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episode.18
四期までの情報しかないはずです!
原作(漫画)を見ながら書いてます!
オリキャラ注意!
--- episode.18 |赤の女王は妖しく笑う《the red queen laughs mysteriously》 ---
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フランシスside
ルイス君が黙ってから一分が経とうとしていた。
流石に軍人時代を思い出したことで、戦意喪失してしまったのだろう。
そんなことを考えていると、笑い声が聞こえてきた。
笑っているのは他の誰でもない、彼だった。
「……馬鹿だな、僕」
立ち上がったルイス君だったが、今にも倒れてしまいそうだった。
怪我のせいか、足元がおぼつかないのだろう。
「まだ僕は罪悪感をもっているし、人を救わないといけない。でも正義の味方じゃないから全員を救うなんて無理だ」
「……ふむ、それは一理あるな」
|組合《ギルド》も正義の味方ではない。
やるべきことをする組織と、少し前にスタインベック君に説明したな。
そんなことを思っていると違和感を感じた。
彼の瞳は、あのような真っ赤に燃え上がる炎の色をしていただろうか。
否、それは違う。
ルイス君は若葉のような鮮やかな緑色の瞳をしていた筈だ。
彼女の話では『戦神』と『赤の女王』の瞳の色は異なる。
「君はまさか──!」
その名を口に出す前に、《《長い金髪の少女》》は俺の懐まで距離を詰めていた。
深くしゃがみ込んだかと思えば、地面に手を突いて顎を蹴り上げてくる。
何という戦闘スキル。
これが『赤の女王』と呼ばれた彼女の実力か。
「悪いけれど、今回ばかりは本当に手加減できないから」
「本気の君に勝ったら、仲間になってくれるか?」
「……勝てるのならね」
瞬きをした一瞬のうちに、俺は彼女を見失っていた。
何処にいるか探していると、足元の影がどんどん大きくなっていく。
上を見れば、そこには少女がいる。
どうにか腕で防御しようとするが、一万ドルでは全然足りそうにない。
少女の足が俺の腕に当たった瞬間に地面が凹んだ。
生身で受けたら骨が折れているだろう。
「君には痛覚がないのか……!」
「あるわよ。今だって全身が悲鳴をあげてる」
距離を取った少女と、そんな会話をする。
まだ何も達成できていないのに、俺はここで負けるのか。
否、それはあり得ない。
組合の長として、そう簡単に負けるわけにはいかないのだ。
「……しかし、そろそろ時間か」
「──!」
「悪いな、赤の女王。今回は時間が来てしまったので退かせてもらうぞ」
後ろから声が聞こえたが、追いかけてくる様子はない。
多分だが、身体の限界が来てしまったのだろう。
あれだけの怪我なら、暫くは作戦の邪魔されることはないな。
死ぬこともないと思うが、あの程度で命を落とす異能者なら必要ない。
#アリス#side
バタン、と私は音を立てて床に倒れる。
もう指一本動けそうにない。
眠りについても良いかしらね。
「……。」
私を閉じ込めるためだけに作られた《《何もないエリア》》。
此処は|異能空間《ワンダーランド》の中で一番寂しくて、孤独な場所。
でも、もう慣れたわ。
それが|ルイス《あの子》の意思なら私は従うだけ。
『──貴方は!?』
ふと、そんな声が耳に入ってきた。
あんな道端に倒れていたら、誰かが通り掛かるのも当然かしら。
『意識がない……それに、貴方がこんな傷だらけになるなんて一体誰が……』
どうやら声の主は、ルイスのことを知っているようね。
まぁ、悪いようにはしないでしょう。
ルイスside
目が覚めると、そこは見覚えのない天井が広がっていた。
否、一度だけ見たことはある。
辺りを見渡せば、そこが何処なのかすぐに理解した。
「気が付いたのね!」
「……エリス」
ポートマフィアの医務室、か。
僕は確か、フィッツジェラルドと戦っていた筈。
途中で#アリス#と変わったところまでは覚えてるけど、誰がここまで運んでくれたのだろうか。
「今、リンタロウを呼んでくるわね」
部屋を出ていったエリスが戻ってくるまで、暇だった。
体を起こそうとしても、一切動かない。
「酷い怪我だ。一週間は安静にしていないと駄目だね」
「誰が、ここまで……?」
「樋口君だよ」
視線の先には、スヤスヤと眠る樋口さんの姿があった。
偶然通り掛かったとらしい。
どうやら眠っていたのは一日だけらしく、戦況はさほど変わっていないだろう。
せめて敦君と鏡花ちゃんがどうなったかだけでも知りたい。
けど、此処ポートマフィアだからな。
「一体何があったんだい?」
「フィッツジェラルドと戦ってた」
ほんの一瞬、森さんの意識が何処か遠くへ行ったような気がした。
まぁ、僕自身まだ信じられないからな。
