編集者:初流
個人的に書きたかった初のシリーズ物です!
7月20日連載(?)
10月3日完結
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目次
花火の形1
「君と出会って三日目。そして、君と過ごす最後の日。
君はいつも通り不機嫌そうな目をしていたけれど、本当は怒っているわけじゃないことくらい、この三日間でよく分かっていた。
――僕は結局、君に一番伝えたいことを伝えられないままだった。
ドン、と腹に響く音とともに、夜空へ今年最後の花火が上がる。
僕は君と過ごした短くも濃密な時間を思い出しながら、消えていく大輪の光を見つめていた……。
◇
「早く起きなさーい!」
母さんの大声で目が覚めた。窓の外では蝉がやかましく鳴いている。
僕は眠い目を擦りながら、「はいはい、起きてますよー」と大きな声で返事をした。
階下に降り、「おはよー」と母さんに声をかけて朝ごはんをつつき始める。
今日は八月二十七日。今日から母さんの友達の子がうちに泊まりに来るらしい。理由は三十日のお祭りに行きたいから、とのことだった。
親は勝手に僕が案内役をやると決めているらしく、夏休みの終盤だというのに予定を潰される羽目になった。友達と祭りに行く約束もダメになりそうで、正直、最悪な気分だ。
その子が来るのは今日の昼から。それまでは自由時間なので、昼まで友達と遊ぶ約束をしている。
僕は急いで準備を終わらせると、「行ってきまーす!」と言い残して家を飛び出した。
シリーズを描きたかったので書いてみました!
予定では6まで続く予定です!
1番を描きここからどうしようかななどと妄想を膨らませております笑!
花火の形2
「パス!」
大きな声を出しながら、いつもの仲間で集まってサッカーをしている。
これだけ動き回っていれば、暑くて仕方がない。
周りの木々からは蝉の鳴き声がうるさく響き、その声がさらに暑さを感じさせる。
現在時刻、11時35分。
「やっべ!すまん、今日はもう帰らないとだわ。すまん!」
時計を見て焦り、自転車に全身の力を込めて、風を切りながら家へと向かう。
家に着くと同時に、彼女が到着した。
初めて見るその姿。長くなびく髪に、白いワンピース。第一印象は「夏だな」だった。
自転車小屋から出て彼女に近づき、肩を叩いて声をかける。
「あのー、志喜(しき)さんで合ってます?」
いきなり声をかけられてびっくりした君は、驚いた顔のままコクコクと頷いてみせた。
完全な個人の感想だが、とても可愛いと思った。
これが、君との初めての出会いだった。
すいません!前回言ってたより長くなりそうです!終わるまで読んでもらえたら嬉しいです!一応8月までには終わらせられるように頑張ります!
花火の形3
夕方、君はまた家に戻ってきた。 家に着いた後すぐ、君は「周りを散歩してきます」と言い残し、飛び出していった。ざっと4時間くらい散歩をしていたのだろう。
その間、僕は自分の部屋に篭ってゲームをしていた。
君が家に戻ってきたのとほぼ同じタイミングで、母さんが帰ってきた。 母さんは君を見た途端、走り寄って「大きくなったね! この間までこんな小さかったのに」とおばさんみたいなことを言い出した。僕はもう呆れるしかない。
「母さん、そんなことより早く晩飯にしよーぜ」 「あ、そうだったね。晩飯にしようか」
しばらくして晩飯ができ、机に全員が揃う。 「「いただきます」」
久々に三人で机を囲む。お父さんは仕事が忙しく泊まり込みが多いから、三人で飯を食べることはあまりない。
「どうよ、志喜ちゃんと仲良くなった?」 母さんが聞いてくる。 「まだ、ほぼ話してすらない」 僕が答えると、母さんは「せっかく女の子が来たんだから、仲良くなりなさいよー」と言った。
……気のせいか、君が顔を俯かせている気がした。
ご飯を食べ終わったので、母さんに「風呂行ってくるわ」と言い残し、風呂場へと颯爽に向かった。
花火の形4
風呂から上がり、リビングの横を通り過ぎて自分の部屋に向かおうとすると、母さんと君が話す声が聞こえてきた。
「うちの晴斗(はると)、全く志喜ちゃんのこと覚えてないのね」
「ほんとひどいです! 私のこと『あんなに好きだよ』って言ってたのに……昔会った時のこと覚えてるの、私だけなんですか!?」
その会話を聞き、僕は思わず足をとめた。
(え、昔、志喜と会ったことあったのか……?)
