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2限目からはいつも通りに集中して授業を受けることができ、無事に昼休みまで辿り着いた。
「結、行こ〜」
昼休みになるとすぐに、僕は英美と連れ立って教室を出た。そのまま二人で食堂に向かう。
しばらく歩いていると、後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「結さ〜ん!」
驚いて勢いよく振り向くと、満面の笑みで駆けてくる夕月華菜がいた。
夕月華菜は僕の目の前で立ち止まると、呼吸を整えてから口を開いた。
「一緒にご飯食べない? 話したいこともあるし!」
突然の申し出に、僕は心底驚いた。
どうすればいいのかわからず、助けを求めるように隣にいる英美を見ると、英美は目を見開いていた。
僕と同じように…いや、僕以上に、夕月華菜から話しかけられたことに対して驚いているようだ。
「英美も一緒でいいなら大丈夫、だけど…?」
僕の返答を聞いて、夕月華菜は右手でOKサインを作った。
「大丈夫だよ! じゃあ、先に行ってて! 後で奈桜と一緒に行くから! …あ、食堂だよね?」
「うん、食堂だよ」
「おっけー、また後で〜」
夕月華菜は僕たちに手を振ると、教室に戻っていった。
夕月華菜を見送った後、僕と英美は食堂に向かった。
食堂で注文をして、食べるものを受け取って席に着いた。
ちなみに僕は、一番人気のチキンカレーを頼んだ。英美はカルボナーラだ。
しばらく2人で歓談していると、夕月華菜と女の子がそれぞれ弁当を持って近づいてきて、僕たちの隣に座った。
夕月華菜の隣にいる女の子は確か、クラスメイトの南奈桜だったはず。
僕は南奈桜に対して、「クールで大人っぽい人」というイメージを持っている。
「ねぇねぇ、自己紹介しない? クラスメイトだけどほとんど関わったことないし!」
食事の途中、突然手を挙げた夕月華菜がそう提案した。
急で驚いたけれど、断る理由もないので小さく頷いておいた。他2人も賛成のようだ。
昼食の時間ということで、それぞれ食べ進めながら話すことになった。
「よし、じゃあ私からね。|夕月華菜《ゆうづきはな》です! 好きなものは雪と兎! 嫌いなものは花です! 名前、''はな''なんだけどね。ふふっ」
夕月華菜が言い終えると、その隣にいる南奈桜が呆れたような表情を浮かべた。
「名前の事いっつも言うけどつまんないからね?」
「もう~別にいいじゃん! じゃあ次は…奈桜!」
南奈桜は、一度深呼吸をしてから口を開いた。
「|南奈桜《みなみなお》です。好きなものは夜景と小説で、嫌いなものは雨です。よろしく」
南奈桜が、「嫌いなもの」と言った時に僕の方に視線を向けた気がしたのは、僕の思い違いだろうか。
次は東条さん、と夕月華菜が言った後、英美が話し出した。
「|東条英美《とうじょうえみ》です。えっと…好きなものは、星と桜です。嫌いなものは、夏と虫です」
英美が自己紹介を終えると、僕に順番が回ってきた。
「|有栖結《ありすゆう》です。好きなものは月と黒百合。嫌いなものは学校と大人」
僕の言葉を聞いた後、興味津々といった感じで夕月華菜が尋ねてきた。
「黒百合なんてあるんだね! なんで黒百合が好きなの?」
「……花言葉が好きだから」
「え、どんな花言葉?」
「うーん…まぁそれは、ね」
「なにそれ~笑」
僕が曖昧に誤魔化すと、何かを察したのか、夕月華菜はそれ以上聞いてこなかった。
黒百合が持つ花言葉───「呪い」「復讐」が好きなんて言ったらどんな反応をされるのかわからなくて怖かったから、言わずに済んだのはとても助かった。
昼休みが終わるまで4人で談笑し、予鈴が鳴ると同時に席を立った。
英美と2人で、食べ終わった食器を返却棚に持って行き、そのまま食堂を出る。
英美と並んで教室へ戻り始めると、後ろから夕月華菜に声をかけられた。南奈桜は先に教室に戻ったらしい。
「結さん、今日一緒に帰らない? 結局、話したかった事話せなかったしさ」
そう言った夕月華菜は、少しだけ暗い顔をしていた。常に人の顔色を窺っている僕しか気づかないであろうと思うくらい、少しだけ。その証拠に、英美は何も気づいていない様子だった。
何かあったのかと疑問に思ったが、ここでは追求しないことにした。
「いいよ。今日は一人で帰る予定だったから大丈夫」
「よかった!」
そのまま一緒に教室に戻るかと思ったが、夕月華菜は僕たちとは反対方向に歩き出した。
声をかけると、「保健室に行く」とだけ言って足早に去っていった。
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次回は、1/26投稿予定です!
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