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目次
#0 Prologue
その場所にはいつも、高く澄んだ音が響いていた。
バレーボールが床を叩く乾いた音、シューズが擦れる鋭い音、
そして、誰よりも高く跳ぶエースを呼ぶ「セッター」の声。
東京の強豪、|梟谷学園高校《ふくろうだにがくえんこうこう》。
その体育館の入り口で、一人の少女が足を止める。
彼女の名前は、#苗字##名前#。
彼女の視線の先には、いつも一人の少年がいた。
幼い頃、泥だらけの手で彼女の涙を拭い、
「ずっと守ってあげる」と鼻声を震わせて笑った少年。
今や、冷静沈着な司令塔としてチームを操る|赤葦京治《あかあしけいじ》だ。
幼馴染という近すぎる距離が、二人の間に透明な壁を作っていた。
伝えたい言葉は、いつも喉の奥でバレーボールのように弾けては消えていく。
「……今日こそ、言えるかな」
手に持ったスコアノートをぎゅっと抱きしめ、
彼女は一歩、踏み出す。
それは、病魔という影が忍び寄っていることも、
親友がとんでもない爆弾を仕掛けていることもまだ知らない、
純粋で真っ直ぐな「恋」の始まりだった。
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サブ小説なので登校頻度すくなめ
#1 幼馴染
「京治、ボトル。……はい、これ」
「……ああ、。……ありがと」
梟谷学園の体育館。練習の合間、マネージャー・#苗字##名前#が差し出したボトルを、
赤葦京治は一瞬だけ視線を泳がせてから受け取った。
「おっ、#名前#ー!俺のボトルは!?」
「木兎さんはあっち。白福先輩が持ってるから早く行ってください」
「ヘイヘイ……!相変わらず赤葦には過保護なんだからなー!」
バサバサと騒がしく去っていくエースの後ろ姿を見送って、#名前#は小さく息をつく。
赤葦は無言でスポーツドリンクを口に含んでいるけれど、耳の付け根がほんのり赤い。
「……京治、まだ気にしてるの?」
「……何を」
「さっき、雀田先輩に言われたこと。私たちが保育園のとき、
おままごとで『ずっと一緒にいようね』って毎日結婚の約束してた話」
「……っ、ごほっ!」
赤葦が派手にむせた。
無表情な司令塔がここまで動揺するのは、世界で#名前#の前だけだ。
「……あれは、その、幼少期の判断能力が欠如していた頃のでしょ…」
「私は別にいいけど。あの頃は、京治が私のこと大好きだったもんね」
「__………。今だって、__」
ボソッと、赤葦が消え入りそうな声で呟いた。
「え、何?」
「……何でもない。戻るよ」
逃げるようにコートへ戻っていく赤葦の背中を、
#名前#は少しだけ切ない、でも大好きな気持ちを込めて見つめる。
「ほぼ付き合ってる」なんて言われていたのは、もう十数年も前のこと。
今はまだ「幼馴染」で「マネージャー」だけど、
いつかあの頃の約束を「黒歴史」じゃなくしてやるんだから。
そんな#名前#の視線に気づいているのかいないのか、
赤葦はいつもより少しだけ精度の高いトスを、木兎に向けて上げていた。
赤葦の口調迷子すぎる
#2 微妙な距離関係
高校の校門を出て、駅までの夜道。
「自主練、遅くまでお疲れ様」
#名前#が隣を歩きながら声をかけると、赤葦は
「#名前#も、付き合わせて悪かった」と短く返した。
二人の距離は、近すぎず遠すぎず。
幼馴染という「正解」があるせいで、あともう一歩が踏み出せない。
「……ねえ、京治。さっき木葉先輩に何言われてたの? 試合の反省?」
「……いや。別に、大したことじゃない」
本当は、大したことだった。
『赤葦さ、雨宮のこと見てる時だけ目が全然「冷静」じゃないんだよな。早く付き合っちゃえばいいのに』
そんな風に揶揄われたなんて、死んでも言えない。
「そっか。……私ね、最近ちょっと不安なんだ」
「不安…?」
天音が俯き加減に呟くと、赤葦が足を止めた。
「京治、バレーも上手だし、カッコいいから。……大学に行ったら、
私の知らないところで誰かと付き合っちゃうんじゃないかな、って」
それは、天音なりの精一杯の告白だった。
でも、赤葦の答えは、予想外に少し強い調子だった。
「……ありえないよ」
「えっ?」
「……俺が、#名前#以外の誰かを、そんな風に見るわけないだろ。……バカなこと言わないでくれ」
赤葦は天音を見ようとせず、少し先を歩き出す。
その歩幅がいつもより早くて、でも、隠しきれないくらい耳まで真っ赤になっているのを、
#名前#は見逃さなかった。
(……今のは、自白ってことでいいのかな)
天音は胸の高鳴りを抑えながら、早足でその背中を追いかける。