早足で自分の部屋に戻り、必死に思い出そうとするが、なかなか思い出せない。
「いつ会ったんだっけ……全然思い出せない」
窓から星空を眺めながら考える。
窓を開けていると、心地よい風が吹き込み、近くの川のせせらぎが聞こえてきた。夏の夜風を感じながら布団に潜り込む。
「あ……そういえば、今日ずっと不機嫌そうな顔だったのは、これが理由なのかな」
明日の朝、君のことを思い出せていたらいいな。
そう思いながら、川のせせらぎに耳を澄ませ、僕は深い眠りについた。
◇
『ねーねー、私のこと、およめさんにしてくれる?』
懐かしい声が聞こえる。
『もちろんだよ! だって、せかいでいちばんかわいいんだもん!』
姿も顔もよくわからない相手なのに、なぜか自分は即答している。
ここはどこだ? 川の近く……?
よくわからないけれど、僕は間違いなくこの景色を知っている。
『つぎ、いつあえるかな?』
この質問も知っている。
『つぎは、ぼくがあいにいくよ!』
答えが口からすらすらと出ていく。
『ありがと!』
誰かが笑って答える。
『――けど、私がこっちにきちゃった』
いきなり声が変わり、景色が歪む。
時が過ぎ、何もかもが消えていく……。
今日は独り言みたいな感じでーす
ちょっと前に描いてた作品なんですけどそれにファンレターが届いててほんとに嬉しすぎて書く手が止まらない!
やっと一日目の話が終わりました!
次志喜視点の話をちょっとしたいと思っておりますすいません!
花火の形5
朝日が昇る前に目が覚めた。
まだ外は暗く、虫の鳴き声もあまり聞こえない。
昨日の夢を、まだ鮮明に覚えている。
「何か思い出せそうなんだけどな……」
そんなことを呟きながら、ガラケーを開く。
こんな朝早くなのに、友達からメールが来ていた。
【件名】おいおい
【差出人】かず
【本文】
おいおい、お前の家に女子が入ってったってマジかよ。お前、彼女なんかいたのかよw
「……は?」
思わず声が漏れた。一体何がどうなったらそうなるんだ。
とりあえず、友人のバカな誤解を解くために急いで返信する。
【件名】バカかよお前は
【差出人】晴斗
【本文】
俺に彼女ができるわけないだろ。バカかよお前は。
とりあえず、これで誤解は解けるはず……たぶん。
そんなやり取りをしているうちに、外では朝日がすっかり昇りきっていた。
僕は朝ごはんを食べるため、一階へと降りていった。
宿題が終わらなーーい!
花火の形6
階段を降り、食卓の席につく。
昨日の夢を思い出しながらご飯を食べていると、どうしても君のことを意識してしまう。
朝ごはんを食べ終え、僕はまた自分の部屋へと籠もった。
夏は憂鬱だ。朝から暑くて体に熱を籠もらせるだけでは満足せず、勉強する気すらも奪っていく。
「着替えて外に出かけようかな」
とはいえ、このあたりにあるのは田んぼと民家と、無駄に綺麗な自然だけだ。
「クソ……こういう時、都会だったら歩くだけでお店に着くんだろうな」
そんな独り言をブツブツ言いながら電車の時間を確認するが、ダメだ。あと一時間は待たないと来ない。
「とりあえず、リビングで考えるか」
そう思って部屋を出かかったが、ハッと立ち止まる。
(そうだ……まだリビングには、めんどうなおふくろがいるじゃん)
それを思い出し、僕は別の畳の部屋(客間)へと向かった。
障子をバッと開ける。
――すると、服を脱ぎかけの君と目が合った。
「「…………」」
パタン。
僕は静かに障子を閉めた。
(何も見なかった。俺は何も見なかった……いいな、自分に言い聞かせろ……!)
すると、障子の向こうから焦ったような声が聞こえてきた。
「ちょ、ちょちょちょっと! 着替え終わったら話したいことがあるんだけど……っ!」
(うん、これは絶対に殺される)
僕は冷や汗をダラダラ流しながら、障子の向こうから許可が出るのを、ただじっと待っていた。
ごめんなさーい!!全然進みませんでしたー!!
