公開中
episode.12
新章開幕☆
四期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
北米異能者集団──|組合《ギルド》。
構成員は政財界や軍閥の要職を担う。
その一方で、裏では膨大な資金力と異能力で数多の謀を底巧む秘密結社。
まるで三文小説の悪玉で、都市伝説の類とされていた。
しかし、|組合《ギルド》は確かに存在する。
中島敦に七十億の懸賞金を懸けた黒幕は、その組織の団長だった。
---
--- episode.12 |少年と組合《boy and guild》 ---
---
ルイスside
「どうして貴君は何度も銃で足を撃たれるんだ」
「いやぁ、こっちが聞きたいね」
与謝野さんに足の傷を治してもらった僕は、何故か社長室にいた。
動きを封じる為とはいえ、こう短期間に二度も足を撃たれるのはおかしい気がする。
「やっぱり適度に身体を動かしていないと駄目だね。今の僕じゃ、弱すぎて戦場に一分も立っていられないんじゃないかな」
そう笑いながら言うと、福沢さんは小さくため息を吐いた。
改めて思い返すと、現実味がなく夢だったのではないかと考えてしまう。
人を殺すことが正当化され、老若男女誰でも命を落とす。
戦争の最前線に|十五歳《昔の僕》が立っていたことも信じられない。
どうして僕は戦場にいたのだろうか。
「……ルイス」
「あぁ、ごめん。考え事してた」
福沢さんは、少し心配そうに僕を見ていた。
戦争が夢だったら、どれほど良かったか。
僕はお茶を飲みきって立ち上がる。
乱歩に暫くの間は横浜に残ることを伝えないと。
「あ、そうだ。宿を取るのが面倒だから下宿貸してよ」
「生憎だが、今は空きが無い。私の家に来るか?」
「え、迷惑じゃない?」
適当に太宰君の家にでも転がり込もうかと思っていたけど、まさか福沢さんの家に呼ばれるとは。
想像していなかった事態に驚きが隠せない。
「太宰君とかに断られたら頼んでもいい?」
「あぁ、それで構わん」
それじゃあ、と僕は事務室へ向かうのだった。
何か話しているかと思えば、鏡花ちゃんの住居について話しているらしい。
部屋が足りなくて、敦君と同居になるのだと言う。
「ホント、太宰は敦を丸め込むのが上手いよねぇ」
「本当だね。話は変わるけど僕さ、暫く横浜にいることになったから宜しくね」
ふーん、と乱歩はどうでも良さそうにラムネを飲んでいた。
彼には全てがお見通しなのだろう。
「おい太宰、早くマフィアに囚われた件の報告書を出せ」
「好い事考えた! 国木田君じゃんけんしない?」
「自分で書け」
マフィアで中也君と戦ったりしてたのに、相変わらずで何より。
そんなことを思いながら、僕は乱歩の隣で小説を読み始めるのだった。
「君に懸賞金を懸けた黒幕の話だ」
いつの間にか、話が変わっているな。
特に関係はないかと思って小説を読み進めてみたが、外から聞こえた物凄い音に集中を奪われる。
何の音かな、と外を見てみるとヘリコプターがいた。
それは探偵社前の道路へと止まり、扉が開く。
降りてきた人物を見て、僕は思わず顔を歪ませてしまった。
『君を雇いたい』
この街に来る前のことを思い出してしまった。
その人物は此方を見て微笑む。
「先手を取られたね」
完全に目が合ったのだが。
出国履歴からこの国にいることはバレているのは良いとして、探偵社にいることはあまり良くない。
何で今日、この瞬間に来たんだこの人は。
頭を抱えることしか出来ない。
「ルイス、医務室で待っていると良い」
「……福沢さん」
顔色もあまり良くない、と言われた僕は乱歩と共に医務室に向かった。
与謝野さんは買い物に出ているので居ない。
「彼らと知り合いなんだね」
「勧誘されたんだよ。まぁ、すぐに断ったんだけどさ」
「敦のことを知ったのも、その時だね」
