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最高のグループ_5話
静寂に包まれた森の奥底で、倒れ伏した個体の指先が微かに動いた。
それは生存本能による痙攣ではなく、意志を持った最期の動作であった。
個体――かつての友人「カイト」の身体から、何かが滑り落ちた。
地面に転がったのは、古びた質感の封筒七枚。
その表面には、それぞれの名前と、それとは異質な一文が記されていた。
『俺からの願い』
那央は震える手で最初の封筒を手に取った。
彼の指先は、指示役としての冷静さを保とうとしながらも、激しく小刻みに震えていた。
那央「……カイト、お前……最後にまで、俺たちに何かを残そうとしたのか……?」
彼は「柚子」と書かれた封筒を開き、中の手紙を読み上げた。
その声は掠れ、湿り気を帯びていた。
『柚子へ
これを読んでる時にはきっと俺はお前らを裏切ってるだろうな。
望んで裏切ってるわけじゃない事はわかってるだろうが何があっても、”正しい選択"をしろ。
まぁ、那央の選択に間違いは滅多にないだろうが。
俺のことは忘れて構わない。って言っても、"そんなことしない"なんて言いそうだし、俺は最後にわがままを言うよ。
”危険になるが、俺を変えたあいつらを殺してくれ。”
永遠の仲間 カイトより』
柚子「……っ…………」
柚子は手紙を握りしめ、顔を覆った。
冷静な彼女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
柚子「『正しい選択』……? 私に、そんな過酷なことを強いるなんて……
カイト、あなたは最後まで私たちのことを案じていたのね……」
莉音「次は……私の……」
莉音が震える手で次の封筒を開く。
彼女は読み進めるうちに、嗚咽を堪えるように顔を歪めた。
『莉音へ
まず、辛い思いさせて悪い。
俺から一つ言わせてね。
莉音は他人に笑っていてほしい。そうだろ?
莉音は自分が辛い時でも他人を気にしているがそれをやめてほしい。
お願いになっちまうから無理にとは言わねぇよ。
だが、無理してる姿は誰も見たくないと思うぞ?
これからも俺のメンバーを頼むぞ。
変な顔してたら背中叩いてやれ!
永遠の仲間 カイトより』
莉音「……っ、うぅ……あはは……」
莉音は笑いながら泣いた。
彼女がいつも周囲のために張り詰めていた心が、カイトの言葉によって一瞬で崩壊したのだ。
莉音「……背中を叩いてって……そんなこと言われたら、私、もう笑うことすら難しくなっちゃうよ……」
菜乃「…………」
無愛想な彼女は、手紙の内容を噛み締めるように黙り込んでいた。
しかし、その拳は白くなるほど強く握られていた。
『菜乃へ
菜乃はもっと感情を表に出してもいいんじゃないか?
俺が言えることでもないかもしれねぇな。
だが、菜乃にしか頼めねぇんだ。
これからも守ってやってくれ。
永遠の仲間 カイトより』
菜乃「……私が、誰かを守らなきゃいけないなんて……当たり前だと思ってたけど……」
彼女は視線を落とし、地面に倒れた個体を見つめた。
菜乃「……あんたの分まで、私はみんなを守る。絶対に……死なせない。」
悠斗「俺の……カイトからの手紙かよ……」
悠斗は荒々しく封筒を破り、その内容を叫ぶように読み上げた。
悠斗の叫びが、静まり返った森に鋭く響き渡った。
『悠斗へ
悠斗はさ、俺のこと信用も信頼もしてくれてたよね。
那央たちのこともしてるんだろ?
少しでも頼りたい、守り合いたいと思ってるなら俺の代わりに
"この幸せな空間で何十年と頼り合い、守りあってくれ"
永遠の仲間 カイトより』
悠斗「……っ! ふざけんなよ、カイト!! ……『何十年と』だと!? 俺たちがどれだけ苦しんで、
どれだけお前を失うのが怖くて……あんなこと言われたら、俺はどうすればいいんだよ……ッ!」
彼は拳を地面に叩きつけた。怒りと悲鳴に近い慟哭が混ざり合い、彼の瞳から大粒の涙が溢れ出す。
夜雨「…………」
夜雨は震える指で、自分の名前が記された封筒を開いた。
彼は月を愛する男でありながら、その内面には深い喪失感を抱えていた。
手紙の内容を読み進めるほどに、彼の顔から血の気が引いていく。
『夜雨へ
太陽が苦手なのはきっと、ラオを失ったのを思い出すからだろ?
