公開中
episode.9
三期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
episode.8
https://tanpen.net/novel/a092a6d9-f11b-46d3-870a-aef7815de3b0/
episode.1
https://tanpen.net/novel/e752c164-a521-44bb-a134-69096a053749/
敦が目覚めると、そこには一度見たことのある天井が広がっていた。
「おや、起きたんだね」
「与謝野さん……」
辺りを見渡して確信した。
そこは、探偵社の医務室だった。
電車での一件で敦は気を失っており、その間に探偵社へ戻ってきたのだ。
「そうだ、彼女は!?」
「あの子なら隣で寝てるよ」
「良かった……」
そう、敦は胸を下ろすのだった。
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--- episode.9 |少年と首領《boy and boss》 ---
---
鏡花side
探偵社に保護された私は、医務室にいた。
疲労からか眠りについてしまい、目が覚めると質問攻めが始まった。
「娘、黒幕の名を吐け」
「……。」
「マフィアの部隊は|蛇《うわばみ》と同じだ。頭を潰さん限り進み続ける。答えろ、お前の上は誰だ」
「く、国木田さん」
ふと、頭に浮かんだ《《それ》》を私は口にする。
「……橘堂の湯豆腐」
「へ?」
「おいしい」
食べたら話す、と言えば連れていってくれるらしい。
捕まる前に少しぐらい贅沢しても良いかな。
ルイスside
「ほわぁ……」
やっぱり大きいな、と僕はマフィア本部のビルを見上げた。
流石に建物は変わっていないらしい。
数年前と全く同じだ。
「あの、ルイスさん……」
「心配しなくても、今から逃げたりなんてしないよ。だから案内よろしくね」
本部ビルの最上階にある首領執務室。
この街でも五本指に入るぐらい警備が厳重な場所だろう。
随時武装した構成員が立っているだけでなく、監視カメラや赤外線と言った機械もしっかりしている。
相変わらず暗殺しにくそうだな、と考えていると両開きの扉の前に着いた。
「|首領《ボス》、中原です」
「入りたまえ」
扉が開かれると、そこには数年前と比べて皺の増えた首領の姿があった。
一応、僕はいつでも戦闘できる用意はしておく。
「お元気そうで何よりです」
「君も、相変わらずそうだね」
「それで電話で話した件だったら、今すぐにも帰っていい?」
そう告げると、首領は裏のある笑みを浮かべた。
太宰君を解放したいけど、これはバレているやつだな。
そんなことを考えていると首領は、資料を手渡してきた。
ある闇市の頁を印刷したものらしい。
そこには敦君の写真と、懸賞金が七十億ということが書かれている。
「彼と親しいようだね」
「ただ顔見知りな程度だよ」
それじゃあ、と首領が次の資料を見るように促してきた。
「《《彼ら》》について、知っていることを話してもらえるかな?」
一瞬、瞠目してしまったのが自分でも分かる。
相手にそれがバレたことも、気づいた。
まさかマフィアが、《《誰が虎を贖おうとしているのかまで》》調べていたとは。
あまりにも予想外すぎて、どう誤魔化すべきか思考を巡らせるも解決策が浮かばない。
「……ルイスくん?」
「どうして、僕が彼らに関係あると思ったのか教えてもらっても?」
「一番は、君がこの街へ来たタイミングだね」
どうやら入国日時や今日までの行動など、色々と調べあげられているらしい。
これは言い逃れ出来ないかな。
そんなことを考えながら、僕は仕方なく全部話すことにした。
敦君を目的に横浜へ来たことは事実。
しかし、例の組織との関係はない。
勧誘されたが断っているし、今は何でも屋を休業している。
「ということだから、僕は帰らせてもらうよ」
「残念だけど、それは許せないかな」
銃の|安全装置《セーフティー》が外される音が微かに聞こえた。
首領はもちろん、四方八方から銃口が向けられている。
どうしたものかな。