9月までかかりそうになってて焦ってます…
花火の形7
しばらくすると、障子の向こうから君の声がかかる。
「もう、いいよ……」
慎重に足を踏み入れる。いつもより畳が固くなったように感じた。
君と目を合わせないようにしながら、身体を部屋へと滑り込ませる。もう後戻りはできない。
絶対に殺されると思っていた僕だったが、最初に君が口にした言葉は、あまりにも意外なものだった。
「私は……全然いいの。あの……一つだけ、お願いしてもいい……?」
殺されると覚悟していた僕は安心すると同時に、頭の上にハテナを浮かべた。
あまり深く考えずに答える。
「いいよ。お願いって?」
すると、君の顔にパッと笑顔が灯った。
「あのね! 一緒にここの町を回らない? 明日お祭りがある場所にも行ってみたいし、町も探検してみたいの……ダメかな……?」
ダメだ、上目遣いを使いこなしてやがる。正直、めちゃくちゃ可愛かった。
「全然大丈夫だよ。それくらいならおやすい御用だよ」
僕の答えに、君の顔がパッと明るくなる。
「じゃあさ! さっそく出かけようよ!」
「え……っ」
言うやいなや君に腕を引っ張られ、そのまま気づいた時には、家の近くにある小さな川の前に二人で立っていた。
なのに、隣に立つ君の顔は、なぜかまた不機嫌そうに見える。
(なんでだよ……俺、またなんかしちゃったっけ……?)
これ以上機嫌が悪くならないよう、恐る恐る声をかけてみる。
「……なんで、最初にここに来たの?」
君はこっちを見ようとせず、川のせせらぎをじっと眺めながら答えた。
「お家の近くに流れてて……気になったんだ……」
なぜか、君は頑なにこちらを向いてくれない。
「おすすめな場所ってある? そこに行かない?」
そう言って君が振り向いたその瞬間――。
脳裏に、昨日の夢の光景が重なって見えた。
だけど、それがなぜ重なって見えたのかまでは、やっぱり思い出すことができなかった。
ごめんなさーーい9月になっちゃったー
学校が始まるので頑張って完結させれるように勉強の合間にがんばりますーーー
花火の形8
僕は君を、僕の大好きな山の頂上へと案内した。
この山の上からは、この町をすべて見渡せる。地元の人でもあまり来ない、僕だけの特別な場所だ。
「……すっごく、綺麗だなぁ」
君がポツリと呟く。僕は意を決して、ずっと気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「あの……もしかして僕たち、昔会ったことある……?」
君は驚いたようにパッとこちらを見た。そして、すぐに寂しそうな、悲しそうな顔をして呟いた。
「やっぱり……もう覚えてないんだ?」
「うん……ごめん、思い出せなくて」
「……ううん。なら、教えてあげる」
君は遠くの街並みを見つめながら、静かに話し始めた。
「八年前の夏のこと。晴斗くんのお母さんから、私のお母さんに連絡が来たらしいの。『子供たちも大きくなったし、久しぶりに遊ばせない?』って。それで私、ここに遊びに来たんだよ。晴斗くんに会った時、私は――……」
そこで急に言葉を詰まらせ、君は首を振った。
「……ううん、なんでもない。とにかく八年前、私たちはここで会ってるの」
君が話し終えたちょうどその時、遠くからメロディが聞こえてきた。お昼を知らせる音楽だ。
重くなりかけた空気を払うように、君がパッと目を輝かせる。
僕は君に尋ねる。
「良かったら、今からお昼ご飯食べに行かない?」
「うん! いこ!」
(相変わらず可愛いな……)
そんなことを心の中で呟きながら、僕は君を連れて、いつもの食堂へと足を運んだ。
ちょっとしばらく投稿が遅くなりそうですすいません!
花火の形9
山を下り、お店の前までやってくると、見覚えのある背中が見えた。
「げ……」
僕が思わず声を漏らすと、志喜が顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
「いや……なんでもない」
カズだ。間違いない。今日の朝『彼女できたのかよ』とかメールしてきた、あのカズだ。
クソッ、なんでこんなタイミングでいるんだよ……!
バレないようにお店に入ろうとした瞬間――。
「お! 晴斗やん、おひさー!」
こいつに気づかれてしまった。
「よ、よお……」
「お!! その隣の子めちゃ可愛いやん! どしたん、彼女!? 彼女なん!? ヒューヒューお熱いね二人とも!」
「……ちょっと、黙ってくれるかな?」
僕はここ最近で一番の笑顔(圧力)で言った。
「ひ、ひゃい……っ!」
僕は特に何もしていない。(本当だからね!?)
「ま、まあまたサッカーしような! じゃあな!」
カズはそう叫びながら走り去っていった。ハプニングはあったが、気を取り直してお店に入る。
ドアについている鈴がチリンと鳴り、店内の涼しい空気が僕たちを優しく迎えてくれた。
「いらっしゃい! あ、晴斗くんじゃん!」
声をかけてきたのは、同じクラスの裕奈だ。まあ、同じクラスと言っても1クラスしかないんだけど。
裕奈は志喜を見て目を見開いた。
「え! もしかして隣の子、彼女!?」
「なわけないだろ。俺に彼女ができるとでも思ってんのかよ」
「あー……たしかにねー」
妙に納得したような顔で頷く裕奈。おいこいつ、許さねぇ。
「まあ、好きなところ座って!」
色々あったが、無事にテーブル席に着く。
僕は志喜に向き直り、「何にする?」と尋ねた。だが、志喜はなぜか全然こっちを見てくれない。
(あれ……もしかして何かやらかしたか……?)
