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episode.20
四期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
--- episode.20 |頭は間違うことがあっても、血は間違えない。《The head may err, but never the blood.》 ---
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No side
「……彼女と向き合えたのですね、あの人は」
横浜の何処か。
その地下に鼠はいた。
数日前まではなかった謎の光に誘われて、鼠はその部屋へと入る。
「おや、鼠ですか」
沢山のモニターが青白い光を放っている。
その前の椅子に座っている人物は、振り返りながら鼠を見つめた。
黒髪に、アメジストのような紫色の瞳。
白い肌は彼の出身が日本ではないからか、それともただ体調が悪いからか。
そんなことを鼠が知るわけがなかった。
敦side
ルイスさんにサポートして貰いながら、僕は太宰さんのいる探偵社を目指す。
それにしても、前からあんな変な|物体《オブジェ》有ったっけ。
この騒動で貨物車が落としたのかな。
そんなことを考えていると、何処からかルイスさんの叫び声が聞こえてきた。
「敦、逃げろ!」
「燃料輸送車!?」
白鯨からの狙撃が、燃料輸送車を貫いた。
爆風が僕を襲う直前、長い金髪が揺れたのが見えた気がする。
パリン、と音を立てて何かが割れて強風に飛ばされる。
人形を抱えていた僕はそう飛ばされなかったけど、僕の前にいた誰かが血だらけで倒れていた。
起き上がろうとすると、両足に痛みが走る。
今の状態では逃げることはもちろん、起き上がることすら出来ない。
「……!」
僕は手を伸ばした。
人形を太宰さんに届けないといけない。
その時、誰かの足音が聞こえてきた。
もし呪われた人だったら。
そう思うと焦りが膨らんでいく。
「君の勝ちだよ、敦君」
足音の正体は、太宰さんだった。
「君の魂が勝った。これで街は大丈夫だよ」
「危険です太宰さん! 空から敵の銃撃が──」
「どうかな?」
その瞬間、僕達は煙に包まれた。
いや、これは《《煙幕》》だ。
「町中に変な|物体《オブジェ》があっただろう? あれはルイスさんが用意してくれた、飽和チャフの仕込んであるものでね。簡単に言うなら熱センサーも探査レーダーも無効化して、敵に私達は見つけられない」
ニコッ、と笑った太宰さん。
僕は肩を貸して貰いながら立ち上がり、移動を始める。
「あの、太宰さん。この近くに多分、長い金髪の女性がいる筈なんですけど……」
「……彼女だね」
煙で見にくかったけど、近くにその人は倒れていた。
どうやら意識はないらしい。
虎の再生能力で治りかけてる僕より、彼女を優先して運んで貰うことにした。
太宰side
「如何して此処が……?」
「敦君が降ってくる方角をずっと探していたからね」
私達は地下道へとやってきた。
此処なら煙幕が晴れた後も狙撃される心配がない。
女性は床で申し訳ないが、寝かせておくことにした。
「善くやったよ、敦君。これでもう横浜は安全だ。……と、言えれば善かったのだけど」
「何か未だ……問題が?」
残念ながら、問題しかなかった。
一番の問題はQ。
敵の手にある限り、連中はこの大破壊を何度でも起こせる。
それに唯一対抗可能な協力者である異能特務課も活動凍結された。
「……太宰さん、昔読んだ古い|書巻《ほん》にありました」
『昔、私は、自分のした事に
就いて 後悔したことは
なかった
しなかった事に
就いてのみ
何時も後悔を
感じていた』
『頭は間違うことがあっても
血は間違わない』
「──空の上で僕は、ある|発想《アイディア》を得たんです。皆からすれば論外な|発想《アイディア》かも知れない。でも僕にはそれが、僕の血と魂が示す、唯一の正解に思えてならないんです」