ため息を吐いた僕は辺りを見渡す。
普通に逃げ場はない。
「マフィアに入りたまえ。君は組織に必要だ」
「そういう依頼は受けてない、と昔も説明したような気がするんだけど」
「悪い話ではないと思うけれど」
「組織が嫌いなんだって。ついでに貴方みたいな人」
これ以上は話しても無駄でしかない。
「仕方ないから、何を依頼しようとしていたのかだけ聞くよ」
「君も判っているだろう。虎の少年の捕縛──」
バンッ、と銃声が響き渡った。
僕の手に握られた銃から、火薬の匂いがする。
首領の手から、ゴトッと拳銃が机へ落ちた。
「……ゴム弾なんて、考えたね」
赤く腫れた手首を見ながら、首領は言う。
構成員の意識が、全て僕へと向けられたのが分かる。
「それでは、この辺で失礼します」
異能空間を通じて移動する僕が最後に聞いたのは、発砲音だった。
敦side
橘堂は高級料理店だった。
彼女が数えきれないほどの湯豆腐を食べている間、僕は頭を悩ませている。
『娘を軍警に引き渡せ』
そう、国木田さんは言った。
35人殺しなら、まず死刑。
マフィアに戻っても裏切り者として|刑戮《ころ》されるだけ。
僕には、彼女を助けられない。
『両親が死んで孤児になった私を、マフィアが拾った。私の異能を目当てに』
不幸を凡て肩代わりする覚悟があるか、国木田さんに聞かれた。
でも、僕は胸を張って肯定することはできない。
僕の|舟《ボート》は一人乗り。
『救えないものを救って乗せれば──共に沈むぞ』
それなら、どうして太宰さんは僕を助けてくれたのか。
どれだけ考えても、その答えは出ない。
「それじゃあ行こうか」
「どこへ?」
「え?」
「私をどこへ連れて行くの?」
彼女の問いに、僕は頭をフル回転させた。
国木田さんには気付かれないよう気をつけながら、軍警へ引き渡すように言われた。
どう誤魔化すか考えている僕の頭に、一つ案が浮かんだ。
「君くらいの子が好きな処、例えばデートスポットみたいな」
「……。」
「僕も今日は、請暇を出したし、君だって外出して、遊ぶことなんて、無かったでしょ、付き合うから、如何でしょう、ひとつ、今日は羽を、伸ばされてみては、」
うぅ、慌てて変なこと言っちゃってないかな。
「デートスポット?」
「うん」
「貴方と?」
「うん」
返事してから気がついた。
僕は一体何を言っているんだろうか。
どう弁明するか考えていると、彼女が手を引いた。
そして、様々な観光地を見て回ることに。
「あそこのクレープ屋、凄く美味しいんだよー」
「え、一口食べさせてよ!」
女性達の会話を聞いていた彼女は、じーっとクレープ屋を見ていた。
よもや、と思っていると「たべたい」と言う。
「で、でも|先刻《さっき》あれだけ……」
「べつばら」
「えぇ……?」
流されるまま、僕はクレープを買ってあげた。
他にもゲームセンターで兎のぬいぐるみを一発で取ったり、とても充実した時を過ごす。
そして、数時間が経った頃のことだった。
「もう一つ行きたい処がある」
彼女が指差した建物を見て、僕は驚いた。
そこは交番だった。
「もう十分、楽しんだから」
「でも! 捕まれば君は死罪で」
「マフィアに戻っても処刑される。それに──」
35人殺した私は、生きていることが罪だから。
そう言った彼女の表情は、僕から見えなかった。
どうにか考えを変えてもらおうと開く口。
しかし、言葉ではなく血が出た。
僕の胸に背後から黒い刃が突き刺さっている。
ルイスside
「あー、くそっ」
痛む足を止血していた僕は、そんな言葉を漏らした。
まさか、転移直前に左足の太ももを撃たれることになるとは。
|異能世界《ワンダーランド》内に応急処置セットがあって良かったからまだ良い。
銃弾が貫通しているとは限らないし、与謝野さんに見てもらえるだろうか。
とにかく移動しないことには始まらない。
--- 『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』 ---
銃声が聞こえた。
白昼堂々、しかも表通りから聞こえると言うことは只事ではない。
「敦君……!」
トラックへ雑に入れられたのが見えた。
