公開中
episode.13
四期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
「ひとりめ捕まえた☆」
少女を除いた四人は驚きを隠せなかった。
追いかけっこが始まると同時に捕まった谷崎。
鬼役であるアンは、あまりにも速すぎる。
驚いている暇はなく、鍵の必要な扉が開いて無数の腕が伸びてきた。
腕は谷崎を掴むと扉の中へ吸い込む。
バタン、と大きな音を立てて閉められた扉。
アンの喜んでいるような動きから出される音だけが、異能空間に響くのだった。
---
--- episode.13 |少年と元孤児《ex-military and ex-orphan》 ---
---
ルイスside
敦君へ伸びるアンの手。
しかし、一部虎へ変身することで上昇される身体能力のお陰で、そう簡単には捕まらない。
「君、エリスちゃんを知らないかい?」
「知らない。というか組合にフロント企業が入っていたビルごと消されるよね? なんでエリス嬢を見失ってるの」
護衛もいないし、流石にマフィア首領としての自覚が無さすぎるのではないだろうか。
「それで首領、あの扉の先にいるわけがないのに何で残った?」
「話は変わるけどルイスくん。君、もうマフィアじゃないのに首領呼びするよね。普通に森さん、とかで呼んでよ」
「……質問に答えたらそう呼ぶ」
じゃあ、と森さんは目的を話し始めた。
一番の目的は組合の情報を少しでも集める為、らしい。
確かに都市伝説とも言われる組合の全体像は僕でも把握しきれていない。
昔は少し交流があったけど、今の組員は全然知らないな。
「そして二番目は君だ」
「……万事屋も休業中なので手は貸しませんよ。そもそも傍観者でいたいので」
それは無理だろう、と森さんは言う。
組合に狙われているのは敦君だけじゃないことに、この人は気づいているんだろうな。
「そういえば森さん、芥川君は元気?」
「あぁ、起き上がることは出来ないけどね。君のお陰で大切な遊撃隊長を失わずに済んだ」
「彼を見捨てる気だったのに、よくそんなことが言えるね」
「おや、一体何の事かな?」
ハァ、とため息を吐いた僕は隅の方に移動して敦君の追いかけっこを見守ることにした。
「すごいすごい軽業師みたい! もっと見たいわ!」
アンの動きを見て思ったけど、攻撃速度は結構速いな。
少しでも気を抜いたらすぐ捕まりそう。
「何て力強くて便利な異能なんでしょう。さぞ幼少から皆にちやほやされたに違いないわ」
「……。」
「貴方、元孤児なのですってね。あたしも孤児院育ちなの、とても寒い所よ。凍ったみたいな水で一日雑巾掛けをした後は、何日も指の痛みが取れなかったわ」
いきなり自分語りを始めたかと思えば、敦君を羨んでいる。
彼女、敦君の過去について何一つ知らないのかな。
「組合は失敗を許さないわ。今回の作戦をしくじったら、汚れた紙ナプキンみたいに捨てられる。そしたらまた独りよ。そんなのって信じられる?」
ゾッと背筋が凍るような感覚がした。
もう羨むなんて感情じゃない。
「ねぇ、なぜ貴方なの? なぜあたしではないの?」
「確かにこの世界は不公平だね。帰る場所のある人ばかり、善人ばかり命を落とすんだから」
「ルイスさん……?」
思わず口を挟んでしまった。
でも、彼女の言葉に反応せずにはいられなかった。
敦君も少し疲れているし、休憩するのにちょうど良いかな。
「失敗したら独りになる、なんて最高じゃん。その尊い命を失わずに済むんだよ?」
戦場じゃ失敗したら死ぬ。
人を殺すことが出来なければ|平和な日常《何でもない日》はやってこない。
