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声をなくした少年⑦
瑛斗の配信は少しずつ大きくなっていた。
最初は1人。
次は10人。
そして100人。
気づけば毎日たくさんの人が来てくれるようになった。
ある日の配信。
瑛斗はいつものように歌っていた。
するとコメント欄が急に騒がしくなった。
本物?
え?
うそでしょ?
莉犬くんいる!?
瑛斗は意味が分からなかった。
「どうしたの?」
そう聞いた瞬間。
一つのコメントが流れた。
『歌うまいね。』
投稿者の名前。
莉犬くん。
瑛斗の頭が真っ白になった。
呼吸が止まりそうだった。
「えっ……」
画面を何度も見る。
間違いじゃない。
本物だった。
昔。
暗い部屋で泣いていた自分を救ってくれた人。
生きる理由をくれた人。
その莉犬が。
今、自分の配信を見ている。
瑛斗は泣きそうになるのを必死に我慢した。
「ありがとうございます……」
やっとそれだけ言えた。
配信後。
震えながらSNSを見る。
すると通知が届いていた。
莉犬くんからのメッセージだった。
配信見たよ。
気持ちの伝わる歌だった。
よかったら今度話そう。
瑛斗はスマホを落とした。
涙が止まらなかった。
ずっと画面の向こうにいた人。
会えるはずのない人。
憧れの人。
その人が自分を見つけてくれた。
数週間後。
瑛斗は緊張しながら東京へ向かった。
待ち合わせ場所。
足が震える。
心臓がうるさい。
すると。
向こうから赤い髪の青年が歩いてきた。
「瑛斗くん?」
優しい声だった。
瑛斗は固まった。
動画で何百回も聞いた声。
配信で何千回も聞いた声。
目の前にいる。
本当にいる。
「は、はい……」
莉犬は笑った。
「会いたかった!」
その言葉を聞いた瞬間。
瑛斗の目から涙がこぼれた。
慌てて顔を隠そうとする。
すると莉犬は優しく言った。
「いっぱい頑張ったんだね」
その一言だった。
瑛斗はその場で泣き崩れた。
学校で苦しかった日。
一人で泣いた夜。
消えたいと思ったこと。
配信を始めた日。
全てが頭に浮かぶ。
莉犬は何も笑わなかった。
何も否定しなかった。
ただ隣で聞いてくれた。
全部話し終わったあと。
莉犬は静かに言った。
「生きててくれてありがとう」
瑛斗は顔を上げた。
昔。
配信越しに聞いた言葉。
今度は目の前で聞いた。
「瑛斗くんの歌で救われてる人がたくさんいるよ」
「だから自信持って」
「君が泣いた日々は無駄じゃなかった」
瑛斗は大粒の涙を流した。
そして初めて思った。
苦しかった過去も。
傷も。
孤独だった時間も。
全部が今日につながっていたんだ、と。
夕暮れの空の下。
莉犬と瑛斗は並んで歩いた。
その背中はもう、昔の泣いてばかりいた少年ではなかった。
誰かを救うために歌う、一人の配信者になっていた。
第七章 〜初めてのステージ〜 へ続く。