公開中
episode.3
三期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
episode.2
https://tanpen.net/novel/f21fc4f8-e7f0-40f5-8fa7-9245bb8a797d/
episode.1
https://tanpen.net/novel/e752c164-a521-44bb-a134-69096a053749/
ポートマフィア。
その組織は港を縄張りとし、横浜の暗部そのものだった。
参加の団体企業は数十を数え、この街の《《政治》》や《《経済》》の悉くに根を張っている。
その為、軍警は迂闊に手を出すことは出来ない。
日本政府の異能力者監視機関である『内務省異能特務課』も、自陣から被害を出したくないという体質から、襤褸が出るまで見て見ぬ振りをしている。
半ばやりたい放題やっており、彼らに逆らって生き残った者はいない。
「……夜風はやはり冷たいな」
そう呟いて、男は横浜の街を見下ろしていた。
日が沈んで間もないからか、まだ街は起きている。
ゴホッ、と咳き込んた男の視線の先には、港があった。
その近くに佇む高い高い建物。
あれこそポートマフィアの本部で、今から男の向かう場所だった。
「電話……」
懐から携帯を取り出し、男は電話に出る。
どうやら、新しい任務らしい。
(直接の方が早いな)
通話が終了してすぐ、任務場所へと向かうことにした。
男が闇の中を移動している途中、ふと表通りに視線を向けてみた。
本当に何となくだったが、ある姿が視界の隅に映る。
思わず声を上げそうになったものの、男は我慢してしまった。
任務先に向かうのが、第一。
そう自分に言い聞かせて進もうとすれば、その人物は笑みを浮かべていた。
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--- episode.3 |少年と或る任務《boy and a certain mission》 ---
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side.ルイス
武装探偵社の入っている建物の一階には、少し懐かしい雰囲気のある喫茶店があった。
まだ待ち人は帰ってこないらしい。
なので、暫くは|虎人《リカント》の様子を見守ることにした。
「すんませんでしたッ!」
静かな店内に、そんな声が響き渡る。
「その、試験とは云え随分と失礼なことを」
「あぁいえ、良いんですよ」
少し優しい言い方をする爆弾魔だと思ったけど、この性格のせいか。
そんなことを考えながら僕は頼んだ珈琲を飲んだ。
どうやら今回の入社試験は太宰君が考えたものらしい。
あの爆弾返してやろうかな。
「ともかくだ、小僧」
太宰君と言い争っていた国木田君は咳をした。
苦笑いを浮かべていた敦君の背筋が伸びる。
「貴様も今日から探偵者が一隅。ゆえに周りに迷惑を振りまき、社の看板を汚すような真似はするな」
俺も他の皆もそのことを徹底している、と続けて茶を飲んだ国木田君。
「なぁ太宰」
「あの美人の給仕さんに『死にたいから頸締めて』って頼んだら応えてくれるかなぁ」
「黙れ、迷惑噴霧器」
くどくど始まったな、と思っていると爆弾魔くんが自己紹介を始めた。
そういえば、ちゃんと挨拶してなかったっけ。
「ボクは谷崎。探偵社で手代みたいな事をやってます。そンでこっちが──」
「妹のナオミですわ。兄様のことなら……何でも知ってますの」
「き──兄弟ですか? 本当に?」
本能的にその質問はしていけないと思った。
「勿論どこまでも血の繋がった実の兄妹でしてよ……? このアタリの躯つきなんてホントにそっくりで……ねぇ兄様?」
谷崎君の服の中へと手を入れているナオミさん。
流石に兄妹には見えないのだが、国木田君が深く追求しないように目で訴えていた。
まぁ、それが一番な気がする。
「それで、兄様に綺麗な蹴りを入れた貴方は?」