一瞬鏡を見たけど本当に顔色が悪かった。
自分でも驚くほど、あの男に会いたくなかったのだろう。
僕がここにいるのは流石に知らなかった筈。
それなら、彼は探偵社に一体何の用で来たのか。
いや、深く考えなくても分かることだ。
彼らの目的は──。
福沢side
「フィッツジェラルドだ。北米本国で『|組合《ギルド》』という寄合を束ねている」
名刺を出しながら色々と語る男の話を、私はすぐに遮る。
「貴君は懸賞金でマフィアを唆し、我らを襲撃させたとの報が有るが、誠か」
「あぁ! あれは過ちだったよ、|親友《オールドスポート》。まさかこの国の非合法組織があれほど役立たずとは!」
謝罪に良い商談を持ってきた、と男は言った。
建物の階層が低すぎるのが難点だが街並みは美しい。
茶を飲みながらそう言う男の部下は、机にトランクを置いた。
「この会社を買いたい」
中に敷き詰められた札束。
男の表情から冗談ではないことは、容易に想像できる。
この男ならば、土地も会社も全てを買うことが出来る筈だ。
わざわざ探偵社にやってきた理由は一つしかないだろう。
「『異能開業許可証』をよこせ」
この国で異能者の集まりが合法的に開業するには、内務省異能特務課が発行した許可証が必要になる。
表向きには《《ない》》組織である特務課は買収できないらしく、探偵社へやって来たと言う。
「連中を敵に回さず、大手を振ってこの街で『捜し物』をするにはその許可証が──」
「断る」
そうか、と男は時計もつけると言った。
色々と説明を始めるが、私は話を聞く気はない。
命が金で購えぬ様に、許可証と替え得る物など存在しない。
あれは社の魂だ。
特務課の期待、そして許可発行に尽力して頂いた夏目先生の想いが込められて居る。
「頭に札束の詰まった成金が、易々と触れて良い代物では無い」
男は少し黙り、忠告をしてきた。
社員が皆消えてしまっては会社は成り立たない、か。
無論、私は意見を変えるつもりなど無い。
「帰し給え」
「また来ると言いたいところだが、彼はどこに居る?」
やはりその質問が来たか。
予想はついていたが、今は会わせてはいけないような気がする。
「とぼけようとしても無駄だ。確かに俺は彼──ルイス・キャロルを見ているからな」
「貴君に用がある者は、この会社に居ない」
「ふむ、匿うのは構わないが彼は俺の部下になる男だ。こんな島国の会社にいて良いような人材ではない」
賢治、と私は早く彼らを帰らせる。
ルイスがあの男の部下に、か。
組織を嫌う彼が何処かに属すなど、あり得ないのに。
そんなことを考えていると、男は最後に言葉を残していった。
「明日の朝刊にメッセージを載せる。よく見ておけ、親友。俺は欲しいものは必ず手に入れる」
ルイスside
「フィッツジェラルド殿は帰られたぞ」
その声を聞いて、少し安心したような気がした。
ヘリコプターの飛び立つ音も聞こえる。
とりあえずは退いてくれたのかな。
「それで、貴君はこれからどうする」
「どうする、って言われてもね」
残る選択をしたのは他の誰でもない僕自身だ。
勿論どの組織にも入るつもりはなく、出来ることなら傍観者でいたい。
まぁ、その願いは叶いそうにないわけだが。
とりあえずため息を吐き、僕は立ち上がった。
「普通の暮らしを求めてた筈なのに、どうして面倒くさい事になるのかな」
「行くのか」
「あくまで中立で居たいからね。気が向いたら手を貸すぐらいしてあげるよ」
この感じではお世話になることは難しそうだ。
扉を出て、僕は太宰君達に挨拶をすること無く探偵社を去るのだった。
次の日になり、町中同じ話題で持ちきりだった。
「ビルが丸々消えたらそりゃあねぇ……」
福沢さんの事だから『異能開業許可証』は渡さなかったのだろう。
この報道は組合からのメッセージか。
そういえば、組合の目的をちゃんと聞いてなかったな。