僕が一人で焦っていると、志喜がポツリと言った。
「な、なんでもない……っ」
よかった、特に怒っているわけではなさそうだ。
「ここさ、バカでかいハンバーガーがあって、それがめちゃくちゃおすすめなんだよね」
しばらくの沈黙の後、志喜は意を決したように言った。
「……うん。じゃあ、それにしようかな」
注文を済ませ、ハンバーガーを待つ。
店の大きな窓からは、青い海岸が見えていた。志喜が海を見つめながら僕に尋ねる。
「ここの海って、夏なのに人が少ないね。理由知ってる?」
「ここは明日のお祭りのメイン会場だから、昨日から海に入れないんだよ」
「へー、そっか。ありがと」
波の音が静かに聞こえてくる。夏の日差しが窓から差し込み、その隣にはこんなに可愛い子が座っている。
こんな青い思い出、一生に一度できるかどうかだ。
そんなことを思っていると、志喜が裕奈に呼ばれて、何か女子同士で内緒話をしているみたいだった。
話が終わると同時に、大きなハンバーガーが運ばれてくる。
「食べるか」
「うん、そうだね」
「「いただきます」」
やっぱり大きくて、最高に美味しいハンバーガーだ。
僕があっという間に食べ終わり、志喜の方を見ると――口元を気にしながら、一生懸命頑張ってハンバーガーに食らいついていた。その姿が、たまらなく可愛かった。
志喜も食べ終わり、僕たちは店を出る。
「さっき、あいつと何喋ってたの?」
「ん……まあ、ちょっと女子同士で話してただけだよ」
そんな他愛のない話をしながら、帰り道を歩く。
歩きながら、僕はふと思い出した。
(あれ……? お祭りの会場まで連れて行くって約束してた気がするんだけど……まあいいか。今のこの時間を楽しまないと)
志喜があと一日しかここにいられないことを、僕はすっかり忘れていた。
ずっと、ずっと君といられる――少なくともこの瞬間は、本気でそう思っていたんだ。
めっちゃ長くなっちゃったけど許してちょ!
花火の形10
家に帰り着く頃には、すっかり太陽が沈んでいた。
家の庭に敷き詰められた砂利を踏むと、ジャリジャリと心地いい音が鳴る。
日が暮れて虫の鳴き声が響き始めていて、「もうこんな時期か」なんてしみじみと思いながら玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
「あー! おかえりー!」
「おう、おかえり」
母さんの声に重なって聞こえたのは、久しぶりに聞く低い声――父さんだ。
「あれ、父さん帰ってたんだ。おかえり!」
すると父さんは、僕の隣に立つ志喜に視線をやり、ニヤニヤしながら言った。
「おや、晴斗。彼女なんてできたのか?」
一瞬、その場の時が止まった。
「いやいやいや! そんなわけないだろ! 母さんに聞いてくれよ、てか絶対知ってて言ってるだろ!」
「ふふっ、バレたか。もちろん知ってるとも。お久しぶりだね、志喜ちゃん」
志喜の方を見ると、先ほどまでの二人きりの時とは打って変わって、たどたどしい様子で何度もペコペコとおじぎをしていた。さっきまではしゃいでいたから、なんだかこういう緊張した志喜を見るのは久しぶりな気がする。
「さあさあ、夕飯もできてるぞ。母さんに感謝して、冷める前に食べようか」
「そうだね、冷めないうちに召し上がれ」
「「いただきます」」
久しぶりに家族全員が揃った食卓。そこに志喜も加わって、初めて四人でご飯を食べた。
みんなで賑やかに囲むこの暖かくて楽しい時間が、ずっと続けばいいのに――。
そんなことをぼんやりと考えながらご飯を平らげ、僕はいつも通り一番乗りでお風呂へと向かった。
「ふぅぅぅぅ……」
湯船に深々と肩まで浸かる。今日一日、暑い中を歩き回ったから足がパンパンだ。
窓の外から聞こえる虫の声に耳を澄ませながら、そっと目を瞑る。
(……本当に、いろんなことがあったな。明日の祭りが終わったら、この夏休みも終わりか。こんなに楽しい夏休み、いつぶりだろう)
深く考え出すと長くなりそうだったので、のぼせる前に風呂から上がることにした。
(明日は、志喜を最大限楽しませてあげないとだからね! キラーン!)