「今の、どういう意味!? ちゃんと顔見て言ってよ!」
「……うるさい。歩くのが遅いよ、#名前#」
お互いに「好きだ」とはまだ言っていない。
でも、繋ごうとした指先が少し触れ合って、二人同時にビクッとする。
保育園の頃みたいに素直に「結婚しよう」なんて言えないけれど。
このもどかしい距離感こそが、今の二人には心地よくて、何より愛おしかった。
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#3 空気の読めない主将(デジャウ)
部室棟の裏、自販機の前。
赤葦と#名前#は、二人きりで微炭酸のジュースを分け合っていた。
「……あ、これ新作? ちょっと酸っぱいね」
「そうだね。……でも、天音はこういうの好きでしょ?」
一本の缶を交互に飲むなんて、幼馴染じゃなきゃ許されない距離感。
お互いの指が触れるたびに、心臓の音がうるさくて、何か言わなきゃと焦るほど言葉が出てこない。
赤葦が意を決したように、「あのさ、天音……」と口を開きかけた、その時。
**「ヘイヘイヘーーーイ!! 何してんだ二人とも!!」**
背後から、鼓膜が震えるほどの爆音。
木兎が、木葉と猿杙を引き連れて、ガバッと二人の肩に腕を回してきた。
「木兎さん、声が大きいです……」
「いいじゃねーか! それより赤葦! お前さっき
『#名前#が可愛すぎてトスが乱れるからマネージャー引退してほしい』
って、部室で泣きそうな顔して愚痴ってたよな!?」
「………………は?」
#名前#の動きが止まった。
隣にいる赤葦は、見たこともないような真っ白な顔をしている。
「ちょ、木兎! それは言っちゃダメなやつ!(木葉)」
「えっ!? そうなのか!? でも赤葦、
『#名前#と付き合えるならバレー人生の運全部使ってもいい』
って……」
***「木兎さん!!!!!(クソデカボイス)」***
冷静沈着なはずの赤葦京治が、体育館の端まで届きそうな声で叫んだ。
その顔は、今や茹で上がったタコのように真っ赤だ。
「……京治、今の、本当?」
天音が震える声で尋ねると、赤葦はバッと両手で顔を覆って、そのままうずくまってしまった。
「…………もう、死にたい……」
「えっ、えええ! 赤葦!? 待って、私も……
私も、京治がカッコよすぎてスコア書く手が震えるって、
雀田先輩に相談してたから! お相子だよ!!」
「…………え?」
顔を覆っていた赤葦の指の間から、驚愕の目が天音を捉える。
爆弾を落とした本人の木兎は、状況が飲み込めず
「? お相子なら解決だな! よし、飯行くぞ!」と笑っている。
「……バカ、天音。……今の、本気?」
「本気だよ! ……京治のバカ!!」
爆発したのは、二人の羞恥心か、それとも長年溜め込んできた想いか。
ニヤニヤしながら見守る木葉たちと、固まる二人、そして相変わらず絶好調な木兎。
梟谷の放課後は、これまでで一番騒がしく、そして甘い時間になった。
うん
#4 忍び寄る病魔
最近、#名前#の視界はどこか歪んでいた。
最初は「寝不足かな」と思っていた。
赤葦との進展や、親友の恋歌との喧騒で、頭が興奮しているだけだと思っていた。
でも、それは次第に無視できない激痛へと変わっていく。
部活のスコアを書いている時、文字が二重に見える。
赤葦のトスを目で追おうとすると、こめかみをナイフで抉られるような痛みが走る。
赤葦の心配そうな雰囲気を振り切るようにして、#名前#は病院へ向かった。
白い壁、消毒液の匂い。
MRIの騒がしい機械音。
隣に座る母親の手が、わずかに震えているのがわかった。
「#苗字#さん、検査の結果が出ました」
医師は、#名前#の脳の画像を見せながら、淡々と、しかし残酷な事実を告げた。
「頭痛の原因は、脳の深い部分にできている『動脈瘤(どうみゃくりゅう)』です。
血管の一部が瘤(こぶ)のように膨らんでいます。これが周囲の神経を圧迫して、
痛みと視覚障害を引き起こしているんです」
#名前#の頭が真っ白になる。
「……手術、すれば治るんですか?」
母親の声が震える。医師は視線を伏せ、言葉を選んだ。
「場所が非常に悪く、神経が密集している部位です。
手術自体に大きなリスクが伴います。成功しても、後遺症が残る可能性がある……。
最悪の場合、視力や、運動機能を失うかもしれません」
病院の外に出ると、夕暮れの空が燃えるように赤かった。
昨日まで、あんなに綺麗だと思っていた夕焼け空
「……お母さん。京治には、まだ言わないで」
#名前#は、震える手でスマホを握りしめた。
画面には、赤葦から『今終わった。駅で待ってる』という短いLINE。
今まで当たり前だと思っていた「明日」が、急に砂の城のように崩れていく。
恋歌と赤葦に、なんて言えばいい?
