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第10話
薫のプロポーズから4年の時が経った頃。薫と真琴の間には新しい生命が誕生していた。
「パパ、泣かないで。その玉ねぎ、千代子が剥いてあげるから」
3歳の千代子が、真琴に買ってもらった「100均の子供用エプロン」をキリッと締め、薫の横で台に登った。
「……おお、千代子。そなたのその慈愛に満ちた手つき……。まさに、泥の中に咲く蓮の花のようだ。……真琴! 私たちの娘は、3歳にして『剥く』という行為の真理に辿り着いたようだな!」
薫は、千代子の似顔絵を描きながら、またしても涙をボロボロ流している。
「薫さん、大げさですよ。千代子、スーパーのチラシチェック終わった?」
真琴が笑いながら聞くと、千代子はブレスレッドをジャラリと鳴らした。
「ママ、今日は『もやし』がとっても安いの!あと、二葉おばちゃんから言付かった『ダイソーの密閉容器』の新型、千代子があるか確認しとくね」
「……合理的。さすが私の姪だわ」
冬の町から現れた二葉が、葵と仲良く「100均の湯たんぽ」を持ちながら、満足げに頷く。
薫は、千代子を見つめ、静かに決意した。
「……千代子。そなたの未来のために、パパはこれからも、1円の無駄も許さぬ『風雅な節約』を極めよう。……さあ、明兄様たちを呼ぼう! 今夜は千代子が剥いた玉ねぎで、最高に安上がりで豪華なカレーだ!」
朱雀院家に舞い降りた3歳の天使は、誰よりも早く特売情報の「真理」を理解し、2026年の邸宅に新たな風を吹き込んでいた。四つの町に灯る百円の光、それぞれの指に輝く形見の石、そして千代子が握りしめた特売のチラシ。3000億円の邸宅に響く笑い声は、かつての王朝の雅さえも超えていく、朱雀院家だけの『不滅で最高な』日常の音だった。
ある教師とある生徒は完結まで12日間かかったのにこれ1日で終わった…