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花嫁は買収済みです
「アズール先輩! 助けてください!」
「ご結婚おめでとうございます」
「一瞬で見捨てられた!?」
即答した理由はある。アズールはすでにマレウスに買収されているからだ。
アズールは嬉々として契約書を取り出す。
「結婚は契約そのもの。まずはこちらに目を通してください」
「マジかよ……」
エースはがっくりとうなだれた。
これがもし同意のないものであれば、さすがのアズールも、買収を断っていた。ビジネスは金持ちのためにあるものではない。金の無い者を一方的に足蹴にしてはならない。
エースからの婚姻の同意もあったからこそ、アズールは心置きなく契約書を用意できたのだ。
「そもそもあなたも、付き合うときにマレウスさんに言われていたでしょう。結婚前提だと」
エースはもごもごと言い訳をする。
「あんなの、告白を盛り上げるための演出だと思うじゃん」
「僕まで立ち合わせておいて、よくも演出だとほざけましたね。僕もひまではないんですよ?」
「弱みをにぎるために居たと思うじゃん!」
「何はともあれ、ドラコニア家の花嫁になる道からは逃れられませんよ」
「オレが嫁かよ!?」
改めてアズールは契約書をエースに突きつける。
「さあ、サインを!」
婚姻をより強力なものにするための、契約書を。