10人ほどの黒服と、芥川君。
そして電車の時の少女が床に座り込んでいた。
あのままでは敦君が例の組織に引き渡されてしまう。
どうにか助けたいけど、今の僕では芥川君に一撃を与えることも無理だ。
見ていることしか出来ないのが、とても悔しい。
「……僕に出来ることは」
福沢side
「……普通に扉から入ってこれないのか」
ルイス、と私は少し呆れながら言った。
空気入れ換えの為に開けていた窓に、ルイスが腰掛けている。
「色々と忙しそうだったからね」
「……与謝野から聞いた。先日、新人を助けてくれたらしいな」
一瞬考えてから、思い出したように手を叩いた。
それほど経っていない筈だが、彼は色々と忙しかったのだろう。
そんなことを考えていると、ふと違和感に気がついた。
ルイスは少し顔色が悪く、汗をかいている。
窓から入るだけでそこまで息の上がる者ではない筈だが。
「与謝野さんっている?」
「事務室か医務室にいると思うぞ。怪我でもしたのか?」
「ちょっとね。応急処置はしたけど流石に診てもらえないかと思って」
ルイスが視線を向けた先では、血が布に染み出していた。
足に怪我、それにしては出血が多いな。
「僕のことは後で構わないよ。それより、マフィアは敦君をある組織に引き渡すつもりだ」
例の七十億で買おうとしているのは、組織なのか。
口振りからして、ルイスは組織について知っているらしい。
しかし、今は問い詰めている場合ではない。
新人が拐かされたのを、放っておくわけにはいかないな。
「医務室へ行き、与謝野君へ説明すると良い。居なかったときは空いてる寝台で横になっていろ」
「福沢さんは?」
「私は少し、事務室へ行ってくる」
今は護衛依頼のせいで、新人どころではないだろう。
「あ、社長」
「……ナオミか」
「実は敦さんが──」
分かっている、と告げて事務室へ歩を進める。
ルイスから聞いたことを話すと、納得したようだった。
事務室へ入るなり、社員は頭を下げてくる。
「申し訳ありません。業務が終了次第、谷崎と情報を集めて──」
「必要無い」
ルイスの話だと、それでは間に合わないだろう。
国外へ出られた時に我々が出来ることは何もない。
「全員聞け! 新人が拐かされた。全員追躡に当たれ! 無事連れ戻すまで、現業務は凍結とする!」
「凍結!?」
「しかし、幕僚護衛の依頼が……」
「私から連絡を入れる」
小役人共を待たせる程度の貸しは作ってある。
三時間程度なら、相手方も許してくれよう。
「社長~善いのほんとに?」
「……何がだ、乱歩」
理屈で考えていた乱歩。
だが仲間が窮地で、助けねばならん。
これ以上に重い理屈がこの世に有るのか。
「国木田」
「はい」
「三時間で連れ戻せ」
ルイスside
おぉ、綺麗さっぱり無くなってる。
初めて見た治癒能力に僕は感動していた。
「……本当に良かったのかい?」
与謝野さんは、僕の身体中にある傷を見て言った。
軍医はいたが、治癒の異能力を持っているわけではない。
だから、今もこの身に戦争の傷痕は残っている。
否、残ってないといけない。
「嫌なもの見せて悪かったね」
「そういうのは見慣れてる。まぁ、アンタがそれで良いなら妾はこれ以上口を出さないよ」
「助かる」
「個人的には《《ソレ》》に一番驚いたんだが……」
そう、与謝野さんは改めて僕を見ながら言った。
別に話すことの程でもないような気がして放置してた。
「まぁ、色々あったからね」
それじゃあ、と僕は忘れ物がないか確認する。
と言っても、手荷物なんてほぼ無いのと同じだ。
懐中時計と携帯ぐらいしか持ち歩いていない。
「先刻話したみたいに、僕は敦君を助けるために色々動くから」
「妾も今から参加するし、その時に伝えておくよ」
「……助かる」
武装探偵社、社長の福沢諭吉だ。
与謝野君によると、ルイスは新人の元へ向かったらしい。
相変わらず行動が早いな、と少し感心してしまう。
乱歩の推理で海上にいることは分かった。
国の外へ運ばれる前に連れ戻せると良いのだが……。
次回、英国出身の迷ヰ犬
episode.10 少年と船上の戦い
次の話もよろしく頼む。
ルイスも新人も、無事帰ってくることを願おう。