どれだけ罪の意識に苛まれようと引き金を引くことも、刃を振るうことも止められなかった。
「な、何なのよ……貴方には私の事なんて理解出来ないでしょう!」
「出来ないよ。でも、それは君も同じだ」
さて、と僕は手を叩いて空気を変える。
追いかけっこの邪魔をして悪かった。
そう告げて森さんの元へ戻ってくると、何故か頭を撫でられた。
「は?」
自分でもビックリするぐらい低い声が出た。
この人が頭を撫でている理由が、いまいち理解できない。
「君も大変だったんだね」
「……は?」
もう僕は考えることを止めることにした。
「あ、敦君が……」
いつの間にかアンの手を掻い潜って、扉のところまで来ていた。
その手にはしっかりと鍵が握られている。
「少年! 危ない!」
「え?」
森さんの声が響き渡った。
それと同時に敦君の首を《《鍵が掻き斬ろうとしている》》。
斬られたのが皮一枚で済んだ敦君だったが、鍵を手放してしまった。
「あら、大事な鍵をこんな風に扱って……孤児院の先生に叱られるわ」
「鍵でドアを開けたら勝ちじゃあないのか!」
「そうよ、《《開けられたらね》》。こんな鍵をどう使うのかあたしにも見当がつかないけれど」
あの鍵、笑ってるな。
普通に凄いと思っていたが、そんな余裕はない。
勝つ方法がない状態で、敦君の心がどれだけ持つのか。
ロケランでも扉に撃ってみようかな。
いや、普通に捕まってる人達に被害が出るか。
そんな下らないことを考えていると、敦君は鍵の必要ない扉へ向かって走り出した。
「お仲間を捨てて逃げる気!?」
敦君の手がドアノブに掛かる、というところで森さんはリボンを使って敦君を止めた。
僕も敦君を投げ飛ばそうかと腕を掴んでいる。
「駄目だよ、少年。敵はあっちだ」
「駄目だよ、敦君。敵はあっちだ」
うわっ、と思わず言いそうになった。
まさか森さんと台詞が被るとは。
「この|場合《ケエス》での逃亡はお勧めしない。その……高が街医者の言葉を信じて貰えるならば、だが」
「彼女の言葉を信じるなら、この扉から出たら記憶を失う。つまり彼女の事も谷崎君達が捕まっていることも忘れてしまう。その間に組合はどんどん進撃するだろうね」
佳い事を教えよう、と森さんは敦君にリボンを渡した。
「|戦戯《ゲエム》理論研究では、危害を加えて来た敵には徹底反撃を行うのが論理最適解とされている。二度と反撃されぬよう、此処で徹底的に叩くのだ」
「でも方法が──」
「絶対に負けぬと高を括る敵ほど容易い相手はないよ」
「探偵社は、君が囚われた時に必死に助けてくれたんでしょ?」
今度は君の番だ、と背中をそっと押してあげる。
顔つきが良くなった。
これで敦君の気力は大丈夫だろう。
後はどう攻略するか、か。
こういう異能空間はその空間を作った異能者が最強になる傾向がある。
そしてその異能者だけが空間を作り、壊すことが出来る。
奥の部屋は空間を壊しても解放されない。
つまり彼女を引き込めば──。
「──勝利か」
その瞬間、二体のアンによって敦君が捕らえられた。
まぁ、元より谷崎君と二人で挑む予定だったから妥当か。
扉から伸びてきた腕が、敦君を引きずり込む。
「あぁ、なるほど」
「はい、おしまい★」
隣で森さんがそう呟いたのと同時に、少女は言った。
「次は|ルイス《貴方》の番ね。でも、おじさまはどうされるのかしら?」
「……と、いうと?」
「おじさまの言葉のおかげで虎の彼に逃げられずにすんだわ。だから感謝の印に見逃してあげてもいいわよ。どうせ捕まえる指示のないこきたない中年一人見逃したってフィッツジェラルドさんは怒ったりしないもの」
相変わらずよくまわる口だな。そう思いながら僕は欠伸をしていた。
