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第七話
今日から、私はお兄様の北の方となるにふさわしい、高貴で心優しい姫君を探すことにした。
まずは、 我が家で預かっている光る君に話を聞いてみよう。
「光る君。 あなたがいた内裏に、心優しい姫君はいらっしゃったかしら?」
「はい、お姉様! 内裏の姫君方は気のきつい方が多かったですが、 麗景殿の女御とその妹君はとてもお優しくて、私とも仲良くしてくださいましたよ!」
おや、いきなり有力な情報を手に入れてしまったわ。けれど、麗景殿の女御は父親である大臣がすでに亡くなっており、強力な後ろ盾がないはずだ。 お兄様の正式な北 の方とするには少し身分が足りないけれど、お兄様の女性不信を優しく癒やしてもらう御方としては、これ以上ないほどぴったりかもしれないわね。
次は、 我が家の女房たちに広く噂を聞いてみましょうか。 まずは手近なところで、 命婦かしら。
「命婦!どこかに、 心優しくて高貴な姫君の噂を知らない?」
「さあて、 どうでしょう。 私はずうっとこの三条の宮にお仕えしているのですよ! 外の姫君のことなど、知るわけがないではございませんか!」
残念、知らなかったか。 ずっと我が家に仕えてくれているのは分かっているけれど、他所の女房仲間から何か聞き齧ったりしていないかと思ったのだけど。
「悪かったわね。 じゃあ、 中将の君を呼んできてちょうだい」
「はーい。でも、中将の君は今、四の宮さまとお話しされていたので、すぐには難しいかもしれませんよ」
・・・・・・困ったわね、 不運が重なってしまったわ。
「じゃあ、 少納言の君はどうかしら? あの子はあの愚帝の妹である、 女五の宮様のところに少し前まで仕えていたでしょう?」
「宮様、 また今上の帝を愚帝などと仰って・・・・・・。 少納言の君なら、 今は局で休んでおりますから大丈夫ですよ」
「だったら話が早いわ、 すぐに連れてきなさいな」
少納言の君とはそれほど親しいわけではないけれど、 情報を聞き出すことくらいは私にだってできるはずだ。
「・・・・・・あの・・・・・・少納言と申します......」
部屋に入ってきた彼女は、あからさまに身を縮めて怯えていた。 私は一体、周囲からどんな恐ろしい存在だと思われているのだろう。ここは精一杯、優しく声をかけるとし よう。
「そんなに怯えないでちょうだい。 自己紹介は省いて、 すぐに本題に入るわ。 あなたはどこかに、 高貴で心優しい姫君をご存知ないかしら?」
「そ、それでしたら・・・・・・ 女五の宮様のところに、 式部卿の宮様がよくお見えになっていたのです。 その際、 時折お連れになっていた姫君がいらっしゃいまして...。 式部卿の宮様の姫君は 私のような一介の女房にも本当に優しく接してくださいましたわ…」
うわあ、ぴったりじゃない! 式部卿の宮の姫君なら、 身分は申し分の ない女王だ。 最高すぎる情報を手に入れてしまったわ。 中将の君が取り込み中だったのは、むしろ怪我の功名だったかもしれない。 お兄様が我が家へ帰っていらしたら、 すぐにでも知らせて差し上げましょう。
「ありがとう、少納言の君! 助かったわ!」
少納言の君は、まさかここまで大喜びされるとは思っていなかったのか、一瞬きょとんとした表情を浮かべていた。 私はすぐに席を立ち、お姉さまの御座所へと急いだ。
「お姉さま! お兄様の北の方にこれ以上ないほど相応しい御方を見つけましたわ!」
「まあ! 本当? どなたの噂かしら」
「少納言の君から聞いたのです。 式部卿の宮様の姫君ですわ!」
お姉さまの顔がみるみるうちに笑顔になり、 それこそ光り輝くように美しくなった。
「その御方なら女王の身分ですもの、 お兄様とも本当にお似合いね。 善は急げ、 さっそく文を送ってみましょうか」
それから、私とお姉さまは二人で熱心に知恵を絞り、 式部卿の宮の姫君へ向けた最初のご挨拶の文を書き上げ、 すぐに使者を走らせたのだった。
「五の宮、 四の宮。 今帰ったよ」
待ちわびていたお兄様が、ようやく内裏から帰っていらしたわ! よし、さっそくあの素敵な姫君のことをお知らせしましょう。
「お兄様!少納言の君が、 心優しくて高貴な姫君のことを教えてくれたのです。 式部卿の宮様の姫君ですって!」
「本当に? その方は本当に、心優しい御方なのか い?」
お兄様はまだ少し女性不信が抜けないのか、 縋るような目をしている。
「ええ。ですので、 今度我が家へ遊びにいらしてくださらないかというお誘いの文を、 すでにお送りいたしましたの。 今度お兄様がご自身の目で、 そのお人柄を確かめて みてくださいね」
その目で確かめるとは言っても、どうせ御簾を隔てて対面することになるのでしょうけれどね。
「う、うん。分かった、 頑張ってみるよ」
作戦は大成功! お兄様も前向きになってくれたわ。あとは、私とお姉さまが心を込めて書いた文へのお返しを、楽しみに待つだけだわ。
読んでくれてありがとね。