ウロウロしてたら鏡花ちゃんがいて、追いかけてみたらフィッツジェラルドもいる。
「起きたら樋口君にお礼を言うと良い。下手したら君、死んでいたからね」
それじゃあ、と森さんは何処かへ行った。
エリスも渋々ついていく。
静かになった医務室で僕は何も出来ることがなく、暇を持て余すことになった。
『なら、私と話さないかしら?』
視界が暗転する。
次の瞬間には、真っ白な空間が目の前に広がっていた。
「……|異能空間《何もないエリア》か」
「正解よ」
後ろから声が聞こえてくる。
振り返ると、そこには僕とよく似たの少女がいた。
でも、瞳の色が違う。
僕が緑色なのに対して、#アリス#は赤色だ。
それに髪の長さも違かった。
「それで一体何の用なわけ? 雑談したくて呼んだわけじゃないでしょ?」
「雑談よ。まぁ、アナタにとってはそんな簡単に済ませちゃいけないでしょうけど」
「……あまり長話は好きじゃないんだけど」
仕方ないわねぇ、と#アリス#は指を鳴らす。
すると、どこからか椅子が現れて腰掛けていた。
この世界でなら、彼女は異能力の応用で見たことのあるものを何でも出せる。
彼女曰く立ち話は疲れる、とのことらしい。
「アナタが私の力を借りたのは|日本《この国》にきてすぐ、芥川君から|虎人《リカント》君を助けた時かしら?」
「あの時は他に方法が思いつかなかったから」
でしょうね、とコロコロと笑う#アリス#。
少しばかりイラついてしまった。
「アナタの意識がある時、私は命令に従わなければならない。それが|#アリス#《もう一人のアナタ》だからね」
今までも身に危険が及ぶ時は#アリス#の力を借りて、難を逃れてきた。
でもマフィアとの契約が終わる頃には、僕が#アリス#と変わることは殆ど無くなった。
一番の理由は、ある不思議なマフィア構成員の言葉だ。
|ルイス《僕自身》が成長していることもあると思うけど。
「ねぇ、ルイス」
「……改まってどうした?」
「アナタは|#アリス#《私という人格》が生まれた理由について、考えたことある?」
もちろん答えは──NOだ。
気づけば僕の中に#アリス#はいて、一緒に戦場で戦ってきた。
彼女がいたから乗り越えられた事も沢山ある。
「異能力というのは、本来一つの肉体に一つしか宿ることが出来ないの。でもアナタには素質があって、生まれつき二つの異能をその身に宿していた」
「僕が生まれた時から君はいたのか?」
「その答えはNOね。アナタが使うことができる『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland 》』とは違って、戦場で死の一歩手前にまで行ったことで開花した《《もう一つの異能力》》だもの。それによって、開花と同時に生まれた|副産物《おまけ》よ」
「異能力は一つしか宿ることが出来ないと言っていたが、二つ以上宿るとどうなる?」
とても簡単に説明するなら《《死》》。
開花していない状態ならまだ大丈夫だが、#アリス#がいなかったら僕はとっくに死んでいたと言う。
彼女が開花と共に出来たのは偶然か、それとも本能的に作ったのか。
もう知る術はないが、とりあえず感謝することにした。
あの時にもし死んでいれば、こうして生きていることはない。
「えーっと、本題からどんどん逸れていったから戻すわね」
「本題はコレじゃないのかよ」
#アリス#の生い立ちとか、結構重要な気がするんだけど。
そんなことを考えながらため息を吐く。
「私はアナタが壊れない為に存在しているわ」
え、と思わず言葉が漏れた。
普段なら結構すぐに言葉の意味を理解するのに、今は結構な時間が掛かってしまった。
壊れない為、というのは精神的にだろう。
正直、心当たりがないわけではない。
戦後に人を殺したという罪悪感に襲われたことが、一番最初に思いついた。
「色々とアナタは一人で抱え込む癖がある。あと、何かと決めつける癖もね」
「……それは」
「アナタが壊れないように、一人にならないように私は否定し続ける。本心を見つけて、前を向いて歩いて行けるように私は居るのよ、ルイス」
ふと、彼女の行動を思い返してみる。
フィッツジェラルドと戦ってる時、彼女が居なかったら僕はどうなっていた。
あの時も、あの時も、あの時だって。
#アリス#がいたから、僕は過去に囚われながらも歩いてこれた。
「……ねぇ」
「何かしら?」
「ずっと僕、君のことを信用できなかった……君はいつも僕の為に声を掛けてくれて、いつも側に居てくれたのに……」
僕は、と言葉を紡ごうとした僕の目から、ポロポロと涙が溢れ出た。
上手く声が出せない。
涙のせいで、言葉が詰まっているのだろう。
どうにか泣き止もうと目を擦っても、視界は歪んだままだった。
「──ルイス」
優しく、僕は抱きしめられた。
「此処には私しか居ない。だから、我慢しないで泣いて良いのよ」
「#アリス#……」
