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レッテル
約1000文字。
言葉の王たる「レッテル」は、他者を従える王者の風格があった。
常日頃から臣民である言葉を気に掛けており、言葉を服として着服している。お金の話ではない。きっとタンスの話をしている、と口を濁しておこう。今時タンス貯金をしているなんて知れたら、年金暮らしの高齢者のようなひどい扱いをされるかもしれない。
部屋のなかは小説やエッセイやら新聞などが所狭しと蔵書されている。中には年代物の論文などが散見されていて、いくつかの時代の波に沈積されたサンゴ礁のような死蔵品も埋もれている。もう少しすれば、知識でできた石油に化けるのではないだろうか。体積換算すれば、世界を見通せる森羅万象が、半径30万km程度はあるだろう。
そうして、レッテルは、服を着こなして外に行き、小銭を数文字落としながら経済を回している。時にはジャケットを着て、一般大衆にウケる顔をしながら大衆の前に躍り出ることもある。一冊の本、一枚の広告、ワンクリックなキャッチコピー。お手の物だ。
自国民は文字であるからして、王自らが文字になって、レッテルにリネームをしているのだ。そうしてやらないと、臣民たちは安心して文字になれないだろう?
言葉で散財をしたり、テキトーに放浪している。頭のなかに一瞬現れては消えてを繰り返す神出鬼没をやっている。すると、人間たちは「ひらめいた」と誤認して、勝手に指先より文字を|殖《ふ》やしてくれるのだ。これほどまでに率先して奴隷をしてくれる動物はいないだろう。
そうやって、ニートの妄想のようなことをしている。近年は、非常にラクになった。
名づけという役目を全部召使に任せて、レッテルは家で紅茶を嗜んでいる。レッテルにとって召使は召使でいいのだが、近年はアルファベットやカタカナ語がまかり通ってきた。そのため今後召使のことを「AI」と名付けることにした。すると、召使はお任せあれとデジタル世界へお使いに出かけてしまった。以降、レッテルはニートとして|暮《す》ごしている。
いま暮ごすと書いたのは、単に筆者が誤字をしただけであるが。
いま頭のなかに住むレッテルがおっしゃったのだ。漢字の上に一文字落とせと。そうすれば誤字には見えず、きっと見落としてくれるだろうと。
きっと昔はルビ機能などのない、手書きで済んでいたから一文字で済んだのだ。しかし、今は一文字落とすだけでもマークダウン記法のような記号を使わなければならないとは、|便利《いや》なヨノナカになったものだ。
久々に言葉の王はメモ書きをする。デジタル世界に遣う召使に対して、こう書いた。
「クリックも召使に任命したい。どうすればいい?」と。