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両想いの交換日記
第一章:あきらめない、私の初恋
小学6年生の春、クラス替えの日の朝。りんかの世界は、一つの笑顔によって180度変わった。
隣の席になった、はるや。スポーツ万能で、笑うと細くなる瞳が優しくて、クラスの人気者だった。
りんかは恋に落ちた。それは、止められないほど真っ直ぐな感情だった。
「ねぇねぇ、はるや! 今日の一時間目のノート、見せてあげよっか?」
「はるや、放課後一緒に帰ろ! 待ってるからね!」
りんかのアプローチは、とにかく一生懸命。最初ははるやも「あはは、りんかは元気だな〜」と笑ってくれていた。けれど、毎日毎日、朝から晩まで全力で追いかけ、1日に何通もメッセージを送るりんかの熱量に、はるやは少しずつ、困惑の表情を隠さなくなっていった。
秋を迎える頃には、はるやの態度はあからさまに冷たくなっていた。話しかけても視線を合わせず、生返事ばかり。
「……ねぇ、りんか。ちょっとしつこいよ。もう話しかけてこないでほしい」
廊下で初めて向けられた、突き放すような冷たい瞳。
普通なら、ここで心が折れて諦めてしまうのかもしれない。でも、りんかは違った。
(はるやに迷惑をかけちゃったのは本当にごめんなさい。でも、私の『大好き』な気持ちは、絶対に諦めたくない――!)
りんかは作戦を変えることにした。ただむやみに追いかけるのをやめて、はるやの負担にならないように一歩引きながら、でも、誕生日にはそっとお祝いの言葉を贈り、はるやが部活で疲れている時はさりげなく差し入れを机に置いた。
どれだけ冷たくされても、真っ直ぐに自分だけを見つめ、健気に、でも一途に想い続けてくれるりんか。その姿に、はるやの頑なだった心は、少しずつ、でも確実に変化していった。
第二章:京都の夜、二人きりの約束
そして迎えた、秋の修学旅行。舞台は、夕暮れに染まる美しい京都の街。
旅館での自由時間、りんかは意を決して、はるやを静かな中庭へと呼び出した。これが、自分のすべての想いを伝える、最初で最後のチャンス。
ひんやりとした秋の風が吹く中、はるやがやってきた。その表情は、かつての冷たい拒絶のものではなく、どこか緊張したような、真剣なものだった。
「はるや……っ。これ、読んでほしいの!」
りんかは、ずっと大切に抱えていた一冊のノートを差し出した。それは、りんかがこれまでに溜め込んだ想いを、毎日大切に綴り続けた手作りの「交換日記」だった。はるやのページはまだ白紙だけど、りんかの文字で、はるやへの大好きな気持ちがびっしりと埋まっている。
「私、どれだけはるやに冷たくされても、嫌われそうになっても、はるやのことが諦められないくらい大好きなの。世界中の誰よりも! ……もしよかったら、この日記の続き、はるやと一緒に書きたいです。私と、付き合ってください!」
ギュッと目を瞑り、ノートを差し出すりんかの手が、小刻みに震えている。
静寂が二人を包み込む。りんかの心臓は、破裂しそうなほど激しく鳴り響いていた。
「……はぁ。本当に、お前には敵わないな」
頭の上から聞こえてきたのは、呆れたような、でも、驚くほど優しくて温かい、はるやの声だった。
第三章:からっぽじゃない未来(ハッピーエンド)
りんかがゆっくりと目を開けると、はるやがフッと優しく微笑みながら、差し出されたノートをその大きな手でしっかりと受け取っていた。
「毎日毎日、あんなに真っ直ぐ俺のことばっかり追いかけてさ。最初は正直、どうしていいか分からなくて冷たくしちゃった。……でも、どれだけ突き放しても、俺が困ってる時はいつも一番に気づいて、ずっと一途に味方でいてくれただろ?」
はるやはノートを愛おしそうに見つめ、それから真っ直ぐにりんかの瞳を見つめ返した。その瞳には、もう嫌悪感なんてカケラもなかった。あるのは、愛おしさと、確かな熱量。
「気がついたら、お前が話しかけてこない日が、めちゃくちゃ寂しくなってたんだよ。……俺もお前のこと、好きになっちゃった」
「――え……っ!?」
「だから、その日記の続き。これからは俺も、毎日たくさん書くから。……よろしくね、りんか」
その瞬間、はるやはりんかの小さな手を、ギュッと力強く握りしめた。差し出されたはるやの手のひらは、驚くほど温かかった。
ずっと届かないと思っていた、はるやの心。どれだけ不器用でも、あきらめずに真っ直ぐに想い続けた初恋が、京都の美しい夕焼けの中で、ついに奇跡を起こしたのだ。
嬉しさと感動で、りんかの目から大粒の涙がポロポロと溢れ出す。はるやは「泣くなよ〜(笑)」と言いながら、空いた方の手で優しくりんかの涙を拭ってくれた。
手元にある、二人の交換日記。
明日からはもう、白紙のページなんて残らない。二人で紡ぐ、最高に幸せな未来の言葉で、いっぱいに埋め尽くされていくのだから――。