「おじさまがアンに捕まった時の絶望した顔を見てみようかしら」
「試すかね」
ハァ、と僕はため息を吐く。
彼女を脅して何が楽しいのだか。
そんなことを考えていると、視界の端に雪が降っているのが見えた。
「無理だな。何故なら君は負けている」
見るといい、と森さんが指差した先には敦君がいた。
閉まった筈の扉は開いており、虎の手足でどうにか引き込まれないように頑張っているようだった。
「どうして──」
「君の見落としは一つ。この戦いは《《最初から二対一》》だ」
扉の開いた瞬間に、谷崎君が『細雪』を発動させて映像を偽装。
あの中に入った瞬間に気絶する、とか変なことが起きていたら無理な作戦だったな。
その場合、僕が一人で彼女と戦わなくてはならない。
普通に面倒くさいから敦君と谷崎君でどうにかしてくれて助かった。
「本当は君にこの作戦を失敗して欲しくない、居場所を失って欲しくない! でも──僕は弱くて未熟だから他に方法が思い付かない」
グイッ、と少女は何かに引っ張られたように、身体が扉へ引き寄せられる。
敦君が引き込まれる直前に結んでおいたのだ。
虎の力で引っ張れば、一瞬で扉の元まで移動される。
「はっ、放しなさい!」
「異能を解除して、皆を解放しろ。でないと君を奥の部屋に引きずり込む」
「そんなっ……!」
「鍵がなければ扉は開かない。なら君が部屋に幽閉されれば、扉を開けられる人間は誰も居なくなる」
そうなった状態で能力を解除しても、僕と森さんしか元の世界へは帰れない。
もし彼女が異能を解除しない場合はどうしようかな。
やっぱりロケランか。
「異能は便利な支配道具じゃない。それは僕が善く判ってる。自分の作った空間に死ぬまで──否、死んだ後も囚われ続けたいか?」
「あたしは……失敗するわけには」
「今から手を離す。決断の時間は扉が閉まる一瞬しかないよ」
さぁ、どうするのかな。
瞬きをする間に、景色は元いた街へと戻っていた。
周りには囚われていた人達がいる。
自分の異能に囚われるのは、流石に嫌だったか。
あの一瞬でよく異能力を解除できたな。
そんなことを思っていると、鼓膜が破れそうな程の大声が頭に響いた。
「大丈夫だったかい、何処に行ってたのだい、心配したのだよぅ、突然居なくなるから、」
「急に消えたらリンタロウが心配すると思って」
泣くかと思った、と言いながら泣いている森さん。
「そしたら泣かせたくなった」
「非道いよエリスちゃん!」
何なんだろう、この人は。
相変わらずの幼女趣味に、もう呆れすぎてため息も出てこなくなった。
「……敦君も鏡花ちゃんと合流したし、一件落着かな」
「それでは私達は失礼するよ」
感謝を伝える敦君。
あえて正体は言っておかないでおこう。
今明かすと、何かと面倒くさいことになりそうだ。
「少年。どんな困難な戦局でも必ず理論的な最適解は有る。混乱して自棄になりそうな時ほど、それを忘れては|不可《いけ》ないよ」
マフィアの首領が敵組織の新人に助言、ねぇ。
彼が何を考えているか分からないところは、この人譲りかな。
そんなことを思いながら、僕は今度こそ人混みの中へ身を隠すのだった。
次回予告。
……私の名前はルーシー•M•モンゴメリよ。
あの人達に負けて、もう利用価値がなくなってしまったわ。
汚れた紙ナプキンみたいに捨てられるのは嫌だ。
でも、敵に異能力がバレた私に利用価値なんてない。
それにしてもルイス•キャロルって殿方、ただの元軍人じゃなかったの?
あんな瞳、鏡越しで見てきた私なんかよりも──。
次回、英国出身の迷ヰ犬。
episode.14 少年と光で焼かれた女
次回も観たらいいんじゃないかしら。
私は、とりあえずあの人の処へ向かわないとね。