頭の中でアイドルのキメポーズを作る痛い自分を想像しながら脱衣所の扉を開けると――なんと、志喜が扉の前で待っていた。
脱衣所のドアが開く音に跳ね上がるようにして、志喜がこちらを振り返る。
「あ、あの……ちょっと、いい……?」
「ん? 全然大丈夫だけど、どうしたの?」
志喜は顔をほんのり赤く染め、視線を落としながらポツリと言った。
「あのね……メール、交換しない……?」
「お、いいね! 交換しよう。またいつでも連絡取れるようにさ」
ガラケーを引っ張り出し、赤外線通信でお互いのアドレスを交換する。
無事に交換を終えて自分の部屋へと戻った、まさにその瞬間――。
ポケットの中のガラケーが、ブブッと短い振動を立てた。
花火の形11
ポケットの中で震えるガラケーを取り出し、パキッと音を立てて画面を開く。
画面に表示されたのはカズからのメールだった。
『明日、祭り行こうぜ!』
たったそれだけの短文。僕はすぐに親指を動かし、返信を入力する。
『ごめん、明日は無理だわ。すまん!』
送信ボタンを押し、ふと窓の外へ視線を向けた。
遠くに見える海岸の方が、うっすらとオレンジ色に光っている。数少ない僕たち子どものために、大人たちが夜遅くまで祭りの準備をしてくれているのだ。
「明日の祭りが終わったら、もう学校が始まるのか……」
ポツリと独り言をつぶやく。
何か大切なことを忘れているような、胸の奥が少しざわつくような感覚。だけど僕はそれ以上深く考えるのをやめて、早めに新学期の学校の準備を終わらせると、そのまま布団にくるまった。
さあ、もう寝よう――そう思い目を閉じた瞬間、机の上に置いたガラケーがブブッと短く震えた。
(どうせまた、カズのやつだろ……)
僕は確認するのも面倒になり、そのまま深い眠りについた。
花火の形11.5
朝早くから目が覚めた。
まっ先に頭に浮かぶのは、君のこと。
「今日こそ……絶対に好きって言わせるんだから」
ぎゅっと握りしめた手に、そっと力を込める。
晴斗くんのお母さんに綺麗な浴衣を着せてもらって、
今までで一番可愛い自分を用意して――
僕は、私の王子様を待つ。
12ももうすぐ出せるから待ってて読者のみんな!
シルバーウィークみんな楽しんでるー?
花火の形12
朝、目を覚ます。昨日の夜、いろいろと考え事をしていて寝付くのに時間がかかったせいか、すっかり朝遅くなってしまった。
「やっべ……もう9時になるじゃん!」
ガバッと布団から跳ね起きる。ここ二日間ですっかり習慣になった私服への着替えを爆速で済ませ、バタバタと階段を駆け下りた。
――すると、リビングの前に、今まで見たこともないほど華やかに彩られた志喜が立っていた。
薄い花柄の上品な浴衣に身を包んだ志喜は、僕の視線に気づくとパッと顔を背け、恥ずかしそうにポツリと呟く。
「あ、あんまり見ないでよ……っ。お祭りの楽しみなんだから、今から見られたらもったいないでしょ……」
朝から少女漫画のヒロインみたいなセリフを聞かされ、一気に目が覚めた。
テーブルを挟んで向かいの席に座る。……いや、流石に可愛すぎだろ。心臓に悪い。
用意されていた朝ご飯をつつきながら、ふと思い出して母さんに尋ねる。
「あ、そういえば母さん、父さんは?」
「もう現場に行っちゃったわよ。あの人、朝の4時には家を出てたから」
いつも「いってらっしゃい」も言えないくらい早くに出ていくから、昨日の夜に話したのが大体最後になる。まあ、いつものことだから寂しくはないんだけど。
ご飯を食べ終えると、志喜が僕に視線を向けた。
「ねえ、今日ってお祭り何時に家出る……?」
「んー、11時ごろかな。早く行きすぎても屋台も何も始まってないし」
「そっか、わかった。ありがと」
志喜の返事を見届けてからリビングを後にし、僕は父さんの書斎に向かった。自分の部屋で読む本を何冊か借りていこうと思ったのだ。
書斎の机に近づくと、ふと一枚の書き置きが目に留まった。
『君の残り香
君の足音
いつかの
まだ新しい
夏の日』
父さんは時々、こういう良く分からないポエムみたいなものを残す。すべてに何かしらの意味はあるらしいんだけど、僕にはサッパリ分からない。まあ、今度帰ってきた時にでも解説してもらうか。
適当に本を選んで部屋に戻り、少し時間を潰す。
時計の針を見ると、あっという間に11時になろうとしていた。
「やっべ、準備して行かないと!」
急いで準備を整え、玄関へと向かう。
玄関で待っていた志喜は、僕の姿を見るなり目を丸くして驚いた。
「え……っ、晴斗くん、浴衣……!?」
ふっ、見事サプライズ成功だ。
志喜が浴衣を着ることは分かっていた。だからこそ、せっかくの夏祭りを二人で思いっきり楽しむために、僕も押入れから引っ張り出しておいたのだ。
志喜の華やかな花柄の浴衣とは違って、僕のは模様すらないシンプルな紺色の浴衣だけど――二人で並んで玄関の鏡に映ると、なんだかすごくしっくり来て見えた。
「さあ、行こうか!」
「……うんっ」
志喜は顔を真っ赤にして俯きながら、僕の隣で一歩を踏み出した。
とうとう最終日!あとちょっとで終わるので最後までお付き合いください!