「挨拶が遅れて申し訳ない。僕はルイス•キャロル。以後、お見知りおきを」
「よろしくお願いしますわ!」
癖で手を差し出してしまったが、特に何とも思われていないようだった。
少し兄からの視線が気になったけど。
「そういえば、皆さんは探偵社に入る前は何を?」
敦君はその質問を何となくしたのだろう。
シーン、と静まり返った。
僕と違って胸を張れないような過去じゃないでしょ、多分。
そんなことを考えていると、新入りは先輩の前職を中てるのが定番という話をしていた。
もちろん、僕も新入り扱いにされた。
「谷崎さんと妹さんは……学生?」
「おっ、中った。凄い」
まぁ二人は簡単な方だろうな。
ナオミさんは制服を着ているし、多分そこまで二人に年齢差はない。
「じゃあ国木田君は?」
「止せ。俺の前職など如何でも──」
「うーん、お役人さん?」
「惜しい」
どうやら彼は数学の教師だったらしい。
何か納得してしまった。
よく『ここはxの累乗を使うだろう』とか、黒板を差しながら叫んでそう。
本人に言うつもりはないけど。
「じゃ私は?」
「太宰さんは……」
笑う太宰君に対して、敦君は想像もつかないようだった。
「無駄だ、小僧。武装探偵社七不思議の一つなのだ、こいつの前職は」
でも、と彼は僕の方を向いた。
確かに僕は前職を知っているけど、話すつもりはない。
「七不思議のままで良いと思うよ」
「そういえば、最初に中てた人に賞金があるンでしたっけ」
「誰も中てられなくて、懸賞金が膨れあがってる」
国木田君は溢物の類いだと思っているらしいけど、残念ながら違う。
「しかし、こんな奴がまともな勤め人だったと筈がない」
その言葉を聞いて、僕は思わず笑ってしまった。
確かに太宰治という人間は自殺愛好家で、何を考えているのか分からない人物だ。
「ちなみに懸賞金って如何ほど」
「参加するかい? 賞典は今──七十万だ」
ガタッ、と立ち上がった敦君。
目の色が変わった気がする。
そういえば彼は無一文なんだった。
七十万なんて大金にしか見えていないことだろう。
「中てたら貰える? 本当に?」
「自殺主義者に二言は無いよ」
ふわぁ、と僕は欠伸をした。
なんか面白いことになりそうだけど、とても眠い。
「|勤め人《サラリーマン》」
「違う」
「研究職」
「違う」
「工場労働者」
「違う」
「作家」
「違う」
「役者」
「違うけど、役者は照れるね」
うーん、と敦君は頭を悩ませていた。
僕は本当に眠たくてどうしたものかと頭を悩ませていた。
宿に戻るのは些か面倒くさい。
「だから本当は浪人か無宿人の類だろう?」
「違うよ。この件では私は嘘など吐かない」
「……ルイスさん、本当に太宰は違うんですか?」
「うん。でも君達が思いもよらない職業、とだけ言っておくよ」
降参かな、と太宰君は立ち上がって先に事務所へと戻っていった。
その時、窓をスーツ姿の金髪の女性が歩いていったのが見えた。
女性はエレベーターの方へと向かっていく。
この建物には、探偵社ぐらいしか外部の人間が用ある場所はない。
つまり、依頼人と考えるのが普通だろう。
「うん?」
少し喫茶店でゆっくりしていると、谷崎君の携帯が鳴った。
「ハイ。……え、依頼ですか?」
先程の女性だな、と思いながら僕も何故か探偵社にいた。
依頼人は一人なのに対して、此方は六人と大人数。
変な圧を掛けてしまっているのか、女性は全く話し始めない。
「……あの、えーと、調査のご依頼だとか」
それで、と谷崎君が続けようとすると、邪魔が入った。
「美しい……。睡蓮の花のごとき果敢なく、そして可憐なお嬢さんだ」
「へっ!?」
「どうか私と《《心中》》していただけないだろ──」
スパン、と痛々しい音が部屋に響き渡った。
国木田君も多分同じ考えに至っていたのだろう。
手帳で叩いている分、まだ彼の方が優しい気がする。
「ちょ、重いって!?」
「なに依頼人を口説いてるの」
僕は太宰君を踏んでいた。
喫茶店でも思っていたことだけど、今は美女との心中を望んでいるんだな。
どちらにしても最低なことには変わらないけど。
