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6月ー雨の音と赤点の足音③
放課後、学校の最寄り駅から電車に揺られて二駅。うちらは駅直結の大きなショッピングセンターへとやってきていた。外は相変わらずザーザーと嫌な雨が降り続いているけれど、ガラス張りの明るい館内に入った瞬間、そんな憂鬱は一気に吹き飛んだ。「ねえ舞、早くファンシーショップ行こ! セールやってるの私チェックしてたんだから」「待って凛、歩くの早すぎだって! 私まだ足首がちょっとピキピキ言ってんだけど!」「テスト終わってアドレナリン出まくってるから無理。ほら、ついてきなさい!」凛はハーフアップの髪をピコピコと揺らしながら、エスカレーターをスタスタと駆け上がっていく。本当にこいつはせっかちだし、遠慮がない。だけど、その強引さが今はたまらなく心地よかった。お目当てのショップには、パステルカラーの可愛い文房具がこれでもかと並んでいた。棚の前で、うちらは真剣な顔をして腕を組む。「うーん……お揃いにするなら、やっぱりこのクリアタイプのやつじゃない? 中身が見えて格好いいじゃん」「は? あんたのガサツな中身が見えたら大惨事でしょ。私はこっちの、クマの刺繍が入ったレザーのやつがいい」「えー、それ凛っぽくないじゃん! 凛はもっとこう……黒とかトゲトゲしたやつの方が似合うよ!」「トゲトゲって何よ! 私だって可愛いものくらい好きだし!」「それは違う」「こっちの方がいい」と、お店の真ん中で堂々と小競り合いを繰り広げる。周りのお客さんにちょっと見られちゃったけれど、うちらはそんなのお構いなしだ。結局、お互いに一歩も引かなかった結果、「形はクリアタイプで、色は私がブルー、凛がパープル」という、絶妙な妥協点でお揃いにすることに決まった。「よし、これで次の期末テストのモチベーションもバッチリじゃん!」「形は私の意見が通ったんだから、あんた次のテストで赤点取ったら承知しないからね」「分かってるって!」レジで色違いのペンケースを受け取り、うちらはホクホクした気分のまま、館内のフードコートへと向かった。◇「あ、見て凛! いちご飴売ってる! めっちゃ美味そう!」「あ、本当じゃん。テスト頑張ったし、これもうちらのご褒美に決定ね」お小遣いを出し合って、うちらはきらきらと赤い艶を放ついちご飴の串を買った。大きくて立派ないちごが、一串にちょうど6個、綺麗に並んでいる。フードコートのテラス席に座り、さっそく争奪戦のスタートだ。パキッ、と小気味いい音を立てて、まずは凛がいちご飴を口に放り込んだ。「んー! 飴がカリカリで、いちごが超ジューシー! 最強!」「あ、ずるい! 私も!」私も負けじと、2番目のいちごに噛みつく。甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がって、勉強の疲れが一気に吹き飛ぶみたいだ。「よし、次ももらう!」凛はすかさず、3個目のいちごをパクリと食べた。「あ、ちょっと凛、食べるペース早くない!?」「早い者勝ちだし!」凛は4個目のいちごまで口に放り込み、実質3個目を一瞬で平らげてしまった。「待て待て、不公平じゃん!」私は大慌てで串を引き寄せ、なんとか自分の2個目(全体で5個目)のいちごを確保して口に押し込んだ。もぐもぐと口を動かしながら、串を見つめる。6個あったいちごは、凛が3個、私が2個食べた段階だ。つまり、串の先端に残されたいちごは、あと、たったの【1個】。「よし、ラストは私のもの――」私が手を伸ばし、最後の1個に歯を立てようとした、まさにその瞬間だった。パクッ。「……あ」目の前で、凛がものすごい素早さで横から顔を突き出し、最後のいちごを串から綺麗にかすめ取っていった。凛の頬袋が、最後のいちごでぷっくりと膨らむ。「あーーーーーーっ!!! 凛、あんた今ずるしただろ!!」「ふふ、ふーんだ。口を動かす前に手を動かさなきゃダメってことだし」凛はもぐもぐと美味しそうに咀嚼しながら、悪びれもせずにニカッと勝ち誇った笑みを浮かべた。「ひどい! 6個あったんだから、3個ずつで分けるのが普通じゃん! なんであんたが4個も食べてんのよ!」「ガサツな特攻隊長が一瞬油断したのが悪いでしょ。ほら、悔しかったら次のお出かけのときにやり返しなさいよ」「絶対やり返すから! 次は絶対に4個食ってやる!」私はキーキーと怒ったけれど、凛があまりにも堂々と笑うものだから、なんだかだんだん可笑しくなってきてしまった。「もー、マジで凛のそういう強引なところムカつくわー!」と言いながら、私はイチゴオレの残りを一気にすする。思ったことをそのまんまぶつけ合って、怒って、笑って。凛との時間は、どこまでもカラッとしていて、本当に楽で、最高に賑やかだった。ガラス窓の外では、6月の激しい雨が相変わらず世界を濡らしている。だけど、新しくお揃いになったペンケースと、いちご飴の甘い余韻を残したまま、うちらの新しい放課後は、雨の音なんか跳ね返すくらいの笑い声と一緒に、どこまでも突き進んでいくのだった。(つづく)
というわけで3時間前の続きなんですけどこのシリーズの舞目線は終了いたします
最近この小説が全くもって面白みを感じないなあと自分で思ってきたからです。
葵目線一応作ってあるので三話分投稿はします。
次のシリーズなどについては次回発表します。(18時の予約投稿かな)