ちなみに私はカズと裕奈をくっつけたいです!
花火の形13
この町で一番大きな港へ向かって、志喜と二人で歩いていく。
港までの道中も華やかに飾られていて、いつもの静かな田舎町とは一味も二味も違う。このお祭りは、山を一つ挟んだ隣町からも大勢の人がやってくるくらい、この地域ではデカいイベントなのだ。
なんてことのない他愛のない話をしながら進んでいくと、人混みの中に見たことのある二人の姿があった。
すると片方がこちらに気づき、ニヤニヤしながら走って近寄ってくる。
「よっ! 今から夏祭りデートかー! いいねぇ、楽しめよー!」
こいつ、また煽りやがって。
急接近してきたのはカズだ。まあ、こいつになら煽られても嫌な気がしないのが不思議なところではある。
もう一人は裕奈だった。
「二人とも、めっちゃお似合いじゃん(笑)。もう付き合っちゃいなよー!」
僕はあえて聞こえないフリをして、そのまま歩き出そうとする。
すると、隣の志喜が僕の袖をちょんと引っ張った。
「晴斗くん、無視したら酷いよ。ちゃんと話聞いてあげなよ」
(くっ……志喜に言われたら、無視なんてできるわけないだろ……!)
言われるがまま立ち話に付き合ったが、話の内容なんてほぼ僕をいじることばかりだ。
その後はなんとなく4人並んで祭り会場まで歩くことになった。女子二人は後ろで何かコソコソと楽しそうに話していて、カズはずっと僕の隣で「彼女! 彼女!」とうるさい。
だけど、こうやって4人で歩く時間はすごく楽しくて――そんな賑やかな時間は、あっという間に過ぎ去っていった。
会場付近に着くと、カズがニッと笑って手を挙げた。
「じゃっ! 俺は別行動するから、二人でデート楽しめよー!」
言い終わるか終わらないかのうちに、カズは人混みの中へと走り去っていった。
「私も二人の邪魔したら悪いし、別のところ見て回るね。じゃあね、しきぴー!」
「うん、また後でね、裕奈ちゃん!」
いつからそんなにあだ名で呼ぶほど仲良くなってたんだ。
裕奈もひらひらと手を振りながら、人混みの中へと消えていった。
周りの喧騒とは裏腹に、急に僕たちの間に「……」と静かな時間が流れる。
「あー……何か見たいところ、ある……?」
無言の空気が気まずすぎて、思わず声を絞り出す。
すると志喜は、パッと目を輝かせて露店の方を指差した。
「あの射的も気になるし、美味しそうな匂いもすっごく気になる! 一緒に回ろ!」
嬉しそうに僕の手引っ張る志喜。
ここから怒涛のように志喜に振り回されることになるなんて、この時の僕は知る由もなかった――。
ふふえらいだろほめろ2日に渡って連続で更新してる私偉すぎ
花火の形14
射的屋の列に並んでいると、周りの子どもたちの楽しそうな声や、コルク弾が的に当たる乾いた音が聞こえてくる。志喜を見ると、子どものように目を輝かせて楽しそうな笑顔を浮かべていた。
前の客がお菓子を腕いっぱいに抱えて列を離れる。
「よし、やっと僕たちの番だね。何狙う?」
「んー……あの、大きいぬいぐるみが欲しいな!」
志喜が指さしたのは、一番上の棚に飾られた、あきらかに重そうで取れそうにない大きなぬいぐるみだった。
「ああいうのは大体、台座に固定されてて取れないようになってるんだよ。……まあ、でも安心しろよ。この僕がいるからね。『田舎のゴルゴ』と呼ばれた僕の腕前を見せてやるぜ」
ちょっと格好をつけて弾を込め、銃を構える。
――が、現実は甘くなかった。
パン、パンと弾を弾かれ、気づけば最後の1発まで追い込まれていた。
(くっそ……ここでバシッと落としてカッコいいところ見せたかったのに……!)
