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最高のグループ_14話
カイトの絶叫と共に、彼の全身から禍々しい赤い魔力が噴き出した。
ヴァンパイアとしての本能が、理性を焼き尽くそうと暴走している。
ルア「……っ! 意識を保って、カイト!!」
ルアは自身の指先に極限まで濃縮されたウイルス魔法を充填した。
彼女の魔力数は3058を超え、その圧倒的な質量が空間を歪ませる。
本来ならば一瞬で彼を腐敗させるはずの毒を、
彼女は「楔」として再定義し、彼の暴走する血管へと流し込んだ。
ルア「ログ! 敵を引きつけろ! 私たちがカイトを繋ぎ止めるまで、誰も近づかせるな!!」
黒い狼・ログが地響きと共に咆哮を上げ、Red Fangの幹部たちへと突撃した。
その背中には漆黒の毛並みが揺れ、ルアの絶対的な命令に従って敵の攻撃を弾き返す。
那央「……今だ! 柚子、夜雨、最大出力でカイトの精神を固定しろ!」
那央の鋭い指示が飛ぶ。
彼は瞬時に独自の魔法を展開し、ルアのウイルス魔力が正しく機能するための術式を補強した。
柚子「……了解。デバフ展開。敵の攻撃は全て無効化するわ」
柚子が冷静に指を振るうと、周囲に透明な障壁が展開され、カイトへの外圧を遮断する。
同時に夜雨がその膨大な魔力を解放した。
夜雨「……僕のすべてを捧げるよ。彼を闇に呑ませはしない」
夜雨の放つ重厚なデバフがカイトの意識を現世へと繋ぎ止める鎖となり、ルアのウイルス魔法と共鳴した。
その瞬間、カイトの体から溢れ出していた赤い魔力が急速に収束し、彼の肌の青白さが薄れていく。
悠斗「……やったのか……? 戻ってるのか!?」
悠斗が叫びながら駆け寄る。
菜乃は盾を地面に突き立て、肩で息をしながらも安堵の表情を見せた。
カイト「……はぁ、はぁ……ルア……みんな……」
カイトの瞳から紅い光が消え、元の穏やかな色が戻った。
彼は崩れ落ちるように倒れ込み、ルアに抱きとめられた。
彼を襲っていたヴァンパイアの呪縛が、ルアの特殊なウイルス魔法によって中和され、浄化されたのだ。
莉音「……やったぁ! 間に合ったよ!!」
莉音が駆け寄り、カイトとルアに癒やしの光を注ぐ。
戦場には一瞬の静寂が訪れ、勝利の余韻と共に切なさが漂った。
しかし、安堵の直後、二人の顔に共通の苦悶の色が浮かんだ。
カイト「……はぁ……っ、ルア……正直に言うよ。俺……もう限界だ」
カイトは震える声で漏らした。
ルアもまた、彼を抱きしめる腕の力が弱まりながら呟く。
ルア「……私も同じよ。カイト……私たち、ずっと無理をしていたわね……」
二人の顔には、極度の疲労と睡眠不足による隈が深く刻まれていた。
彼らはこの数ヶ月、Red Fangの追跡から逃れ、仲間に会うため一睡もせずに戦い,進み続けていたのだ。
その限界が、カイトの変貌という形で表面化したことを二人は自覚した。
ルア「……一度、宿に行った方がいいわ」
ルアの声は掠れていた。
それと同時に、抱きしめられていたカイトもまた、弱々しくながらも同じ言葉を口にした。
カイト「……ああ。俺も……一度だけ、眠らせてくれ……」
那央「……全く。二人とも、あまりにも無茶をしすぎだ。指示を出している俺の身にもなってほしいよ」
那央は呆れたように笑いながらも、その瞳には深い慈愛を宿していた。
莉音が明るく笑って割って入る。
莉音「あはは! 最高のグループなんだから、これくらい甘えちゃダメじゃない! さあ、みんなで休もう? 私たちが守ってあげるから!」
菜乃「……ああ、そうだな。今は戦うことよりも、生きることだ」
悠斗「俺も寝る。……でも、起きたらまた全員でやるぞ。絶対に、誰も失わないように」
夜雨「……月が沈むまでなら、僕も休もうかな」
彼らは互いの肩を抱き合い、傷ついた体を預け合った。
Red Fangの脅威はまだ消えていない。
カイトを変貌させた呪いも完全には拭いきれていないかもしれない。
しかし、この瞬間だけは「最高のグループ」としての絆が、絶望よりも強く彼らを守っていた。
ルア「……約束よ、みんな。絶対に、誰も置いていかないって」
その誓いは、静まり返った森の奥深くで、夜の帳に溶けていった。
しかし、物語はここで終わらない。
カイトとルアを救出したことで、Red Fangの真の目的が動き出すことを、彼らはまだ知らない。