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第十話 風が吹くこの場所で
怜視点です
ちょうど咲葵が9話で靴箱にいるぐらいの時間の設定
「結構飯野凛が怪しくなってきた、、、」
「なんでわらってるんだよ」
「まぁそりゃ探偵ゴッコしたいんでしょう」
「そ、そういう西園寺さん、結構ノリノリだったような、、、。」
「ほらーー!いったじゃん」
「ねむぅ」
「おっきろーーーーー!あとじゃぁ解散で!!」
咲葵の声で部活が終わり、俺は何を思ったのか自分でもわからないけれど屋上へ向かう。
入ったばっかりは自分の教室がどこにあるのかもわからずに迷っていたけれどもう、流石に学校内で迷わない。そういえば、もう入学してから3週間ぐらい経ち、4月も終わろうとしている。
なんで屋上に行くって、、、いや不幸の手紙とか女子のこととかなんかアレだしなーって。まぁ要するにリフレッシュ。にしてもまふゆ、咲葵から聞いたが大丈夫だろうか。あいつのことだろうから元気なんだろう、けど。一ノ瀬先輩の言葉が頭をよぎる。あれが本当にならないといいんだけれど。でも先輩が嘘をつくとは思えないし、メリットもないし。いや信じられないんだよな、内容が。それに、あっち俺もためしにやってはみたものの、先輩がいうほど分からない。まぁ俺が未熟なのか。
階段を登りながら窓の外に目を向けると野球部の生徒がいて、練習をしていた。咲葵が部長らしい「探偵部」なんかとちがってちゃんとしていて、ちゃんと練習しているクラスメイトをみると同じ学年だからかなのか、どこか羨ましい。俺だって、こうやって事件だ犯人だいっているけれど、好きで探偵部なんかに入ったわけじゃない。
本当は、ほんとは、本当に陸上をやりたかったのに。
小6の秋。
小学校の中ではクラブに入っていて、日々の努力のお陰で俺は大会でも好成績を残したり、運動会のリレーでは最下位でバトンが回ってきても圧倒的なスピードで1位になって。おまけに小学校のテストだから簡単でみんなからちやほやされて。
すごい楽しい日々だった。けれど、悲劇は起きる。ある日、足が痛んで病院に行ったら疲労骨折だと言われ。安静にしてろと言われていたのに、、、俺は病気という不安のせいか練習量を増やし、疲労骨折になった。
治りはしたけれど、そこからが問題だった。復帰したのは良かったが走っていなかった体は重く、今までは抜かす側だった自分が周りにどんどん抜かされていくのが怖かった。おまけに入っていたクラブはなかなか速い人が多かった。自分は一生懸命、できるだけ速く、速くと走っているのに周りはそれをなんともないように抜かしていく。努力が、全てが、無駄になった気がしたんだ。俺の心と体はぐちゃぐちゃになって、冬に入るとクラブを辞めた。
あれ以降、全然練習もしていない。お陰で授業で測った百メートル走は14秒台。1秒近くも遅くなっているなんて、なんか、、、もう、笑えてくる。おまけにそれで努力もせずに、ただ遊んでばかりで現実から逃げている。
思わず自嘲の笑みを浮かべると同時に、屋上に着く。今日は風が強く、髪や制服が揺れている。そういえば、風がよく感じれる屋上に来たのも、陸上がきっかけだった。
「あーっ。探偵部の1年の、、、青葉君じゃん!あってるよね〜。」
先客がいた。確か佐倉先輩だったはず。おーいと手を振りながら笑顔でこっちに寄ってくる。
「先輩、、、どうしたんですか?」
「いや君こそ、、、。まぁ私はちょっと色々あって、、、、。自分ってさ、個性がないし、平凡で、周りに埋もれるだけの存在っていうのを、、、今日、改めて、感じちゃって。」
そういった先輩の目に涙が少し浮かんでいたのは、風で砂が目に入ったせいじゃないだろう。
「そんなことないですよ。俺なんかしたら、先輩、すごく明るくて真面目で、面白くて。いつもいるあのメンツの中でもすごく輝いて見えますよ。」
うん、俺とは違ってね。
「あ、ありがとう、、、。なんかそこまで言ってくれる人、あんまりいない、、、いやいたんだけれど、もう会えないと思うから嬉しいね。でも君さっきから目が死んでるけど、、、大丈夫?本当に。」
「先輩みたいな人に、、、いや。大丈夫です。ただ、少し自分が嫌になっただけですから。」
「それって大丈夫じゃなさそうだけれど、、、。君は君、他人は他人だし比べなくてもいいんだよ?別に比べて一喜一憂することを誰かが望んでるわけじゃない。何かあったら、頼ってね。」
なんで、この人は簡単に人に頼っていいよなんて言えるんだろう。その重みで自分が潰されていくのかもしれないのに。でも、ネガティブになっていた今はそんなひねくれた思考をしつつも、少し救われていく自分がいた。
「突然話し変わるけどさ、握力っていくつぐらい?」
「えっ、、、、。変わりますね、、、。えっと右が25、左が23です」
低い、、、かな?まぁ普通だと思うんだけど、、、。
「いやだよね!!??」
「ま、まぁはい、、、。」
すると先輩は言う。
「実は、最近新体力テストあったじゃん。あの時、白瀬瑠衣って知ってる?白瀬瑠衣。あ、吹奏楽部のゴリラ。」
「知ってます、、、!たしかこの学校内で腕相撲に勝てた生徒は一人もいないっていう、、、?」
「そうそう!で握力測ってみたのを聞いたらさ、高1だよ?高1。高1でさ、43なの。やばくない?いやだって成人男性の平均が45なんだよ!?あの子なんなの!?おまけに運動してないんだよぉぉぉ!!」
いやこっちが聞きたいですよ。なんなんですかその先輩。おかしいですよ。どっかの某鬼倒す大正時代のアニメに出てくる人じゃないけど結構やばくないですか、それは。筋肉の密度大丈夫なんですか?????
「あとそれにひすいっているでしょ、あいつの握力は15ぐらいだからクッソ弱い。」
「そうなんですか、、、、。」
なんか無駄な情報が多い気がするぅ、、、。
散々話した後、先輩と別れる。希望も、努力しようとする心も、やる気も失ったけれど、未来は、見えてきた気がする。
なんかくっそ平和な回になった、、、。