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6月特別編その2
学校が終わった放課後。私は一人、土砂降りの雨から逃げ込むように、駅直結の大きなショッピングセンターへとやってきていた。手元にあるのは、図書委員の顧問の先生から頼まれた、新刊図書の購入リスト。静かな本屋さんで頼まれた本を探していれば、少しは胸の奥のモヤモヤを忘れられると思ったからだ。だけど、ガラス張りの明るい館内に響く楽しげなBGMは、今の私の心を余計にチクチクと刺激する。「あ、見て凛! いちご飴売ってる! めっちゃ美味そう!」ふと、エスカレーターの近くにあるフードコートから、聞き覚えのあるハキハキとした大きな声が聞こえた。ドクン、と心臓が嫌な跳ね方をする。恐る恐る視線を向けると、テラス席の近くに、私の大好きなセーラー服の後ろ姿が見えた。舞ちゃんだ。その隣には、ハーフアップの髪をピコピコと揺らした凛さんが、当然のような顔をして並んでいる。二人の手元には、さっきファンシーショップで買ってきたばかりらしき、色違いのお揃いのペンケースが入った透明な袋が、大事そうに握られていた。(……本当にお揃い、買いにきたんだね)本屋さんの棚の陰にすっと身を隠しながら、私は息を潜めて二人を見つめた。胸の奥が、冷たいハサミでじょきじょきと切り刻まれるみたいに痛い。二人はお小遣いを出し合って、きらきらと赤い艶を放ついちご飴の串を一本買った。大きないちごが6個並んだその串を挟んで、すぐに賑やかな争奪戦が始まる。パキッ、と凛さんがいちご飴を口に放り込んで、美味しそうに頬張る。「あ、ずるい! 私も!」と、舞ちゃんが負けじと2番目のいちごに噛みつく。「早い者勝ちだし!」凛さんは楽しそうに笑いながら、3個目、4個目のいちごまで一瞬で平らげてしまった。「待て待て、不公平じゃん!」舞ちゃんは大慌てで串を引き寄せ、自分の2個目のいちごを口に押し込む。そのやり取りのすべてが、驚くほど自然で、遠慮がなくて、眩しかった。6個あったいちごが、凛さん3個、舞ちゃん2個になった段階で、串の先端に残されたいちごはあと1個。「よし、ラストは私のもの――」舞ちゃんが手を伸ばした瞬間、凛さんがものすごい素早さで、横から最後の1個をパクッと掠め取っていった。「あーーーーーーっ!!! 凛、あんた今ずるしただろ!!」「ふふ、ふーんだ。口を動かす前に手を動かさなきゃダメってことだし」「ひどい! 6個あったんだから、3個ずつで分けるのが普通じゃん!」舞ちゃんはキーキーと本気で怒っているけれど、その顔はどこかすごく楽しそうで、次の瞬間には二人で顔を見合わせてゲラゲラと笑い転げていた。(……羨ましいな……。本当に、羨ましい……)本の背表紙を指先が白くなるほど強く握りしめながら、私は溢れそうになる涙を必死に堪えた。凛さんは、私みたいに「嫌われたくない」からって変に気を遣ったり、言いたいことを我慢して溜め込んだりしない。最後のいちごを平気で横取りしちゃうくらい強引で、思ったことをその場でハキハキと言える、舞ちゃんと同じ強さを持っている。そして舞ちゃんも、凛さんに対しては「なんであんたが4個も食べてんのよ!」って、何も気にせず感情を爆発させて、怒って、笑えている。それは、凛ちゃんが「嫌だ」と思ったら、その場で「は? あんたに合わせるわけないでしょ」ってちゃんと言い返してくれる、対等な女の子だって分かっているからだ。私は舞ちゃんに嫌われるのが怖くて、ずっと『物分かりの良い良い子』の仮面を被って、無理をして、勝手に限界になって爆発してしまった。私があの時、舞ちゃんの「おんぶして」っていう冗談を、凛さんみたいに「は? 重いから無理!」って笑って突っぱねることができていたら。うちらの関係は、こんな風に壊れずに済んだのかな。私がどれだけ夜遅くまで本を読んで特訓メニューを作っても、どれだけ荷物を持っても、舞ちゃんにあんな風に「遠慮のない、本当の笑顔」をさせてあげることはできなかった。私じゃ、舞ちゃんの本当の相棒にはなれなかったんだ。「もう、マジで凛のそういう強引なところムカつくわー!」遠くから響く舞ちゃんの楽しそうな笑い声が、私の耳に冷たく突き刺さる。私は逃げるように二人から背を向けると、本屋さんを飛び出して、激しい雨が降る薄暗い駅のホームへと走り出した。新しくお揃いになったペンケースと、いちご飴の甘い余韻を残したまま、どこまでも突き進んでいく二人の新しい放課後。私は冷たい雨の音に自分の足音をかき消されながら、胸の奥の消えないトゲを抱えて、一人きりで孤独な闇の中へと沈んでいくのだった。(つづく)
えーめちゃくちゃ悩んでます。かけるネタがない、、
ちなみに2次創作についても聞かれました。私ドクターXっていうドラマの大ファンでして、、ひろみちこネタは書けるなと思ったのですが一応医療ドラマなので医療知識がなくてかけるのかという不安もあります、、