公開中
episode.4
三期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
episode.3
https://tanpen.net/novel/e5512a9e-1bf5-4baa-a0c6-b527558a6d1c/
episode.1
https://tanpen.net/novel/e752c164-a521-44bb-a134-69096a053749/
敦達が樋口へついて行くと、ある路地裏についた。
なんか、鬼魅の悪い処だな。
そう敦が思っていると、谷崎が何かに気がついた。
「無法者と云うのは臆病な連中で──大抵、取引場所に逃げ道を用意しておくモノです。でも此処はホラ、取り方があっちから来たら逃げ道がない」
谷崎が指差したのは、敦らが今やって来た方向だった。
確かに、あそこ以外に逃げられるような道は見当たらない。
「その通りです。失礼とは存じますが、嵌めさせて頂きました」
依頼の件は嘘だったらしい。
そして、樋口の目的は敦達自身。
「芥川先輩? 予定通り捕らえました。これより処分します」
「芥川……だって?」
「我が主の為──ここで死んで頂きます」
樋口の正体がポートマフィアと気付く頃には、もう銃を構えていた。
逃げ道もない私達三人は、ただ戸惑うことしか出来ない。
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--- episode.4 少年と禍狗 ---
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side.敦
銃声が止んで、僕は閉じていた目を開いた。
谷崎さんを庇うように立っている《《血塗れ》》のナオミさんの姿がそこにはある。
「兄様……大丈……夫?」
「ナオミッ!!」
ドサッ、と音を立てて倒れたナオミさんを見て、僕はその場に座り込んだ。
「し、止血帯。敦くん、止血帯持って無い?」
その声は、全く頭に入ってこなかった。
谷崎さんもパニック状態に陥っているのが分かる。
「そこまでです。貴方が戦闘要員でないことは調査済みです」
谷崎さんの頭に銃口が突きつけられる。
「健気な妹君の後を追っていただきましょうか」
「あ? チンピラごときが──ナオミを傷つけたね?」
--- 『|細雪《ささめゆき》』 ---
雪が降っていた。
まだそんな季節じゃないのに、どうして。
「敦くん、奥に避難するンだ。こいつは──ボクが殺す」
そう谷崎さんが言い終わると同時に、銃声が鳴り響いた。
しかし、一弾も当たることはない。
戦闘向きではない、と道中に言っていたけどこれは一体……。
「ボクの『細雪』は《《雪の降る空間そのものをスクリーンに変える》》」
「なっ……何処だ!」
「ボクの姿の上に背後の風景を上書きした。もうお前にボクは見えない」
「しかし姿は見えずとも、弾は中る筈っ!」
大外れ、と声が聞こえたかと思えば、樋口さんの後ろに人影があった。
谷崎さんは首を手で掴んでおり、どんどん力を込めていく。
苦しそうな樋口さんの声しか聞こえないかと思えば、そこに入ってくる誰かの咳。
次の瞬間、首を絞めていた筈の谷崎さんが床に倒れた。
奥に見えた人影と、目が合ったような気がした。
「死を惧れよ。殺しを惧れよ。死を望む者等しく死に、望まるるが故に──ゴホッ」
僕の脳裏に蘇るのは、国木田さんの言葉。
『こいつには逢うな。遭ったら逃げろ』
『俺でも──奴と戦うのは御免だ』
写真で見せてもらった男が、今目の前にいる。
「お初にお目にかかる。|僕《やつがれ》は芥川。そこな小娘と同じく、卑しきポートマフィアの狗──ゴホゴホッ」
「芥川先輩、ご自愛を──此処は私ひとりでも」
ピシッと頬を叩く音が響き渡り、カランと樋口さんのサングラスが床に転がる。
何が起こっているのか、僕には一向に理解できなかった。
「人虎は生け捕りとの命の筈。片端から撃ち殺してどうする、役立たずめ」
「──済みません」
人虎……それに生け捕り……?
「あんたたち一体」
「元より僕らの目的は貴様一人なのだ、人虎。そこに転がるお仲間は──いわば貴様の巻添え」
「僕のせいで皆が──?」
然り、と芥川はそれが僕の業だと言った。
《《生きているだけで周囲の人間を損なう》》と言われ、心当たりしかない。
嫌な汗が頬を伝う。
「自分でも薄々気がついているのだろう?」
--- 『|羅生門《らしょうもん》』 ---
そんな声が聞こえたかと思えば、黒い獣が現れた。
思わず目を閉じてしまい、開く頃には僕の右側の地面が削れている。
「僕の『羅生門』は悪食。凡るモノを喰らう。抵抗するならば次は脚だ」
「な、何故? どうして僕が──」
それは心の底から思ったことだった。
僕のせい──?
