公開中
第五話
遅くなりました!ごめんなさい!
あと少しで天女の万華鏡終わりそうになっちゃいましたわ!
光る君が我が家へやってきてから、四日が経った。
最初にあれほど怯えていたのが嘘のように、 今や「お姉様!」 と私の傍へ寄ってくるほどに懐いている。
そして光る君がそうして甘えるたびに、周りの女房たちは 「なんて美しいのかしら......」と、うっとりしたため息 を漏らしていた。
「五の宮。 どうですか、 光る君の様子は」
お母様も悩みの種が消えたからか、 いつもの気品ある美しさを取り戻していらした。
「あの愚帝がまともな教育を受けていなかったせいで、無知なことも多々ありますが、 まるで乾いた土が水を吸い 上げるように、教えたことを次から次へと覚えていくのです。 さすがは 『光る君』と噂されるだけはありますわね」 「そうなのですね。 目の肥えたあなたがそこまで認めるということは、相当な才なのでしょう。 あなたがその子の 受けてこなかった数年分の教育を施すのでしょう? 本当に、体にだけは十分に気をつけなさいね」
「ありがとうございます、お母様。 明日からも気合を入れて頑張りますわ!」
お母様との話がひと段落したその 時、 ぱたぱたと廂を走る足音が響き、 光る君が元気よく入ってきた。
「お姉様! 命婦が唐菓子を持ってきてくれましたよ! 一緒に食べませんか?」
「まあ、光る君。一日で随分と明るくなられましたね。その美しさに年相応の幼い輝きが加わって、とても素敵で すよ」
お母様が優しく、 気品に満ちた声で光る君を褒めちぎった。
「そうでしょうか? ありがとうございます、お母様!」
嬉しそうに微笑む光る君は想像以上に可愛らしくて、 私も内心驚いてしまうほどだった。
「それで? 命婦が唐菓子を持ってきてくれたのだったかしら。 私も行くわ!ではお母様、失礼いたします」
「失礼いたします!」
私たちが御前を退いた直後、お母様の御座所の中から、
「若いというのは良いものですねえ。 本当に楽しそうで・・・・・・」
という、 小さくも温かい呟きが聞こえた気がした。
光る君の手を引いてお姉さまの御座所へ向かうと、甘葛の甘い匂いと、 お姉さまが愛用していらっしゃる百歩の香 の薫りがふわりと漂ってきた。
「五の宮、 待っていたわ。 出来立ての唐菓子よ。 さあ、みんなで頂きましょう」
三人で囲んで食べる甘い唐菓子は、格別に美味しかった。 光る君が
「内裏には、 こんなに美味しいものは元よりありませんでした」
と満足そうに零していたので、私は心の中で、あの愚帝にまた一つ打ち勝ったような気がして、 たまらなく嬉しく なった。