公開中
沈黙のMars#6
『平礼、現る!』前編です!
薄暗い部屋の中。
二人の男が話しをしていた。
一人は背の高い細身で、もう一人は『Mars』の総司令。
二人は人目をはばかるように声を潜め、薄笑いを浮かべている。
「使えそうか?"ナンタイ"は?」
「ほどほど、らしい。まぁいいとは思うが…。」
「しっかし驚いたね〜。まさか四天王の総入れ替えなんて。」
四天王とは、組織に絶対の忠誠を誓いし四人の諜報員を指す。
「他にもいるんだろ、候補は。」
「ああ。」
「誰なんだよ?」
細身の男が悪魔のように唇を歪め、軽く小突く。
総司令は困ったように笑った。
「"蜘蛛"と"ナナシ"だよ。」
「蜘蛛?」
男はオウム返しをする。その声は上ずっていた。
「本気か?あいつが引き受けてくれるとでも?」
「思ってないさ。でも"サミダレ"が動けばやつも動く。反対もまた然り、だ。」
総司令はさっきより声を潜めて囁く。
「ナナシの方もな。かなりの実力者だし。」
「手があんのか?」
男は身を乗り出して頬を紅潮させた。
---
その頃。『T.B.ヴァロン』では。
「"氷山"。」
「はーい。なんですか樹井さん。」
無邪気に笑う男の子と、男の子とは対照的に暗い雰囲気の女の子。
「任務。出よ。」
樹井と呼ばれた女の子、|伊沙羅木樹井《いさらぎゆい》は握りしめていたスタンガンの電源を入れた。バチバチという音が、虚しく響く。
"氷山"こと|平崎礼弥《ひょうざきれいや》は、人懐っこい笑みを浮かべ頷く。
二人はまだまだ幼く見える。
そんな幼い子供でも、裏社会で容赦はされない。子供だから。で済む場所ではないのだ。ここは。
どんなときも、油断しない。
どんなときも、感情的にならない。
それが私の、わたしたちのモットー。
生きるために、自分をそっと押し殺す。
それが、裏社会というものだから。
次回は後編ですよ!