マネージャーを、続けられる?
天音の目から、今度は「悲しみ」ではない、底知れぬ「恐怖」の涙がこぼれ落ちた。
恋歌ちゃんの名前は春咲恋歌(はるさきれんか)だにょ
#5 協力
「#名前#、そこ座ってて! ボトルは俺が運ぶから!」
「あ、木兎さん……ありがとうございます」
#名前#の病気について、赤葦から
「詳しい病名は伏せるが、体調が不安定なので全力でサポートしてほしい」と
伝えられた梟谷メンバーたちは、彼ららしいやり方で#名前#を守り始めた。
「ほら#名前#、今日はこれ。糖分補給」
木葉がさりげなく置いたのは、#名前#が大好きな店の限定プリン。
「えっ、いいんですか?」
「おう。赤葦が『#名前#が元気ないとトスが低くなる』
とかうるせーから、チームの平和のためだ。食え食え」
小見は「#名前#専用特等席」として、一番日当たりが良くて柔らかい椅子をベンチの横に設置。
猿杙や鷲尾も、天音が重いものを持とうとすると、
どこからともなく現れて「……置け」と無言で荷物を奪い去っていく。
そんな過保護すぎる部員たちに囲まれて、#名前#の毎日は笑いに満ちていた。
頭が痛む瞬間があっても、恋歌が隣で
「見て、木兎さんの今の顔! フクロウっていうか、ただの茹でダコじゃない!?」
と爆笑させてくれるから、恐怖に浸る暇もない。
ある日の練習後。
夕暮れの体育館で、赤葦が#名前#の横に座った。
「……無理してないか?」
「ううん。みんなが優しすぎて、逆に太っちゃいそう」
#名前#が笑うと、赤葦はふっと表情を和らげ、彼女の肩に自分の頭を預けた。
「……みんな、#名前#が大好きなんだ。もちろん、俺が一番だけど」
「っ、もう、こういう時だけサラッと……」
「天音。今は、自分のことだけ考えて。……コートの中は、俺たちが守るから。
#名前#は、そこで笑っててくれればいい」
赤葦の指先が、#名前#の指と絡まる。
その温かさが、脳裏にちらつく不安を溶かしていく。
病気のことは怖いけれど。
木兎さんのバカデカい笑い声、恋歌の止まらないお喋り、
そして隣にいる赤葦の静かな体温。
この「最高な日常」が、今の#名前#にとって何よりの特効薬だった。
「……うん。私、絶対に治して、またみんなのスコア書くからね」
#名前#の決意に、赤葦は何も言わず、ただ繋いだ手に少しだけ力を込めた。
1日に五回更新は正気の沙汰じゃない
#6 悪化
手術前夜。病院の無機質な白い天井を見つめていた#名前#のもとへ、
医師が重い足取りでやってきた。
再検査の結果、告げられたのは絶望的な事実。
「#苗字#さん……落ち着いて聞いてください。動脈瘤の膨張が予想よりも早く進んでいます。
このままでは手術中に破裂する危険があるため、より深い部位を処置しなければなりません。
……結果として、視力、あるいは聴力を失うといった後遺症が残る確率が、
当初の倍以上に跳ね上がりました」
倍。
それは、昨日まで抱いていた「元通りの日常に戻れる」という淡い期待を無惨に打ち砕く数字だった。
「……そう、ですか」
#名前#はそれだけを答え、震える手でシーツを握りしめた。
ちょうどその時、面会に来た赤葦と恋歌が、ドアの隙間からその話を聞いてしまった。
「……何、それ。倍って…………」
いつも明るい恋歌の声が、今まで聞いたことがないほど震えていた。ー
赤葦は、ドアを押し開けて#名前#のベッドサイドに歩み寄る。
その表情は、凍りついたように冷徹だった——自分の感情が壊れないように、
必死で抑え込んでいるかのように。
「……京治、聞いた? 私……京治のトスも、みんなのバレーも、
もう見られなくなるかもしれない。みんなの声も、聞こえなくなるかも……」
#名前#の瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
**「そんなの、怖すぎるよ……! 手術なんてしたくない、**
でもしないと死んじゃう。……どうしたらいいの!?」**
#名前#の悲鳴のような問いかけに、赤葦は彼女の肩を強く、痛いほど抱き寄せた。
「#名前#、見えなくなっても、聞こえなくなっても、…
…俺がここにいる。俺の手を握っていれば、どこにだって連れて行く。
俺の声が聞こえなくなったら、何度でも体に直接響くように名前を呼ぶ」
赤葦の胸元に顔を埋める#名前#に、彼は耳元で、一文字ずつ刻み込むように言葉を続けた。
「俺は、#名前#がどんな姿になっても、だから……生きてくれ。
生きて、俺の側にいてくれ。……お願いだ」
恋歌も反対側から#名前#の手にしがみつき、鼻水でぐちゃぐちゃの顔で泣き叫んだ。
「そうだよ!! 私が天音の目にも耳にもなってあげる!