ラスト一発を装填する。
一度深呼吸をして、しっかりと的を見つめた。……いや、僕はもう真っ直ぐぬいぐるみは狙わない。
カチャ、と引き金を引く。
勢いよく飛び出したコルク弾は、狙い通りぬいぐるみのすぐ隣にあったプラスチックの瓶を撃ち抜いた。
(ふっ、想定通り……!)
弾かれた瓶が狙い過ちなく大きなぬいぐるみにぶつかり、その勢いでぬいぐるみがバランスを崩してドサッと下に落ちた。
「おおーっ!!!」
周りの客や子どもたちから一斉に歓声が上がる。
店主のおじさんが「参ったな」というように手を叩きながら、ぬいぐるみ拾い上げて差し出してくれた。
「いやぁお見事! 一番難しいやつをよく落としたなぁ小僧! ほら持ってきな、彼女さんを大切にするんだぞー?」
店主は僕たちを完全にカップルだと思っているらしい。まあ、そんな誤解はどうでもいい。
ぬいぐるみを受け取り、そのまま志喜に差し出した。
「はいどうぞ。僕は射的が得意だからさ、欲しいものはちゃんと取れるんだよ。僕はいらないから貰って」
「あ、ありがと……っ」
志喜は顔を真っ赤にしてぬいぐるみを受け取ると、そのまま顔を隠すようにぎゅっと抱きかかえた。可愛すぎるだろ。
「さあ、次はどこ行く? お腹減ったし何か食べようか」
「あ、あの綿あめとか食べたい……っ!」
いつもより一段と大きな声で答える志喜。
(※後で「顔が赤いのを誤魔化そうとして恥ずかしくて声が大きくなっちゃったの!」と教えられた時は、思わず笑ってしまった)
2人で綿あめをかじりながら食べ歩きをしていると、ポツポツと頬に冷たいものが当たった。
「あ……雨……?」
急いで周りを見渡すと、広場の中央に大きな集会用のテントが張られているのが見えた。
「志喜、あっち走ろう!」
急な夕立に追われるように、2人で走ってテントの下へ滑り込む。
同じように雨宿りをしようと大勢の人が押し寄せてきたため、狭いテントの中はすし詰め状態になり、自然と人と人との距離が近くなる。
バチバチとテントの屋根を叩く雨音が、やけに大きく耳に響いた。
その時、不意に誰かの手が僕の腕に触れた。
「あ、すみません――」
謝りながら顔を上げると、そこにいたのは志喜だった。
至近距離で目と目が合い、狭いところで慌てるお互いの顔がおかしくて、思わず2人でクスクスと笑い合ってしまう。
――だが、その次の瞬間だった。
後ろから走って逃げ込んできた人に強く背中を押され、僕は志喜のほうへガクンと倒れ込んでしまった。
(やべっ……!)
咄嗟に志喜の肩を抱きかかえるような形で密着してしまう。
慌てて体を離し、「ごめん!」と謝ろうと志喜の顔を見ると――志喜の顔は耳までみるみるうちに真っ赤に染まっていった。
「ゆ……許さないからね……っ」
打ち付ける雨音に消されそうなほど小さな声で、志喜は消え入りそうに呟いた。
花火の形15
しばらくすると、激しかった雨もだんだんと収まってきた。
テントを抜けると、雨上がりのしっとりとした冷たい風が頬を撫でる。ふと見上げた夜空は、雨で洗われたせいか、朝よりも澄んでいて綺麗に見えた。
「……もうすぐだね」
隣を歩く志喜が、ぽつりと小さく呟く。どこか寂しそうな声だった。
「……だね。もう少しだね」
僕はそう返しながら、自分でもよく分からなくなっていた。
『もうすぐ』という言葉が、これから始まる花火大会のことなのか。それとも――志喜と過ごせる残り時間のことなのか。
会場へと向かう道には、さっきまで雨宿りをしていた人たちが一斉に歩き出し、混雑を極めていた。人の波に流されそうになりながら歩いていると、不意に志喜が僕の服の袖をちょんちょんと引っ張った。
振り返ると、志喜は少し俯きながら、そっと僕に向かって手を差し出していた。
「……迷子になったら、嫌だからさ。手、繋がない?」
まさか志喜の口からそんな提案が出てくるなんて思ってもいなくて、心臓が跳ね上がった。
驚きで固まる僕だったけれど、ここまできて断るなんて選択肢はない。
「……っ、しょうがないな。ほら、僕の手をしっかり握っててよ。迷子になられたら面倒くさいからさ」
動揺を悟られないように、いつもより少しだけ格好をつけて見せながら、自分から手を差し出す。
握り返してきた志喜の手は、雨上がりの風のせいか少し冷たくて、だけど泣きたくなるくらい優しかった。
もうちょっとで終わっちゃうー!!