これから進んでいく道でラオと出会うだろうな。
その時に”動けなくなるかもしれない"そう思っているのなら、
俺の言葉を覚えておけ。
”これから出会っていく過去の仲間は人間じゃない。敵だ。
一つ間違えれば何かを失うぞ。"
永遠の仲間 カイトより』
夜雨「……ラオの名前を、あいつはまだ覚えているのか……」
彼は震える声で呟いた。
その言葉には絶望と、それ以上の警告が含まれていた。
夜雨「『人間じゃない』……? カイト、お前は何を見ていたんだ……。
俺たちがこれから向き合うべきものが何なのか、あんなに恐ろしいことを……」
那央は深く息を吐き、最後から二番目の封筒――自分の名前が書かれたものを取り出した。
指示役としての重圧と、友人の最期に対する罪悪感で胸が締め付けられる。
『那央へ
お前に指示役を任せたんだ。
那央が指示をしなかったらまた仲間を失うんだぞ?
厳しいことを言ってるのは承知の上だが、何があっても指示をしろ。
これを読んでる時には正しい指示を出せたんだろうけど。
これからもずっと支えてやれよ。
永遠の仲間 カイトより』
那央「……っ、あはは……」
那央は自嘲気味に笑った。
その声には涙が混じっている。
那央「『正しい指示を出せたんだろうけど』か……。俺のせいでカイトを救えなかった。
それでもお前は、俺に次へ進むことを強いるのか……」
しかし、まだ最後の一つがある。
六人は無言のまま、中央に置かれた『俺からの願い』と記された封筒を見つめた。
それはカイト自身の遺志そのものだった。那央がそれを開き、震える声で読み上げた。
『俺からの願いは6人が幸せになることと俺を変えたやつが死ぬことだ。
あとはお前らに任せる。カイトより』
沈黙。
森の冷たい空気が、彼らの肌を刺す。
「Red Fang(レッドファング)」その組織によって奪われた仲間たちへの後悔と、
変わり果てた姿で生き続けるという予感――まだ誰も知らない真実へ向かうための火種が、
この手紙によって灯された。
柚子「……カイト。あなたの願いは聞いたわ」
柚子は涙を拭い、鋭くも悲しげな眼差しで仲間たちを見渡した。
彼女の魔力、890が静かに脈動する。
柚子「私たちはもう、後悔だけで立ち止まることはしない。あなたが守りたかったこの場所で……私たちが生きることを選ぶわ」
莉音「うん……そうだね」
莉音は涙を拭い、力強く頷いた。
彼女の笑顔は消えていないが、その瞳には強い決意が宿っている。
莉音「カイトの言う通りに、私たちは幸せになる。そして、私たちの仲間を奪った奴らには……絶対に容赦しないよ」
菜乃「…………行くぞ」
菜乃は短く言った。
彼女の体躯は鋼のように硬い意志で固められ、盾としての覚悟が決まった。
菜乃「カイトの分まで守る。……絶対に死なせない」
悠斗「……あぁ、見てろよ。俺たちがどれだけ強くなったかを……!」
悠斗は剣を握り直し、地を蹴った。
彼の魔力847が爆発的な熱量を帯びる。
夜雨「……月が見えるまで、僕たちは進む。カイトの警告を胸に」
夜雨は自身の膨大な魔力1846を練り上げ、周囲の空間を重く変質させた。
デバフの波動が森を震わせる。
那央「……全員、準備はいいか? 俺たちの『最高のグループ』としての旅は、ここから始まる」
那央の声は指示役として響き渡った。
その瞳には、かつての仲間への弔いと、未来への誓いが宿っていた。
森の奥底で、風が吹き抜けた。
彼らの背中を押し、カイトの遺志を運ぶように。
物語はまだ終わらない。
これから訪れる過酷な真実と、血塗られた因縁への第一歩を踏み出した。