母親がいたら、こんな感じだったのだろうか。
とても胸が熱くて、苦しくて。
でも、不思議と嫌ではない。
そして僕は、まるで子供のように大声を上げて泣いたのだった。
樋口side
「あ、目覚めましたか?」
その、と私はその先の言葉を続けようとした。
でもルイス•キャロルの様子を見て、少し話しかけるのを躊躇ってしまう。
何というか、先程まで泣いていたような表情をしているのだ。
気を失っていた筈だから、そんなこと絶対にあり得ない。
「……森さんから聞いた。樋口さんが見つけてくれたんだってね」
ありがとう、と微笑んだ彼は前会った時と雰囲気が違うような気がした。
|組合《ギルド》が来てからそこまで日は経ってないのに、何があったのだろうか。
「さて、樋口さん体術とか得意?」
「え、あ、その……得意と胸を張れるほどではないですけど、ポートマフィアの中ではそこそこ出来ます……」
「じゃあリハビリがてら付き合ってよ」
は、と思わず言ってしまった。
|首領《ボス》が手当てをしたとはいえ、まだ全然怪我は治っていない状況。
なのに健康状態の時のように、ベットから降りて準備運動をしている。
これ、私はどう返事したら良かったのかな。
「失礼します。樋口は起きて──」
「あぁ、中也君。良かったら君もリハビリに付き合ってよ」
数秒固まった後、中也さんは私に視線で訴えかけてきた。
どうしてルイス•キャロルがこんなに元気なのか。
そんなの私にも分かりませんって。
「と、にかくルイスさん、まだリハビリするには早いです。寝ていてください」
「中也君知ってる? 一日サボると三日分の努力が無駄になるんだよ?」
「ルイスさんに何度も言われたので憶えてますよ。でも休息は大事です。睡眠を取らなくても良いので、横になってください」
文句を言いながらも横になったルイス•キャロル。
中也さんのお陰でリハビリという名の模擬戦に付き合わされなくて済んだ。
初めてこんなに感謝したかもしれない。
今度、珈琲でも差し入れしよう。
ルイスside
「おい樋口。今すごく失礼なこと考えてただろ、|手前《テメェ》」
「いえ! 考えてません!」
早く体を動かしたいのに、と思いながら僕は自分の体を見てみる。
全身傷だらけだ。
多分、今は鎮痛剤が効いているから動けない程の痛みではない。
「一週間は安静に、って|首領《ボス》から言われてたんじゃないんですか?」
言われてた、ような気がしなくもない。
でも、この程度の傷で一週間も無駄にするのは勿体無い。
「どれぐらい治ったらリハビリ付き合ってくれる?」
「普通に|首領《ボス》が許可を出したら、ですよ」
その間にも|組合《ギルド》は何かをしているのかもしれないのに。
強く握りしめた拳に、爪が深く突き刺さる。
それを見ていたのか中也君は、見舞いで持ってきた果物を剥いてくれた。
うん、美味しい。
「……俺達が掴んでいる探偵社とかの情報でも話そうか?」
「|首領《ボス》はなんて?」
「マフィアの情報も、俺の判断で話せるところまで話して良いってよ」
なら、聞くしかないかな。
元より断る理由もないわけだけど。
ーーー
武装探偵社
•敦は|組合《ギルド》、鏡花は軍警に捕らえられた。
•隠れ家から会社に戻っている。
|組合《ギルド》
•拠点を異能要塞『|白鯨《モビー•ディック》』に移した。
•|隠密《ステルス》機能のせいで現在地は不明。
•組員は現在も横浜の街に滞在している。
ポートマフィア
•五大幹部の一人が探偵社に捕らえられている。
•夢野久作が作戦中。
ーーー
ルイスside
うん、結構凄いことになってる。
やっぱり普通に凄いことしてるね、森鴎外。
|組合《ギルド》をどうにかするまで遊ぶのは禁止にしてるだろうけど、大丈夫かな。
まぁ、一週間の間に地獄絵図にならなければ良いけど。
「話せるのはこれぐらいだな」
「敦君と鏡花ちゃんのことが分かっただけありがたいよ。にしても、軍警に捕まったのか……」
太宰君はこれを予知していたとしても、どうやって探偵社に入れるつもりなんだろう。
僕が知っている限り、鏡花ちゃんは入社試験を突破していない。
政府と取引するとしても、なかなか大変そうだな。
「|組合《ギルド》との戦い、一体どうなるかねぇ」
「ルイスさんは、やっぱりどの組織に入らないつもりですか?」
「……さぁ」
我ながら意味深な返事をしてしまったと思う。
正義の味方じゃないから、全員を救うことなんて出来ない。
でも手の届く範囲の大切な人を、仲間をこれから守っていきたいと思っている。
まだ罪悪感を抱いている僕は、これからも光にはなれない。
もちろん、闇にもなることはできない。
そんな僕が自分勝手な僕を受け入れてくれそうな場所に、心当たりがあった。
彼がどんな反応をするか、少しばかり楽しみでもある。
──そして、一週間が経とうとしていた。
次回、英国出身の迷ヰ犬
episode.19 始まる災いに抗う者達。