僕が生きているだけで、皆不幸になるのか──?
「……くん」
後ろからそんな声が、聞こえてきた。
「敦、くん……逃げ、ろ……」
谷崎さんが僕にそう言った。
皆、まだ息はある。
『貴様も今日から探偵社が一隅。社の看板を汚す真似はするな」
国木田さんの言葉を思い出した僕は決意した。
そして芥川へと走り出した。
「玉砕か──詰らぬ」
僕はまっすぐと伸びてきた黒い獣を避け、芥川の背後へと回り込む。
どうにか落ちていた樋口さんの銃を拾って、引き金を引いた。
しかし、銃弾はカランと地面へと落ちた。
「今の動きは中々良かった。しかし、所詮は愚者の蛮勇」
もう、その場に立ち尽くすことしか出来ない。
「云っただろう、僕の黒獣は悪食。凡るモノを喰らう。|仮令《たとえ》それが『《《空間そのもの》》』であっても」
「な……」
「《《銃弾が飛来し、着弾するまでの空間を一部喰い削る》》。槍も炎も空間が途切れれば、僕に届かぬ道理」
そんなの、攻撃の仕様がないじゃないか。
もうどうすることも出来ず諦め掛けていると、芥川は云った。
「そして僕、約束は守る」
言葉の意味を理解するのに、時間は全く掛からなかった。
でも、その一瞬で黒い獣は僕の右足のところまで来ている。
脚を喰われると、とてつもない痛みに襲われると。
そう考えた僕は目を閉じて歯を食いしばることしか出来なかった。
--- 『???』 ---
ドンッ、と何かの変な音が聞こえた。
ゆっくりと目を開くと、跳ね返ったかのように黒い獣は芥川の目の前で止まっている。
「……その異能力は」
芥川が後ろを振り返る。
そこには見慣れた人物がいた。
けれど、何か違和感を感じて名前を呼ぶのを少し躊躇ってしまう。
side.ルイス
「ルイスさん……?」
恐る恐る掛けてきた声が聞こえてきた僕は、一度深呼吸をした。
そして、普通に笑ってみせる。
「《《君は》》無事そうで何よりだよ、敦君」
--- 『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』 ---
谷崎君とナオミさんを|異能空間《ワンダーランド》送ると同時に、僕は足に力を込めた。
流石に反応が遅れたのか、芥川君の顔面ギリギリで拳が止まる。
「何故、人虎を庇うのですか」
「答える義理はないよ」
黒獣が襲い掛かる前に異能空間から剣を取り出し、支えにしながら飛び跳ねる。
剣は喰われたが、特に焦ったりはしなかった。
全部が予想内の出来事だ。
「攻撃に集中していると、空間断絶が疎かになるよね」
シュッ、と芥川君の頬をかする刃。
僕はあまり戦うことは好きじゃないけど、やっぱり知り合いの傷つくところは見たくない。
異能無効化を持っていたら、もう少し状況は有利に進むかもしれない。
けど、時間稼ぎさえ出来れば問題はない。
そんなことを考えていると隙が見えた。
見逃すわけもなく、僕は空間断絶をされる前に重い蹴りを芥川君の腹部へと入れる。
元々体が弱いこともあってか、少しふらつきながら咳き込んでいる。
「芥川先輩!」
「退がっていろ、樋口。お前では手に負えぬ」
今ので防御への集中が伸びたよな。
どうしたものかと考えていると、黒獣が地面へと潜っていることに気がついた。
地中からの攻撃か、と全神経を研ぎ澄ませていると後ろから叫び声が聞こえてきた。
振り返ると、敦君の脚が喰われている。
さっき彼にしようとしていたことを実行したのか。
「僕達の目的は人虎ただ一人です。お引き取り願えますか?」
そう、芥川君が言ったので視線を戻す。
敦君を治す方法はあるし、無かったとしても此処で退くわけにはいかない。
とりあえず異能空間に送ろうとすると、獣の唸り声が聞こえてきた。
まさか、と僕は敦君の方を見る。
もうそこには何もいなかった。
少し上を見上げれば、白く綺麗な毛並みの虎がそこにいる。
「……面白い」
--- 『羅生門』 ---
芥川君はそう呟くと、異能力を発動させて攻撃した。
しかし、傷つけてもすぐに無傷な状態へ戻ってしまう。
羅生門が喰らった筈の右足も元通りになっているし、高度かつ高速の再生能力を持っていることが分かる。
「──!」
冷静に観察している場合じゃない。
白虎の時、敦君に意識は無いから僕のことももちろん襲ってきた。