敦君は文字通り|目印《タイガービートル》なら、何かを探しているんだろうけど。
「……無駄に考えても仕方ないか」
今は組合からどう身を隠すかを考えないといけない。
ビルを消した方法は判らないけど、僕も拉致されたりするかもしれない。
脅しの材料はなくても、普通に拷問のようなことしてきそうだから嫌なんだよな。
ハァ、とため息を吐いた僕は人混みの中へ身を隠すのだった。
「──は?」
一言で表すなら、異質。
先程までいた街とは全く違う、異質な空間に僕はいた。
周りには僕と同じように理解の追い付かない一般人が沢山いる。
「ようこそ、アンの部屋へ」
声のした方を見ると、そこにはフィッツジェラルドと共にいた少女がいた。
「あら、もう嫌だわ。こんなに沢山の方たちに見詰められて、あたし初対面の方とお話しするの苦手なの」
組合は異能者集団。
つまり彼女も異能者であり、ここは異能空間と予想がつく。
「でも駄目ね、ちゃんとせつめいしなくちゃあ。皆さんお困りだわ。きっとすごくお困りだわ。だってこんな見知らぬ所に連れてこられたんですもの。あたしだったら心臓が跳び跳ねて──」
「ナオミは何処だ」
おっと、この声は谷崎君か。
敦君も一緒にいることが分かったが、話を聞く限り賢治君とナオミちゃんが捕らえられているらしい。
「鍵なしでは開かないわ。開くのはあっち」
背後にある扉の窓から見えた景色は、静止している。
なるほど、僕の異能空間とは違うらしい。
空間内の時が止まり、現実世界の時は流れているのが|不思議の国のアリス《alice in wonderland》。
彼女の能力では空間内の時間は進んでおり、現実世界の時が止まっている。
外の見える扉から出ることが出来る点に関しては、彼女の異能力の方が優しいか。
「如何する心算だ」
「簡単よ、この部屋のアンと遊んで頂きたいの」
彼女がアンを呼ぶと、ぬいぐるみのようなものが出てきた。
多くの人は怖がり、扉から出てしまう。
「あっ、ただしそのドアから出たら部屋の中のことは忘れちゃうわよ? よろしくて?」
なるほど、色々と面倒くさそうな異能力だ。
だからフィッツジェラルドは組合に勧誘したんだろうけど。
部屋が静かになるまで、僕は大きな箱に腰を掛けて小説を呼んでいた。
「残ったのは四人だけ?」
「此処は危険です、逃げた方が佳い」
「女の子を捜しているんだ」
「ん?」
聞き覚えのある声に、僕は思わず小説から顔を上げた。
何でこんなところにいるんだ、この男は。
僕の視線の先にいたのは白衣を着た中年男性、改めポートマフィアの|首領《ボス》である森鴎外。
「ルイスさんもいらしたんですね」
「あぁ、巻き込まれたね」
敦君が首領と話している間に、僕は谷崎君と少しだけ話した。
「ルールは簡単よ! 可愛いアンと追いかけっこをして、タッチされたら皆さんの負け。捕まる前にその鍵でドアを開ければ皆さんの勝ちよ。人質をみんなお返しするわ」
とても単純で分かりやすいルールだな。
谷崎君に言われ、僕は追いかけっこに参加せず首領の傍にいることになった。
追いかけっこ、ということは周りにある遊具を使った目眩ましなども可能なのだろう。
この人なら何も問題無さそうだけど、二人は一般人だと思ってるからな。
仕方なく、僕は首領を守ることにした。
「準備はよろしくて?」
「あぁ」
鍵を取った谷崎君の背後にアンがいた。
流石に速すぎる。
これでは勝負にならないな、と一人呟いた声は首領だけ届いて消えた。
次回予告。
武装探偵社の谷崎潤一郎です。
ナオミが閉じ込められているなら、助けないと。
警戒していた。
なのに気づけば僕は捕まっている。
驚きすぎて、声も出なかった。
ルイスさんと敦君の姿が、遠くなっていく。
次回、英国出身の迷ヰ犬。
episode.13 少年と元孤児
来週もお楽しみに。
……先輩なのに、先に捕まって申し訳ないな。