「どんな|着想《アイディア》だい?」
「《《協力者》》です。彼等は横浜で最も強く、誰よりもこの街を守りたがっています。|組合《ギルド》と戦う協力者としてこれ以上の組織はありません」
「その組織の名は?」
敦君の瞳は、まっすぐと私を見ていた。
「ポートマフィアです」
「……そう、か。貴女はどう思いますか?」
私が振り返ると、敦君は目を丸くして驚いていた。
「え、あ、さっきの女性は……?」
長い金髪が、いつの間にか物凄く短くなっていた。
炎のような真っ赤な瞳は、若葉のような緑になっている。
一瞬、誰なのか判らなかった。
彼女が例の|赤の女王《red queen》、ルイスさんがずっと向き合えなかった人なのだろう。
「済みません、さっきの質問はおかしかったですね。貴女はこうなることを見越していましたか?」
「さぁね。僕はただ地域を設定して、それぞれが横浜を守るために行動するように助言しただけだよ」
ルイスさんは頭脳戦で私に勝てない、と良く言っている。
でも、実際は私の方が劣っていることだろう。
私は森さんみたいに一切の私情を挟まないことはできない。
ルイスさんみたいに未来を予想して、勘で動くことはできない。
飽和チャフの|物体《オブジェ》だって、私の行動を先に予想して作っていたという。
「僕は暫く休みたいから、会合の日程とかは自分達で頑張ってね」
「はい」
でも、と私はルイスさんの手を握る。
「流石に今の状態で異能力を発動することは、おすすめしません。|異能空間《ワンダーランド》での時の流れが此処と違うとはいえ、その怪我では歩くことも出来ないでしょう?」
「……別に#アリス#が何とかしてくれるけど」
「#アリス#?」
「先程の長髪の方だよ、敦君」
詳しい説明は、また後で頼みますね。
そう伝えるとルイスさんは、少しぎこちない笑みを浮かべた。
「さぁ、探偵社へ帰ろう」
ルイスside
「はい、治療は終わりだよ」
「……今回もありがとう、与謝野さん」
僕はシャツの釦を止めながら言う。
多分、太宰君を通じて色々と聞いていることだろう。
そして僕の秘密についても、彼女は知っている。
今回の怪我は、何度か治療しないと完治しないものだった。
「本当にいいのかい?」
「戦争での傷が? それとも僕の秘密について?」
「……どっちもだよ」
少し、僕は手を止めた。
戦争の傷跡を消すことも、与謝野さんなら可能なのだろう。
でも僕は、残すことを決めている。
「この秘密については、まだ隠しておこうと思ってるよ」
「そうかい」
傷を残す為に、僕の傷は完治していない。
だから、暫くは医務室でお世話になることになっていた。
そして医務室には《《彼女》》がいる。
手術室から出ると、予想通りお茶を飲みながら迎えてくれた。
「良い顔になったのぉ、ルイス」
「君が言うならそうなんだろうね、紅葉」
「ほれ、怪我人はさっさと座るといい」
僕は紅葉の隣へと失礼することにした。
捕虜としている筈なのに、なんか楽しそうだな。
「向き合えたのじゃな」
「まぁ、一応ね」
僕は小さく欠伸をしながら答えた。
異能力の使いすぎもあるし、治療の内容が内容だ。
疲労が溜まっているのは、言うまでもなかった。
「眠った方が良いのではないのか?」
「……この先、君とゆっくり話せる機会なんてそうないだろうからね」
まだ眠りたくない。
それが今の僕の本心だった。
マフィアに戻ればいいのかもしれない。
でも、僕は人を救わないといけない。
黒く染まることは出来なかった。
「心配せんでも、|私《わっち》はお主を受け入れる。それに鴎外殿が断ると思うかぇ?」
「さぁ、どうだろうね。別に僕は森さんとの付き合いが長いわけじゃないから、全く分からないよ」
もう太宰君から伝言を頼まれているらしい。
つまり、起きた時にはもう紅葉はいないということだ。
「じゃあね、紅葉」
「……あぁ」
次回、英国出身の迷ヰ犬
episode.21 光の中で生きる道と闇の中で生きる道