いろんなこともさ!毎日言葉で実況してあげるから! だから、勝手に絶望しないでよ!!」
恐怖の「倍」という数字。
でも、それを超える「二人分の体温」が、#名前#の冷え切った心に無理やり熱を灯していく。
明日、光が消えるかもしれない。音が消えるかもしれない。
それでも、この二人の感触だけは、魂に刻み込まれているから大丈夫だと。
#名前#は必死に自分に言い聞かせ、最後の夜を戦い始めた。
赤葦の口調迷子すぎる
原作勢のはずなのに()
#7 手術の結果と終わり
手術室の赤いランプが消えたのは、予定を大幅に過ぎた深夜だった。
待合室の硬い椅子で、赤葦と恋歌、そして天音の両親は、
祈るようにその時を待っていた。扉が開いた瞬間、全員が弾かれたように立ち上がる。
「……手術は、無事に終わりました。動脈瘤の処理には成功し、命に別状はありません」
医師のその言葉に、恋歌はその場に崩れ落ち、母親は顔を覆って泣き崩れた。
だが、赤葦だけは医師の次の言葉を待つように、静かに拳を握りしめていた。
「ただ、後遺症の有無については……彼女の意識が戻ってみるまで、確かなことは言えません」
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数時間後。集中治療室のベッドで、#名前#の指先がかすかに動いた。
「……ん……」
「天音!?」
#名前#は重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
最初は、何も見えなかった。ただ眩しい光の塊があるだけ。
でも、次第にその光の中に、見慣れたシルエットが浮かび上がってくる。
「……けい、じ……?」
掠れた声で呼ぶと、視界の端で赤葦が息を呑むのがわかった。
「……#名前#、俺が見えるか?」
#名前#はゆっくりと瞬きをして、赤葦の顔を見つめた。
いつもの冷静な彼ではない、泣き腫らした目で、必死に自分を見つめる愛しい人の顔。
「……見えるよ。京治。……すごく、ひどい顔してる」
その言葉を聞いた瞬間、赤葦は#名前#の手に額を押し当て、
子供のように嗚咽を漏らした。視力は、奇跡的に残されていた。
「……じゃあ、私の声は!? #名前#!聞こえる!?」
横から割り込んできた恋歌の叫び声に、#名前#は少しだけ耳をそばだてる。
「……恋歌。……ちょっと、声が大きすぎる……耳に響くよ……」
「……っ、あああ良かったぁぁ!!」
聴力も、失われていなかった
もちろん、術後の経過はこれからだ。手足のしびれや、
細かい後遺症についてはリハビリが必要になるかもしれない。
でも、#名前#の目には光が宿り、その耳には大好きな人たちの声が届いていた。
「……約束、守ったよ。……生きて、京治のところに、帰ってきたよ」
天音の弱々しい、でも確かな言葉に、
赤葦は彼女の手を二度と離さないと言わんばかりに強く握りしめた。
「……おかえり、#名前#。」
梟谷の青空の下、また三人で歩ける日が来る。
アルバムの次のページには、きっと最高の笑顔の三人が、新しい物語を刻んでいくはずだ
梟谷の司令塔と、消えない光のアルバム【完結】