志喜ちゃん可愛すぎて滅
花火の形16
あたりがすっかり暗くなり、会場の熱気と喧騒が一段と増していく。
『――間もなく、打ち上げを開始いたします』
会場のアナウンスが響き渡るが、スピーカーの限界を超えた大音量は到底聴き取れないほど音割れしていた。 そのアナウンスが終わると同時に、ヒュードロロロ……と空高くへ向けて一筋の光が昇り、夜空いっぱいに大きな光の大輪が咲いた。
ドンッ――!
遅れて、お腹の底まで直接響いてくるような重低音が鳴り響く。 次々と打ち上がる色鮮やかな花火の群れ。周りの観客から「おおーっ!」と歓声が上がる中、僕は見上げる志喜の横顔をじっと眺めていた。
志喜はどこか、不機嫌そうな顔をしていた。 ――だけど、この3日間で僕はもう分かっていた。あとほんの少しの勇気があれば、僕は志喜を笑顔にできるのだろうか。
「……ねぇ」
いきなりだった。 握っていた手にぎゅっと強い力がこもり、志喜がポツリと言い始める。
「ほんと、この3日間楽しかったね。……また来年も、一緒にこの花火を見れるかな。ねえ晴斗、この花火の形、覚えておいてね。またここに来た時は、おんなじ形の花火がみ――」
途中で言葉が切れた。 志喜の大きな瞳から、ぽろぽろと大きな涙が溢れ出していた。
――もう、迷っている暇なんてなかった。
僕は志喜の手を強く握り返し、その涙で濡れた顔を真っ直ぐに見つめた。
「……僕も、君といる時が一番楽しかったんだ! またこうやって手を繋いで帰りたい。今日こんなことがあったんだって、明日も明後日も君に話したい。……こんな僕でよかったら、付き合ってください!」
言い切ったと同時に、夜空の真ん中で一際大きな、眩い黄金色の花火がドカンと打ち上がった。まるで大輪のひまわりが咲いたかのように、僕たちの視界を鮮やかに染め上げる。
「……うんっ! うん……っ! これからもよろしくね……!」
涙を溢れさせながら、志喜は破顔した。 そしてそのまま僕の胸へと飛び込むように、力いっぱい抱きついてきた。
ついに告白しちゃった!
ほんと後ちょっとなんで!もうちょっとだけお付き合いください!
花火の形17(終)
空には二人を祝福するような花火がたくさん上がっている二人で手を繋ぎ花火を見るふと周りを見るみんないろんな表情をしている嬉しそうだったり悲しそうだったり疲れていたりみんな色々な表情をしていた奥の方に見えた二人組や近所のおじさんなんかの表情もみんな違ったここに幸せなのはきっと僕たちだけだろうそんなお父さんみたいなことを考えていた花火が上がり始めてしばらく経った最後の大きな花火が打ち上がる目の前いっぱいに広がる綺麗な花火その後すぐに消えるドラマティックだったこの夏のように今からは平凡な日々に戻るんだ花火が終わり人がだんだんといつもの日々に戻っていく「またこの花火一緒に見よ」「うん!絶対ね」まだ空を見上げながら喋る「もうそろそろ家に帰ろうか」君の手を引っ張り最後の帰路に着く家に着くと志喜の母が来ていた「しーちゃん早く乗りなさーい帰るの遅くなるよー」志喜の母が言っている「ちょっとだけ待ってー」と返している「晴人くんまた会おうね次はさそっちが私のお家きてよね約束してたんだからさ….大好き…」
君はそう呟き車に乗り込んで暗闇の中に消えていった僕のほっぺたには暖かい君の体温が残っていた」
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「よーし原稿間に合ったー」「あ!お疲れ様〜」
僕と志喜は10年後結婚したそれで僕は小説家になり君との思い出を本にしてこれから出す「明日のカズくんと裕奈ちゃんの結婚式ちゃんと行けそうだね!」「そのため頑張ったんだからさ」あの頃のみんなは大人になっていたあ、みんな僕のこと長々と語るとみんなに迷惑かな?笑もうおしまいにしとこうかなあ、そうだ最後ちょっとだけ話していいかな?みんなは大切な人っているかなもしいるならずっと大切にしとこうそれだけまたみんなと会えるその時までさようなら
おしまいおしまい
ああああああ!10月になっちゃったー!!
ごめんなざーいけどここまで付き合ってくれて本当にありがとうございました!最後ちょっと駆け足っぽくなっちゃったのほんと完成して読んでて思いましたすいません!
では次の作品で会いましょうそれでは!