。
あの時、守れなかったルアの笑顔。
そして今、目の前で自分たちを助けてくれているこの存在。
那央「……まさか、生きているのか? ルア……!」
那央の声は震え、指示役としての冷静さを一瞬だけ失った。
黒狼は悠斗の前に立ち、まるで彼を安心させるかのように鼻先を突きつけた。
その瞬間、ルアの使い魔の意識と通じ合ったのか、空中に文字が浮かび上がるように魔法の言葉が現れた。
謎の声...『……まだ、死んでいないわ』
それは直接の言葉ではない。
しかし、彼らの心に直接響く「意志」であった。
ルアは生きている。
そして、彼女の使い魔は今、自分たちを助けに来たのだ。
悠斗「姉貴……! ルア姉貴か!? 返事をしてくれよ!!」
悠斗は膝から崩れ落ち、黒狼に抱きしめられるようにして叫んだ。
しかし、歓喜の瞬間はあまりにも短いものだった。
夜雨「……待って。おかしいよ……ルアの使い魔が助けてくれているなら、どうしてあんなに悲痛な魔力を感じるんだ……?」
夜雨の鋭い感覚が、異変を察知した。
黒狼から放たれる守護の魔力の裏側に、微かに混ざり合う「絶望」と「渇き」。
そして、ルアの使い魔の背後に潜むRed Fangと同じ……いや、それ以上に禍々しい影。
柚子「……みんな、下がって! 危険よ!」
柚子の叫びと共に、彼女は敵を制圧するのではなく、
自分たちを助けてくれているはずの黒狼へとデバフを向けた。
それは仲間を守るための行動でありながら、同時に正体を見極めるための防衛策でもあった。
那央「……ルア……君は、一体どこまで変えられてしまったんだ……?」
黒狼の瞳が赤く染まり、その毛並みが一瞬だけ異形の姿へと揺らめいた。
救済の光の中に潜む残酷な真実。
彼らが待ち望んでいた「再会」の正体が、皮肉にも最も恐ろしい形となって目の前に現れようとしていた。
那央「……まだ終わらせないぞ。俺たちの約束は、ここで果たす!」
那央は再び魔法を練り上げた。
救われた喜びと、突きつけられる疑念。
六人の絆が試される戦いは、ここからさらに過酷な局面へと突入していく。