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#4 忍び寄る病魔
最近、#名前#の視界はどこか歪んでいた。
最初は「寝不足かな」と思っていた。
赤葦との進展や、親友の恋歌との喧騒で、頭が興奮しているだけだと思っていた。
でも、それは次第に無視できない激痛へと変わっていく。
部活のスコアを書いている時、文字が二重に見える。
赤葦のトスを目で追おうとすると、こめかみをナイフで抉られるような痛みが走る。
赤葦の心配そうな雰囲気を振り切るようにして、#名前#は病院へ向かった。
白い壁、消毒液の匂い。
MRIの騒がしい機械音。
隣に座る母親の手が、わずかに震えているのがわかった。
「#苗字#さん、検査の結果が出ました」
医師は、#名前#の脳の画像を見せながら、淡々と、しかし残酷な事実を告げた。
「頭痛の原因は、脳の深い部分にできている『動脈瘤(どうみゃくりゅう)』です。
血管の一部が瘤(こぶ)のように膨らんでいます。これが周囲の神経を圧迫して、
痛みと視覚障害を引き起こしているんです」
#名前#の頭が真っ白になる。
「……手術、すれば治るんですか?」
母親の声が震える。医師は視線を伏せ、言葉を選んだ。
「場所が非常に悪く、神経が密集している部位です。
手術自体に大きなリスクが伴います。成功しても、後遺症が残る可能性がある……。
最悪の場合、視力や、運動機能を失うかもしれません」
病院の外に出ると、夕暮れの空が燃えるように赤かった。
昨日まで、あんなに綺麗だと思っていた夕焼け空
「……お母さん。京治には、まだ言わないで」
#名前#は、震える手でスマホを握りしめた。
画面には、赤葦から『今終わった。駅で待ってる』という短いLINE。
今まで当たり前だと思っていた「明日」が、急に砂の城のように崩れていく。
恋歌と赤葦に、なんて言えばいい?
マネージャーを、続けられる?
天音の目から、今度は「悲しみ」ではない、底知れぬ「恐怖」の涙がこぼれ落ちた。
恋歌ちゃんの名前は春咲恋歌(はるさきれんか)だにょ