どうにか対応しようとするも、こんな狭い路地裏で虎と戦うことなんて不可能に等しい。
あの力を使えば、まだどうにかなるかもしれないけど却下だ。
芥川君も壁に打ちつけられ、これは本当に躊躇ってはいられない状況になっていく。
「おのれ!」
「莫迦ッ……!」
銃弾をどれだけ撃ったとしても、白虎には傷ひとつつけられない。
ただ自身へと意識を向けさせるだけで自殺行為だ。
「何をしている樋口!」
すぐに異能力を使った芥川君だったが、自身の防御がやはり薄くなる。
白虎は知性があるのか、敦君の記憶を引き継いでいるのか。
あの女性には見向きもせず、芥川君へと飛び掛かった。
急いで移動して彼の脚を引っ掛ければ、その牙が肩へと突き刺さることはない。
まぁ、すぐに移動しないと前足で吹き飛ばされそうになるけど。
「……早く来い」
勘のいい彼のことだから、とっくにこの状況には気付いているのだろう。
このままだと、流石に三人とも体力が尽きて死ぬよ。
「羅生門──!」
「はぁーい、そこまでー」
--- 『|人間失格《にんげんしっかく》』 ---
芥川君の黒獣が消え、白虎は敦君へと姿が戻る。
肩で呼吸をしなくてはならないほど、僕は息が上がっていた。
久しぶりだというのに動きすぎたかな。
「貴方、探偵社の──! 何故ここに」
「美人さんの行動が気になっちゃう質でね。こっそり聞かせて貰ってた」
やっぱりヘッドホンで音楽なんて聞いてなかったか。
それにしても、盗聴器を仕込むタイミングが凄かったな。
女性をただ口説いているようにしか見えなかった。
関心していると、太宰君は敦君の頬を叩いて起こそうとしている。
どうやら負ぶって帰るのは厭らしい。
「ま……待ちなさい! 生きて帰す訳には」
そう銃を構えた女性に対し、芥川君は笑っている。
「止めろ樋口。お前では勝てぬ」
「芥川先輩! でも!」
「太宰さん、今回は退きましょう。しかし、人虎の首は必ず僕らマフィアが頂く」
咳き込みながら話す芥川君。
意外と僕はダメージを入れられていないのだろう。
さほど、その立ち姿は変わって見えない。
「なんで?」
「簡単な事。その人虎には闇市で七十億の懸賞金が懸かっている。裏社会を牛耳って余りある額だ」
誰がその懸賞金を懸けているのかは、考えなくても判った。
僕を雇おうとした《《彼》》しかあり得ない。
「探偵社には孰れまた伺います。その時、素直に七十億を渡すなら善し。渡さぬなら──」
「《《戦争》》かい? 探偵社と?」
良いねぇ元気で、と少し楽しそうに言った太宰君。
そして真面目な顔をして続けた。
「やってみ給えよ。──やれるものなら」
さて、本当に僕はどうしたものか。
流石にマフィアへ喧嘩は売りたくない。
ま、虎人を守っている時点で敵認識されてるだろうから関係ないけど。
一度行方を眩ませるのが得策かな。
「零歳探偵社ごときが! 我らはこの町の暗部そのもの! 傘下の団体企業は数十を数え、この町の政治•経済の悉くに根を張る!」
「たかだか十数人の探偵社ごとき、簡単に消せるって?」
「──!」
僕の言葉に、女性は驚いているようだった。
しかし、すぐに強気に戻る。
「わ、我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ!」
「知ってるよ、その位」
然り、と芥川君は言った。
そこら辺を歩く一般人なんかより、太宰君はそれを衆知していることだろう。
何故なら彼は──。
「元マフィアの太宰さん」
では、と芥川君は踵を返した。
それについて行く部下であろう女性。
裏路地に残された僕と太宰君、そして気絶している敦君。
とにかく、一度探偵社に向かわないとだな。
僕はまだ起きそうにない敦君を背負い、太宰君と社へ帰るのだった。
次回予告。
樋口、と申します。
あの芥川先輩の部下ですが、役立たずと毎日言われています。
今回も人虎へ銃を向けたせいで、先輩が怪我をしてしまいました。
そもそも片端から銃で撃っていなければこうならなかったのでは?
って、芥川先輩!?
その怪我で動くのは無茶が過ぎます!
次回、英国出身の迷ヰ犬。
episode.5 少年と襲撃。
次回も楽しみに。
……え、先輩は一ミリも出ないんですか? 本当に?