重いと言われたことに少しイラついた僕は、グリグリと頭を踏んでいた。
それを見て困惑する依頼人と探偵社一同。
「えっと……」
「あ、済みません。忘れてください」
国木田君の一言で足を離すと、太宰君はズルズルと隣の部屋へと連れていかれた。
特について行く意味はないので、僕は元いた位置へと戻る。
「それで依頼と云うのはですね、我が社のビルヂング裏手に……最近、善からぬ輩が屯しているようなんです」
「善からぬ輩ッていうと?」
「分かりません」
普通に話を再開した依頼人。
変人慣れしてるのかな、と考えている間に国木田君が戻ってきた。
「ですが、|襤褸《ぼろ》をまとって日陰を歩き、聞き慣れない異国語を話す者もいるとか」
「そいつは密輸業者だろう。軍警がいくら取り締まっても船蟲のように涌いてくる、港湾都市の宿業だな」
「えぇ。無法の輩だという証拠さえあれば軍警に掛け合えます」
簡単にまとめると、現場を張って善からぬ輩とやらの証拠を集めたら良い。
密輸業者は無法者だけど、大抵は逃げ足だけが取り得の無害な連中だ。
見張るだけだから初仕事にはちょうど良いらしく、敦君が受けることになった。
谷崎君がサポートに入ることになると、ナオミさんも一緒に行くことに。
「おい小僧。不運かつ不幸なお前の人生に、些かの同情が無いわけでもない」
故に、と国木田君が一枚の写真を取り出した。
横から覗き込んでみると、見覚えしかない。
「こいつには逢うな。遭ったら逃げろ」
「この人は──?」
「マフィアだよ。尤も、他に呼びようがないからそう呼んでるだけだけどね」
国木田君の説明を聞き流していると、谷崎君が敦君を呼ぶ声が聞こえてきた。
今すぐに出るらしい。
見送った僕は、太宰君が横たわる椅子の向かいへと腰を下ろした。
「何で踏んだの?」
「別に意味はないよ。次は僕から質問させてもらっても良いかな」
どうぞ、と太宰君が言ったのを確認してから、僕は口を開く。
「前職を辞めた理由を聞いてないと思ってね」
国木田君の掃除機を掛ける音だけが部屋に響き渡る。
笑みを浮かべる僕と同じく、太宰君も笑っていた。
けれど、その瞳に光は宿っていない。
「数少ない友人の、遺言だよ」
友人、か……。
僕にはもういない存在だ。
幼い頃に戦場へと駆り出され、沢山年上の仲間はいた。
けれど、全員がその命を落とした。
仲の良い存在すら、僕にはもういないも同然だろう。
少しして、太宰君はヘッドホンをして歌っていた。
「一人では〜心中は〜できない〜二人では〜できる〜すごい〜」
絶対に世に出ていない曲だろうな。
というか、即興で作っているのだと思う。
ヘッドホンから流れているものが音楽とは限らないからね。
「さて、と……。今日はもう失礼させてもらうね」
「了解です。そういえばルイスさんは探偵社に入らないのですか?」
「組織に入るのは得意じゃないからね。それに、数日後にはもう日本を出る予定だから」
そうなんですか、と国木田君は少し悲しそうに言った。
僕は少しだけ太宰君の扱いに慣れているから、多少は突っ込まなくて済むんだろうな。
でも、あまり長居しすぎると嫌な感情が芽生えてしまう。
「それじゃ」
扉を出ると、怒鳴る声が聞こえてくる。
太宰君の相棒はやっぱり苦労するんだな、と僕は一人で少しだけ笑った。
少し街を歩いていると、何か不穏な気配がした。
あまり面倒ごとに巻き込まれるのは好きではない。
しかし、知り合いが傷つくのを知らないふりをするのは、もっと好きではない。
「……仕方ない」
そう言った僕は裏路地へと足を向けるのだった。
次回予告。
探偵社員の国木田独歩だ。
太宰はよく分からない歌を歌っていて、掃除の邪魔にしかならん。
そもそも、何故仕事をしないのだ。
ルイスさんが入れば俺の仕事も減るような気が……。
誰か、太宰をもう少し真面目な人間にしてくれないだろうか。
次回、英国出身の迷ヰ犬。
episode.4 少年と禍狗
もう許さんぞ、太宰。
今すぐ寝そべるのを辞めて仕事を──って、何処に行ったんだ?