公開中
9
修学旅行当日。
僕はクラスメイト達と共に飛行機に乗り込み、自分の座席に座った。
僕の席は|夕月華菜《ゆうづきはな》の隣で、後ろには|英美《えみ》と|南奈桜《みなみなお》がいる。
僕が修学旅行のしおりを開いて行程を確認していると、夕月華菜が話しかけてきた。
「ほんとに楽しみなんだけど! 今日は横浜だよね? 中華街楽しみ~!」
夕月華菜は、本当に心の底から楽しみにしているみたいで、いつもの数倍テンションが高い。
「だね~」
僕は夕月華菜が話しかけてくるのを軽くあしらいながら、飛行機が離陸するのを待った。
飛行機が空港を出てから約2時間。ついに羽田空港に到着した。
僕は飛行機には初めて乗ったのだが、案外快適に乗り続けることができた。
羽田空港からは、約30分かけて貸し切りバスで横浜中華街へと移動した。
「じゃあ、今から12時まで班で自由行動でーす。解散!」
「はーい!」
木元先生の声掛けの後、クラスメイトたちがそれぞれ班ごとに移動を始めた。
僕は夕月華菜に連れられて、班長の南奈桜に合流した。
「どこいく? なんか食べたいものとかある?」
「はい! 肉まんが食べたいです!」
「私、エビチリが食べたい!」
南奈桜の問いかけに、僕以外の2人が勢い良く手を挙げて答えた。
南奈桜は「わかった」と言って頷き、スマホでお店を調べ始めた。
僕が静かに3人の様子を眺めていると、南奈桜のスマホの画面を見つめていた夕月華菜が、ふいに顔を上げて僕の方を見た。
「|結《ゆう》さんは? 何か食べたいものとかないの?」
夕月華菜の声に反応して、他の2人も顔を上げて僕の方を見つめてきた。
3人分の視線を受けながらしばらく考えて、僕は小さく食べ物の名前を呟いた。
「|大鶏排《ダージーパイ》、とか? あったらでいいんだけど…」
「あ~、あのでっかいチキンね」
「うん」
南奈桜が調べて見つけてくれたお店に行ってみると、美味しそうなものがたくさんあって、一気に修学旅行が楽しくなってきた。
そのお店で大鶏排と肉まんを買って、食べながら次のお店へと向かう。
次に入ったのは町中華っぽい感じのお店で、入る前からいい匂いがした。
「私、エビチリで~」
「英美ってそんなにエビチリ好きなの?」
「好きだよ~」
南奈桜が「英美」と呼んだことに驚いて、僕は思わず南奈桜の顔を見つめる。
南奈桜は僕の視線に気付くと、ぷいっとあからさまに顔をそらした。
その時の表情が少しだけ可愛く感じたのは内緒にしておこう。
僕は大鶏排でお腹がいっぱいになっていたので、半チャーハンにした。
ちなみに夕月華菜はチャーハンとギョーザで、南奈桜は油淋鶏だ。
4人でお喋りをしながら食べ進め、全員が食べ終わったころには集合時間10分前になっていた。
慌てて会計を済ませて店を出る。
「やばいよー!」
と、口では言いながらも急ごうとしない夕月華菜を急かしながら、なんとか集合場所までたどり着いた。
「は~疲れた~。結、大丈夫?」
「はあ、はあ…。うん、なんとか」
僕は呼吸を整えながらクラスメイトたちが並んでいる後ろにつづいて並んだ。
「ほんとごめん、時間見てなかった」
「全然大丈夫だよ~」
「てかさ、時間管理の担当は夕月さんだよね?」
僕の言葉を聞いて、夕月華菜は恥ずかしそうに「ごめーん!」と言って笑った。
それから僕たちは再びバスに乗り込み、赤レンガ倉庫に移動した。
さすがに疲れてきていたけど、10分程度の移動だったのでなんとか大丈夫だった。
赤レンガ倉庫を実際に見たのは初めてだったのだが、外国っぽい雰囲気ですごく綺麗だった。
班のメンバー4人で写真をたくさん撮って、思い出を形に残せたのはとても嬉しかった。
途中、夕月華菜の提案で木元先生も入れて写真を撮ったのだが、正直それはまったくいらなかった。だけど一応、写真フォルダには保存しておいた。
僕たちは、バスで移動し、約1時間後に夢の国の近くのホテルに到着した。
高級感溢れるそのホテルは、ロビーも部屋もとても広くて綺麗だった。
一番はしゃいでいたのは意外にも英美だった。僕も英美に手を引かれて部屋の中を見て回る。
「ベッド大きい! え~私ここで寝たい! 結、一緒に寝る?」
「バカ。どこで寝るかは後でみんなで決めようね」
「私絶対、結と一緒に寝るからね!」
「はいはい」
1年生の時からずっと一緒にいる英美の扱い方は全てわかっている。こういう時は相手にしないほうがいいのだ。
英美と一緒に部屋中を見終わって夕月華菜たちのもとへと戻ると、南奈桜の姿がなかった。
荷物の整理をしていた夕月華菜に聞いてみると、南奈桜は班長会に行ったそうだ。
僕も自分のキャリーバッグから必要なものを引っ張り出したり、ごみを片付けたりする。
すると突然、英美が声を上げた。
「はい! 私、宣言します!」
英美の急な発言に、僕と夕月華菜は思わず顔を見合わせた。
「えっと、‥‥何でしょう?」
「うん、えっとね。私、修学旅行が終わるまでに…好きな人に告白します」
しばらくの沈黙の後、隣から鼓膜を突き破りそうな大きな声が聞こえた。
「えーーー!? 英美ちゃん好きな人いたの? え、いつから? え、告白するってほんとに言ってる? えぇぇ?」
「ちょ、夕月さん落ち着いて」
1人でパニックになっている夕月華菜を一旦落ち着かせて、再び英美の方を見ると、英美は頬を紅く染めて恥ずかしそうにはにかんでいた。
「好きな人いるとか、初耳なんですけど?」
「うん、言ってないからね。…教えないよ?」
「なんでよ! まぁいいけど。…うん、とりあえず頑張りな」
「うん、頑張る。ありがとう」
それから数分後、南奈桜が部屋に戻ってきて、夜の予定を説明した。
基本は班で動くということで、僕らは早速、夕食を食べに行った。
夕食は、大きな部屋に学年全員で集まって食べた。ビュッフェ形式で好きなものをたくさん食べることができて良かった。
その後はそれぞれでお風呂に入り、消灯時間までは自由時間ということになった。
「結~、行ってくる」
「ん~。…あ、行ってらっしゃい。頑張ってね」
英美が部屋から出て行って、部屋の中は僕1人になった。他の2人は少し前にそれぞれ出て行っていた。
僕は、友達の幸せを祈りながら、小説を開いて物語の世界に入り込んでいった。
最後まで読んでくれてありがとう!
英美の好きな人って誰なのかな…?
次回は10,11話、2/2投稿予定です!
これからも読んでくれると嬉しいです!
ではまた〜!